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家族信託の相談はどこにすればよい?相談先や参考事項を解説

家族信託とはどのような制度なのでしょうか。家族信託について相談したいときには、どこに相談すれば良いでしょうか。

相談相手の家族信託に関する知識や実務経験が不足する場合、家族信託の目的を実現できなかった、他の手続きを選択した方が適切であった、というトラブルが生じることもあります。

この記事では、家族信託の相談先の種類や各専門家の業務の範囲とともに、相談先を検討する場合の参考事項を解説します。

 

家族信託とは

はじめに、家族信託の概要やメリット・デメリットを紹介します。

家族信託の概要

信託は、要約すると、財産を自分以外の人に信じて託すことです。信託契約の当事者は、次のとおり、委託者・受託者・受益者の3人となりますが、委託者が受益者を兼ねる場合は当事者が2人になります。

  • 委託者:財産を託す人
  • 受託者:財産を託される人
  • 受益者:託された財産から利益を得る人

民事信託と商事信託

信託には、次のとおり、大きく分けて民事信託と商事信託があります。

商事信託

商事信託は、受託者が信託報酬を得るために業として行う信託(営利信託)で、信託銀行や信託会社が行うものです。

民事信託

民事信託は、商事信託とは異なり、原則、受託者が信託報酬を得ないで行う信託(非営利信託)です。民事信託の中で、受託者を家族や親族と定めるケースを、一般に家族信託と呼ぶそうです。

家族信託の仕組み

家族信託は、委託者と受託者との間で信託契約を締結します。受益者は、この契約により信託された財産から生じる利益を受け取ります。委託者が受益者を兼ねる自益信託では、財産の管理だけを第三者(受託者)に委ねる仕組みとなります。

家族信託のメリット・デメリット

家族信託にはどのようなメリット・デメリットがあるでしょうか。家族信託の主なメリット・デメリットを以下にまとめます。

メリット デメリット
①認知症になっても財産が凍結されない

認知症により判断能力を失うと、財産の所有者の意思確認がとれないことが原因で、預貯金口座が凍結されることや、不動産の管理・処分ができなくなることがあります。

家族信託をすると、財産の所有者は受託者となるため、委託者の意思確認は不要となります。したがって、家族信託をした後に委託者が認知症となっても、受託者が財産管理を行うことができます。

①身上監護権がない

家族信託の受託者には身上監護権がありません。委託者が病気になったときや介護が必要なとき、医療・介護に関する契約をすることができません。そのほか、賃貸借契約の締結、施設入所契約、介護サービスの利用に関する法律行為も行えません。

②成年後見制度に比べて制限や負担が少ない

成年後見制度では、後見人は裁判所が選任します。成年後見人は財産の利殖行為(投機により財産を増やすこと)は控えるものとされます。

他方、家族信託は、財産の管理者を自由に選べ、成年後見人ではできない積極的な投資も行えます。また、専門家が成年後見人に就任した場合、毎年、成年後見人の報酬が発生しますが、家族信託では無償で管理を委ねる契約を締結できます。

家族信託は、信託する財産や管理方法、信託する相手を自由に選べます。

②家族信託そのもので節税効果は得られない

信託契約で、以下のスキームを設定することにより、結果的に節税効果を生むことはあります。

(ア)受託者への信託報酬の支払を定めて信託財産を減少させる

(イ)相続を原因として権利が承継されるように設定する

しかし、原則として、家族信託の利用そのものに節税効果は得られません。

 

③不動産の共有によるトラブルを防止できる

相続により不動産が共有状態となると、思いもよらないトラブルが生じることがあります。共有不動産の管理・処分には共有者全員の合意を要します。このため、家族間で紛争がある場合、共有者全員の意見がまとまらず不動産が塩漬けされることがあります。家族信託では、受託者に不動産の管理・運営・処分権限を移譲することで、共有不動産の塩漬けを回避することができます。

