交通事故の示談交渉の際、後遺障害等級の等級によって示談金の金額は大きく変わります。なぜなら、後遺障害があるということは、その等級に応じた後遺障害慰謝料と逸失利益が発生するためです。
後遺障害等級の認定には、後遺障害診断書の内容が重要になるので、この記事では主に、
①後遺障害診断書の書き方
②後遺障害等級認定の際に弁護士に依頼するメリット
について解説します。
目次
後遺障害診断書とは
交通事故に遭い、治療を続けても精神・身体が事故前の状況に戻らないことがあります。このような場合に、被害者は後遺障害等級の認定手続を行う必要があり、その際に必要になるのが「後遺障害診断書」です。
後遺障害診断書(正式名称:自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書)は、後遺障害について詳細な症状を記載した書類です。後遺障害診断書は、医師に作成してもらう必要があり、交通事故被害者の後遺障害等級認定に大きく影響します。
交通事故により受けた症状は治療によって回復していきますが、これ以上治療をしても症状が良くならない状態になったことを「症状固定」といいます。その時点で残る障害や症状があれば、後遺障害に該当する可能性があるので、医師に後遺障害診断書の作成を依頼しましょう。
後遺障害診断書の重要性
病院で管理している書類などに記載されている内容でも、後遺障害診断書に記載されていなければ後遺障害等級の審査の対象にはなりません。審査に必要な内容は、すべて後遺障害診断書に記載してもらいましょう。
後遺障害診断書の書式
後遺障害診断書には、精神・身体障害用のものと、歯牙障害用の2種類があります。
交通事故で顔面に強い衝撃を受けると、歯にも影響が及びます。事故で歯が折れたり欠けたりした場合や、治療のために抜歯した永久歯は生え変わることはありません。
歯は、物をかんだり言葉を発したりする大切な役割があります。交通事故で歯を失ったり、折れたりすると、この役割を十分に果たすことができません。
身体障害に気を取られがちですが、歯の後遺障害についても適切な慰謝料の請求をしましょう。歯の欠損が交通事故によるものかどうかを判断してもらうために、歯科用の後遺障害診断書を、かかりつけの歯科医院で書いてもらうのが良いでしょう。
ただし、交通事故による障害でも、下記については後遺障害の対象にはなりません。
- C4の虫歯
- 交通事故によって欠損した乳歯や親知らずの歯
後遺障害診断書は医師だけが作成できる
後遺障害診断書は、医師免許を持つ医師のみが作成できます。交通事故後に病院へ行く前に整骨院や接骨院に通うと、交通事故との因果関係が証明できないので、後から病院へ行っても、書いてもらえません。
交通事故に遭ったら、まずは、整形外科がある病院へ行くことが大切です。
後遺障害診断書の取得方法
診断書という言葉はよく聞きますが、後遺障害診断書という言葉は聞いたことが少ないと思います。どこで入手でき、いつ書いてもらえば良いのでしょうか。
自賠責保険会社から用紙をもらうかインターネットからダウンロードする
後遺障害診断書は、自賠責保険会社からもらえます。また、インターネットで検索をすると、ダウンロードできるサイトが表示されますので、そこからダウンロードできます。
大きな病院では用意されていることもあるので、診察の際に聞いてみましょう。
作成タイミング:症状固定と診断されたとき
後遺障害診断書は、交通事故の治療が終了し、症状固定と判断された時に作成を依頼します。治療により完治することがあるため、後遺障害が残るかどうかは治療途中では判断できないからです。
症状固定の後に整骨院や接骨院へ通院しても構いません。症状固定時期は、傷病の程度によって異なります。
適切な後遺障害診断書の作成
後遺障害診断書は、等級を決定するための大切な書類ですから、不備のないように記載してもらう必要があります。
以下に注意すべき点を表にしました。ご自分で確認するとともに、弁護士に依頼している場合は、適切な内容が記載されているかを再度確認してもらいましょう。
