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家族信託手続きは自分でできる?必要な手続きやリスクを解説

家族信託の手続きを「費用をかけずに自分でやってみたい」「自分で手続きする方法を知りたい」とのニーズもあるようです。しかし、専門家に頼らず、家族信託をご自身で手続きすると、負担が大きく難易度も高くなります。

この記事では、、ご自身で家族信託の手続きをする際に必要な手順や注意点をお伝えした上で、他の制度との比較や弁護士に依頼するメリットについて解説します。

家族信託手続きは自分でできる?   

以下で説明する手続きの方法や流れを確認し、「自分でできそうにない」と思ったら、専門家への相談を検討してください。

家族信託を利用する際に必要な手続き

①家族信託の目的・信託の内容・信託する財産を決める

委託者の希望に応じて主に次の項目を決めます。

  • 信託の目的
  • 信託の当事者(委託者、受託者、受益者)
  • 信託する財産
  • 信託財産の管理方法や運用方法
  • 信託期間
  • 残余財産の帰属先

トラブルを避けるため、信託契約の当事者を含めた家族全員で話し合いをすることをおすすめします。委託者の希望や想いを直接伝え、家族全員に理解を得られるのが理想です。

②信託契約書を作成する

信託の内容が決まったら信託契約書を作成します。

契約書は最低限記載すべき項目のほか、信託の目的に合わせた項目があります。<最低限記載すべき項目>

信託契約書に最低限記載すべき事項はつぎのとおりです。

  • 契約の趣旨:信託契約であることを明らかにする
  • 信託の目的:信託によってどういうことを目指すのかなどを記載。信託の目的は信託の終了事由とも関連
  • 委託者、受託者、受益者:誰が信託契約の当事者になるのかを記載
  • 信託財産:信託財産に組み込まれる財産を明示

<任意項目>

信託契約において定めがある場合に記載する事項は次のとおりです。

  • 信託財産の管理・運用方法
  • 信託の終了時期
  • 信託報酬に関する事項
  • 受益者代理人に関する事項
  • 受益権の移転に関する事項
  • 第二次受益者の指定
  • 信託終了時の残余財産の帰属先

信託の目的は各人各様であり、契約書も1つとして同じものがないと言っても過言ではありません。契約書の作成にひな型を用いる場合は、具体的な肉付け作業が不可欠です。

③信託契約書を公正証書にする

信託契約書を作成したら、公証人役場で公正証書にします。公正証書化することは必須ではありません。しかし、契約書の紛失・滅失のほか当事者が契約の事実自体を否定した場合、私文書では契約の存在を示す証拠として不十分な場合があります。

公正証書は、公証人が当事者の本人確認や意思確認を経て作成され、原本を公証役場で保管します。契約書の有効性を担保するため、公正証書にすることを推奨します。

公正証書作成に必要な書類は次のとおりです。

【必要書類】

  • 当事者の本人確認書類

例:運転免許証、マイナンバーカード(有効期限内のもの)

  • 当事者の実印、印鑑証明書(3カ月以内のもの)
  • 当事者の戸籍謄本
  • 信託財産の内訳がわかるもの

④信託財産の名義変更をする

信託契約の締結後、信託財産の名義変更が必要です。信託財産が、委託者の名義のままでは、受託者が管理できません。名義変更を要する信託財産の代表例は、次のとおりです。

  • 不動産
  • 自動車
  • 船舶
  • 知的財産

以下、不動産と自動車の名義変更の手続きを説明します。

  • 不動産

不動産を信託する場合、次の2つの登記の申請が必要です。

  1. 委託者から受託者への所有権移転登記
  2. 信託登記。

登記の種類の詳細は後ほど詳述します。登記申請に必要な書類は次のとおりです。

【必要書類】

  • 委託者・受託者の実印、印鑑証明書
  • 受託者の認め印・住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 権利証(登記識別情報通知書)

登記手続きは司法書士に依頼するのが一般的です。ご自身で手続きされる場合は、法務局に相談窓口があるので、事前に相談すると良いでしょう。

登記が完了したら、火災保険の名義変更も忘れないようにしましょう。

  • 自動車

自動車を信託した場合は、管轄区域の陸運局で名義変更と同時に信託登録を申請します。名義変更の申請には登録名義人の協力が必要ですが、信託登録の申請は受託者が単独でできます。

