遺言書の書き方を分かりやすく解説|モデル文例も豊富に紹介!

遺言書の書き方には、法律に定められた要件があり、それらの要件を満たさない遺言書は無効となります。
要件や形式に不備があったために、遺言が無効になってしまう事例は数多くあります。遺言書が無効になると、遺言者の意思を実現できません。
この記事では、例文などを示しながら、遺言書の書き方をわかりやすく解説します。
遺言書を作成予定の方は、ぜひご参考になさってください。
目次
遺言書の種類
ここでは、遺言書の種類を解説します。
遺言書には、大きく分けて次の3つの種類があります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
それぞれの特徴や違いを確認しましょう。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が以下の項目をすべて自書し、これに押印する方法で作成する遺言です。
- 遺言書の全文(財産目録を除く)
- 日付
- 氏名
自書とは、遺言者がその全文等(財産目録を除く)を自筆(手書き)で書くことです。代筆やワープロ打ちは認められません。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、次の方式に従って、公証人(※)が作成する遺言です。
- 証人2人以上の立ち会いがある
- 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授する
- 公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ又は閲覧させる
- 遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名押印する
- 公証人が適正な手続きに従って作成したものである旨付記し、署名押印する
遺言者が身体上の理由等により署名できない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えられます。
このように、公正証書遺言は、遺言者は遺言内容を公証人に伝えるだけで、実際に遺言書を書くのは公証人となります。
※公証人とは、国の公務である公証事務を担う実質的な公務員です。法務大臣に任命された法律の専門家で、公証役場で執務しています。
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、次の方式に従って作成する遺言です。
- 遺言者が、遺言者自身又は第三者が記載した遺言証書に署名押印する
- 遺言者が、その封書を封じ、証書に用いた印章でこれに封印する
- 遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の面前に封書を提出し、自己の遺言であること及び第三者が記載した場合はその筆者の氏名及び住所を申述する
- 公証人がその証書の提出された日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名押印する
遺言者が身体上の理由等により申述できない場合は、手話通訳人等の通訳により申述するか、封紙に自書し、公証人がそのいずれかの方式によった旨を封紙に記載します。
遺言書の書き方①|自筆証書遺言編
ここでは、自筆証書遺言の作成方法について解説します。
自筆証書遺言の要件
自筆証書遺言の要件は以下のとおりです。
- 遺言者本人が遺言書の全文を自書する
- 日付を明記する
- 署名・押印する
ひとつずつ説明します。
遺言者本人が遺言書の全文を自書する
自筆証書遺言は、遺言者本人が遺言書の全文を自書しなければなりません。
ワープロやパソコンで本文を作成したものは、無効となります。本当に本人が作成したか判定できず、加除・変更のおそれがあるからです。
つまり、自筆証書遺言を作成するためには、遺言者が文字を知り、かつ、これを筆記する能力を有していなければなりません。
なお、2020年の民法改正により、遺言書に添付する財産目録は、すべてのページに自署による署名・押印があれば、ワープロやパソコンで作成できるようになりました。預貯金通帳のコピーや不動産登記事項証明書を財産目録に代えることも可能です。
民法改正によるこの取り扱いは、2019年1月13日以後に作成された自筆証書遺言に適用されます。
日付を明記する
自筆証書遺言には、作成日の日付を記載しなければなりません。作成年月日の記載がない場合や、以下のように年月日が不明確な場合は、その遺言は無効とされます。
- 令和4年4月
- 令和4年4月吉日
しかし、必ずしも特定の年月日を記載する必要はなく、以下のように作成日付が特定できるならば、差支えないと解されています。
- 還暦の日
- 満70歳の誕生日
実際の作成日と記入された年月日が異なる場合であっても、作成日が特定できるときは有効になります。
