
交通事故が起きた際に避けては通れないのが示談交渉です。
示談とは、交通事故に関する損害賠償の内容を当事者同士が話し合って合意する和解契約です。
この記事では、交通事故の示談の流れや示談金の計算方法、注意すべきポイントを総合的に解説します。基礎知識をきちんと押さえ、示談交渉を適切に進めることで、交渉段階で不利になるリスクや予期せぬトラブルを軽減していきましょう。
目次
交通事故の示談とは何か
交通事故の示談とは、裁判を使わずに賠償内容を決める民事上の和解契約です。
当事者同士が話し合いによって損害賠償の内容を合意し、最終的に書面で取り決める手続きです。
裁判所を通さずに解決するため、費用や時間を抑えられるメリットがあります。ただし、一度示談内容に合意すると、錯誤・詐欺・強迫などの事情がある場合を除き、原則としてその内容を覆したり、追加の請求をしたりできません。そのため、内容の確認は慎重に行う必要があります(もっとも、合意時に予見できなかった後遺症の悪化などにより、示談の前提が失われたと評価できる場合には、例外的に争われる余地があります。)。
示談は、過失割合や損害賠償金の金額、支払い時期や方法など、幅広い論点をカバーします。治療費や通院交通費、休業損害なども全て示談で決めるため、感情だけでなく客観的な証拠や資料を踏まえた話し合いが重要です。
示談は双方の合意が前提で進むため、加害者側の任意保険会社が提示する条件が妥当かどうかの判断や、適正な賠償額の把握が不十分だと、結果に差が生じる可能性があります。
交通事故の示談で話し合うポイント|過失割合・損害額・支払い方法
示談交渉では、以下の3つの要素を確定し、最終的な賠償金額を決定します。
- 過失割合の確定
- 損害額の算定と合意
- 示談金の支払いに関する事項
以下、詳しく解説します。
①過失割合の確定|過失割合とは事故の責任割合のこと
過失割合とは、事故に対する当事者それぞれの責任の割合(例:被害者20%:加害者80%)です。
事故当時の状況(信号の色、一時停止の有無、速度など)を、警察が作成した実況見分調書やドライブレコーダーの映像、目撃者の証言などの証拠に基づき確認します。
過去の裁判例や事故類型をまとめた基準(判例タイムズなど)を参照し、互いの主張を突き合わせながら、最終的な割合を決定します。
決定した過失割合に応じて、被害者側の損害額から相殺されるため、最終的な受取額が大きく変動します。
②損害額の算定と合意
すべての損害項目について、その金額を算定し、加害者側の任意保険会社の提示額が適正かどうかを話し合います。特に金額の開きが大きいのは以下の項目です。
- 慰謝料 |精神的苦痛への補償
慰謝料とは、交通事故が原因で被った精神的な苦痛に対して、その回復を図るために支払われる金銭的な補償です。主に以下の3種類に分類されます。
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
- 死亡慰謝料
入通院慰謝料とは、交通事故による負傷の治療のために、病院への入院や通院を余儀なくされたことによる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
後遺障害慰謝料とは、これ以上治療をしても回復が見込めず、身体に後遺障害等級に該当する障害が残ったことによる将来にわたる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
死亡慰謝料とは、事故により被害者本人が死亡したことによる、本人および近親者(遺族)が被る極度の精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
これらの慰謝料の算定基準は、3種類(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)あり、どの基準を用いるかにより、受け取れる金額が異なります(詳しくは、第5章で解説しています。)。
- 逸失利益|将来得られたはずの収入・利益
逸失利益とは、事故による後遺障害がなければ将来得られたはずの利益です。
逸失利益は、次の2種類に分けられます。
- 後遺障害逸失利益
- 死亡逸失利益
後遺障害逸失利益とは、事故により後遺障害が残らなければ将来得られたであろう利益です。
後遺障害が残ることで、事故前と同じように働けず、将来の収入が減少する場合があります。例えば、営業職の人が足に後遺障害が残ったことで、外回りの営業ができず、事故前よりも収入が減るケース等が挙げられます。