信託登録の申請書には次の事項を記載します。

  • 委託者、受託者及び受益者の氏名又は名称及び住所
  • 信託の目的
  • 信託財産の管理方法
  • 信託の終了の事由
  • その他信託に関する事項

この場合、必要書類は以下のようになります。

  • 信託契約書
  • 印鑑登録証明書
  • (代理人による申請の場合)委任状

⑤信託財産の管理口座を開設する

信託財産を管理するための口座(信託口口座)を開設します。信託口座の開設に対応していない金融機関もあるので、対応している金融機関を探します。

口座開設の手続きは受託者が単独で行えます。手続きに必要な書類は次のとおりです。

【必要書類】

  • 信託契約公正証書の正本(コピー後返却)
  • 受託者の印鑑(認め印可)
  • 受託者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード)
  • その他金融機関が指定する書類

手続きを完了すると、受託者名義(委託者○○受託者△△信託口)の通帳やキャッシュカードが受託者に発行されます。発行は当日~数日程度です。

口座開設後、委託者が自身の金銭を信託口口座に入金することで、受託者による管理が開始します。

家族信託において必要な不動産の登記手続きとは?

所有権移転登記

信託した不動産の名義変更は不動産を管轄する法務局に申請します。委託者を登記義務者、受託者を登記権利者として共同申請します。

信託登記

所有権移転登記と同時に不動産を信託したことを公示するため信託登記を行います。受託者の固有財産と信託財産を分別して管理するためです。信託登記は受託者が単独で行えます。

登記申請の具体的な方法

先に述べた必要書類のほか、次の書類の準備が必要です。

  1. 登記原因証明情報

登記原因証明情報とは、所有権が移転する原因となった法律行為を証明する書類です。次の方法で準備できます。

  • 必要事項を記載した書面に当事者双方が署名押印して提出
  • 信託契約書を提出する(原本照合後返却)
  1. 信託目録に記載すべき情報

登記申請人が信託目録に記載すべき情報を提供し、それをもとに、登記官が信託目録を作成します。信託目録により、登記簿上も信託契約の概要が公示されます。

信託目録に記載すべき情報は、CD-RUSB媒体に記録し申請書と共に提出します。

信託の変更・終了時には登記手続きが必要

信託の変更

  1. 受託者の変更

信託期間中に、受託者の死亡等の理由により受託者に変更があった場合は、登記・登録手続が必要となります。ここでは、信託財産が不動産の場合を例に挙げて説明します。

以下に該当する場合、新受託者が単独で登記申請できます。以下に該当しない場合や受託者が複数いる場合は、新・旧受託者が共同で申請します。

  • 受託者の死亡
  • 受託者が後見開始又は保佐開始の審判を受けたこと
  • 受託者が破産手続開始の決定を受けたこと
  • 受託者である法人が合併以外の理由により解散したこと
  • 受託者が裁判所又は主務官庁の解任命令を受けたこと

受託者変更による所有権移転登記を申請すると、登記官の職権で信託の変更登記(信託目録の変更)がなされます。

  1. 信託財産を売却した場合

受託者が信託された不動産を売却した場合、次の登記申請をします。

  • 買主への所有権移転登記:買主と受託者の共同申請
  • 信託登記の抹消登記:受託者の単独申請

信託の終了

清算手続後、信託財産の所有権を帰属権利者に移転します。ここでは、信託財産が不動産の場合を例に挙げて説明します。

設定時と同様に2つの手続きがあります。

  • 所有権移転登記:帰属権利者を登記権利者、受託者を登記義務者として共同申請します。
  • 信託抹消登記:信託抹消登記は受託者が単独申請します。

家族信託手続きを自分でした場合に起こりうる失敗例

自分で作成した信託契約書が無効になった

自分で契約書を作成すると法的に無効な内容となり、以下を例としたトラブルに発展する可能性があります。

  • 実効性を欠き信託の目的に沿った信託事務が遂行できない
  • 家族や親族から信託契約の無効を訴えられる
  • 不動産の信託登記ができない
  • 信託口口座を開設できない

公正証書を作成しなかったため信託口座が開設できなかった

信託口口座の開設前に、金融機関は信託契約書を事前に審査します。専門家が作成した信託契約書でない場合、事前審査を受け付けてくれないこともあります。

また、金融機関は、信託口口座の開設には原則として公正証書の提出を求めます。信託契約書を公正証書にしなかったことで、信託口口座を開設できないことがあります。

想定外の税金が発生してしまった

税務上の注意点を理解していないと、次のとおり、贈与税や所得税の課税が想定外の負担となる場合があります。

贈与税が課税される

自益信託(委託者=受益者)の場合は、事実上財産の移転がありませんので、課税関係は生じません。他方、受益者が委託者以外の者の場合、受益者に課税関係が生じます。信託の設計段階で試算しておかなかったために、想定外の支出を要することもあります。