しかし、例えば、遺言書に将来の年月日を記入し、記入された年月日を経過することなく遺言者が死亡してしまったようなケースでは、作成日の特定ができず無効になる可能性があります。
署名・押印する
自筆証書遺言には、遺言者の署名・押印が必要です。
氏名の自書は、遺言者が誰であるかを明確にするためのものであるため、本名(戸籍上の氏名)を記載するのが好ましいです。
押印については、必ずしも実印であることは要しません。認印や指印でも構いません。
遺言書が複数枚にわたる場合は、これを綴ってその間に契印するのが一般的ですが、契印がなくても1通の遺言書として作成されたものであることが確認できれば、有効であるとされています。
ただし、次の場合は、添付書類の全ページに署名・押印しなければなりません。
- 財産目録を自書以外の方法(ワープロやパソコン等)で作成する場合
- 財産目録に代えて預金通帳のコピーや不動産登記事項証明書を添付する場合
自筆証書遺言の加除・訂正の方法
自筆証書遺言(財産目録を含む)を書き損じた場合、法律で定められた方法で加除・訂正しないと、その遺言が無効になることがあります。
民法は、遺言書の加除・訂正の方法を、以下のとおり定めています。
- 加除・訂正の場所を指示する
- 変更した旨を付記する
- 付記部分に署名する
- 変更場所に押印する
加除・訂正の具体例は、以下の見本をご参照ください。
詳しく説明します。
加除の方法
記載した文字を削除したい場合は、以下の方法で削除します。
- 削除したい文字を二重線で消す
- 削除した箇所の付近(隣)に押印する
- 欄外に〇字削除と記載して署名する
書き損じた文章を加筆したい場合は、以下の方法で加筆します。
- 加筆したい箇所に文字を書き込む
- 加筆した箇所の付近(隣)に押印する
- 欄外に〇字加入と記載して署名する
訂正の方法
文章を書きなおしたい場合は、以下の方法で訂正します。
- 訂正箇所を二重線で消し、訂正後の文字を書き込む
- 訂正した箇所の付近(隣)に押印する
- 欄外に〇字削除、〇字加入と記載して署名する
自筆証書遺言の書き方のポイント
自筆証書遺言を書く際は、次の6つのポイントを押さえましょう。
- 表題は遺言書・遺言状・遺言とする
- 日付・署名・押印の3点セットを忘れずに
- 万年筆・ボールペン・サインペンで書く
- 財産を特定できるように書く
- 相続人・受遺者を特定できるように書く
- 封筒に入れて保管するのがベター
ひとつずつ説明します。
表題は遺言書・遺言状・遺言とする
誰が見ても遺言書であることが分かるように、表題(タイトル)に次のいずれかを記載しましょう。
- 遺言書
- 遺言状
- 遺言
表題の記載は法律上の要件ではありません。表題を記載しなくても、内容から遺言であることが明らかである場合は、他の要件を満たせば自筆証書遺言として有効です。
ただし、将来における相続人の誤解や遺言無効が争われるトラブルを避けるため、表題を記載することをおすすめします。
日付・署名・押印の3点セットを忘れずに
日付・署名・押印を忘れると、遺言書が無効となります。
日付については、遺言書を作成した日を記載します。日付が特定できない場合は、遺言書が無効になりますので、気を付けましょう。
署名は、フルネームで本名を記載します。
押印は、認印でも構いませんが、後のトラブルを避けるためには実印による押印が望ましいでしょう。
万年筆・ボールペン・サインペンで書く
遺言書を書く際は、万年筆・ボールペン・サインペンなど消えづらい筆記用具の使用をおすすめします。
法律上、筆記用具や用紙などは指定されていませんが、保存の観点で考えると、鉛筆やシャーペンで書くのは避けたほうがよいでしょう。
財産を特定できるように書く
遺言で相続させる人を指定する財産は、その内容を特定できるように記載しましょう。
例えば、不動産の場合、単に〇〇の土地や〇〇の別荘と書いただけでは、特定できません。
不動産登記事項証明書の表題部に記載された次の事項をすべて遺言書に記載しましょう。
- 所在
- 地番または家屋番号
- 地目または種類・構造
- 地積または床面積
預金を相続させる場合も、以下の事項をすべて遺言書に記載しましょう。
- 金融機関名
- 支店名
- 口座の種類
- 口座番号
相続人・受遺者を特定できるように書く
財産を相続させる人(相続人)や、財産を譲り渡したい人(受遺者)の名前は、フルネームで記載しましょう。相続人や受遺者を特定できるよう、氏名だけでなく続柄や生年月日も記載することをおすすめします。
封筒に入れて保管するのがベター
自筆証書遺言の場合、遺言書を封筒に入れることは法律上求められていません。
しかし、第三者による書き換えや破棄のリスクを避けるためには遺言書を封筒に入れて保管することをおすすめします。
遺言書の書き方②|公正証書遺言編
ここでは、公正証書遺言の作成方法について解説します。
公正証書遺言の作成方法
公正証書遺言は、公証人が作成します。公証人に遺言公正証書を作成してもらうまでの流れは、以下のとおりです。