後遺障害等級の認定
後遺障害の認定には、大きく分けると任意保険会社が行う「事前認定」と、直接自賠責保険に認定を求める「被害者請求」の2つがあります。
申請はどちらの方法でも良く、認定手続で後遺障害等級が認定されると、その等級に応じた後遺障害の損害を加害者に請求できます。
後遺障害等級認定の流れは、下記の記事中に詳しく解説しておりますのでご参照ください。
参照:むちうちで後遺症が残った…後遺障害の慰謝料相場・逸失利益を解説
後遺症と後遺障害は違う
後遺症とは、怪我や病気の治療後に残ってしまった障害や症状です。一方、後遺症の中でも後遺障害と認められるには、以下のような条件があります。
- 交通事故が原因であると医学的に証明される
- 労働能力の低下や喪失が認められる
- 労働能力の低下などの程度が、自賠責保険の等級に該当する
つまり、交通事故で残ってしまった後遺症でも、条件に当てはまらなければ後遺障害とは認められません。
後遺障害等級によって示談金は変わる
交通事故の示談金は、後遺障害等級によって金額が異なります。後遺障害があれば、等級による障害逸失利益や慰謝料が発生するからです。
痛みやしびれなどがあっても、後遺障害診断書の内容によっては非該当となるケースもあるので、後遺障害診断書はとても重要です。
後遺障害等級
国土交通省のホームページに、「後遺障害による損害」について詳しく記載されており、後遺障害等級表も確認できますので、詳細はそちらでご確認ください。
後遺障害診断書にかかる費用
後遺障害診断書の作成にかかる費用は、約5,000円から10,000円というところが多いようですが、病院によって異なります。また、費用の支払いについても、後遺障害診断書作成のタイミングや保険会社の対応によって異なります。
かかった費用は、まずはご自身で支払い、後遺障害等級に認定されると、示談の際に相手方に請求できます。
後遺障害診断書を書いてもらえない?
治療は終わったのに、痛みやしびれなどが残っている場合があります。その場合は、病院の医師に「後遺障害診断書」を作成してもらう必要がありますが、まれに後遺障害診断書を書いてもらえないケースがあります。
ここでは、その理由と対処法、および、弁護士に依頼するメリットについて解説します。
書いてもらえない理由と対処法
医師に後遺障害診断書を書いてもらえない理由として考えられるのは以下のケースです。
- 治療中である
- 転院等で症状の経緯が不明
- 後遺障害がない
治療中である
後遺障害診断書は、交通事故の治療が終了し、症状固定と判断された場合に作成されます。
後遺障害診断書の作成後に治療を続けると、交通事故とは関係ないものとみなされるため、まだ治療が終わっていないために、作成してもらえないケース
【対処法】
治療が終了するまで通院し、医師に症状固定と判断してもらった後に、後遺障害診断書の作成を依頼しましょう。
転院等で症状の経緯が不明
後遺障害診断書には、事故によっておきた症状について経緯を追って記載します。ですが、引っ越しなどでやむを得ず転院した場合などは、転院先の医師は事故当初に診察をしていないため、責任を持って書くことが出来ないと言われてしまうケース
【対処法】
通える範囲であれば、症状固定と判断してもらうまで同じ病院へ通院し、後遺障害診断書の作成を依頼しましょう。
通えない場合は、先に通院していた病院から治療記録を取り寄せ、転院先の病院で医師に確認してもらい、転院先の病院で一定期間通院ののち、症状固定となったときに、後遺障害診断書の作成を依頼しましょう。
後遺障害がない
治療により後遺障害が残らないので後遺障害診断書の作成はできないと言われるケース。
【対処法】
後遺障害という言葉は、残存症状が重いというイメージがあり、後遺障害というほどではないと判断されてしまうケースがあります。しかし、痛みや痺れが残っていれば、後遺障害等級に該当するケースもあります。
