交通事故で示談しないとどうなる?時効・損害賠償・保険対応の全知識

交通事故で示談しないとどうなる?
交通事故において、加害者と被害者の間で行われる示談は、損害賠償の金額や支払方法を決めるうえで重要な手続きです。
しかし、示談をしないまま放置すると、損害賠償請求の時効裁判への発展など、思わぬトラブルに発展する可能性があります。
一方で、治療が終わらないうちに示談に応じると、適正な補償を受けられないリスクも否定できません。
この記事では、交通事故後の示談で悩む方に向けて、次の3点を中心にわかりやすく解説します。

  1. 示談をしないことで発生する3つのリスク 2. 示談を保留すべき具体的なケースとその判断基準 3. 示談以外の解決方法(自賠責・ADR・裁判)と弁護士のサポート活用法

    示談の適切なタイミングと注意点を理解し、後悔のない対応を行うための参考にしてください。

目次

示談とは何か?交通事故における示談交渉の基本

示談は交通事故の解決手段として多く用いられる方法ですが、その意味や手続きを正しく理解することが大切です。
示談とは、交通事故の当事者同士が話し合いによって、損害の金額や支払い方法などの条件を合意することです。
一度成立した示談は、法律上の和解契約として確定の効力を持ち、原則としてその内容の変更・撤回はできません。錯誤や詐欺などの特段の事情がある場合に限り、変更・撤回を争う余地があるため、合意内容を十分に検討することが重要です。
示談は本来、争いを早期に解決し、当事者の負担を軽減することを目的としています。
しかし、保険会社との交渉がスムーズに進まなかったり、提示される示談金額や過失割合に納得がいかなかったりする場合も当然あります。相手が提示した条件が適切かどうか、冷静に見極めるために弁護士の視点が必要になることもあるでしょう。
特に、後遺障害等級(症状固定後も残った障害の程度を、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所が定める基準に従って等級(1級から14級)で定めたもの)の認定結果が示談金額に影響するケースもあるため、示談成立前に不明点があれば、示談前に弁護士に相談するなどして、十分な情報を得てから合意をしましょう。

交通事故の示談の流れと示談期間|人身事故・物損事故・死亡事故

交通事故の示談交渉の基本的な流れと平均的な示談交渉の期間を、事故の類型別に解説します。

人身事故解決までの示談期間

人身事故の示談は、ケガが完治するか、あるいは症状固定(医学上、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めない状態)するまですべての損害が確定しません。 そのため、治療途中で示談に合意をすると、その後発生した治療費などを請求できないリスクが生じます。示談後に新たな後遺症が判明した場合でも、通常は示談内容に損害賠償の包括的な放棄が含まれるため追加請求は難しいです(ただし、示談時に予見できなかった損害が後に発生し、示談の前提が失われたと評価できる特段の事情がある場合には、例外的に争われる余地があります。)。
そのため、ケガの程度によっては、解決までに数か月から年単位の期間を要するのが一般的です。
症状固定後、後遺障害が残った場合は、自賠責保険へ等級認定を申請します。この申請から結果が出るまで1~3か月程度かかります。
損害額が確定次第、加害者側の保険会社と交渉を開始し、争いがなければ、交渉開始から2~3か月程度で示談が成立することが多いとされています。
ただし、過失割合や後遺障害の等級認定が争点となった場合は、解決までに年単位の期間を要する傾向があります。
示談成立後、示談金が振り込まれるまでには、通常2~3週間程度が目安とされています。

物損事故解決までの示談期間

物損事故は、人身事故とは異なり、比較的短期間での解決が可能です。
示談交渉は、主に物的損害の額が確定するのを待って開始されます。
請求項目は、被害車両の修理費、買い替え差額、代車費用、評価損などです。これらの見積書や請求書を収集し、損害額を確定するのに1~2か月程度が目安とされています。
損害額確定後、加害者側の保険会社との交渉を開始します。修理費の妥当性などが主な争点となり、交渉開始から示談成立までは2~3か月程度で示談が成立することが多いとされています。ただし、修理費や評価損で争いが生じると、解決期間が延びることがあります。
示談成立後、示談金の受領までは2~3週間程度が目安とされています。