損益通算ができず所得税が負担となる

また、税務上のルールにより、信託財産から生じた損失は他の所得と損益通算できません。

抵当権付きの不動産を信託したため銀行から一括請求されてしまった

住宅ローン・賃貸ローン契約に基づく抵当権が設定された不動産を信託する場合、原則として金融機関に事前の承諾を得なければいけません。無断で信託・信託登記をすると契約違反となり、ローン残高を一括請求される可能性があります。

失敗しないために~家族信託する前に準備しておくべきこと~

家族信託を安全かつ適切に進めるため、下記の点に留意しましょう。

家族信託と他の制度の比較・併用を検討する

家族信託のほか、財産管理や相続対策として、次の選択肢があります。

  • 遺言
  • 生前贈与
  • 任意後見契約
  • 成年後見制度

各制度の違いや特徴を見てみましょう。

【相続対策】

  家族信託 遺言 生前贈与
内 容 契約により財産の管理・運用・処分権限を委託する 遺言により財産を相続させる 契約により財産を無償で贈与する
財産を委託または取得させる相手 自由に選ぶことができる
財産が移転する時期 信託の終了時 遺言者の死亡時 贈与契約時

【財産管理】

  家族信託 任意後見契約 成年後見制度
内 容 信託契約に基づき、受託者が信託財産の管理・運用・処分を行う 任意後見契約に基づき受任者が財産管理を行う 成年後見人が本人に代わって財産管理・法律行為を行う
制度の利用条件 判断能力あり 判断能力あり 判断能力なし
財産管理の開始時期 契約時 ①委任者が判断能力の低下したとき

②任意後見監督人が選任されたとき

①本人が判断能力を喪失したとき

②成年後見開始の審判の確定

財産を管理する者 自由に選べる 自由に選べる 裁判所が選任する
身上監護権

このように、財産管理や相続対策には、様々な制度があります。家族信託ではできないことを、他の制度との併用で補填できるケースもあります。

家族信託の仕組みを正しく理解する

家族信託を活用するためには、次の点に留意しましょう。

  • 家族信託の仕組みを正しく理解する
  • 生じうるリスクやデメリットを把握する
  • 信託の設計において課税関係を調査する

家族全員で十分に協議する

家族間のトラブルを回避するためには、信託契約の当事者だけでなく、家族全員で信託の内容や進め方を話し合うことが重要です。

委託者の希望や想いを直接伝えることで、家族全員の理解を得るきっかけにもなります。家族の意見やそれぞれが置かれた状況を把握し、皆が納得できる家族信託を検討しましょう。

弁護士に依頼する

家族信託の知識や実務に精通した弁護士に依頼することで、より万全なプランを立てることができます。弁護士に家族信託を依頼した場合のメリットや費用を説明します。

弁護士に依頼するメリット

家族信託を弁護士に依頼すると次のようなメリットがあります。

  1. 手続きにかかる手間や労力を省ける
  2. 目的に沿った契約内容を相談できる
  3. 契約書が無効と判断される心配がない
  4. 相続を見据えた総合的な対策ができる

弁護士に依頼した場合の費用

弁護士に依頼した場合の費用は次のとおりです。

初回相談料:305,500円~

初回相談を無料とする事務所もあります。

コンサルティング料:50万円~200万円程度(信託財産×1%が目安)

コンサルティングには、以下の過程を含むのが一般的です。

  • 家族信託の設計・提案書の作成
  • 関係者への説明と金融機関との交渉
  • 家族信託契約書の作成
  • 公正証書作成

まとめ

以上のとおり、家族信託は煩雑な手続きであり、信託法のほか税務、登記、相続に関する専門知識が必要です。

弁護士へ相談することで、家族信託に対する理解が深まり、家族信託で信託の目的がより明確化されることもあります。財産管理や相続に関するお悩みがある方は、まずは弁護士の無料相談を利用してみてはいかがでしょうか。

当事務所は、相続に関するご相談は無料としております。家族信託を検討している方は、お気軽にご相談ください。

この記事を監修した弁護士

佐藤 塁(東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の佐藤塁と申します。当事務所の特徴は、法的な専門性や経験はもちろんのこと、より基本的に、お客様と弁護士との信頼関係を大事にしていることです。お客様のご依頼に対して、原則2人の弁護士が対応し、最初から最後までその弁護士が責任を持って対応させていただきます。難しい案件でも投げ出しませんし、見捨てません。良い解決ができるよう全力でサポートさせていただきますので、何でもまずはご相談いただけますと幸いです。

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