- 遺言書の原案を作成する
- 証人を2名選定する
- 公証人と事前打ち合わせをする
- 公正証書案を確認する
- 公正証書の作成当日
作成までの流れをひとつずつ説明します。
遺言書の原案を作成する
ご自身が所有している財産をリストアップし、誰に相続させたいか検討します。
誰に、何を相続させるかを決定したら、遺言書の原案を作成します。ご自身で作成される場合は、メモ書きでも構いません。
弁護士に依頼する場合は、弁護士が遺言者から詳細を聴取し、財産を特定したうえで遺言書案を作成します。
なお、遺言書案の作成に際しては、相続人となる人や財産を譲り渡したい人に意向を伝えて、話し合うことが望ましいです。事前にコミュニケ-ションを取ることで、後日の紛争を防止できる可能性があるからです。
証人を2名選定する
公正証書遺言は、証人2名の立ち会いが要件となっています。ご自身で対応される場合は、証人となる方を2名選定し、事前に了承を得ましょう。
ただし、以下の方は証人になれません。
- 推定相続人およびその配偶者・直系血族(子・孫・父母・祖父母など)
- 受遺者およびその配偶者・直系血族(子・孫・父母・祖父母など)
- 未成年者
証人が用意できない場合は、公証役場で証人を紹介してもらうことも可能です。
弁護士に依頼する場合は、その法律事務所のスタッフが証人となるのが一般的です。
公証人と事前打ち合わせをする
遺言の内容や証人が決まり、必要書類の準備が整ったら、最寄りの公証役場に連絡し、予約を取った上で、事前相談に行きましょう。
公証役場に行けない事情がある場合は、公証人に自宅や病院・介護施設等に出張してもらえることもあります。その場合は、別途日当および交通費等がかかります。
公正証書案を確認する
公証人と打ち合わせをし、遺言の細かな文言を詰め、 法的に間違いのない遺言書を作成してもらいます。納得のいく遺言書案が出来上がったら、実際に作成する日時を調整します。証人にも当日出頭してもらう必要があるため、証人も含めた日程調整が必要です。
併せて、公証役場に支払う手数料も確認しましょう。
公正証書の作成当日
作成日当日は、本人と証人2名の前で公証人が遺言の内容を読み上げます。内容に問題がなければ、本人と証人2名 が証書に署名・押印します。この際、本人は実印での押印が必要です。証人2名は認印でも構いません。
公正証書遺言が完成すると、原本は公証役場が保管し、正本と謄本が本人に手渡されます。あらかじめ用意した公正証書作成手数料を現金で公証役場に支払います。
公正証書遺言の作成に必要な書類等
公正証書遺言の作成に必要な書類は、以下のとおりです。
- 遺言者の実印・印鑑証明書
- 遺言者・相続人・受贈者の戸籍謄本・住民票
- 遺言執行者の住民票
- 遺言者の本人確認書類
- 証人の本人確認書類・認印
- 財産に関する書類
ひとつずつ説明します。
遺言者の実印・印鑑証明書
公正証書には、遺言者の実印による押印が必要です。
印鑑証明書は、発行日から3ヶ月以内のものを用意しましょう。
遺言者と相続人の戸籍謄本・受贈者の住民票
遺言者と相続人の関係が分かる戸籍謄本が必要です。遺言者と相続人が同一戸籍である場合は1通で足ります。
相続人以外の人に財産を譲り渡す場合は、受遺者の住民票を取得しましょう。受遺者が法人の場合は、資格証明書が必要です。
いずれも発行日から3ヶ月以内のものを用意しましょう。
遺言執行者の住民票
公正証書遺言において、遺言執行者を指定する場合は、遺言執行者の住民票を取得しましょう。弁護士を遺言執行者に指定する場合は、弁護士が資格証明書等を準備します。
遺言者の本人確認書類
遺言者の本人確認書類を持参しましょう。本人確認書類の例は以下のとおりです。
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- 住民基本台帳カード
- パスポート
- 身体障害者手帳
- 在留カード
証人の本人確認書類・認印
証人2名にも、以下の書類および認印の持参を事前に依頼しましょう。
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- 住民基本台帳カード
- パスポート
- 身体障害者手帳
- 在留カード
財産に関する書類
財産に関する書類も公証人に提示しなければなりません。必要書類は遺言内容によって異なりますので、事前打ち合わせの際に、公証人に確認すると良いでしょう。
財産に関する書類の主な例は以下のとおりです。
- 不動産:登記事項証明書、固定資産税の納税通知書、固定資産評価証明書等
- 預貯金:通帳のコピー、残高証明書等
- 有価証券:取引残高報告書等
- その他財産:財産の内容がわかる資料、評価額(価値)のわかる資料
公正証書遺言の作成手数料
遺言公正証書の作成手数料は、遺言の対象となる財産の価額に応じて算定されます。
手数料算出の基準は、以下のとおりです。
