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遺言は口頭でも有効?緊急時の例外や死因贈与の活用法を徹底解説

遺言は口頭でも有効? 緊急時の例外等について解説

「家族には口頭で『家はお前に譲る』と伝えてあるから大丈夫だ」 「亡くなった父から『預金は母さんに』と言われていたけれど、兄弟が納得してくれない」
人生の最期を迎えるにあたり、あるいは大切な方を見送った後、このような言葉だけの約束に直面し、戸惑われている方は少なくありません。
日本の法律は遺言について厳格なルールを定めており、原則として口頭のみの遺言は認められていませんが、特定の緊急事態における例外や、死因贈与といった契約の概念を用いることで、その意思を法的に救済できる道筋が存在します。
本記事では、口頭による遺言の法的効力について分かりやすく、そして今あなたが置かれている状況に応じた次の一手が見つかるように解説します。

口頭の遺言は原則として無効|法的な理由と背景

遺言は、書面で作成されなければならないのが原則で、口頭での遺言には、危急時遺言など法律で認められた特別な場合を除き、原則として法的効力がありません。遺言は、人の死後に効力を生じさせる強力な意思表示であるため、民法によって厳格なルール(要式性)が定められています。たとえ親族全員がその場にいて聞いていたとしても、あるいは録音データが残っていたとしても、法律上の遺言としては扱われません。

口頭の遺言が原則として無効になる3つの理由

口頭の遺言が原則として無効になる理由は、主に3つあります。

本人の真意を確実にする

口頭での発言は、その場の雰囲気や一時的な感情に流されやすいものです。遺言を書面にすれば、自分の意思を確認しながら慎重に作成が可能です。これは死後に取り返しがつかない財産処分を行わないようにするための重要なポイントです。

改ざんや偽造の防止

口頭での遺言は、「言った」「言わない」の争いになる可能性があります。こうした紛争や第三者による捏造を避けるために、書面による厳格な方式が重要なポイントとされています。

内容の明確性

口頭では、財産を逐一具体的に伝えることは困難です。あの土地、あそこの田んぼといった曖昧な表現になりがちですが、書面であれば正確な地番などで特定することが求められます。遺言の内容を明確に伝えるためにも書面での作成が不可欠です。

録音や動画メッセージの法的な扱いは?

近年、スマートフォンで手軽に動画を残せるようになりました。動画なら本人の顔も映っているし、絶対に証拠になるはずだと思われる方も多いでしょう。しかし、現行の民法では、録音や動画による遺言は、遺言としての法的効力は認められず無効と扱われます。自筆証書遺言は手書きで作成することが要件であり、公正証書遺言は公証人の関与が必要です。動画データはどちらの要件も満たさないため、法的な遺言書としては機能しません。
ただし、動画が全く無意味かというと、そうではありません。裁判において遺言能力(判断能力)があったかどうかを判断する際の重要な証拠資料として扱われるケースが増えています。詳細については、このあと解説します。

形式法的効力活用場面
口頭のみ無効相続人全員の合意形成の材料としてのみ利用
録音・動画遺言としては無効遺言能力の有無を争う裁判での証拠資料にできる可能性
自筆証書遺言有効手軽に作成できる遺言書だが、形式不備や紛失・改ざんのリスクあり。法務局の自筆証書遺言保管制度の利用を要検討
公正証書遺言有効確実に遺言書の作成ができ紛争リスクが低い。ただし、手数料がかかる

死ぬ直前なら口頭の遺言は認められる? |危急時遺言が認められるケース

原則として口頭遺言は無効ですが、まさに死が目前に迫り、ペンを持つことすらできない緊急事態(危急時)においては、口頭での遺言作成が認められています。これを危急時遺言(ききゅうじゆいごん)と呼びます。

一般危急時遺言(死亡危急者遺言)の要件と流れ

病気やけがで死期が迫っている場合に認められるのが一般危急時遺言です。この制度を利用するには、以下の厳格な手順を踏む必要があります。

①証人3人以上の立会い

証人を3人以上集める必要があります。この証人は、推定相続人(将来相続する人)やその配偶者など民法上証人になれない立場の者を含めてはいけません。一般には、利害関係のない第三者を証人とするのが安全です。

②口授(くじゅ)

遺言者が、証人のうちの1人に対して、遺言の内容を口頭で伝えます。原則は明確な発話が求められます。しかし、言葉を発することが難しい場合でも、通訳を介したり、質問に対して頷いたりするなどの方法で意思疎通ができれば認められる場合があります。