後遺障害逸失利益は、通常は自賠責の後遺障害等級認定を受けることで請求できます。もっとも、裁判においては、自賠責の等級認定にかかわらず後遺障害逸失利益が認められるケースもあります。
死亡逸失利益とは、事故により亡くならなければ将来得られたであろう利益です。
事故により死亡した場合、生きていれば得られたはずの収入が全く得られなくなることから、死亡逸失利益が認められます。
後遺障害逸失利益は、被害者本人が請求しますが、死亡逸失利益は、被害者本人が亡くなっていることから、被害者の相続人(被害者の遺族)が請求します。
- 休業損害|事故で働けなかった期間の損害
休業損害とは、治療のために仕事を休んだことによる損害です。
原則として、事故前の収入が基準となります。
会社員はもちろん、自営業者、フリーランス、そして専業主婦(主夫)の家事労働による収入の減少分も、休業損害として認められます。
休業損害は、あくまで治療期間中の損失に対する補償であり、症状固定後の将来的な損失である逸失利益とは区別されます。
適正な金額の請求には、収入証明などの資料提出が必要です。
③示談金の支払いに関する事項
合意した賠償金がいつ、どのように支払われるかを確認します。
その後、作成された示談書に合意した内容が正しく記載されているかを確認します。
示談金は、示談成立後2~3週間程度で振り込まれることが一般的ですが、事故内容や保険会社の取り扱いなどにより前後することもあります。
交通事故の示談交渉の流れ
交通事故の示談交渉の流れは、①治療→②後遺障害の確認→③保険会社との交渉→④示談成立という順序で進みます。
示談交渉は、症状が固定し、後遺障害の有無を確認するところから始まるのが一般的です。
保険会社の提示額が妥当かどうか判断し、後遺障害や逸失利益も含めて損害項目を総合的に検討しましょう。
合意がまとまれば示談書を作成し、署名押印により示談成立となります。
ステップ1|治療と症状固定
※示談交渉は、基本的にケガの完治または症状固定後から開始されることが一般的です。
治療中に示談を進めるケースもありますが、治療費が確定していない段階で合意すると、その後に発生した医療費が自己負担となる可能性があるため、最終的な合意はケガの完治または症状固定後に行います。
交通事故によるケガは必ず医療機関を受診し、治療を続けます。軽い痛みでも後日悪化する可能性があるため、事故後はできるだけ早く病院に行きましょう。
症状固定とは、これ以上治療を続けても改善が見込めないと医師が判断する段階です。症状固定の時期が示談交渉の出発点ともいえるため、医師とよく相談のうえ判断してください。
治療期間中に医療費や通院費の領収書などは必ず保管しましょう。示談交渉の際に証拠として必要になります。
ステップ2|後遺障害等級の認定
症状固定後に後遺症が残った場合には、後遺障害等級認定の手続きを進めます。
事故により後遺症が残っても、後遺障害が認定されなければ、後遺症を理由とする賠償金はもらえません。
もちろん、事故によるケガの治療費や通院交通費、入通院慰謝料などの賠償金は、後遺障害が認定されなくてももらえます。しかし、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益は、後遺障害等級の認定が条件となることから、これらを請求するためには、後遺障害等級認定を受ける必要があります。
適正な等級認定を受けるためには、医師の診断書や画像資料など、説得力のある書類を整えることが欠かせません。
ステップ3|加害者側任意保険会社との示談交渉
加害者側保険会社から賠償金の提示が行われます。
そこには、治療費や後遺障害慰謝料、休業損害などが含まれています。提示額が妥当かどうか、算定基準や客観的な証拠などをもとに、きちんと確かめる必要があります。
交渉が平行線をたどり行き詰まった場合、弁護士を通じて交渉することでスムーズに進展することがあります。
ステップ4|示談成立と示談書の作成
交渉の結果、合意に至ったら示談書を作成します。
示談書には当事者双方の氏名や合意内容、支払金額、支払方法、日付などを正確に記載します。
示談書は、示談金の金額だけでなく、今後の再請求が発生しない旨など重要な条項が含まれる最終合意書です。双方が納得して署名押印することで示談が成立します。
示談書に署名した後で問題が見つかっても、原則としてやり直しは困難です。
そのため、疑問点は事前に弁護士や保険会社に確認してから同意することをおすすめします。
交通事故の示談交渉期間|示談はどのくらいかかる?
