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遺言能力はどう判断するか?4つの判断基準について解説

遺言者が自分の思いどおりに遺言を残すのは大切なことです。

そのためには、遺言の内容を理解し、遺言によってどのような結果になるか理解できる能力が必要です。これを遺言能力といいます。

今回の記事では、遺言能力の有無を判断する2つの観点と4つの考慮要素について解説します。

遺言能力の有無を判断する2つの観点

遺言能力の有無はどのように判断されるのか、2つの観点について解説します。

15歳以上であること

民法では、15歳に達した者は遺言をすることができると定められています。

15歳以上であれば、遺言の内容を理解し、遺言によってどのような結果になるか理解ができる年齢だと考えられているからです。

15歳に達すれば、未成年者であっても、意思能力さえあれば、遺言ができます。

なお、遺言能力は未成年者等の財産法上の行為能力と異なり、親であっても子が行った遺言を取り消せませんし、遺言は本人がするものなので、代理で行えません。

意思能力があること

遺言能力が認められるには、意思能力があることが必要です。

ここでいう意思能力とは、遺言の内容を理解し、遺言の結果を弁識し得るに足る能力(内心の意思を有効に表示する能力)です。行為の結果について十分な判断能力がない人、例えば泥酔している人、重い精神疾患がある人、重度の認知症の人は意思能力者として遺言能力がないとされる確率が高いでしょう。

遺言能力の有無の判断の際の考慮要素は何か?

遺言能力(意思能力)があるかどうかが争われた裁判例では、次に述べる4つの要素を総合的に考慮して、遺言能力(意思能力)の有無を判断することが多いです。

  • 精神上の障がいの有無、内容、程度
  • 遺言書作成に至る経緯
  • 遺言書作成前後の状況
  • 遺言書の内容

精神上の障がいの有無、内容、程度

遺言能力の有無の判断の際に考慮される要素の一つは、精神上の障がいの有無や内容、程度です。

一般的に精神疾患がある人、認知症の人は意思能力がないと考えられていますが、絶対に遺言書の作成ができないわけではありません。

例えば、お金の計算ができず一人で買い物ができない成年被後見人であっても、意思能力を一時的に回復した場合、医師2名が立ち合いにより遺言ができます。被保佐人や被補助人に関しては、単独で遺言書の作成ができ医師の立ち合いも不要です。

このように精神上の障がいがあっても、内容や程度によって遺言書の作成ができる場合があります。

遺言書作成に至る経緯

遺言書の作成をするに至った経緯も遺言能力の有無を判断する際の要素の一つです。

遺言書は、遺言者の自発的な意思に基づいて作成されなければいけません。誰かが強制的に遺言書を作成させたり、第三者が主体的に関与していたりするなど、遺言者の自発的な意思に基づいて作成されたものではないことを窺わせる事情がある場合などは、遺言能力が否定される可能性があります。

遺言者が自発的に遺言書を作成したか否かは、作成に至った経緯遺言書の内容に整合性があるかどうかで判断されます。

例えば、軽度の認知症を患う遺言者が、遺言書を作成したとします。遺言者には配偶者がいますが、子どもはいません。直系尊属の両親や祖父母はすでに亡くなっているので、法定相続人は配偶者と兄弟姉妹ですが、長年兄弟姉妹とは仲が悪く、折に触れて全財産を配偶者に残したいと周囲に伝えていました。このような状況下であれば、遺言者が全財産を配偶者に譲ると記すのはごく自然なことでしょう。

遺言書を作成する動機遺言内容が、遺言者と相続人との関係などから合理的であり、意思形成過程が自然で無理がないと判断されれば、遺言能力があったと判断される可能性が高くなります。

遺言書作成前後の状況

遺言書を作成する前後の状況も遺言能力の有無を判断する要素の一つとされます。

例えば、脳梗塞を発症して入院した直後に遺言者が遺言書を作成した場合、入院時の生活状況や病状、言動等や遺言書作成時の状況等が遺言能力の有無を判断する事情となることがあります。

