相続不動産の共有名義はトラブルのもと?夫婦共有名義を含め解説

相続人が複数いる場合、相続によって取得した不動産を共有名義にする人もいるでしょう。公平性を期すために有効な方法ですが、デメリットもあります。
今回は、相続財産である不動産を共有名義にするときに考えておくべき注意点を解説します。
目次
相続不動産を共有名義にするメリットとデメリットは?
ここでは、相続不動産を共有名義にするメリットとデメリットについて解説します。
不動産を共有名義で相続するメリット
相続人同士が公平に遺産を相続できる
相続する不動産を共有名義にすることで、相続人全員が公平に遺産を相続できます。
節税効果が得られることがある
被相続人の居住用家屋やその敷地を、いったん共有名義で相続してから売却した場合、要件を満たせば最大3,000万円まで譲渡所得税の控除を受けられることがあります。
不動産を共有している各相続人がそれぞれ特例の適用を受けられるので、節税効果が期待できます。
ただし、この特例は、相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等で、2016年4月1日~2023年12月31日に売却した不動産のうち、一定の要件に当てはまる場合に適用されます。
マンションは対象外で、売却先が配偶者や子どものときは適用されません。
参考:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁 (nta.go.jp)
不動産を共有名義で相続するデメリット
売却や大規模なリフォームをするときに共有者全員の同意が必要
不動産を売却したり大規模なリフォームをしたりする場合、共有者全員の同意が必要です。一人でも反対する人がいれば売却やリフォームはできません。ただし、簡易なメンテナンスや不法に占拠している人への明け渡し請求は単独でできます。
共有者の一人が自身の持ち分を売却すると、不動産を他人と共有することになる
共有持ち分に関しては自由に売却できるため、共有者の一人が売却したら見ず知らずの他人と不動産を共有することになります。特定の相続人から持ち分を買い取った不動産業者から、他の共有者に対して安値で売却を迫られるケースも少なくありません。
共有者の一人が死亡した場合、権利関係が複雑になる
共有者の一人が死亡した場合、その持ち分を死亡した共有者の相続人が相続します。不動産を共有状態にしておく時間が長ければ長いほど持ち分が細分化され、権利関係が複雑になります。
相続不動産の共有名義を回避する方法は?
ここでは、相続不動産の共有名義を回避する方法について解説します。
不動産を売却して、現金を分ける
相続した不動産を売却して得た現金を相続人全員で分ければ、公平感を保ちやすくなります。
相続人全員の名義にしてから売却する方法もありますが、相続人が多いと複数名が売り主になり、売却の意思決定や契約・決済の立ち合いなどの手続きが煩雑になるデメリットがあります。
このようなデメリットを回避してスムーズに売却するためには、相続人の中から代表者を決め、いったん単独名義に変更してから売却をする方法があります。ただし、代表者である相続人が不動産を売却すると、対外的には贈与なのか相続なのかの判別がつかず、税務上の問題が生じることもあります。
そのため、代表者を定めて相続不動産を売却する際には、遺産分割協議書に、換価分割である旨や売却益の分配方法を具体的に記載しておく必要があります。
土地を相続人分で分筆する
相続した不動産が土地のみであれば、分筆して相続人それぞれが土地を単独所有する方法があります。この方法であれば平等に土地を取得できますし、単独で売却もできます。
しかし、分筆することで土地の面積が小さくなりますから、活用方法が限られてしまい売却しづらくなる可能性があります。
相続人の一人が他の相続人の持ち分を買い取る
不動産を活用したいと考える相続人が、他の相続人の持ち分を買い取る方法があります。そうすれば単独で所有でき、相続人間に不公平感も生じにくくなります。ただし、不動産を活用したいと考える相続人が複数いた場合、この方法は利用できません。
夫婦共有名義の不動産で相続が起きたらどうなる?
ここでは、夫婦共有名義の不動産で相続が起きたらどうなるか、解説します。
夫婦のどちらかが死亡した場合、相続はどうなる?
不動産を夫婦共有名義にしている場合、夫婦のどちらかが死亡したら、法定相続人は下記のとおりとなります。
子どもがいる場合
子どもがいる場合、配偶者と子どもが法定相続人となります。便宜上、遺産分割協議をして亡くなった人の持ち分を共有者である配偶者が単独で相続することが多いですが、相続人全員の合意が必要です。
子どもがいない場合
子どもがいない場合、配偶者と亡くなった人の両親もしくは兄弟姉妹が法定相続人となります。相続人全員が遺産分割協議をして、当該不動産を相続する人を合意のもと決定します。
なお、相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた配偶者のうち、一定の条件を満たす方は、配偶者居住権を登記することで、相続開始後も居住建物に住み続ける正当な権利を主張できます。
夫婦共有名義の場合、遺言書を作成することが重要
不動産を夫婦共有名義にしていても、一方の配偶者が死亡したことで自動的に他方の配偶者が持ち分を得られるわけではありません。万が一のことがあったとき、自分の持ち分を配偶者が確実に得られるように遺言書の作成を検討しましょう。
特に子どもがいない夫婦の場合、配偶者の両親もしくは兄弟姉妹が法定相続人となるので、相続でトラブルになることがあります。あらかじめ自分の持ち分を共有者である配偶者に残すことを遺言書に記しておくと安心です。
相続不動産が共有名義の場合、弁護士に相談するメリットは?
ここでは、相続不動産が共有名義の場合、弁護士に相談するメリットについて解説します。
売却を検討している場合、的確なアドバイスができる
相続不動産の売却を検討している場合、どのような手順で進めればよいか、弁護士であれば的確なアドバイスができます。共有者同士のトラブルを避けるためにも弁護士に対応を任せると安心です。
共有名義によって相続人間でトラブルが生じた場合、代理人となって対応ができる
不動産を共有名義にしていると、相続人の間でトラブルが起きることがあります。あらかじめ弁護士に相談しておけば、万一トラブルが起きても代理人として対応できます。
まとめ
不動産を相続した場合、公平に財産を分けることを目的に不動産を共有名義にすることもあるでしょう。この場合には、不動産を共有名義にしておくことで発生するデメリットを理解しておくことが重要です。
相続不動産を共有名義にするかどうか悩んでいる人や、すでに共有名義にしてしまった人は、トラブルを未然に防ぐために弁護士に相談することをおすすめします。
不動産の相続にお悩みの方は、ネクスパート法律事務所にご相談ください。当事務所には、不動産相続の紛争解決に関する実績とノウハウを有する弁護士が複数在籍しております。不動産の価値を適切に評価し、個々のケースに合わせてカスタマイズした合理的な分割案を提供するなど、円滑な相続手続きを目指して全力でサポートします。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。