③遺留分侵害額請求が認められる可能性がある

家族信託は、生命保険と同様にみなし相続財産となります。したがって、家族信託は遺留分侵害額請求の対象になる可能性があります。

 

④複数の世代に亘って財産の承継先を指定できる

遺言書では、次の世代までしか財産の承継先を指定することができません。他方、家族信託は、財産をまず子に承継し、子が死亡したときは孫に承継する旨を定めることができます。

 

④所得税の損益通算ができない

租税特別措置法の定めにより、信託財産である収益不動産から生じた損失はなかったものとみなされます。したがって、信託財産から生じた損失を他の所得と通算できません。

 

 

家族信託を相談できる専門家の種類と範囲

家族信託を相談できる専門家には、①弁護士、②司法書士、③行政書士、④税理士がいます。各専門家の特徴や相談できる範囲を確認してみましょう。

  弁護士 司法書士 行政書士 税理士
特  徴 ①法律知識が広範囲

②訴訟や交渉を代理できる

③司法書士・行政書士に比べると費用が高い

①相続分野に明るい

②紛争の対応範囲が狭い

③弁護士に比べて費用が安い

①相続分野に明るい

②弁護士に比べて費用が安い

①税務の専門知識がある

②相続税法の知識は税理士によって異なる

相談・依頼

できる範囲

①信託契約書の作成

②関係者や金融機関との折衝

③公正証書の作成(同行)

④信託財産の登記手続

①信託契約書の作成

②信託財産の登記手続

信託契約書の作成のみ ①税務相談

②税務申告書類の作成

上記を踏まえ、各専門家に家族信託を依頼する場合の留意点を見てみましょう。

 

司法書士

家族信託について、司法書士に相談・依頼できるのは、原則として契約書作成と登記手続に留まります。この範囲を超えた法律相談には対応できません。

また、原則として司法書士は訴訟や交渉の代理人になれません。認定司法書士に限り、訴額140万円以下の紛争については、交渉ないし訴訟(簡易裁判所に限る)の代理人になれます。

家族信託の利用を検討するケースでは、財産は高額であることが予想されますので、紛争が生じた場合は、司法書士では対応できない可能性が高くなります。

行政書士

司法書士と同様に、相談できる範囲が限定されます。行政書士は各種書類の作成しか対応できません。また、行政書士は、書類作成の範囲に留まる法律相談しか引き受けることができません。

行政書士は、交渉・訴訟の代理人となれません。また、登記手続きもできません。

税理士

相続続税法が税理士試験の選択科目でもあることから、全ての税理士が相続税に詳しいとは限りません。相続税法に関する知識や実務経験が豊富な税理士であれば、信託の設計段階で課税関係を相談することができるでしょう。また、信託期間中や信託終了時の税務申告等を依頼することも可能でしょう。

弁護士

弁護士は、上記にあげた他の士業が引き受けることができる範囲を全て網羅しています。

業務範囲は書類作成に留まらず、個別具体的な相談が可能です。また信託法だけではなく相続の関連法を熟知しているので、目的に沿った家族信託の設計のほか、他の手続きとの併用を含めた総合的な対策が可能です。紛争が生じた場合も交渉や訴訟を代理することができますので、安心して任せることができるでしょう。

もちろん、弁護士にもそれぞれ専門分野がありますので、全ての弁護士が家族信託の知識や経験が豊富とは限りません。弁護士に依頼する場合は、家族信託の知識に精通した弁護士を選びましょう。

銀行が取り扱う家族信託系サービスとは

信託銀行が取り扱う信託商品や信託サービスは、商事信託の一つです。家族信託との違いを見てみましょう。

銀行が受託者になる

家族信託では家族が受託者となるのに対し、銀行の信託商品やサービスでは、銀行が受託者となるのが一般的です。家族信託との大きな違いは、管理手数料がかかる点にあります。