交通事故の示談は「どれくらいかかる?」という疑問に答えるため、以下では、一般的な目安を解説します。
※実際の期間は怪我の程度や争点により変動します。
人身事故の流れと解決までの期間
人身事故の示談交渉は、ケガの治療が終わり、損害額の全体像が確定する症状固定後に本格化するのが一般的です(ただし、症状固定前から話し合いを始めるケースもあります)。
解決までの期間は、症状の程度によって異なり、数か月から年単位になることがあります。
| 解決ステップ | プロセスの内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| ① 治療の完了 | 負傷箇所が完治するか、あるいは治療を継続しても改善が見込めない症状固定の状態になるまで治療を続けます。ケガの程度が重いほど、示談交渉の開始は遅れることが多いです。 | ケースバイケース (治療期間による) |
| ② 後遺障害の認定 | 症状固定後、後遺症が残った場合、自賠責保険を通じて後遺障害等級(1~14級)の認定を申請します。 | 1~3か月程度 |
| ③ 損害額の確定 | 治療費、休業損害、逸失利益、慰謝料(入通院・後遺障害)など、多岐にわたる費目について証拠を収集し、最終的な賠償総額を算出します。 | 数週間~1か月程度 |
| ④ 示談交渉と合意 | 賠償額が確定した後、加害者側の任意保険会社との交渉を開始します。過失割合や等級認定について当事者間で合意が得られれば、比較的スムーズに進みます。 | 2~3か月程度 |
| ⑤ 示談金の受領 | 示談書に双方が署名押印し、その取り交わしが完了した後、合意した示談金が指定口座へ振り込まれます。 | 2~3週間程度 |
過失割合について争いがある場合や、後遺障害の等級認定に異議申し立てを行うなどした場合は、解決までに年単位の時間を要するケースが多くなります。
物損事故の流れと解決までの期間
物損事故は、人身事故よりも比較的早期に示談がまとまりやすい傾向があります。
| 解決ステップ | プロセスの内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| ① 物的損害の算定 | 被害車両の修理費用、修理不能時の車両時価額(買い替え差額)、代車費用、評価損など、物的損害の項目ごとに見積書や請求書を基に損害額を確定します。 | 1~2か月程度 |
| ② 示談交渉と合意 | 損害額が確定次第、加害者側の任意保険会社と交渉を開始します。交渉では主に修理費用の妥当性や評価損の是非が論点となります。 | 2~3か月程度 |
| ③ 示談金の受領 | 示談合意後、示談書を締結し、その後すみやかに示談金が指定された口座へ支払われます。 | 2~3週間程度 |
車両の修理費用や、いわゆる格落ち損(評価損)の算定をめぐって当事者間で意見の食い違いが生じた場合、示談成立までに上記の期間を超えることがあります。なお、評価損は車種・年式・損傷程度により認められない場合もあるため、個別判断が必要です。
死亡事故の流れと解決までの期間
死亡事故の示談交渉は、賠償額の算定は早期に開始できますが、ご遺族の心情を尊重し、四十九日などの法要後に交渉を始めるのが一般的です。
| 解決ステップ | プロセスの内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| ① 賠償額の算出 | 死亡慰謝料、逸失利益(将来得られたはずの収入)、葬儀費用など、主要な賠償項目について資料を収集し、具体的な金額を確定します。入院期間があった場合は、その間の治療費等も算入します。 | 1~2か月程度 |
| ② 示談交渉と合意 | 賠償額確定後、加害者側の任意保険会社との交渉を開始します。 | 交渉開始から 2~3か月程度 |
| ③ 示談金の受領 | 示談書を交わした後、合意した金額がご遺族の指定口座に振り込まれます。 | 2~3週間程度 |
ご遺族が心情の整理に時間を要する場合や、加害者に対する厳罰を求める感情が強い場合など、精神的な側面から交渉が長期にわたる傾向があります。
慰謝料の3つの計算基準|自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準
慰謝料の算定基準には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判所基準)の3種類があります。

どの基準を用いるかにより、最終的な慰謝料額が異なります。
自賠責基準|被害者救済を目的とした最低限の補償
自賠責基準は、自動車を運転する人が必ず加入する強制保険の基準であり、被害者への最低限の補償を目的としています。
任意保険基準|各保険会社が独自に定めた基準
