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全財産を一人に相続させたい場合の正しい遺言書の書き方を解説

全財産を一人に相続させたい場合、遺言書の書き方に注意しなければいけません。

誤った書き方をすると相続人同士の争いのもとになりますし、遺言書自体が無効になる可能性もあります。

この記事ではこうした事態を避けるため、正しい遺言書の書き方について解説します。

全財産を一人に相続させたい場合の遺言書の文例

全財産を一人に相続させたい場合、遺産の内容を具体的に記載しない場合と、不動産や預貯金等の金融資産などの主要な財産を個別具体的に記載して、それらの財産を含む全部を相続させる旨記載する場合とがあります。

前者のシンプルな文例と後者の文例に加え、付言事項を記載する場合の3つの遺言書の文例を以下で紹介します。

シンプルな文例

全財産を特定の一人に相続させたい場合の最もシンプルな文例は、以下のとおりです。

遺言書

遺言者〇〇〇〇は、本遺言書により次のとおり遺言する。

1条 遺言者が持つすべての財産を、妻である△△(〇〇〇〇年〇月〇日生)に相続させる。

〇〇〇〇年〇月〇日

(遺言者の住所)

(遺言者の氏名)印

次のような場合には、このような簡潔な記載方法が有用と考えられることがあります。

  • 受益相続人が遺産の内容を熟知していて遺産の内容がさほど複雑ではない場合
  • 遺言者の死期が迫っていて遺産の内容を調査・確認する時間的余裕がない場合

一部の財産を明記する文例

財産の一部を遺言書に明記する文例は、以下のとおりです。

遺言書

遺言者〇〇〇〇は、本遺言書により次のとおり遺言する。

1条 遺言者は、以下の不動産および預貯金を含む、遺言者が有するすべての財産を、妻である△△(〇〇〇〇年〇月〇日生)に相続させる。

1 土地

所在 東京都〇〇区〇〇1丁目

地番 2

地目 宅地

地積 100.00平方メートル

2 建物

所在 東京都〇〇区〇〇1丁目2番地

家屋番号 3

種類 居宅

構造 木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建

床面積 150.00平方メートル

    230.00平方メートル

3 預貯金

■■銀行 △支店 普通預金 口座番号2223333

 

〇〇〇〇年〇月〇日

(遺言者の住所)

(遺言者の氏名)印

不動産や預貯金等の金融資産など、主要な財産を個別具体的に記載すれば、当該財産が遺言の内容に含まれていることが明確になるため、相続登記や預貯金等の払い戻し・名義変更の手続きがスムーズです。

相続人が遺産の内容を熟知していない場合には、財産を個別具体的に記載することで、相続手続きに漏れがないようにできます。

付言事項を記載する文例

遺言者の思いや気持ちを伝える為に追加する条項(付言事項)を記載した文例は、以下のとおりです。

遺言書

遺言者〇〇〇〇は、本遺言書により次のとおり遺言する。

1条 遺言者が持つすべての財産を、妻である△△(〇〇〇〇年〇月〇日生)に相続させる。

1 土地

所在 東京都〇〇区〇〇1丁目

地番 2

地目 宅地

地積 100.00平方メートル

2 建物

所在 東京都〇〇区〇〇1丁目2番地

家屋番号 3

種類 居宅

構造 木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建

床面積 1 50.00平方メートル

    2 30.00平方メートル

3 預貯金

■■銀行 △支店 普通預金 口座番号2223333

(付言事項)

生涯にわたって支えてくれた妻△△には、本当に感謝しています。出会えて良かったと心から思っています。苦労をかけた時期もありましたが、どんなときも文句を言わず常に明るくふるまってくれた△△は大きな心のよりどころとなりました。これまでの感謝の気持ちを込めて、私に何かあった場合、△△が安心して暮らせるように全財産を△△に相続させたいと思います。長男の□□は、私の気持ちをどうか理解し、異議を述べることなくこれからもお母さんを支えてください。

〇〇〇〇年〇月〇日

(遺言者の住所)

(遺言者の氏名)印

全財産を特定の一人に相続させる場合、遺言書に付言事項を明記するのをおすすめします。

付言事項に法的効力はありませんが、なぜその人に全財産を譲りたいのか、自身の想いを相続人に向けて明確に伝えることで理解が得られる可能性があります。

全財産を一人に相続させたい場合の遺言書の書き方における注意点は?

