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遺産分割協議書を自分で作成するのをおすすめできない理由を解説

相続が発生し、相続人全員で遺産分割協議を行い合意したら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は相続手続きをするにあたり必要になる書類なので、とても重要です。

この記事では、遺産分割協議書を作成するにあたり、法律の専門家に依頼せず自分で行うのをおすすめできない理由について解説します。

遺産分割協議書は自分で作成できる?

遺産分割協議書は、自分で作成できます。

法律の専門家に依頼しなければならないルールはありません。

遺産分割協議書とは、遺産分割協議でどのような内容に合意できたのかまとめ、相続人全員が署名し、実印で捺印する書類です。

遺産分割協議で合意した内容は口頭でも成り立つため、法的に作成を義務付けられていませんが、不動産の名義変更や預金の解約などの相続手続きや相続税申告の際に、提出を求められます。

遺産分割協議書は、自分でも作成できますが、相続手続きの円滑化や相続人同士のトラブル防止のために、弁護士に作成を依頼するのも有用です。

自分で作成するのをおすすめしない理由|①前準備が大変

遺産分割協議書の自分での作成をおすすめしない理由の一つは前準備が大変なことです。
遺産分割協議書の作成は以下の手順で行いますが、それぞれの段階でどのような点が難しいか、解説します。

被相続人の戸籍謄本を集めて法定相続人を確定する

遺産分割協議をする前に、法定相続人を確定します。

法定相続人を確定するには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等と、相続人の戸籍謄本を集めなければいけません。
一番新しい戸籍から順番に遡って古い戸籍を取得していくのですが、結婚や転籍をしていると同じ市区町村の役所で取得できるとは限りません。

戸籍を集める際に最も難しいのは、戸籍に書かれている独特の表記を正確に読み取らなければならない点です。これを間違えてしまうと、被相続人の出生から死亡までの戸籍の一部を取り忘れてしまう場合があります。

戸籍の一部が抜けてしまうと法定相続人を正しく確定できません。
この状態で遺産分割協議をして合意しても、相続人が漏れていたら、その遺産分割協議は無効となります。

被相続人の遺言書がないか確認する

被相続人が遺言書を遺していないかどうかを確認しましょう。

有効な遺言書があれば遺産分割協議は不要となります。

自筆証書遺言もしくは秘密証書遺言が見つかった場合は、その場で開封せず、必ず家庭裁判所で検認の手続きをしましょう。万が一遺言書を開封してしまった場合は、5万円以下の科料に処せられる可能性があります。

自筆証書遺言や秘密証書遺言は、検認の手続きが終わらなければ相続手続きを進められません(※自筆証書遺言書保管制度を利用している場合を除く)。

遺言書の検認は、家庭裁判所への申立てを要します。手続きの際には家庭裁判所へ行かなければならず、仕事をしている人は日程の調整が必須です。

なお、公正証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認手続きは不要です。

被相続人の遺産を確定する

被相続人の遺産を調査して、その範囲を確定します。

財産だけでなく借金も併せて調査しなければいけません。遺産の調査が不十分で、遺産分割協議後に新たな財産や借金が見つかった場合は、その分について改めて遺産分割協議をしなければならず二度手間になります。

そのような事態を避けるために、漏れのないように調査をしましょう。多くの人がやらなければならない主な遺産の調査は以下のとおりです。

預貯金・有価証券等を確認する

被相続人の所持していた金融機関の通帳やキャッシュカード等を手掛かりにして、取引していた金融機関を特定します。

預貯金残高を把握できないときは、口座を所有していた金融機関に対し、残高証明書の発行を依頼します。預貯金については、一部の相続人による使い込みや隠匿が問題となることもあるため、通帳で金銭の入出金が確認できない場合は、取引明細書を取得して残高の変動状況を調査することもあります。

その際には、被相続人が亡くなったことや、相続人であることを証明する書類等の提示を求められます。

所有していた不動産を確認する

被相続人名義の不動産の有無を確認します。

被相続人の居宅に登記識別情報(登記済証)があれば、所有している不動産の詳細が確認できます。

登記識別情報が見当たらなければ、固定資産税課税明細書でも確認できますが、非課税の不動産を所有している場合、固定資産税課税明細書に掲載されません。

生前、複数の不動産を所有していた可能性があれば、不動産の所在地の役所で名寄帳を取得したほうが漏れなく調査できます。

車などの動産を確認する

車、美術品、貴金属といった動産も相続財産となりますので、金銭的に価値があるものはリスト化をします。

借金がないか確認する

被相続人が生前借金をしていないかどうかを確認します。

金銭消費貸借契約書の有無や、通帳を記帳して債務の返済とみられる引き落としや送金履歴がないかを確認したり、不動産全部事項証明書の乙区欄の記載を確認したりすることで、債務の存在が判明することもあります。