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 1万1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万7,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下 | 2万3,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 2万9,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 4万3,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3,000円に超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5,000円に超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額 |
証書の枚数による手数料の加算
遺言公正証書の原本については、その枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により、4枚(法務省令で定める横書きの証書は3枚)を超えるときは、1枚毎に250円の手数料が加算されます。
正本と謄本の交付にも1枚につき250円の割合の手数料が必要です。
遺言書の書き方③|秘密証書遺言編
ここでは、秘密証書遺言の作成方法について解説します。
秘密証書遺言の要件
秘密証書遺言の要件は、以下のとおりです。
- 遺言者が署名・押印する
- 遺言書を封じ、封印する
- 証人を2名選定する
- 公正証書手続で公証する
ひとつずつ説明します。
遺言者が署名・押印する
秘密証書遺言は、自筆証書遺言と異なり、署名以外は自書の必要がありません。そのため、パソコンで作成したり、第三者に代筆を依頼したりすることも可能です。
遺言書を作成したら、遺言者が署名・押印します。
遺言書を封じ、封印する
完成した遺言書を封筒に入れて封をし、遺言書に押印したものと同じ印鑑で封印をします。
証人を2名選定する
秘密証書遺言は、公証人1名と証人2名以上の前で法定事項の申述が必要です。ご自身で対応される場合は、証人となる方を2名選定し、事前に了承を得ましょう。
ただし、以下の方は証人になれません。
- 推定相続人およびその配偶者・直系血族(子・孫・父母・祖父母など)
- 受遺者およびその配偶者・直系血族(子・孫・父母・祖父母など)
- 未成年者
証人が用意できない場合は、公証役場で証人を紹介してもらうことも可能です。
公正証書手続で公証する
公証役場に事前に連絡し、公証日時の調整を行います。
公証当日は、遺言者が公証人1人および証人2人以上の前に封書を提出して、以下の事項を申述します。
- 自己の遺言書である旨
- 第三者が遺言書を記載した場合はその筆者の氏名・住所
公証人は、その証書を提出した日付および遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者および証人とともにこれに署名・押印します。
完成した秘密証書遺言は遺言者が持ち帰って保管します。公証役場には封紙の写しが保管され、秘密証書遺言を作成したという記録が残ります。
秘密証書遺言はパソコンや代筆でも作成できる
秘密証書遺言の場合は、自筆証書遺言と異なり、遺言の全文を自書する必要がありません。ワープロ・パソコンや点字機や、第三者の代筆でも作成できます。
秘密証書遺言の作成手数料
秘密証書遺言の作成手数料は、定額で1万1,000円です。
遺言書のモデル文例|自筆証書遺言・秘密証書遺言
ここでは、自筆証書遺言や秘密証書遺言の作成時の参考となるモデル文例を解説します。
相続させる旨の通常のモデル文例
相続させる旨の遺言の通常のモデル文例を紹介します。
遺言書 遺言者〇〇〇〇は、以下のとおり遺言する。 第1条 遺言者は、遺言者の有する以下の財産を、妻〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生) に相続させる。 1 土地 所 在 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目 地 番 〇番〇 地 目 宅地 地 積 〇〇平方メートル 2 建物 所 在 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地 家屋番号 〇番〇 種 類 居宅 構 造 木造瓦葺平家建 床 面 積 〇〇平方メートル 3 上記建物内に存する一切の動産 第2条 遺言者は、遺言者の有する以下の財産を、長男〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)に相続させる。 