全財産を一人に相続させたい場合は、以下の点に注意しましょう。

  • 一人に相続させたい理由を明記する
  • 他の相続人に対し、自身の意思を尊重してほしい旨をお願いする
  • 遺言書で全財産を特定する

一人に相続させたい理由を明記する

特定の一人に全財産を相続させた場合、理由を明記しましょう。

相続人が数名いる場合、なぜ一人にすべての財産を渡すのか納得できないと不満を持つ人がいるかもしれません。

付言事項に法的効力はありませんが、自身の想いを相続人に向けて明確に伝えることで理解が得られることもあります。

例えば、配偶者にすべての財産を渡したい場合、献身的に尽くしてくれた配偶者に対しての感謝の気持ちであることや、子どもたちには生前十分な援助をしたので、残った財産は配偶者に渡したい気持ちを率直に述べましょう。

他の相続人に対し、自身の意思を尊重してほしい旨をお願いする

他の相続人に対して、自身の意思を尊重してほしいことや遺言書の内容に異議を唱えないでほしい旨を遺言書に記載しましょう。

決して居丈高に記すのではなく、他の相続人が不快感を覚えることがないように配慮した言葉で、素直な気持ちを遺言書に綴りましょう。

遺言書で全財産を特定する

遺言書には、できるかぎり全財産が特定できるような記載をしておきましょう。

すべての財産を〇〇に相続させると記載すれば有効な遺言書となりますが、相続する人が遺言者の財産をすべて把握しているとは限りません。

遺言者が亡くなったあとに財産調査に手間がかからないように全財産を遺言書に記載するか、財産目録を作成しておきましょう。

全財産を一人に相続させたい場合、弁護士に相談するメリット

遺言書の作成について弁護士に相談すれば、遺言書が無効なリスクを避けられるだけでなく、遺言者の事情に沿ったアドバイスを得られます。

遺言書が無効になるリスクが避けられる

弁護士に相談しながら遺言書を作成すれば、遺言書が無効になるリスクが避けられます。

次のような場合、遺言書が無効となります。

  • 遺言書の作成日と遺言者の署名捺印がない
  • 遺言書の内容を訂正しているが、訂正方法を間違えている
  • 内容が不明確で、無理やり書かされた可能性がある
  • 夫婦共同で遺言書を作成している

遺言書作成日の日付や訂正方法など間違えるはずがないと思っていても、うっかりしてしまうことはあります。せっかく書いた遺言書が無効になってしまうのは大変残念なことです。

こうした事態を避けるために、遺言書の作成にあたり弁護士への依頼を検討しましょう。

遺言者の事情に沿った遺言書の作成をアドバイスできる

弁護士であれば、遺言者の事情に沿った遺言書の作成についてアドバイスできます。

相続人同士もめることなく特定の人に全財産を渡したい人や、特定の人に全財産を渡したいけれど複雑な事情を抱えているため気軽に相談できる人がいない人は、ぜひ弁護士に相談をしてみてください。

まとめ

あなたの大切な財産は、大切な人に譲りたいと考えるのは当然のことです。特定の人に全財産を相続させる場合、他の相続人の気分を害さないように配慮しなければいけません。全財産を一人に相続させる場合において、他に遺留分が認められる相続人がいるときは、他の相続人の遺留分を侵害することとなります。そのため、全財産を相続する一人が遺留分を請求されるリスクがあります。

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この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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