遺産分割協議証明書とは何か?作成するメリット・デメリットを解説

相続が発生し、亡くなった人(以下、被相続人)の財産をどのように分けるか話し合いをしますが、通常は、その合意内容を遺産分割協議書に記し、相続人全員が署名・押印(実印)をします。
遺産分割協議書のほかに、遺産分割協議で決まった内容を証明する文書には、遺産分割協議証明書があります。
この記事では、遺産分割協議証明書とは何か、遺産分割協議書との違いや作成するメリットとデメリット、書式例について解説します。
目次
遺産分割協議証明書とは何か?
遺産分割協議証明書とは、相続人全員が遺産分割協議で話し合って合意した内容を証明する書面です。
遺産分割協議書は同じ用紙に相続人全員が署名・押印しなければいけませんが、遺産分割協議証明書は、相続人ごとに1通ずつ作成し、署名・押印します。
そのため、相続人全員分の遺産分割協議証明書が揃ってはじめて遺産分割協議書と同じ役割を果たします。
遺産分割協議証明書を作成するメリットは?
遺産分割協議証明書を作成するメリットは、主に以下で挙げる3点です。
相続人が多い場合や遠方に住んでいる場合でも対応しやすい
相続人が多い場合や遠方に住んでいる場合、遺産分割協議証明書であれば、各相続人で対応できるのがメリットです。
遺産分割協議書は相続人全員の署名・押印を一つにまとめなければならず、相続人全員が署名・押印できるように順番に郵送しなければいけません。この方法だと相続人が多いと時間がかなりますし、なかなか返送してくれない相続人がいた場合、処理が滞ってしまいます。
遺産分割協議証明書は、相続人がそれぞれ署名・押印するため、遠方に住んでいる人への対応も比較的楽にできます。
紛失・毀損による手続きの停滞を避けられる
遺産分割協議証明書を作成すれば、紛失・毀損による手続きの停滞が避けられます。
遺産分割協議書は相続人全員が署名・押印しなければならないので、万が一途中で紛失してしまったら最初から作成しなおさなければいけません。
遺産分割協議証明書はこうしたリスクがなく、紛失した場合はその相続人のみ書類を作成しなおせば足ります。
遺産分割協議証明書を作成するデメリットは?
遺産分割協議証明書で対応するにあたり、デメリットもいくつかあります。
以下で挙げる3点について解説します。
相続人同士の協議がしっかり行われない可能性がある
遺産分割協議証明書で対応するにあたり、相続人同士の協議がしっかり行われない可能性があります。
遺産分割協議証明書は、遺産分割協議書と同様に遺産分割協議をした結果を記すものではありますが、各相続人の捉え方の違いで、合意できていないにも関わらず合意できたかのように作成されてしまう可能性があります。
相続人同士が日頃から頻繁にやり取りをしているのであればこうした齟齬は生まれにくいですが、疎遠な人であれば気を付けて対応したほうがよいです。
全員分そろわなければ相続の手続きが進められない
遺産分割協議証明書が全員分そろわなければ、相続手続を進められません。
遺産分割協議証明書を取りまとめる人は、いつまでに返送してほしいと期日を設けて依頼しましょう。
偽造されるおそれがある
遺産分割協議証明書は、個別に作成できる手軽さがある反面、偽造されるおそれがあります。
合意できていない虚偽のある内容がないか、すみずみまで確認をしたほうがよいです。
遺産分割協議証明書を受け取ったらすべきことは?
