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管理不全土地建物管理制度とは?制度の概要と疑問点について解説

適切に管理されていない土地ががけ崩れを起こしたり、放置された建物がゴミ屋敷になったりして、近隣住民に悪影響を与える問題があります。

これらの問題に対応するため、2024年4月に管理不全土地・建物管理制度がスタートしました。

本記事では、管理不全土地管理制度および管理不全建物管理制度の概要について解説します。

目次

管理不全土地・建物管理制度とは?

管理不全土地・建物管理制度の概要と所有者不明土地・建物管理制度との違いについて、以下で解説します。

管理不全土地・建物管理制度の概要

管理不全土地管理制度および管理不全建物管理制度は、裁判所が、利害関係人の請求により、不適当な管理をしている土地や建物について、管理人を選任して管理を命じる処分を可能とする制度です。

管理不全土地管理制度

管理不全土地制度は、不適切な管理をしている土地があるために権利が侵害されたり、将来権利が侵害されたりする可能性がある利害関係人が、裁判所に適切な管理を請求できるものです。

本請求がなされた場合、裁判所は土地の管理が不適当だと判断したら管理不全土地管理命令を出し、管理不全土地管理人を選任しなければいけません。選任された管理不全土地管理人は、土地を管理・処分できる権限が与えられます。

管理不全建物管理制度

管理不全建物管理制度は、管理不全土地制度と同様に不適切な管理をしている建物によって、権利を侵害されたり、将来侵害されたりするおそれがある利害関係人が裁判所に管理を請求できるものです。

管理不全土地制度との違いは、管理不全建物管理命令の効力建物の敷地権に及ぶ点です。マンションの専有部分や共用部分は、管理不全建物管理制度適用されません。

所有者不明土地・建物管理制度との違い

管理不全土地・建物管理制度と同時に、20244月から所有者不明土地・建物管理制度もスタートしました。

所有者不明土地・建物管理制度は、調査をしても所有者が分からない場合に、利害関係人が裁判所に申立て、土地や建物を管理する管理人を選任してもらう制度です。管理不全土地・建物管理命令は、所有者の所在は判明しているものの、当該所有者による不動産の管理が不適当である土地・建物について申し立てるものです。

管理不全土地・建物管理制度と共通するところがありますが、仮に、管理不全土地(建物)管理命令と所有者不明土地(建物)管理命令が同時に発令された場合、実際の運用では所有者不明土地・建物管理命令が優先されます。

例えば、すでに所有者不明土地管理命令が発せられている土地に管理不全土地管理命令の申立てを行えば却下されます。さらに、管理不全土地管理命令が発せられた後に所有者不明土地管理命令が発せられたら、管理不全土地管理命令は取り消されます。

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管理不全土地・建物管理制度が利用できる条件は?

管理不全土地・建物管理制度を利用して、裁判所に管理人を選任してもらうためには、次の3つの条件を満たす必要があります。

  • 所有者による不適切な管理が他人の権利や利益を侵害し、または侵害するおそれがあること
  • 申立人が利害関係人に該当すること
  • 管理人による管理の必要性があること

以下でそれぞれ解説します。

所有者による不適切な管理が他人の権利や利益を侵害し、または侵害するおそれがあること

所有者による土地・建物の管理が不適切であることで、他人の権利または法律上保護される利益が侵害され、または侵害されるおそれがあることが必要です。

管理不全の土地や建物と判断される可能性が高いのは、次のようなケースです。

  • ひび割れた擁壁を土地の所有者が放置し隣地に倒壊するおそれがある場合
  • ゴミが不法投棄されているのに放置して悪臭・害虫により健康被害を生じさせている場合 など

申立人が利害関係人に該当すること

管理不全土地・建物管理人命令の申立ては、利害関係人でなければできません。

例えば、倒壊のおそれがある建物の隣に住んでいる人や、ゴミ屋敷による悪臭で健康被害が出ているケースが該当します。

管理人による管理の必要性がある土こと

土地・建物が管理人による管理の必要性があるものでなければ、管理不全土地・建物管理人命令の申立てはできません。

例えば、所有者が対象不動産に住んでいる場合は、管理行為を妨害するおそれがある場合、実効的な管理を期待できないことを理由に申立てが却下される場合があります。

そういうケースは管理不全土地・建物管理命令ではなく、物権的請求権の行使など、通常の訴訟を行うほうが適切です。

管理不全土地・建物管理命令の申立て方法は?