治癒しているのであれば問題ありませんが、気になる症状がある場合は、今の状態をそのまま書いてもらうよう、医師に丁寧な言葉でお願いしてみましょう。
弁護士に依頼するメリット5つ
交通事故の被害者になってしまった場合に、弁護士に依頼する主なメリットは以下のとおりです。
- 面倒な手続きを弁護士にすべてまかせられる
- 慰謝料が増額になる可能性がある
- 後遺障害等級診断書作成のポイントについてアドバイスがもらえる
- 後遺障害診断書の書き直しを依頼してもらう
- 後遺障害認定後の異議申し立てで適正な等級認定を獲得
面倒な手続きを弁護士にすべてまかせられる
交通事故に遭い、通院治療があるなか、示談等を進めるためには様々な手続きが必要になります。弁護士に依頼することで、これらの手続き全般を代理人として任せることができます。
交通事故の分野に精通した弁護士であれば、後遺障害認定についての手続きにも詳しいので、適切な認定結果が得られやすく、保険会社とのやりとりもすべて任せられるので、精神的な負担も軽減されます。
また弁護士が行う被害者請求の場合は、後遺障害認定に有利となる証拠を追加して申請できます。認定に有利となる証拠を収集し、添付して申請することによって、適正な認定がされるためのサポートになります。
慰謝料が増額になる可能性がある
交通事故の慰謝料は、「自賠責基準」「任意保険基準」「裁判基準」という3つの基準があります。金額は、自賠責基準 < 任意保険基準 < 裁判基準となります。
加害者側の保険会社にまかせた場合、保険会社が独自に定める任意保険基準で算出されますが、弁護士に依頼することで、過去の裁判結果に基づいた裁判基準(弁護士基準)で算出されるので、任意保険基準より多くなります。
後遺障害等級診断書作成のポイントについてアドバイスがもらえる
後遺障害診断書の作成依頼はご自身でもできます。ただし、後遺障害等級認定に関しては、ポイントを押さえていないと、正しい等級の認定がされない可能性があり、すべての医師がそのポイントを把握しているとは限りません。
治療が進み、症状固定がそろそろという時期になったら、交通事故に精通した弁護士に依頼し、後遺障害診断書作成のポイントについてアドバイスをもらうことで、正しい等級認定を獲得できます。
後遺障害診断書の書き直しを依頼してもらう
後遺障害等級認定を受けるための書き方と、医師の判断による書き方は違います。ご自身で医師に後遺障害診断書を作成してもらった後で、書き直しを依頼することは簡単ではありません。
医師によっては、判断の間違いを指摘されたと思われ、再作成に応じてもらえない可能性もあります。弁護士に依頼することで、医師の判断を覆すつもりではないこと、認定のために必要な検査と内容について丁寧に説明することで、後遺障害診断書の修正を依頼してもらえます。
後遺障害認定後の異議申し立てで適正な等級認定を獲得
ご自身で後遺障害認定書の作成を依頼し、申請した結果、「非該当」という結果が出る場合があります。その場合でも、弁護士に依頼し、新たな証拠等により異議申し立てをすることにより、再度審査を行ってもらえる可能性があります。
当事務所では、一度後遺障害認定で「非該当」と判断されたケースでも、後遺障害診断書の内容や診療録、経緯を確認し、弁護士から必要な検査の追加やポイントを押さえた診断書の書き方のアドバイスをさせていただき、あらたな後遺障害診断書を作成してもらい、後遺障害等級を獲得できた事例があります。
まとめ
後遺障害等級の認定には、後遺障害診断書がとても重要です。作成は医師にしかできませんが、すべての医師が記入のポイントを把握しているわけではありません。
早めに弁護士に依頼することによって、後遺障害診断書の記載方法のアドバイスがもらえ、適正な等級認定を獲得できます。
後遺障害等級の認定だけでなく、慰謝料の請求に関しても、保険会社に任せるのではなく、弁護士に依頼することで、裁判基準の慰謝料を獲得できるケースがあります。そのためにも、交通事故に精通した弁護士に相談することをお勧めします。