任意保険基準は、各保険会社が独自に設定している算定方法です。
一般的には自賠責基準より高い傾向がありますが、保険会社によってかなり幅があります。
そのため、同じ事故内容でも保険会社ごとに提示額が異なるケースがあります。
弁護士基準|最も高額になりやすい慰謝料基準
弁護士基準は、裁判所の過去の判例などを参考に算定されるもので、3つの中で最も高額になりやすい計算方式です。
ご自身による示談交渉で、弁護士基準による請求を保険会社が渋るケースでも、裁判になれば弁護士基準が適用される可能性があるため、弁護士が介入することで、弁護士基準での交渉がスムーズに進む可能性があります。
示談交渉時に気をつけたいポイント
示談交渉時に気をつけたいポイントは、次の3つです。
- 過失割合が適正か
- 加害者側任意保険会社の提示額を鵜呑みにしない
- 示談成立後のやり直しは原則不可
以下、詳しく解説します。
過失割合が適正か
過失割合が適正かどうか確認しましょう。
過失割合は示談金額に大きく影響します。自分の過失割合が高くなるほど、受け取れる賠償金が減るため慎重に検討が必要です。
この割合は、事故の状況や、過去の判例などを参考に決定されます。証拠写真や事故証明書、目撃証言などをもとに客観的に整理して、保険会社や弁護士と話し合うのが望ましいです。
曖昧な記憶のまま話し合うと、相手側の主張をそのまま受け入れるリスクがあるため、記録は早めに取っておくことが不可欠です。
加害者側任意保険会社の提示額を鵜呑みにしない
加害者側任意保険会社の提示額を鵜呑みにすることは避けましょう。
保険会社から最初に提示される示談金が、必ずしも適正な金額とは限りません。多くの場合、保険会社は自社の基準で計算しているため、他の算定基準と差が生じることがあります。
提示額の妥当性を判断するには、自賠責基準や弁護士基準など複数の基準と比較し、どれくらいの違いがあるかを確認することが大切です。
大きく乖離があると感じたら、資料や判例を集めて再度交渉に臨みましょう。納得するまで確認しても問題はなく、焦って合意する必要はありません。
示談成立後のやり直しは原則不可
示談成立後は、原則として示談のやり直しができません。
そのため、合意前に今後起こり得るリスクや治療の見通しを十分に確認しましょう。
交通事故の示談交渉で弁護士を活用するメリット
弁護士に依頼することで、示談交渉が円滑になるだけでなく様々な利点があります。
①増額・スムーズな交渉が期待できる
弁護士が介入することで、弁護士基準での交渉が可能になるため、示談金が増える可能性があります。
裁判になった際のリスクを保険会社側が考慮するため、初期提示額よりも高い金額で決着することも珍しくありません。
交渉が難航しやすいケースでも話し合いをスムーズに進められます。
②精神的負担の軽減
弁護士が介入することで、精神的負担の軽減に繋がるでしょう。
示談交渉は、加害者側保険会社とのやり取りや書類作成など、数多くのステップがあります。日常生活にプラスして、これらをこなさなければならないストレスは大きいものです。
弁護士に依頼すれば、交渉や手続きの進捗管理を任せられるので、ご自身が一つひとつ対応する必要がありません。法的な専門用語や複雑な計算式に戸惑うことも減ります。
一方で、わからないことがあればいつでも相談できるため、不安な気持ちを抱えたまま交渉を続ける必要がなくなるのもメリットといえます。
③手続き全般のサポート
弁護士が介入することで、手続き全般のサポートをしてもらえます。
後遺障害の申請手続きや、必要書類の作成など、示談交渉には細かい作業がいくつも発生します。弁護士はこうした業務全般をサポートしてくれます。
書類の内容に不備があると、後遺障害の等級認定が不利になるなど、本来受け取れる金額を逃すおそれもあります。弁護士がチェックすればリスクを最小限に抑えられます。
弁護士費用特約とは?|特約の利用で負担軽減!
弁護士費用特約は、ご自身の自動車保険に付帯できるオプションであり、交通事故の解決を弁護士に依頼した際の費用を保険会社が肩代わりしてくれる制度です。
この特約を活用すれば、法律相談料を含め、弁護士費用の自己負担を軽減できます。
一般的に、弁護士費用には300万円(法律相談料は10万円)の上限が設けられています。
費用負担の心配をせずに、専門家である弁護士に交渉や手続きを一任できる点が、この特約の最大の利点です。示談交渉の専門知識や時間的な負担から解放され、より適正な賠償額の獲得を目指しやすくなります。
万が一の事態に備え、ご自身の自動車保険の契約内容を今一度確認されることをお勧めします。
交通事故の示談に関するよくあるQ&A7選
交通事故の示談に関するよくある疑問について、一問一答形式で解説します。
交通事故の解決には示談以外にどんなものがある?