管理不全土地・建物管理命令の申立てはどのように行えばよいのか、順に解説します。

利害関係人が不動産の所在地を管轄する裁判所に申立てをする

利害関係人に当たる人が、不動産が所在する裁判所に管理不全土地・建物管理命令を申立てます。申立てには以下の書類と予納金の納付が必要です。

必要書類 ①申立書(正本1通、副本を所有者分及び管理人分)

②所有者の土地または建物に係る登記事項証明書

③建物の敷地利用権を証明する資料(該当する場合)

④不動産登記法141項の地図又は同条4項の地図に準ずる図面の写し

⑤土地(建物)の所在地に至るまでの通常の経路及び方法(土地(建物)の住居表示を記載する。)を記載した図面

⑥土地(建物)の現況調査報告書又は評価書(保有する場合)

⑦(登記されていない場合)土地についての不動産登記令22号に規定する土地所在図及び同条3号に規定する地積測量図

⑧(登記されていない場合)建物についての不動産登記令25号に規定する建物図面及び同条6号に規定する各階平面図

⑨所有者の土地・建物について、適切な管理が必要な状況にあることを裏付ける資料(写真を撮影した場合は台紙に貼り、撮影日時、撮影者を明記。適切な管理が必要な状況がわかるようにする。)

⑩ごみの除去や雑草の伐採等、管理不全土地・建物を適切に管理するために必要となる費用に関する資料(業者による簡易な見積りをした結果等)

⑪その他参考となる資料

⑫申立てを理由づける事実についての証拠資料の写し(非訟規則373項)

申立費用 ①収入印紙(申立ての対象となる土地・建物の筆数1筆につき)1,000

②郵便切手 6,000円分

予納金 管理費用や管理人報酬のための費用として予納金

上記のほかにも、必要に応じて、裁判所から追加の資料提出を求めることがあります。

裁判所が所有者の陳述の聴取を行う

管理不全土地・建物管理命令の申立てがなされたら、裁判所は所有者に対して陳述の聴取をしなければいけません。

ただし、緊急で対応しなければならない場合は、所有者の陳述の聴取は不要となることがあります。

裁判所が管理命令の発令および管理人の選任を行う

申立てが要件を満たすと判断されれば、裁判所が管理命令の発令および管理人の選任を行います。発令の判断のために、審問期日を開く場合もあります。

共有の土地や建物であっても持ち分ではなく土地・建物を対象に管理命令が発令されます。

管理命令は所有者に告知され、不服があれば即時抗告が可能です。

管理人は、弁護士や司法書士等から選任され、管理命令について登記はなされません。

管理不全土地(建物)管理人が得る権限は?

管理不全土地(建物)管理人が得る権限は、以下の2つです。

対象不動産の保存行為・利用行為・改良行為ができる権利

管理人には、対象不動産の保存行為・利用行為・改良行為ができる権利が与えられます。

例えば、ひび割れている擁壁の補修工事やゴミ屋敷となっている場合のゴミの撤去や害虫駆除です。

裁判所の許可を得て対象不動産を処分できる権利

裁判所の許可が得られれば、保存行為・利用行為・改良行為の権限を越える土地・建物の売却や建物の取り壊しも可能です。

ただし、土地・建物の処分をするには、所有者の同意が必要です。

管理不全土地(建物)管理人が負う義務は?

管理不全土地(建物)管理人が負う義務は、以下の2つです。

善良な管理者の注意をもってその権限を行使すべき義務

管理不全土地(建物)管理人は、善良な管理者の注意をもってその権限を行使すべき義務を負わなければいけません(善管注意義務)。

共有者がいる場合は共有者全員のために誠実かつ公平に権利を行使する義務

管理不全土地(建物)管理人は、対象の土地・建物に共有者がいる場合、共有者全員のために誠実かつ公平に権利を行使しなければいけません。

管理不全土地(建物)管理人の職務や報酬に関するFAQ

管理不全土地(建物)管理人の職務や報酬について、よくある質問を紹介します。

管理人の管理処分権の対象となる財産の範囲は?

管理不全土地(建物)管理人が管理処分をする対象となる財産は、管理不全土地(建物)だけでなく、土地(建物)にある所有者の動産、管理人が得た金銭等の財産(売却代金等)、建物の場合は敷地利用権(借地権等)となります。

管理に係る費用や管理人の報酬はどこから支払われる?

管理不全土地(建物)管理人の報酬は、管理不全土地等(予納金を含む)から、裁判所が定める額の費用の前払・報酬を受けます。報酬は所有者が負担することとなります。

管理人は自由に辞任できる?

管理不全土地(建物)管理人は、正当な事由があるときは裁判所の許可を得て辞任ができます。

管理人を解任したい場合はどうすればいい?

管理不全土地(建物)管理人が任務に違反して著しい損害を与え、またはその他重要な事由がある場合は、利害関係人の請求によって裁判所は管理不全土地(建物)管理人を解任できます。

管理人の職務が終了するのはいつ?

次のような場合、管理不全土地(建物)管理人もしくは利害関係人の申立て、または裁判所の職権により、裁判所は管理不全土地・建物管理命令を取り消さなければいけません。

  • 管理すべき財産がなくなったとき(管理すべき財産の全部が供託されたときを含む)
  • その他の財産の管理を継続するのが相当でなくなった場合

これによって、管理不全土地(建物)管理人の職務が終了します。

まとめ

長年放置された土地が不法投棄でゴミの山になっていたり、誰も住んでいない建物の壁が崩れそうになって危険な状態であったり、管理が行き届いていない土地や建物を目にする機会は意外に多いと思います。こうした問題を解消するための制度が管理不全土地・建物管理制度です。

家の近所に管理が行き届いていない土地や建物があり、迷惑を被っているなどお悩みのある方は早めに弁護士にご相談ください。ネクスパート法律事務所には不動産に関わる案件を得意とする弁護士が在籍していますので、一度お問合せください。

 

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この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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