場合によっては信用情報機関個人信用情報の開示請求をするなどして調査をします。

被相続人の遺産を評価する

遺産分割協議を進めるにあたり、遺産をいつの時点でどのように評価するのかを話し合います。

公平かつ適正に遺産分割をするためには、その前提として遺産の価値を把握しなければなりません。

評価の時期や方法によって、遺産全体の評価に違いがでることがあります。
例えば、不動産の場合、固定資産評価額や相続税評価額(路線価)、公示価格で評価するのか、不動産仲介業者に査定を依頼して実勢価格で評価するのかによって金額に差がでることも多々あります。

相続財産の種類や相続人の状況によっては、遺産の評価方法について相続人間で揉める可能性があります。

法定相続人全員で遺産分割協議を行う

相続人全員で遺産分割協議を行います。

遺産分割協議は必ず相続人全員で行わなければならず、一人でも欠けると無効になります。

遺産分割協議はスムーズに進むケースもあれば、相続人それぞれが自分の意見を主張するとなかなか合意にいたらない場合があります。

例えば、相続人の中に生前贈与を受けた人がいる場合、特別受益を主張する相続人が出てくる可能性があり、被相続人の介護を一手に引き受けていた人は寄与分を主張する可能性があります。こうした話し合いを相続人だけで合意に導くのは困難です。

遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議が合意に至れば、その内容を反映した遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書の作成にあたり注意すべき点や書式例は、後述します。

遺産分割の流れについては、以下の記事をご参照ください。

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自分で作成するのをおすすめしない理由|②ミスが生じやすい

遺産分割協議書を自分で作成するのをおすすめしないもう一つの理由は、ミスが生じやすい点です。どのようなミスが起きる可能性があるか、以下で解説します。

法定相続人が漏れる可能性がある

被相続人の戸籍謄本を正しく集めなければ、法定相続人が漏れる可能性があります。

遺産分割協議は法定相続人が全員参加しなければならず、一人でも欠けると無効になります。せっかく遺産分割協議で合意ができても、法定相続人が漏れていたら最初からやり直しになります。

戸籍謄本を無事集められたとしても、改製原戸籍は読みにくく、法定相続人を見逃してしまう恐れもあります。

相続手続きをする上で、不備を指摘される可能性がある

遺産分割協議書の記載に不備があったり、明確ではない点があったりすると法務局や金融機関から指摘が入り、修正を余儀なくされます。

遺産分割協議書を修正する場合、再度相続人全員の署名・捺印が必要なので、各相続人に対応を依頼してやり取りする手間が増えます。

曖昧な表記で、後日相続人間のトラブルが生じる可能性

遺産分割協議書で曖昧な表記をすると、各相続人がそれぞれ違う解釈をして、後日トラブルになる可能性があります。

遺産分割協議書を自分で作成する際の注意点は?

遺産分割協議書を自分で作成するのはおすすめできませんが、それでも自分で対応したいと考えている方に向けて、作成にあたり注意すべき点を解説します。

被相続人の情報を明確にする

遺産分割協議書には、被相続人の情報を明確に記載しましょう。

具体的には、次の事項を正しく記載します。

  • 被相続人の氏名
  • 生年月日
  • 死亡日
  • 本籍地
  • 最後の住所

誰が何を相続するか明確にする

相続人の誰がどの財産を相続するか、明確に記載しましょう。

相続人の氏名をフルネームで記載し、相続する財産が特定できるように曖昧な表記は避けましょう。

被相続人と相続人との関係がわかるように、戸籍謄本に記載された続柄を書くこともありますが、続柄の記載は必須ではありません。

後日判明した財産の扱いを明確にする

遺産分割協議後、新たに判明した財産の扱いをどのようにするか、明確にしておきましょう。

相続財産は漏れなく調査しなければいけませんが、後日発見されるケースもままあります。

遺産分割協議後に新たな遺産が発見された場合に備えて、以下のいずれかの合意内容を記載しておくと良いでしょう。

  • 新たな遺産について改めて分割協議をする
  • 新たな財産は特定の相続人が取得する
  • 新たな財産について各相続人の取得の割合を定めておく

上記のいずれが適切なのかは具体的な状況によって判断します。

相続人全員が署名・押印する

遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印で押印をしましょう。

法律上、遺産分割協議書への押印は実印でなければならないという決まりはなく、認印で押印していても協議書としての効力がありますが、法務局や税務署、金融機関の手続きでは、相続人全員が実印を押印した協議書と相続人全員の印鑑証明書の添付が求められます。