意味の分からない言動をしていないか、異常な行動はなかったか、担当した医師や看護師からの聞き取りが必要となります。

遺言書の内容

遺言書の内容が簡潔か複雑かという点も遺言能力の有無を判断する際の要素の一つとなります。

一概には言えませんが、意思能力が低下している場合でも配偶者に全財産を譲るという単純な内容であれば、遺言能力が肯定されやすく、逆に複雑な内容であれば、高い意思能力が求められるので遺言能力が否定される傾向にあります。

見ず知らずの人に全財産を譲る、複数の相続人に複数の財産を譲るなど、遺言書の内容があまりにも突飛で複雑な場合は、遺言能力を疑う要素となり得るでしょう。

遺言能力に不安がある場合の対処法

遺言書を作成したいけれど、遺言能力があるかどうか不安な場合、本人や家族にできることは次にあげる2つです。

医師の診察を受け、長谷川式の認知症検査を受ける

遺言書を作成する前に、認知症の疑いがないかどうか認知症専門医の診察を受けましょう。一般的に精神科、神経内科、脳神経外科を受診すれば、認知症専門医がいるといわれています。認知症学会のホームページで専門医の一覧を掲載していますので事前に調べておくのがよいでしょう。かかりつけ医がいるなら認知症が心配だと相談して、紹介状を書いてもらうのもいいかもしれません。

認知機能の低下を診断する長谷川式の認知症検査は、医療保険を使って受けられます。専門医を受診する際に積極的に活用しましょう。

医師から診断書をもらう

認知症専門医を受診したら、医師から診断書をもらいましょう。カルテも遺言能力有無の判断材料となりますが、診断書をもらったほうがより安心です。

遺言能力の存否に関する判例を紹介

過去の裁判例で、遺言能力の存否について判断したものがあります。遺言能力が否定された判例と肯定された判例について紹介します。

遺言能力が否定された判例

85歳の遺言者が公正証書遺言を作成したものの、認知症を理由に遺言能力を欠いていたと判断され、遺言書が無効になった判例があります。(横浜地判平成18915日)

遺言者が遺言書を作成した当時、日常的に記憶障害があったこと、遺言書を作成する5か月前に実施した長谷川式の認知症検査の評価が9点だったこと(20点以下で認知症の疑いがあると判断される)、遺言内容が複数の不動産を複数の相続人に分けるなど、複雑なものだったことを鑑み、遺言書は無効だと判断されました。

遺言能力を肯定した判例

公正証書遺言を作成した当時の遺言能力の有無を判断した裁判例で、遺言能力を認めたものがあります。(大阪高判平成2169日)

全財産を長男に相続させるといったシンプルな内容であったこと、弁護士が関与して遺言書を作成していること、遺言書作成に至るまでの経緯や遺言者の行動に異常な点がないこと、公証人や弁護士も異常な点を認めていないことから遺言能力が認められました。

遺言能力に不安があれば、弁護士に相談を

物忘れがひどくなったなど、遺言書を作成したいけれど遺言能力に不安があれば、ぜひ弁護士に相談しましょう。弁護士であれば、遺言書作成のサポートができますし、作成した遺言書を無効にしないために何ができるかアドバイスが可能です。

亡くなった方が認知症だったにもかかわらず、複雑な内容の遺言書を遺しているなど、遺言書の内容に疑義がある場合も弁護士に相談してください。弁護士であれば遺言書の無効が認められるかどうかの見通しが立てられ、場合によっては訴訟を提起し代理人として対応が可能です。

 

相続問題は弁護士への依頼でトラブルなくスピーディーに解決できます。

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まとめ

遺言能力の有無は、確実に財産を相続人に譲るために重要なポイントです。高齢になり認知機能に自信がなくなってきたけれど、遺言書を作成したいと考えるなら弁護士に相談をしてください。認知症になってしまったら遺言書が残せないわけではないので、それぞれに適した方法をアドバイスいたします。

できれば若いうちに遺言書の作成をおすすめします。遺言書の書き直しは何度でもできるので、人生の節目を迎えたら遺言書の作成を検討してみてください。

ネクスパート法律事務所では、遺言書の作成を承っています。公正証書遺言書の作成や遺言書案の作成や手続き説明など、丁寧に分かりやすくアドバイスをしています。初回30分は無料で相談可能ですので、一度お問合せください。

この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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