遺産分割協議証明書を相続人の一人が代表して作成し、それを受け取った場合、内容に間違いがないかしっかり確認をしましょう。
合意した覚えがない内容の記載がある場合、作成した相続人に連絡を取り、真偽のほどを確認しなければいけません。こうした確認を怠って署名・押印したあとで、合意した覚えのない記載があったとしても反論できない場合があります。
遺産分割協議証明書の書式例を紹介
遺産分割協議証明書は、どのような書式で作成されるのか、書式例を紹介します。
相続人全員の取得財産を記載するケース
相続人全員の取得財産を記載して遺産分割協議証明書を作成する場合の書式例は、以下のとおりです。
この書式であれば、誰がどの財産を受け取ったのか、すべての相続人が把握できるのが良い点です。
遺産分割協議証明書 被相続人 〇〇〇〇(〇〇〇〇年〇〇月〇〇日生) 死亡日 2024年〇月〇日 本籍地 〇〇県〇〇市〇〇 〇〇丁目〇番 最後の住所地 〇〇県〇〇市〇〇 〇〇丁目〇番地〇 被相続人〇〇〇〇(以下、被相続人)の遺産相続について、共同相続人である妻〇〇〇〇(以下、甲)と被相続人の長女〇〇〇〇(以下、乙)、被相続人の長男〇〇〇〇(以下、丙)が遺産分割協議を行い、下記のとおり協議が成立したことを証明する。 1.甲は以下の遺産を取得する。 (1)土地 所 在 〇〇県〇〇市〇〇丁目 地 番 〇番〇号 地 目 宅地 地 積 〇〇〇. 〇〇㎡ (2)建物 所 在 〇〇県〇〇市〇〇丁目 家屋番号 〇番〇 種 類 居宅 構 造 鉄筋コンクリート造陸屋根2階建 床 面 積 1階 〇〇.〇〇㎡ 2階 〇〇.〇〇㎡ 2.乙は、以下の遺産を取得する。 (1)預貯金 ××銀行××支店 普通預金 口座番号××××××× 口座名義人 〇〇〇〇 3.丙は、以下の遺産を取得する。 (1)有価証券等 ××証券××支店 口座番号××××××× 保護預かりの以下の有価証券等 〇〇株式会社 株式〇〇株 4.本遺産分割協議証明書に記載のない遺産や遺産分割後に判明した遺産(負債を含む)については、甲がすべて相続する。 〇〇〇〇年〇月〇日 住所 〇〇県〇〇市〇〇丁目〇番地〇 生年月日 〇〇〇〇年〇月〇日 相続人甲(妻) 〇〇〇〇 ㊞ |
各相続人が取得する財産のみを記載するケース
各相続人が取得する財産のみを記載する場合の書式例は、以下のとおりです。
シンプルで分かりやすいですが、他の相続人が何を相続したのか、確認できないのは少し不便に感じるかもしれません。
遺産分割協議証明書 被相続人 〇〇〇〇(〇〇〇〇年〇〇月〇〇日生) 死亡日 2024年〇月〇日 本籍地 〇〇県〇〇市〇〇 〇〇丁目〇番 最後の住所地 〇〇県〇〇市〇〇 〇〇丁目〇番地〇 被相続人〇〇〇〇(以下、被相続人)の遺産相続について、共同相続人である妻〇〇〇〇(以下、甲)と被相続人の長女〇〇〇〇(以下、乙)、被相続人の長男〇〇〇〇(以下、丙)が遺産分割協議を行い、下記のとおり協議が成立したことを証明する。 1.甲は以下の遺産を取得する。 (1)土地 所 在 〇〇県〇〇市〇〇丁目 地 番 〇番〇号 地 目 宅地 地 積 〇〇〇. 〇〇㎡ (2)建物 所 在 〇〇県〇〇市〇〇丁目 家屋番号 〇番〇 種 類 居宅 構 造 鉄筋コンクリート造陸屋根2階建 床面積 1階 〇〇.〇〇㎡ 2階 〇〇.〇〇㎡ 2.本遺産分割協議証明書に記載のない遺産や遺産分割後に判明した遺産(負債を含む)については、甲がすべて相続する。 〇〇〇〇年〇月〇日 住所 〇〇県〇〇市〇〇丁目〇番地〇 生年月日 〇〇〇〇年〇月〇日 相続人甲(妻) 〇〇〇〇 ㊞
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まとめ
相続が発生すると、被相続人の財産をどのように分けるか、相続人が全員で話し合って対応しなければいけません。
相続内容に合意ができても、相続人同士が近くに住んでいない場合、書類のやり取りに思っている以上に手間や時間がかかります。遺産分割協議書をそれぞれの相続人に署名・押印してもらうのは、意外に大変だと経験した人なら分かると思います。
そのようなときに遺産分割協議証明書は有効な手段となりますが、デメリットがある点も考慮して、どちらの方法で対応するか、相続人全員で話し合いましょう。
ネクスパート法律事務所には、相続全般に精通した弁護士が在籍しています。遺産分割協議書や遺産分割協議証明書の作成にお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。協議書や証明書の作成は、弁護士にもご依頼いただけます。
初回の相談が30分無料になる場合もありますので、お気軽にお問合せください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。