③筆記と読み聞かせ

口述を受けた証人が、その内容を正確に書き取ります(筆記)。そして、書き取った内容を遺言者および他の証人に読み聞かせるか閲覧させて、間違いがないことを確認します。

④署名・押印

遺言の内容が正しいことを確認したら、各証人がその書面に署名し、印鑑を押します。この際、実印である必要はなく、認印でも構いません。

一般危急時遺言作成後20日以内に手続きする

危急時遺言は書面を作って終わりではなく、遺言の日から20日以内に、利害関係人などから家庭裁判所に対して遺言の確認を申し立てなければなりません。
家庭裁判所は証人を呼んで事情を聴取し、遺言が本当に本人の真意によるものかを厳格に審査します。この確認の審判を得て初めて、遺言としての効力が生じます。もし20日を過ぎてしまったり、裁判所が真意を認めなかったりした場合は、遺言は無効になります。

回復したら無効になる6か月ルール

危急時遺言はあくまで緊急避難的な措置です。法律は、普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から6か月間生存するときは、その効力を生じないと定めています。遺言者が回復し、自力で文字を書けるようになったり、公証役場へ行けるようになったりした場合は、改めて遺言書を作り直しなさい、ということです。この点を見落とすと、せっかくの遺言が無駄になってしまうため注意しましょう。

難船危急時遺言

さらに特殊な状況として、船が遭難して死が迫っている場合の難船危急時遺言があります。 この場合は、証人は2人以上で足りるとされています。航空機事故の場合もこれに準じて扱われますが、いずれにせよ家庭裁判所の確認が必要である点は変わりません。

口頭で遺言を託された人が今すぐすべき行動は?

実際に口頭で遺言を託された場合、具体的にどのような行動をとるべきか、解説します。

①正式な遺言書がないか確認をする

口頭で遺言を残されたとしても、本人が遺言書を作成している可能性はゼロではありません。念のため遺言書がないかどうかを確認しましょう。特に以下の場所を必ず確認してください。

  • 自宅(仏壇、金庫、タンスの奥、本棚、書類ケースの中など)
  • 公証役場:最寄りの公証役場で遺言検索システムを利用し、遺言書の有無を確認する
  • 法務局:自筆証書遺言書保管制度を利用しているか不明な場合、遺言書保管事実証明書の交付を請求します。遺言書保管所であれば、全国どこの法務局でも請求が可能です。

②相続人全員での話し合いをする

遺言書が見つからず、口頭での約束だけが残された場合、基本的には遺言はないものとして相続手続きを進めます。この場合、法定相続人全員による遺産分割協議が必要です。
重要なのは、全員が納得すれば、口頭の遺言通りの分け方も可能という点です。法律上、遺言がなくても相続人全員が合意すれば、どのように遺産を分けてもかまいません。「故人はこう言っていた」と説明し、他の相続人が「そう言っていたなら、その通りにしよう」と同意すれば、それがそのまま遺産分割協議の内容となります。
合意ができたら、必ず遺産分割協議書を作成し、、相続人全員の実印を押し、印鑑証明書も添付しておきましょう。

③話がまとまらない場合の対処法

もし他の相続人が「そんな約束は聞いていない」「法律通りに法定相続分で分けるべきだ」と主張した場合、争いは避けられません。この場合、被相続人が口頭で言った内容を立証する必要があります。具体的には以下の証拠を集めましょう。これらの証拠をそろえた上で相続案件を多数手掛けている弁護士に相談することをお勧めします。口頭の約束を法的に構成し直すことは、高度な専門知識を要するからです。

  • 録音データ・動画:遺言としては無効でも、契約の合意があったことを示す証拠になる可能性あり
  • 日記・手帳・メモ:被相続人が「〇〇に譲るつもりだ」と書いた記録や「今日、父からこう言われた」と記した日記
  • 第三者の証言:医師、看護師、ヘルパー、親族以外の友人など、遺産を譲る等の発言を聞いていた人の証言陳述書
  • 負担履行の事実:負担付死因贈与を主張する場合、介護日誌、通院の付き添い記録、介護施設とのやり取りのメールなど

動画・録音を残す際に注意すべきことは?

証拠になるならと、安易に動画を撮影することにはリスクも潜んでいます。動画が遺言を無効とする証拠になった判例を紹介します(東京地裁令和2年3月23日判決)。
ある高齢男性が「全財産を二男に譲る」という自筆証書遺言を作成しました。その際、二男は、父の意思能力がしっかりしていることを証明しようと考え、遺言作成の様子を動画で撮影しました。しかし、裁判所がその動画を確認したところ、以下のような様子が映し出されていました。

  • 長谷川式認知症スケールが0点に近い状態だった
  • 二男が「ここに書いて」「次はこう読んで」と執拗に誘導していた
  • 本人は内容を理解している様子がなく、言われるがまま手を動かしていた
  • 事前の練習を長時間強いられていた形跡があった

結果としてこの動画は、遺言能力があった証拠ではなく、遺言能力が十分でない状態で誘導されて書かされたものと評価し得る証拠として採用され、遺言は無効と判断されました。動画はありのままを記録します。遺言者の虚ろな目や周囲の強引な態度も証拠として残る可能性がある点を理解しておきましょう。

死因贈与なら口頭でも有効?遺言との違いは?

