遺言書は何歳から作成できる?タイミングや若いうちにするメリットを解説

遺言書の作成は高齢者が行うものとイメージしがちですが、遺言書は何歳から作成できるのでしょうか?
この記事では、遺言書が作成できる年齢と作成するタイミングや、若いうちに行うメリットについて解説します。
目次
遺言書は何歳から作成できるのか?
遺言書は、民法961条で定められているとおり、満15歳以上で遺言能力さえあれば誰でも作成できます。年齢の上限はありません。
遺言能力とは、自分のする遺言の内容およびその結果生じる法律効果を理解・判断できる能力です。
満15歳以上でも、重度の認知症や精神疾患等により、行為の結果について十分な判断能力がない方は、遺言能力がないとされる確率が高いでしょう。
遺言書を作成するタイミングは?
遺言書を作成するタイミングは人それぞれですが、おすすめしたいタイミングをピックアップします。
仕事を始めたとき
社会人となって仕事を始めたら、遺言書の作成を検討してみてもいいかもしれません。
家族と言えど、あなたの財産を全て把握しているとは限りません。遺言で財産を具体的に記載しておけば、万一のときに、相続手続きに漏れがないように備えられます。
独立して自分の力で財産を築くタイミングで、遺言書の作成を検討してみても良いでしょう。
結婚をしたとき
結婚は人生において大きな節目で、結婚によって法定相続人の構成が変わります。
未婚で子どもがおらず、自身の父母が存命であれば法定相続人は父母ですが、結婚すれば配偶者は常に相続人となります。
配偶者以外の人は、以下の順で配偶者と一緒に法定相続人になります。
- 直系尊属(子ども、孫など)
- 直系尊属(父母、祖父母など)
- 兄弟姉妹
配偶者と父母・兄弟姉妹の関係があまりよくない場合はもちろんのこと、トラブルがなくても万が一のことがあった場合に備えて遺言書を作成すると安心です。
子どもができたとき
子どもができたら、法定相続人の構成が変わるので、遺言書の作成を考える良きタイミングです。
子どもが生まれると、配偶者と子どもが法定相続人になります。
仮に、ご自身が亡くなったときに子どもが未成年だった場合、遺産分割協議に先立ち、未成年の子どもの特別代理人を選任しなければなりません。
そのような手続きの負担をかけたくない場合や、配偶者と子どもが相続に関してもめないようにしたいと考えている場合も遺言書作成が有効です。
家を購入するなど財産を手に入れたとき
家を購入するなど、財産を手に入れたときは遺言書作成を考えるタイミングです。
特に不動産は相続人全員で平等に分けるのが難しいため、誰に相続させたいか遺言書で明らかにしておくとよいでしょう。
家を購入後も新たな財産を手に入れるなど、財産変動があれば遺言書の書き換えをおすすめします。相続人同士のトラブルを避けるだけでなく、相続人が財産調査をする手間をはぶくためにも所有財産を明記した遺言書の作成は役に立ちます。
離婚・再婚をしたとき
離婚をすると法定相続人の構成が変わります。
元配偶者は法定相続人から外れますが、子どもがいる場合は変わらず法定相続人となります。
離婚後、再婚して再婚相手の間に子どもができた場合でも、先妻との間にできた子どもの相続権ははく奪されません。この場合、トラブルになる可能性が多いため、誰に何を相続させるか明記した遺言書の作成が有効です。
親戚同士でトラブルが生じたとき
ささいなことをきっかけにして、父母や兄弟姉妹といった親戚同士でトラブルになるケースがあります。
特に子どもがいない夫婦は、配偶者と父母(父母が死亡している場合は祖父母)、父母・祖父母が死亡している場合は兄弟姉妹が法定相続人になるため、配偶者との間で遺産分割に関して揉める場合がります。
配偶者以外に自分の財産を相続させたくないと考えるなら、遺言書の作成が有効です。
退職したとき
仕事を退職したら、遺言書の作成を考えるタイミングです。
定年退職であれば高額な退職金が手に入る人もいるでしょうし、転職に伴う退職であればそれまでの財産状況に変化があるでしょう。
今後の人生を計画的に見据えるためにも遺言書の作成が役に立ちます。
配偶者を亡くしたとき
配偶者を亡くすと法定相続人の構成が変わります。
子どもがいれば法定相続人となりますが、いない場合は父母(父母が死亡している場合は祖父母)が、父母が死亡している場合は兄弟姉妹が法定相続人になります。
すべての財産を配偶者に相続させたいと考えていた人は、配偶者を亡くしたら相続に関する計画の変更を余儀なくされます。
万が一のときに相続人同士がもめないように、遺言書の作成や書き直しをしましょう。
遺言書を若いうちに作成するメリットは?
終活の一環として遺言書作成を考える人が多いと思いますが、遺言書は若いうちに作成すると良いと言われています。その理由について詳しく解説します。
しっかりした判断能力で作成ができる
若いうちに遺言書を作成すれば、しっかりした判断能力で遺言書の作成ができます。
遺言書の作成で問題になるのが遺言能力です。
高齢になって相続に関して心配になり遺言書を作成したいと考えても、重度の認知症等で遺言能力がないことを理由として、遺言書が無効になる可能性があります。
認知症になってしまったら遺言書の作成ができないわけではありませんが、手続きが複雑になります。そうならないために、若いうちに遺言書の作成をおすすめします。
自身の生活や将来について考えるきっかけになる
遺言書を作成すれば、自身のこれまでの生活や将来について考えるきっかけになります。
遺言書=死をイメージし、元気なのにそんなことを考えたくないと思う人もいるでしょうが、必ずしも遺言書は死を意識して書くものではありません。
遺言書を作成し、自分が築いてきた財産を書き出し、想いを具体的に文字にすると新たな発見があるかもしれませんし、改めて自分を支えてくれる人へ感謝の気持ちが沸いてくるでしょう。
遺言書の内容を何度でも見直せる
若いうちに遺言書を作成すれば、内容を何度も見直せます。
遺言書は1回しか書けないわけではありません。新たに財産を手に入れたり、気持ちに変化があったりすれば書き直しができ、自分の意思に沿った最新の遺言書が残せます。
例えば、無事に誕生日を迎えたことに感謝し、その都度遺言書の見直しを恒例行事にするとよいかもしれません。
不測の事態に備えられる
若いからといって万が一のことがないわけではありません。
予期せぬ事故や天災に巻き込まれる可能性に備え、遺言書を作成しておけば、残された家族が安心できます。
遺言書の作成は弁護士に相談しよう
遺言書の作成を考えたら、ぜひ弁護士に相談をしてください。
遺言書は正しく書かなければ、無効になる可能性があります。せっかく書いた遺言書が無効にならないように弁護士に確認をしてもらいましょう。
相続人同士あまり仲が良くない場合、法定相続人の特定の人に財産を渡したくない場合、法定相続人以外の第三者に財産を残したい場合など、特殊な事情を抱えている方は、弁護士に相談しながら遺言書の作成をしたほうがいいかもしれません。
まとめ
遺言書の作成は、残される家族のためにするものですが、今後の人生をどのように生きるか考える良いきっかけを与えてくれます。元気なうちに遺言書を作成し、その後の人生をぜひ有意義なものにしてください。
ネクスパート法律事務所では、遺言書の作成支援等を承っています。初回相談は30分無料となりますので、遺言書について気になる点があれば一度ご相談ください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。