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相続財産の中に実家の空き家が!相続放棄したらどうなる?

親が亡くなり、空き家になった実家を相続する人は多いと思います。すでに実家を出て別の場所で暮らしている場合、今後住む可能性が低い家をどう扱っていくか、悩ましいこともあるでしょう。

今回は、空き家と相続放棄の関係について紹介します。

空き家は相続放棄すべきなのか?

ここでは、空き家は相続放棄すべきなのかについて説明します。

相続放棄とは?

相続放棄とは、相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がずに放棄することです。自己のために相続があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所で相続放棄の申述をし、その旨の申述が受理されると初めから相続人ではなかったとみなされます。

相続放棄のメリットとデメリットは?

相続放棄のメリット

相続放棄のメリットは、被相続人に多額の借金がある場合、借金を引き継ぐ必要がなくなることです。遺産分割協議に参加する必要もなくなるため、相続人同士で争いが起きていても巻き込まれずに済みます。

被相続人の財産に属した一切の権利義務を放棄するため、相続財産に不動産が含まれていても、相続放棄をした人は固定資産税を支払う必要がありません(もっとも、相続放棄をした後に納税通知書が届くことがありますが、支払い義務は免除されます)。

相続放棄のデメリット

相続放棄のデメリットは、一度放棄をすると撤回ができないことです。相続放棄をした後、引き継ぎたいと思う遺産が見つかっても相続できません。

相続を放棄すると、自動的に次順位の相続人に相続権が移るため、借金がある場合は返済を巡って親族間でトラブルになる可能性があります。

こうしてみると今後住む予定のない空き家は、固定資産税支払いの観点から、相続放棄をしたほうが賢明に思えますが、そんなに単純な問題ではありません。

空き家を相続放棄したらどうなるのか?

ここでは、空き家を相続放棄したらどうなるのか、説明をします。

相続放棄をしたら空き家の管理義務はなくなる?

相続放棄をしたら、空き家の管理義務はなくなるのでしょうか?相続放棄後の財産の管理責任について202341日に施行された民法改正をふまえて解説します。

2023331日以前に相続放棄をした場合

改正前の民法940条では、相続放棄によって相続人となった次順位の相続人が、相続財産の管理を始められるまでは、相続放棄をした人に相続財産(空き家)を管理する義務を課していました。

そのため、2023331日以前に相続放棄をした人は、次順位の相続人が相続財産の管理を始められるまでは、相続財産の管理義務を免れられません。

202341日以後に相続放棄をした場合

2023年4月1日の民法改正で、相続放棄後の財産の管理義務が、以下のとおり明確になりました。

第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

2 第六百四十五条、第六百四十六条並びに第六百五十条第一項及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。

引用:民法 | e-Gov法令検索

つまり、202341日以後の相続放棄では、相続放棄をした人が相続放棄時に相続財産に属する財産を現に占有していなければ、管理(保存)する義務を負いません。

相続人全員が相続放棄をしたら、管理義務が残る場合もある

相続人全員が相続放棄をした場合、空き家の管理をする人が誰もいなくなると、不都合が生じます。

改正前の民法では、相続人全員が相続放棄した場合に、誰がいつまで管理責任を負うのかが条文上明らかでなかったため、最後に放棄をした相続人が相続財産を管理しなければならないのが実情でした。

改正後の民法では、相続財産に属する財産を現に占有している相続放棄者だけに保存義務を負わせると規定しているため、202341日以後に相続放棄をした人が、その放棄の時に現に占有している財産は、相続財産清算人(管理人)に引き渡すまでは、自己の財産におけるのと同一の注意を持って保存しなければなりません。

相続放棄をした空き家を適切に管理しなかった場合の責任は?

空き家は、きちんと管理をしないと思いがけないトラブルを引き起こします。

例えば、樹木や草木が伸びるのを放っておくと、隣人の敷地に入ってしまい苦情が寄せられるかもしれません。

建物の老朽化で壁や屋根が壊れて隣人や通行人に損害を与えてしまったら、損害賠償請求をされる可能性もあります。たとえ相続放棄をしても、適切に管理していなければ責任を問われるリスクがあるので注意しましょう。

相続放棄した空き家の管理義務はいつまで続くのか?

ここでは、相続放棄をした場合の財産の保存義務はいつまで続くのかについて、改正民法のルールを説明します。

相続財産清算人(管理人)とは?

相続放棄をした人が、その放棄時に空き家の占有を開始していなければ、保存義務は負いません。しかし、相続放棄をした人が、相続放棄時に現に占有している相続財産に属する財産の保存義務は、相続財産清算人(管理人)に引き渡すまで続きます。

相続財産清算人(管理人)とは、相続人不存在の場合に、家庭裁判所が申し立てにより選任する相続財産を管理・処分する人です。従来は相続財産管理人と呼んでいましたが、20234月に施行の民法改正により、相続財産清算人と名称が変わりました。

相続財産清算人と民法改正前の相続財産管理人には、基本的に違いはありません。経過措置として改正民法施行前の相続財産管理人は、相続財産清算人とみなすとされています。

相続財産清算人は、相続人を捜索し、財産を管理・清算し、最終的に残った財産を国庫に帰属させる責務を負います。

なお、改正後の民法でも、相続したまま放置されている土地など、未分割の相続財産について保存に必要な処分を命ずる者として新たに規定されています。

相続財産清算人はどのようにして選ぶのか?