遺言としては無効であっても、法律上の構成を変えることで、口頭の約束が有効になるケースがあります。それが死因贈与です。
遺言は、相手の合意が必要ない単独行為です。一方、死因贈与は「私が死んだらこれをあげる」「はい、もらいます」という、贈与者と受贈者の合意に基づく契約です。民法上、贈与契約は書面によらなくても成立します。したがって、口頭による死因贈与契約も理論上は有効と考えられますが、実務上は立証や手続きの面で注意が必要です。

項目遺言死因贈与
法的性質単独行為(相手の同意不要)契約(相手の同意が必要)
成立要件厳格な様式(書面必須)口頭でも成立(合意のみ)
撤回いつでも自由に撤回可能原則撤回可能だが制限あり
放棄受遺者はいつでも放棄可能契約解除の手続きが必要
年齢制限15歳以上未成年者は親権者の同意が必要

形式不備で無効となった遺言書が、死因贈与の証拠として認められた裁判例があります。例えば、日付の記載漏れや押印がない自筆証書遺言は、遺言としては無効です。しかし、「全財産を妻に譲る」という明確な意思が書かれており、妻もそれを受け入れていた(合意があった)と認められる場合、裁判所は「遺言としては無効だが、死因贈与契約としては有効」という判断を下すことがあります。
遺言書に日付と押印がなかったが、妻に全財産を与える意思が明確で、妻も認識していたため、包括死因贈与への転換が認められた判例があります(広島家裁昭和62年3月28日審判)。

確実に遺言を残したい人が取るべき方法は?

これから遺言を残そうと考えているなら、口頭で済ませることは避けてください。残された家族に争いの種を残す可能性があるからです。遺言を残したいと考えているなら、以下に挙げるいずれかの方法をとりましょう。

公正証書遺言を作成する

公証人に作成してもらう遺言書で、形式不備で無効になることがほぼない確実な方法です。原本が公証役場に保管されるため、紛失・偽造のおそれはありません。証人2人が必要であることや費用がかかる点はデメリットといえますが、確実に自分の意思を残したいと考える方におすすめする方法です。

法務局の自筆証書遺言保管制度を利用する

自分で遺言書を作成し、法務局の自筆証書遺言保管制度を利用する方法です。保管申請手数料が3,900円と比較的安価で、法務局が形式チェックをしてくれますし紛失リスクがありません。ただし、法務局は遺言書の内容の法的妥当性まではチェックしてくれません。たとえば遺留分侵害などに関するアドバイスは受けられないことを理解しておきましょう。

よくあるQ&A

ここでは、遺言を口頭で行うことに関して、よく寄せられる疑問点を紹介します。

認知症の親が口頭で「家をやる」と言っていますが、有効?

原則として無効です。また、認知症の進行度によっては、たとえ公正証書を作っても、遺言能力なしとして無効になるリスクがあります。早い段階で医師の診断を受け、少しでも判断能力があるうちに公正証書遺言を作成するか、成年後見制度の利用を検討したほうがよいでしょう。

エンディングノートに書いた内容は遺言になる?

なりません。エンディングノートはあくまでも希望を伝えるもので、法的拘束力はありません。ただし、遺産分割協議の際に、家族が故人の意思を尊重する指針としては有効です。

死因贈与の契約書は自分で作成できる?

作成できますが、不動産が含まれる場合は仮登記を行うために公正証書にすることをお勧めします。契約書がない口頭の死因贈与は立証が難しいため、必ず書面を作成しましょう。

まとめ

言葉は人の心を動かしますが、法律の世界では書面が非常に大きな力を持っている点は否定できません。もしあなたが口頭の遺言を巡るトラブルに直面しているなら、諦める前に一度、相続全般を手掛ける弁護士に相談してみることをおすすめします。
手元にある小さなメモや録音が、亡くなった方の最期の意思を実現するカギになるかもしれません。
ネクスパート法律事務所には、相続全般を手掛ける弁護士が在籍しています。初回相談は30分無料ですので、遺言をはじめとした相続に関するお悩みがある方は、ぜひ一度お問い合わせください。

この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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