不動産は財産管理の対象にできない

銀行の信託サービスの範囲は金融取引に限定されます。家族信託と異なり、不動産を財産管理の対象にできません。

家族信託に関する専門知識をもっている人が少ない

銀行の信託商品は、銀行が受託者となる場合が基本ですが、家族が受託者となる家族信託をサポートするサービスもあります。この際、信託の目的に応じて信託契約の内容を検討する必要があります。ところが、銀行の信託商品は商事信託であり、銀行が業として家族信託(民事信託)に関与することはありません。そのため銀行には家族信託に関する専門知識をもっている人が少ないでしょう。

専門家以外への相談

専門家(士業)以外に家族信託の相談を行う際の注意点を述べます。

専門家以外にも家族信託の相談は可能?

家族信託は、受託者が業として信託を受託するものでなければ、信託業の免許や登録は不要です。近年は、民間の不動産会社や資産運用コンサルティング会社を始めとした民間業者が家族信託のコンサルティング業務に参入しています。

家族信託相談窓口とは?

インターネットで家族信託に関する記事を検索すると、家族信託相談窓口のワードが目に入ります。家族信託相談窓口とは、どういうものでしょうか。

家族信託は、民事信託のうち、当事者を家族や親族とするものの呼称であることは先述したところ、この家族信託は、一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。

同協会では、民間資格(家族信託専門士および家族信託コーディネーター)を創設しています。家族信託相談窓口として表示されたホームページが多く見られますが、その中には、同協会の研修や登録を経た家族信託専門士やコーディネーター(及びその組織)が多く見受けられます。

また、一般社団法人日本会計コンサルタント協会が創設した信託活用アドバイザー(民間資格)も家族信託相談窓口の呼称を利用しているようです。

これらの民間資格を取得した方の中には、専門家(士業)もいますが、家族信託相談窓口たる公的機関が存在するものではないことを知っておきましょう。

専門家以外に家族信託の相談をするときの注意点

このように民間で家族信託のコンサルティング業務を取り扱っているところも多くあります。ここで、専門家以外に家族信託を相談する際の注意点(デメリット)を確認してみましょう。

法律の知識や実務経験が乏しい

国家資格以外の民間資格のコンサルタントは、法律の知識を有しているわけではありません。また、国家資格と異なり、民間資格はその資格自体に法的な裏付けがありません。

万一、トラブルが生じた場合に「(民間資格)コンサルタントの助言に従った」と述べても法的な意味を持ちません。民間のコンサルティングを利用するときは、その点を踏まえて相談しましょう。

他の手続きを含めた総合的な相談ができない

家族信託は万能ではないため、家族信託ではできないこともあります。また、信託を設計するためには、家族信託の実務知識のほか、成年後見実務、民法・信託法・会社法・不動産登記法・各種税法の法律知識を要します。手続きの併用や他の選択肢を検討する必要が生じていたとしても、民間の資格者では個別具体的な相談に応じることができないでしょう。

自称コンサルタントに注意

聞いたことがない民間資格を名乗る人への相談は慎重に検討してください。実際には民間資格を有していない場合や、コンサルタント料名目で高額な報酬を請求される場合もありますので、注意しましょう。

まとめ

以上、家族信託の相談先をご紹介しました。専門家に依頼すると安心ではあるが費用がかかると不安をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

専門家に依頼すると費用がかかりますが、その分得られるメリットも多くあります。家族信託の利用を検討する際は、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

この記事を監修した弁護士

佐藤 塁(東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の佐藤塁と申します。当事務所の特徴は、法的な専門性や経験はもちろんのこと、より基本的に、お客様と弁護士との信頼関係を大事にしていることです。お客様のご依頼に対して、原則2人の弁護士が対応し、最初から最後までその弁護士が責任を持って対応させていただきます。難しい案件でも投げ出しませんし、見捨てません。良い解決ができるよう全力でサポートさせていただきますので、何でもまずはご相談いただけますと幸いです。

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