実印がない場合は、市区町村の役所に印鑑登録をしましょう。実印として登録できる印鑑は一定の決まりがあるので、事前に市区町村の役所に確認をしましょう。

複数枚に渡る場合は契印を押す

遺産分割協議書が複数枚に渡る場合、契印を忘れずに押しましょう。

この場合、相続人全員の実印で契印をしなければならないので、相続人の人数が多い場合、遺産分割協議書を袋とじで作成し、綴じ目に契印する方法もあります。

人数分用意する

遺産分割協議書は、相続人の人数分を用意することをおすすめします。

相続財産の多寡や遺産分割の状況等によっては、原本1通を作成して、各相続人が写しを保管することもありますが、遺産分割協議で合意したことを証する大切な書面ですし、各相続人が相続手続きをする際に効率的に進められるからです。

相続財産が多く、相続税の申告が必要になる場合は、税務署に遺産分割協議書の原本を提出しなければなりません。

そのため、遺産分割協議書は、相続人の人数分作成することが一般的です。

なお、遺産分割協議書を2部以上作成する場合は、(法律上、必須ではありませんが)割印を押印しておくとよいでしょう。

遺産分割協議書の書式例

遺産分割協議書の書式例は以下のとおりですので、参考にしてください。

遺産分割協議書

 

被相続人 〇〇〇〇(〇〇〇〇年〇〇月〇〇日生まれ)

死亡日 〇〇〇〇年〇〇月〇〇日

本籍地 〇〇県〇〇市〇〇 〇〇丁目〇〇番

最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇 〇〇丁目〇〇番〇〇号

被相続人〇〇〇〇の遺産について、被相続人の妻である相続人〇〇〇〇、被相続人の長女である相続人〇〇〇〇、被相続人の長男である相続人〇〇〇〇は、遺産分割協議を行った結果、次のとおり合意した。

1.以下の不動産は、妻〇〇〇〇が相続する

(1)土地

所在 〇〇県〇〇市〇〇 〇〇丁目

地番 〇〇番〇

地目 宅地

地積 〇〇・〇〇平方メートル

(2)建物

所在 〇〇県〇〇市〇〇 〇〇丁目

家屋番号 〇〇番〇

種類 居宅

構造 木造瓦葺2階建

2.以下の被相続人名義の預貯金のすべては、長女〇〇〇〇が相続する

〇〇銀行〇〇支店

普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇

3.以下の被相続人名義の有価証券のすべては、長男〇〇〇〇が相続する

〇〇証券〇〇支店(口座番号〇〇〇〇〇〇〇)保護預かりの以下の有価証券等

〇〇株式会社 株式1000

4.後日判明した財産および負債に関しては、すべて妻〇〇が承継することとする。

上記協議の成立を証するため、本協議書を作成し、相続人全員が署名押印をしてそれぞれ1通ずつ所持する。

〇〇〇〇年〇〇月〇〇日

住所 〇〇県〇〇市〇〇 〇〇丁目〇〇番〇〇号

相続人 〇〇〇〇 ㊞

住所 〇〇県〇〇市〇〇 〇〇丁目〇〇番〇〇号

相続人 〇〇〇〇 ㊞

住所 〇〇県〇〇市〇〇 〇〇丁目〇〇番〇〇号

相続人 〇〇〇〇 ㊞

遺産分割協議書の書き方の詳細は、以下の記事をご参照ください。

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まとめ

遺産分割協議書は、準備から作成まで非常に手間と時間がかかります。

昨今は、さまざまな書籍で遺産分割協議書の作成方法を紹介していますが、理解しづらい点が多々あるのも否めません。間違った状態で進めてしまうと、のちのち面倒な事態になる可能性があると十分理解した上で取り組みましょう。

ネクスパート法律事務所には、相続全般に詳しい弁護士が在籍しています。

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この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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