示談以外に、主なものとして、ADR(裁判外紛争解決手続)と訴訟があります。
ADRには、交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターなどでのあっせん・調停があります。紛争処理センターでは、中立的な立場からの解決案提示を受けられます。これらのあっせんが不調の場合や、賠償額に大きな争いがある場合は、最終手段として民事訴訟を提起し、裁判所によって法的に最終的な解決が図られます。
交通事故の示談が進まない場合の対処法は?
弁護士相談または紛争処理センターの利用を検討しましょう。
ご自身の保険に弁護士費用特約が付いているか確認し、特約を利用して弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士が介入することで、弁護士基準に基づいた交渉が進めやすくなります。また、中立的な第三者機関である交通事故紛争処理センターなどにあっせんを申し立てる方法もあります。これらは費用が抑えられ、比較的迅速な解決が期待できます。
交通事故の示談と刑事事件の関係は?
示談は民事上の手続き、刑事事件は刑事上の手続きであり、両者は異なるものですが、示談は刑事事件に一定の影響を与えます。
示談が成立し、被害者への賠償が完了していることは、加害者の反省の態度として評価され、検察官の起訴判断や裁判官の量刑判断において情状として考慮されます。ただし、必ずしも不起訴や減刑が保証されるわけではなく、刑事責任そのものが消滅するわけでもありません。
交通事故の示談をその場で持ちかけられたらどうすればよい?
交通事故の現場で示談を持ちかけられても、原則として応じるべきではありません。
事故直後はケガの程度が不明確であり、後日になって痛み(むち打ちなど)が出てくる可能性もあるからです。
その場で安易に示談に応じると、後から判明した治療費や慰謝料などを追加で請求できなくなるリスクがあります。必ずその場で警察に連絡し、事故状況を記録してもらってください。また、相手の連絡先と保険会社情報を控えた上で、「後日、保険会社を通じて連絡する」と伝えて、その場での金銭のやり取りや示談は拒否してください。
交通事故で警察呼ばないで示談したらどうなる?
警察による事故証明書が作成されないため、後に保険会社に保険金請求をする際に事故の事実や状況の証明が困難になる場合があります。
そもそも、車両の運転者には警察への報告義務があります。
事故に遭ったときに最初にすべき重要なことは、負傷者を救護すること、そして警察へ報告することです。道路交通法第72条にも、事故当事者の義務が明記されています。
したがって、法令遵守の観点からも、事故に遭ったら必ず警察を呼びましょう。
交通事故の示談書の保管期間は?
交通事故の示談書について、法律で定められた明確な保管期間はありません。
しかし、示談の効力を証明し、将来的なトラブルを防ぐ重要な証拠であるため、以下の期間を目安に保管しましょう。
- 人身損害の時効期間:5年
- 自賠責保険の被害者請求の時効: 3年
示談書と免責証書の違いは?
免責証書は、広義では示談書の一種ですが、大きな違いは書類の形式と署名押印する当事者の範囲です。
- 示談書
交通事故の当事者である加害者と被害者の双方が内容を確認し署名押印することで成立する文書です。双方に合意内容の拘束力が生じます。 - 免責証書
被害者側のみが署名押印します。
保険会社が示談を代行する場合、書類のやり取りを迅速化するため、賠償する側の加害者の署名が不要な免責証書(承諾書)を使用することが一般的です。
まとめ|交通事故の示談を成功させるための基本ポイント
最後に、示談交渉の全体像や重要ポイントをおさらいしましょう。
交通事故の示談では、事故直後の対応から最終的な示談合意まで、適切な手順と知識が不可欠です。現場の安全確保や警察連絡、証拠収集などの初動がしっかりしているほど、後の交渉を有利に進められます。
示談を進めるうえでは、自分に有利な情報を積極的に収集し、保険会社の提示額や過失割合に対して疑問があれば納得いくまで話し合いを続ける姿勢が大切です。
状況に応じて、弁護士への相談も検討することをおすすめします。
ネクスパート法律事務所では、交通事故事案の解決実績を豊富にもつ弁護士が多数在籍しています。
初回相談は30分無料です。ぜひ一度ご相談ください。