1 預金 〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇 2 貯金 ゆうちょ銀行 通帳貯金 記号〇〇〇〇 番号〇〇〇〇〇 3 株式 口座開設者 〇〇証券株式会社 加入者 〇〇〇〇 口座番号 〇〇〇 銘柄 〇〇株式会社普通株式 銘柄コード番号 〇〇〇 数量 1,000株 第3条 遺言者は、遺言者の有するその余の一切の財産を、長女〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)に相続させる。 第4条 遺言者は、祖先の祭祀の主宰者として、長男〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)を指定する。 第5条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。 住 所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地〇 職 業 弁護士 氏 名 〇〇〇〇 生年月日 昭和〇〇年〇月〇日
令和〇年〇月〇日
〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号 遺言者 〇〇〇〇 印
|
遺産の全部を相続させる旨の遺言
特定の相続人に遺産の全部を相続させる旨の文例は以下のとおりです。
第〇条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の妻〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)に相続させる。 |
持分割合による相続させる旨の遺言
複数の相続人に対し、不動産を共有で相続させる旨の文例は以下のとおりです。
第〇条 遺言者は、遺言者の所有する下記の不動産を、遺言者の長男〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)と次男〇〇〇〇(平成〇年〇月〇日生)に各2分の1の持分割合により相続させる。
記 (不動産の表示 省略) |
換価清算型の相続させる旨の遺言
遺産分割の方法として、遺産を換価して金銭で分配する換価分割があるように、相続させる旨の遺言でも、遺産を換価して金銭で分配するよう定めることが可能です。
換価清算型の相続させる旨の遺言の文例は、以下のとおりです。
第〇条 遺言者は、遺言者の有する下記土地建物を換価し、その換価金から一切の債務を弁済し、かつ、遺言の執行に関する費用を控除した残金を、次のとおり相続させる。 ① 妻〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生) 8分の5 ② 長男〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生) 8分の2 ③ 長女〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生) 8分の1 記 (土地建物の表示 省略)
第〇条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として長男〇〇〇〇を指定する。
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負担付きの相続させる旨の遺言
特定の人物に遺産のすべてを相続させる代わりに、他の相続人に相当額の金銭を支払わせる場合の文例は、以下のとおりです。
第〇条 遺言者は、遺言者が遺言者の有する一切の財産を、遺言者の長男〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)に相続させる。 第〇条 長男〇〇〇〇は、前条の財産を相続する負担として、長女〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)及び次男〇〇〇〇(平成〇年〇月〇日生)に対し、各金〇〇万円を支払うものとする。 |
相続分の指定の遺言のモデル文例
遺言で法定相続分と異なる共同相続人の相続分を定める場合の文例は、以下のとおりです。
第〇条 遺言者は、次のとおり相続分を指定する。 ① 妻〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生) 16分の4 ② 長男〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生) 16分の9 ③ 長女〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生) 16分の1 ② 次女〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生) 16分の1 ③ 三女〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生) 16分の1 |
遺産分割の方法を指定する遺言のモデル文例
