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失踪宣告された人が生きていた場合に起きる可能性があることは?

親族の中に長期間にわたって生死不明の人がいた場合、相続手続きが進められないなど生活に支障をきたす場合があります。

そうした弊害を避けるため、失踪宣告の手続きがあります。しかし、失踪宣告がなされた後、失踪宣告された人が生きていたケースがあります。

この記事では、失踪宣告された人が生きていたら起きる可能性があることや、すべきこと等について解説します。

失踪宣告された人が生きていたら何をすべきか?

失踪宣告された人が生きていたら、家庭裁判所に失踪宣告の取消しを申立てなければいけません

失踪宣告により死亡とみなされた人の生存が確認されても、自動的に失踪宣告が取り消されるわけではないからです。

取消しの申立てができるのは、失踪宣告をされた本人もしくは利害関係者です。

以下の書類をそろえて失踪者の住所地の家庭裁判所で手続きを行いましょう。

  • 失踪宣告取消審判申立書
  • 失踪者の戸籍謄本(発行日から3か月以内のもの)
  • 失踪者の戸籍の附票(発行日から3か月以内のもの)
  • 失踪者の写真(4枚程度)
  • 申立人の利害関係を証する資料(申立人が失踪者以外の場合)
  • 800円分の収入印紙
  • 郵便切手(裁判所によって金額が異なる)

失踪宣告された人が生きていた場合に生じうる問題は?

失踪宣告された人が生きていて、失踪宣告が取り消された場合に起きる可能性があることは以下の3つです。

失踪者の生存を知っている相続人が一人もいなかった場合は、すでに行われた遺産分割は有効であり、やり直す必要はありませんが、後述するとおり、現存利益の限度で返還義務を負う可能性があります。

遺産分割協議のやり直し

失踪宣告の取消しにより、遺産分割協議のやり直しが必要になる場合があります。

相続人である失踪者を除いて行われた遺産分割は、他の相続人が一人でも失踪者の生存を知っていれば無効となります。そのため、遺産分割協議をやり直す必要があります。

失踪者の生存を知っている相続人が一人もいなかった場合は、すでに行われた遺産分割は有効であり、やり直す必要はありませんが、後述するとおり、現存利益の限度で返還義務を負う可能性があります。

失踪宣告をされた人への財産の返還

失踪宣告が取り消された場合、失踪宣告によって財産を得た人は、現に利益を受けた限度で、財産を返還しなければいけません。

失踪宣告が取り消されると、はじめから失踪宣告がなかったと同様の効果を生じます。

ただし、失踪宣告の取消しにより、その効果の喪失を例外なく認めると、失踪宣告を信頼して取引をした相手方や、相続をした相続人などに予期せぬ損害を与えることがあります。

そこで、民法は、次の2つの例外を設けて、善意者を保護しています。

  • 失踪宣告後、取消前に善意でなした法律行為の効果は遡及的に消滅しない
  • 失踪宣告を原因として財産を取得した者は、現存利益の限度で返還義務を負う

    例えば、Aが失踪して失踪宣告を受け、Aの不動産を相続した相続人Bが、その不動産をCに売却したとします。
    その後、Aの生存が判明し、失踪宣告が取消された場合、BCの双方が善意でその売買を行っていれば、Aはその不動産について自らの所有権を回復できません。

    失踪宣告の取消による財産の返還については、現存利益のみを返還すれば良いとされているため、失踪宣告された人が生存していることを知らずに使った分については、返還しなくてもよいです。

    ただし、失踪宣告により得た財産を生活費や住宅ローンの返済に充てていた場合には、現に利益を受けているといえるため、その分も返還する必要があります。

    失踪宣告をされた人との婚姻関係の復活

    失踪宣告が取り消されると、婚姻関係が復します。

    失踪宣告が取り消されると、失踪宣告により消滅したとされる身分関係が復活するからです。

    ただし、失踪宣告をされた人の配偶者が再婚している場合、失踪宣告が取り消されても、その再婚は無効になりません。

    再婚した当事者のどちらかが失踪宣告された人の生存を知っていた場合は、失踪宣告の取消しによって失踪者との婚姻関係が復活します。その結果、再婚が取り消される可能性があります

    失踪宣告された人が生きていた事例は?

    実際に失踪宣告された人が生きていたことが、どのような経緯で判明したのか、以下2つの裁判例を挙げて解説します。

    失踪宣告された人が相続による権利侵害を訴え生存が判明した事例

    20歳で家出をして長年にわたり行方不明だった人が、自身が失踪宣告を受けた後、実の父母の相続に関わる不動産の所有権移転登記で、権利侵害されたと訴えた事例です。

    1995年に失踪宣告(1973年に死亡したとみなされる)をされていたと知った本人は2000年に10月に申立てをして失踪宣告が取り消されました。

    その後、失踪宣告によって相続で自身の権利が侵害されたとして土地所有権移転登記更正登記等請求を申立て、その申立てによって生存が判明しました(平成21 413日東京地裁判決)。

    内縁の妻が失踪宣告の取消しを申立てた事例

    失踪宣告を受けた人が生存し、内縁の妻と関係を続けていることが判明した事例です。

    内縁の妻が失踪宣告を受けた人の権利回復のために失踪宣告の取消しを申立て、認められました(昭和48 831日福島家裁審判)。

    失踪宣告された人が生きていたときに知りたいQA

    失踪宣告された人が生きていたときに知りたい質問例と回答を紹介します。

    失踪宣告された人が生きていたら戸籍はどうなる?

    失踪宣告された人が生きていた場合、失踪宣告取消しの審判を申立てた人は、10日以内に届出対象者の本籍地または審判申立てをした人の所在地の市区町村役場に、審判書謄本および確定証明書を添えて、失踪宣告取消届をします。

    これによって失踪宣告を受けた人の戸籍が回復します。

    失踪宣告された人が生きていたら住民票はどうなる?

    失踪宣告を受けた当時、削除された住民票の所在地に引き続き居住していたと確認ができる場合は、失踪宣告取消届の提出をすると職権により住民登録が回復します。

    失踪宣告を受けた際、その市区町村に住民票がなかった場合は、転入届をして処理がなされます。

    まとめ

    失踪宣告をした人が生きていると分かった場合、大変驚くと思います。失踪宣告をされたままでは、戸籍も住民票もなく本来受けられる行政サービスが受けられないため、早急に取消しの申立てをしましょう。

    身内で失踪宣告を受けた人が生きていたと分かり、どうすればいいのか困っている方は弁護士に相談をしてください。弁護士であれば代理人として失踪宣告取消しの申立てができますので、早めのご相談をおすすめします。

     

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    この記事を監修した弁護士

    佐藤 塁(東京弁護士会)

    はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の佐藤塁と申します。当事務所の特徴は、法的な専門性や経験はもちろんのこと、より基本的に、お客様と弁護士との信頼関係を大事にしていることです。お客様のご依頼に対して、原則2人の弁護士が対応し、最初から最後までその弁護士が責任を持って対応させていただきます。難しい案件でも投げ出しませんし、見捨てません。良い解決ができるよう全力でサポートさせていただきますので、何でもまずはご相談いただけますと幸いです。

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