遺産分割協議書を作らない3つのリスク|作らなくてもいいケースとは

遺産分割協議書は、すべてのケースで必ず作成しなければならないものではありません。
相続の手続きには、遺産分割協議書の提出が求められる手続きもありますが、遺産分割協議書が不要な手続きもあります。
この記事では、遺産分割協議書について、以下の点を解説します。
- 遺産分割協議書を作らないリスク
- 遺産分割協議書を作成するメリット
- 遺産分割協議書を作らなくてもいいケース
遺産分割協議書を作成すべきかどうかお悩みの方は、ぜひご参考になさってください。
目次
遺産分割協議書は必ず作らないといけない?
ここでは、遺産分割協議書の作成の要否について解説します。
法律上、作成は必須ではない
遺産分割協議書は、法律で必ず作成しなければならない、と決められているわけではありません。
では、遺産分割協議書を作成する目的はどこにあるのでしょうか。
遺産分割協議書を作成するメリット
遺産分割協議書を作成する主な目的・メリットは、以下の2点にあります。
- 【トラブル防止効果】相続人間の合意内容を証明できる
- 【手続円滑効果】相続税申告や相続登記、金融機関の手続きに使える
【トラブル防止効果】相続人間の合意内容を証明できる
遺産分割協議書を作成する目的の一つは、共同相続人間での合意内容を明確にすることです。書面化して証拠とすることで、後日の紛争を予防できます。
【手続円滑効果】相続税申告や相続登記、金融機関の手続きに使える
以下の手続きでは、相続人全員が実印を押した遺産分割協議書と全員の印鑑証明書の提出を求められます(金融機関によって対応が異なる場合があります。)。
- 相続税の申告
- 不動産の所有権移転手続き(相続登記)
- 金融機関の名義変更・払い戻し手続き
遺産分割協議の成立時に、遺産分割協議書を作成しておけば、これらの手続きを迅速かつ円滑に進められます。

遺産分割協議書を作らない3つのリスク
ここでは、遺産分割協議書を作成しないリスクを3つ紹介します。
相続トラブル発生の種になる
口約束で誰が何を相続するか決めていても、共同相続人間で合意した内容を書面化しておかなければ、言った・言わないのトラブルに発展するおそれがあります。
相続手続きを進められないばかりか、子や孫の代まで紛争を残すことになりかねません。

相続手続きがスムーズに進められない
税務署や法務局などの公的機関の手続きや、金融機関の相続手続きでは、相続人全員が実印を押した遺産分割協議書と印鑑証明書の提出が求められます。
遺産分割協議書を作成しておかなければ、手続きをスムーズに進められません。あらかじめ相続人全員の協議結果を書面にしておけば、効率的に手続きできます。
預貯金を解約できない
預貯金口座の解約手続きでは、金融機関独自の書面に相続人全員が署名捺印することで、遺産分割協議書の作成が不要になるケースもあります。
しかし、複数の銀行に預貯金がある場合は、手続きの度に相続人全員の署名捺印を取り付けなければなりません。遺産分割協議書を作成しておけば、持ち回りで手続きできるため効率的です。
遺産分割協議書を作った方がいいケース
ここでは、遺産分割協議書を作成した方がよいケースを5つ紹介します。
法定相続分と異なる遺産分割をする場合
法定相続分と異なる遺産分割をする場合は、遺産分割協議書を作成しましょう。
相続人全員の合意内容を明確にして証拠として残すことで、後日の紛争を防げます。
相続税申告が必要な場合
相続税を計算するためには、誰がどの財産を取得したかを明確にする必要があります。
そのため、遺言書がない場合は、相続税の申告書に遺産分割協議書を添付しなければなりません。相続税の申告が必要な場合は、遺産分割協議書を作成しましょう。
遺産に不動産が含まれる場合
法定相続分と異なる相続割合で不動産を分け合う場合は、所有権移転登記(相続登記)申請の際に、遺産分割協議書を提出しなければなりません。
遺産の不動産が含まれており、法定相続分どおりに相続しない場合は、遺産分割協議書を作成しましょう。
遺産に預貯金や有価証券がある場合
預貯金や有価証券の名義変更・解約手続きには、相続人全員が実印を押した遺産分割協議書の提出が求められます。
金融機関所定の書式に相続人全員が署名・押印することで、遺産分割協議書の添付を省略できるケースもありますが、スムーズに手続きを進めるためには、あらかじめ遺産分割協議書を作成しておくことをおすすめします。
将来のトラブルを防ぎたい場合
口約束だけでは、遺産分割協議の合意内容を証明できません。
遺産分割協議書を作成しておけば、他の相続人が遺産分割の内容に納得していないと主張しても、書面への署名・押印をもって、協議結果を証明できます。

遺産分割協議書を作らなくてもいいケース
ここでは、遺産分割協議書を作らなくてもよいケースを5つ紹介します。
相続人が1人しかいない場合
遺産分割協議書とは、相続人全員で行った遺産分割協議の合意内容を書面化したものです。
相続人が1人しかいなければ、遺産分割協議そのものが不要であるため、基本的には遺産分割協議書を作成する必要はありません。
ただし、遺言により包括遺贈を受けた受遺者がいる場合は、相続人が1人でも包括受遺者と遺産分割協議を行わなければならないケースもあります。その場合は、合意内容に則した遺産分割協議書を作成した方が良いでしょう。
遺言書どおりに遺産分割をする場合
遺産の全部について行き先が指定された有効な遺言があり、遺言書どおりに遺産分割をする場合は、遺産分割協議書がなくても相続手続きを行えます。
ただし、次のようなケースでは、別途遺産分割協議を行わなければなりません。
- 遺言書で行き先を指定されていない財産がある
- 遺言書で相続分しか指定されておらず誰が何を取得するかを明確に示されていない
このような場合は、合意内容を明確にするため遺産分割協議書を作成した方が良いでしょう。
法定相続分どおりに遺産を分割する場合
法定相続分どおりに遺産を分割する場合は、基本的には遺産分割協議書が無くても相続手続きを行えます。
ただし、相続した不動産を売却し、その代金を法定相続分で分ける場合(換価分割)には、後日の紛争予防のため、遺産分割協議書を作成することをおすすめします。
遺産が現金や動産だけの場合
遺産が現金や動産だけの場合は、金融機関の名義変更や登記等の手続きが不要となるため、基本的には遺産分割協議書を作成する必要はありません。
ただし、相続人間で合意内容が蒸し返されることが予測される場合は、遺産分割協議書を作成しておいた方が良いでしょう。
遺産が少額の預金だけの場合
遺産が少額の預金だけの場合にも、遺産分割協議書の作成が不要になるケースがあります。
金融機関にもよりますが、預金残高が数百円~数千円程度であれば、通常の口座解約の手続きで対応してもらえることがあります。
まとめ|遺産分割協議書の作成は弁護士に任せれば安心!
共同相続人間で遺産分割協議を行った場合は、その協議結果を書面として残しておくと安心です。
遺産分割協議書に誤字脱字や記載漏れがあると、相続手続きが滞る可能性があります。
弁護士に遺産分割協議書の作成を依頼すれば、不備のない書面を作成してもらえるため、手続時のトラブルを避けられます。
遺産分割協議書の作成にお困りの方は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。

この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。