遺産分割の方法を指定する遺言のモデル文例は、以下のとおりです。
第〇条 遺言者は、別紙遺産目録記載の遺産を、遺産分割協議において、次のとおり分割するように、分割の方法を指定する。 ① 〇〇株式会社(本店所在地・・省略)の株式全部は、長男〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)が取得する。 ② 不動産は、次男〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)が取得する。 ③ 預貯金、有価証券ならびに①及び②以外のその余の遺産は、妻〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)が取得する。 |
遺贈のモデル文例
遺贈とは、遺言により遺言者の財産の全部又は一部を無償で譲る処分を指します。遺言により遺贈を受ける者として指定された者を受遺者といいます。受遺者となり得る者に特段の制限はなく、自然人はもとより、法人も受遺者になれます。法定相続人も受遺者になり得ます。
例えば、遺言者の長男の妻が、遺言者と遺言者の妻の介護をしているとします。長男は遺言者より先に亡くなりました。法定相続人ではない長男の妻に、遺言者の財産を遺贈して、遺言者の死亡後も妻の世話を託したい場合の文例は、以下のとおりです。
第〇条 遺言者は、第2項の負担付で、次の不動産を遺言者の長男亡〇〇〇〇の妻〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)に遺贈する。 (不動産の表示 省略) 2 〇〇〇〇は、前項の遺贈を受ける負担として、遺言者の妻〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)の生涯にわたって、同人を前項の建物に居住させ、同人の面倒を看なければならない。 |
なお、遺贈を受けたくない受遺者は、遺贈を放棄できます。
全部の財産の包括遺贈
遺言者の財産を包括的に遺贈する場合の文例は、以下のとおりです。
第〇条 遺言者は、次の不動産その他遺言者が相続開始時に有する一切の財産を、遺言者の孫〇〇〇〇(平成〇〇年〇月〇日生)に包括して遺贈する。 (不動産の表示 省略) |
持分割合による遺贈
複数の者に対して特定の財産を遺贈する場合の文例は、以下のとおりです。
第〇条 遺言者は、次の不動産を遺言者の内縁の妻〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)及び同人の子〇〇〇〇(平成〇〇年〇月〇日生)に各2分の1の共有割合で遺贈する。 (不動産の表示 省略) |
負担付き遺贈
受遺者に対し、一定の債務の負担をさせる遺贈を負担付遺贈といいます。受遺者に遺贈の目的の一部を他の者に与えることを義務付ける場合だけでなく、遺産に属しないことも義務づけることができます。
例えば、受遺者にペットの飼育を負担させる旨の負担付遺贈の文例は、以下のとおりです。
第〇条 遺言者は、遺言者の知人〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生、住所省略)に対し、遺言者の愛犬ポチ(柴犬、牝)及び遺言者が有する預金(〇〇銀行・〇〇支店・普通預金・口座番号〇〇〇〇)を、愛犬ポチを愛情をもって飼育することを負担として遺贈する。 2 ただし、愛犬ポチが遺言者より先に死んだときは、前項の預金は遺贈しないこととする。 |
条件付き遺贈
停止条件や解除条件を付けた遺贈も可能です。停止条件付遺贈・解除条件付遺贈の文例は、以下のとおりです。
第〇条(停止条件付遺贈) 遺言者は、遺言者の甥〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生、住所省略)が満30歳になるまでに結婚したときは、同人に次の不動産を遺贈する。 (不動産の表示 省略) |
第〇条(解除条件付遺贈) 遺言者は、次の不動産を遺言者の妻〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)に遺贈する。ただし、妻〇〇〇〇が再婚したときは、本条の効力は相続開始時に遡って失われるものとする。 |
遺言書のモデル文例|公正証書遺言
ここでは、公正証書遺言のモデル文例を紹介します。
公正証書遺言は、公証人が遺言者から遺言内容を聴き取って作成しますので、遺言者ご本人が作成する必要はありません。どのような文面になるのかイメージするためのご参考になれば幸いです。
