遺言執行者が死亡したら何をすべきか?必要な手続きについて解説

遺言者に代わって遺言内容を実現しなければならない遺言執行者が死亡したら、何をすればいいでしょうか。
この記事では、遺言執行者が死亡した時期ごとにすべきことと、遺言執行者を選任する際の注意点について解説します。
目次
遺言執行者が死亡したら遺言者や遺言者の相続人等は何をすべきか?
遺言執行者が死亡した場合、死亡したタイミングによって遺言者及び遺言者の相続人等の対応に違いがあります。以下で具体的に解説します。
相続開始前に死亡した場合
相続開始前に遺言執行者が死亡した場合、遺言者は新たに遺言書で遺言執行者を指定できます。
遺言書は何度でも書き直せますが、公正証書遺言書を作成する場合にはその都度手数料がかかります。
自筆証書遺言書の場合、自身で保管しているなら何度でも書き直して古い遺言書を破棄すればよいです。
自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は、以下3つの方法があります。
新たに遺言書を作成して保管申請する
新たに遺言書を作成して保管申請する方法です。
すでに保管申請をしている遺言書は保管申請の撤回をして返還してもらい、破棄します。
保管申請済みの遺言書を返還してもらい、内容を変更後に再度保管申請する
すでに保管申請している遺言書を返還してもらい、民法968条3項で定められた訂正のルールに従って遺言書の内容を変更し、再度保管申請します。
自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
保管申請済みの遺言書はそのままにして、別途遺言書を保管申請する
保管申請済みの遺言書はそのままにしておいて、別途新たに遺言書を作成し保管申請します。この方法を取る場合、複数の遺言書が存在するので注意しなければいけません。
いずれの方法をとっても保管申請をする都度、手数料がかかります。
相続開始後、就任前に死亡した場合
相続開始後、遺言執行者が就任を承諾する前に死亡した場合、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てができます。
申立てができるのは利害関係人で、具体的には以下に該当する人です。
- 相続人
- 受遺者
- 相続人または受遺者の債権者
申立てには、申立書のほかに準備しなければならない書類があります。
遺言執行者の選任申立て方法の詳細については、以下の記事を参考にしてください。

相続開始後かつ就任後に死亡した場合
相続開始後、遺言執行者が就任を承諾した後に死亡した場合、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てができます。
この点は遺言執行者が就任を承諾する前に亡くなったケースと同じですが、注意すべきなのは報酬が発生している可能性がある点です。
遺言書で無報酬としてあれば問題ないですが、遺言執行を途中まで行っていたのならその分の報酬が発生します。報酬については後述します。
就任中に遺言執行者が死亡した場合に遺言執行者の相続人がすべきこと
遺言執行者が就任後に死亡した場合、遺言執行者としての任務は終了して、その地位は喪失します。
そのため遺言執行者の相続人は遺言執行者としての地位を承継しませんが、そのまま放置してよいわけではありません。遺言執行者の相続人は、善処義務を負います。
遺言者の相続人に対して何をすべきなのか、以下で解説します。
死亡通知
遺言執行者が死亡したことによって任務が終了したことを遺言者の相続人や受遺者、利害関係人に通知しなければいけません。
その際には遺言執行者が死亡したと記載がある公的証明書(戸籍全部事項証明書等)を添付するとよいでしょう。
保管・管理物の引渡し
遺言執行者が行っていた遺言執行手続きに関して保管・管理物があれば、すべてを遺言者の相続人、もしくは新たに選任された遺言執行者に引き渡さなければいけません。
執行顛末報告
遺言執行者が生前行った遺言執行手続きの内容について、遺言者の相続人等に報告をしなければいけません。その際に、遺言執行者が行った業務をすべて把握できているケースはまれだと思いますので、分かる範囲で報告すればよいです。
報酬請求
遺言執行者が生前行った遺言執行手続きによって報酬が発生している場合は、遺言者の相続人に対して報酬請求ができます。
遺言者の相続人は、報酬は新たに選任された遺言執行者が引き継ぐのではない点に留意しましょう。
公正証書遺言等で遺言執行者を指定するときの注意点は?
遺言書で、遺言執行者を指定するときに注意すべき4つの点について解説します。
自分よりも若い人を選任する
遺言執行者は、自分よりも若い人を指定したほうがよいでしょう。
信頼できる同世代の友人であれば、安心して遺言書に書かれた内容の執行を任せられると考える人が多いかもしれません。
しかし、自分が老いるのと同じように同世代の友人も老いていきます。健康や認知機能の問題が、同時期に発生する可能性が高いため、こうした点を考えると自分よりも若い世代の人を遺言執行者に指定したほうが良いでしょう。
遺言執行者の万が一に備え予備的遺言執行者を定める
遺言執行者の万が一に備えて、予備的な遺言執行者を定めるとよいでしょう。
例えば、遺言執行者に指定したAが亡くなった場合は、Bを遺言執行者に指定すると遺言書に一文加えておきます。
遺言執行者を複数選任する
遺言執行者を複数指定するのを検討しましょう。
遺言執行者に人数制限はないため、複数指定できます。
遺言執行者の一人に万が一のことがあっても代わりを務められるのでリスクを避けられます。遺言執行者を複数選任するにあたっての詳細は、以下の記事を参考にしてください。
法人を遺言執行者に指定する
遺言執行者に法人を指定する方法もあります。
法人であれば、その法人が存続している限りは遺言書の執行を任せられます。特定の人を遺言執行者に指定するよりもリスクが避けられる可能性があります。
まとめ
遺言執行者は、遺言書の内容を正確に執行する義務がある重要な役割を担う人です。
相続が発生してその人に託そうとしたところ、遺言執行者が亡くなっていたら相続人の皆さんは途方にくれることでしょう。
こうした事態に直面しても遺言書の内容が無効になるわけではないので、落ち着いて新たに遺言執行者の選任を申し立てるなど、方法を考えましょう。
遺言執行者がある程度手続きをしている途中で亡くなった場合も同様です。
ネクスパート法律事務所では、相続全般に詳しい弁護士が在籍しています。遺言執行者を弁護士に指定したいと考えているなら、ぜひ一度ご相談ください。初回の相談は30分無料になる場合がありますので、お気軽にお問合せください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。