相続財産清算人は、被相続人の債権者や特定の遺贈を受けた人、特別縁故者などの利害関係人や検察官の申し立てによって、家庭裁判所が選任します。申し立ては、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。

申し立てには、相続財産清算人報酬や手続き費用として、予納金100万円ほどがかかる場合があります。

20234月に施行された相続土地国庫帰属制度とは?

ここでは、相続土地国庫帰属制度について説明します。

相続土地国庫帰属制度はどんな制度か

2023年4月に施行された相続土地国庫帰属制度とは、相続または遺贈によって、宅地や田畑、森林などの土地を相続した人が、一定の条件を満たせば土地を国に引き渡せる制度です。

昨今、土地を相続したものの手放したいと考える人が増えてきました。これが相続した際、相続登記をしないで放置される所有者不明の土地が発生する原因の一つとなっています。所有者不明の土地を解消するため、20244月から相続登記が義務化されることにあわせて、相続土地国庫帰属制度が創設されました。

相続土地国庫帰属制度が利用できない土地とは?

相続土地国庫帰属制度では、すべての土地を国に引き渡せるわけではありません。

次のいずれかに該当する土地は、国庫帰属の申請自体が認められず、申請の段階で却下されます。

  • 建物が立っている土地
  • 担保権や借地権などの使用収益権が設定されている土地
  • 他人の利用が予定されている土地
  • 特定の有害物質で土壌汚染されている土地
  • 境界線が明らかでない土地
  • 所有権の存否や範囲について争いがある土地

つまり、空き家は、取り壊して更地にしなければ、本制度が利用できません。

以下のいずれかに該当する土地は不承認事由に該当するため、申請しても不承認となる可能性があります。

  • 管理に費用や労力がかかる土地
  • 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
  • 土地の管理・処分のために除去しなければならない有体物が地下にある土地
  • 隣接する土地の所有者と争わなければ管理・処分ができない土地など

費用はどのぐらいかかるのか?

相続土地国庫帰属制度を申請する際に、1筆あたり14,000円の審査手数料を納付しなければなりません。1筆とは登記上の土地の個数で、具体的には登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されている地番を1筆とします。

法務局で審査が承認されたら、所定の負担金を納付します。負担金の額は原則として1筆ごとに20万円であり、土地の種目や所在地、面積に応じて算定されます。

手続きはどのようにすればよいか?

手続きを進める前に、該当の土地が存在する都道府県の法務局・地方法務局の本局へ相談しましょう。

その際には、相続土地国庫帰属相談票、相談したい土地の状況について記載したチェックシート、登記事項証明書(登記簿謄本)や地積測量図、土地の現況が分かる写真などの資料の提出が必要です。

申請書類が揃ったら、法務局・地方法務局の本局へ提出します。

申請に必要な書類は、以下のとおりです。

  • 承認申請書
  • 承認申請にかかる土地の位置及び範囲を明らかにする図面
  • 承認申請にかかる土地及び当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
  • 承認申請にかかる土地の形状を明らかにする写真
  • 申請者の印鑑証明書
  • その他任意の書類

申請した土地に関して国が引き取れると承認されたら、負担金を納付します。

帰属承認の通知と一緒に負担金納付の通知が送られるので、通知が到達してから30日以内に納付する必要があります。これを過ぎると国庫帰属承認の効力が失効しますので、注意しましょう。

相続放棄した空き家について、弁護士に相談・依頼するメリットは?

ここでは、相続放棄をした空き家について弁護士に相談・依頼するメリットについて説明します。

相続放棄をするかどうか、適切なアドバイスをしてくれる

住まない家だからといって安易に相続放棄をすることは、管理・保存責任の観点からもおすすめできません。弁護士に相談すれば、相続放棄をしたほうがいいのかどうか、ベストな判断を提案できます。

相続放棄を決めた場合、手続きを任せられる

相続した空き家をどのように扱うか方針が決まったあとの手続きは、複雑なものが多いです。相続放棄にせよ、建物を取り壊して相続土地国庫帰属制度の利用をするにせよ、申請手続きには時間と手間がかかります。

弁護士に依頼すれば、こうした手続きをすべて任せられるので安心です。

 

相続問題は弁護士への依頼でトラブルなくスピーディーに解決できます。

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まとめ

相続財産の中に実家の空き家が含まれていて、どのように対応すればよいのか困っている方もいらっしゃるでしょう。近所に迷惑をかけない程度に管理するとなるとそれなりの費用がかかることもあります。

相続放棄をしたほうがいいのではと考えたら、なるべく早めに弁護士にご相談ください。

この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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