遺言公正証書 本公証人は、遺言者〇〇〇〇の嘱託により、証人〇〇、同〇〇の立ち会いのもと遺言の口述を筆記し、この証書を作成する。 第1条 遺言者は、遺言者の妻〇〇〇〇に対し、次の資産を相続させる。 一 土地 所 在 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目 地 番 〇〇番〇〇 地 目 宅地 地 積 〇〇〇平方メートル 二 建物 所 在 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目 家屋番号 〇〇番〇〇 種 類 居宅 構 造 木造瓦葺き2階建 床 面 積 1階 〇〇平方メートル 2階 〇〇平方メートル 第2条 遺言者は、長男〇〇〇〇に対し、次の資産を相続させる。 一 預貯金 遺言者名義の預貯金 〇〇銀行〇〇支店(普通 口座番号〇〇〇〇) 二 株式 遺言者名義の株式 口座開設者 〇〇証券株式会社 口座番号 〇〇〇 銘柄 〇〇株式会社普通株式 銘柄コード番号 〇〇〇 数量 1,000株 第3条 遺言者は、長女〇〇〇〇に対し、次の資産を相続させる。 一 預貯金 遺言者名義の預貯金 〇〇銀行〇〇支店(普通 口座番号〇〇〇〇) 第4条 遺言者は、遺言執行者として次の者を指名する。 住 所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地〇 職 業 弁護士 氏 名 〇〇〇〇 生年月日 昭和〇〇年〇月〇日 2 遺言執行者は、遺言者の有する株式、預貯金等の金融資産について名義変更、 解約及び払戻し等をする権限その他この遺言を執行するに必要な一切の権限を有する。 本旨外要件 住 所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地〇 職 業 無職 遺 言 者 〇〇〇〇 生年月日 昭和〇〇年〇〇月〇〇日 右は印鑑証明書の提出により、人違いでないことを証明させた。 住 所 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地 職 業 会社員 証 人 〇〇〇〇 生年月日 昭和〇〇年〇〇月〇〇日 住 所 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地 職 業 法律事務職員 証 人 〇〇〇〇 生年月日 昭和〇〇年〇〇月〇〇日 以上の通り読み聞かせたところ、一同その記載に誤りがないことを承認し、証明押印する。 遺言者 〇〇〇〇 印 証 人 〇〇〇〇 印 証 人 〇〇〇〇 印 この証書は令和〇〇年〇〇月〇〇日 本職役場にて、民法969条第1号ないし第4号に定める方法に従って作成し、同条第5号に基づき、本職次に署名押印する。 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地 〇〇法務局所属 公証人 〇〇 〇〇 印 |
遺言書の保管方法
ここでは、遺言書の4つの保管方法を解説します。
- 自宅で保管する
- 法務局で保管してもらう
- 公正証書遺言を利用する
- 弁護士などの専門家に預ける
ひとつずつ説明します。
自宅で保管する
自宅で保管する場合は、他の方法に比べて費用や手間がかかりません。通常考えられる保管場所としては、以下の場所が挙げられます。
- 金庫
- 仏壇
- 机の引き出し
ただし、遺言者が亡くなったときに相続人らに遺言書の存在が知られていないと、遺言者の意思を実現できない可能性があります。相続発生後、遅れて遺言書が発見されても、遺産分割が済んでいると、相続人の間で面倒な手続きが生じることもあります。
法務局で保管してもらう
民法改正により、2020年7月10日から、法務局で自筆証書遺言書を保管してもらえるようになりました。
遺言書を作成した本人が法務局に出向き、遺言書保管官から身元の確認を受けると、自筆証書遺言書の原本を預けられます。
なお、相続発生時に、相続人らにおいて、遺言書が保管されていることに気がつかない可能性がありますので、生前に法務局に保管していることを推定相続人に伝えましょう。
公正証書遺言を利用する
公正証書遺言の場合は、原本が公証役場に保管されるため、紛失や破棄、第三者による改ざんのおそれがありません。
弁護士などの専門家に預ける
遺言書作成時にサポートしてもらった弁護士に預ける方法があります。
弁護士に預ければ、相続発生後の検認手続き等もスムーズです。ただし、弁護士事務所によっては、多少の保管料がかかる場合があります。
なお、弁護士に預ける場合は、推定相続人に対し、遺言者が亡くなった場合は弁護士にその旨の連絡を入れるように伝えましょう。
遺言書を預けていることを知らせなければ、相続人らは遺言書がないものとして遺産分割を進めてしまい、後に面倒な手続きが生じることもあるからです。
まとめ
遺言書は法律が定めた要件や方式に従って作成しなければなりません。
遺言書を書いても、不備があるとご自身の意思を実行できなくなる可能性があります。
弁護士に依頼すれば、法的に不備のない遺言書を作成してもらえます。将来発生しうる相続に関するトラブルを予防するためのアドバイスも受けられるでしょう。
少しでも不安がある場合には、弁護士に相談しましょう。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。