死亡事故解決までの示談期間

死亡事故の示談は、損害項目の算定が進められる段階で開始できますが、ご遺族の心情を尊重し、示談交渉は四十九日などの法要後に行うのが一般的です。
請求できる損害項目は、死亡慰謝料、逸失利益、葬儀費用などが主となります。
これらの資料を収集し、賠償額を確定するのに1~2か月程度が目安とされています。入院期間があった場合は、その間の治療費なども加算します。
損害額確定後、加害者側の保険会社と交渉を開始し、交渉開始から示談成立までは2~3か月程度で示談が成立することが多いとされています。ただし、ご遺族が気持ちの整理に時間を要する場合や、加害者への処罰感情が強い場合は、交渉が長期化する傾向があります。
示談成立後、示談金が振り込まれるまでには、通常2~3週間程度が目安とされています。

交通事故で示談しない場合の3つのリスク

示談を行わずに放置した場合、次の3つのリスクが生じる可能性があります。

  1. 時効を迎え損害賠償請求ができない可能性
  2. 民事裁判に発展する可能性
  3. 加害者側任意保険会社との交渉難航に繋がる可能性

    しかし、示談を急ぎすぎると、治療の継続や後遺障害認定に影響が出る場合も否定できません。
    示談のタイミングは重要です。踏まえるべきリスクをしっかり理解し、状況に合わせた選択を進めましょう。

①時効を迎え損害賠償請求ができない可能性

時効を迎え損害賠償請求ができない可能性があります。
交通事故の損害賠償請求権には、時効があります。

【不法行為に基づく損害賠償請求権】

時効 起算日
物損事故 3年 事故発生日の翌日
人身事故(傷害のみ) 5年 事故発生日の翌日
人身事故(後遺障害) 症状固定日の翌日
死亡事故 死亡日の翌日

※時効の起算日は、【損害および加害者を知った時】であり、基本的には事故発生時に加害者を特定できるため、【事故発生日の翌日】が起算日となります。
さらに、自賠責保険の請求権については、別途自動車損害賠償保障法(自賠法)で定められており、その期間は3年です。
時効期間を過ぎると、いくら損害を被っていても、原則として裁判所でその権利を認めてもらえなくなります。
示談をしないまま放置することで、意図せず時効にかかるリスクが高まります。特に、ケガが長引いているケース加害者側保険会社の対応が遅いケースなど、想定外に示談までの期間が長引いている場合には、時効を意識しておきましょう。
時効が迫っている場合には、内容証明郵便による請求(催告)や訴訟の提起(裁判上の請求)などが有効ですが、誤った手続きで時効の完成猶予・更新が認められないケースもあるため、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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②民事裁判に発展する可能性

民事裁判に発展する可能性があります。
示談が長期にわたりまとまらない場合、最終的に裁判へと発展する可能性があります。
裁判は争点の整理や証拠提出、弁論など、手間と時間がかかり、当事者双方に負担となるでしょう。裁判手続きに入ると、裁判費用も必要になります。
法的に決着をつける手段としては有効ですが、なるべくなら早めの話し合いで解決するのが望ましいでしょう。

③加害者側任意保険会社との交渉難航に繋がる可能性

加害者側任意保険会社との交渉難航に繋がる可能性があります。
保険会社との交渉がスムーズにいかない理由にはさまざまありますが、示談をしないでいると相手側の対応が厳しくなる可能性も否定できません。
交渉が難航する背景として、双方の認識の相違や説明不足などが影響することがあります。
手続きが停滞する場合には、第三者である弁護士の助言が有効です。
さらに、加害者本人が対応している場合では、示談に応じる姿勢が乏しかったり、連絡が途絶えたりすることで解決を先延ばしにされる場合もあるでしょう。そうした不誠実な対応によって被害者側は精神的にも大きなストレスを受けます。
こうしたトラブルを未然に防ぎ、適正な賠償を早期に確保するためには、保険会社や加害者の対応を冷静に見極めると同時に、必要に応じて弁護士のサポートを受けるなどの対策が求められます。

示談をしないメリットがあるケースとは?

示談を行わないことはリスクを伴いますが、逆に示談の保留を検討すべき状況もあります。 交通事故の示談では、保険会社との知識や経験の差から、被害者側に不利な条件で話が進むケースも少なくありません。
示談金が適切な金額でないと感じる場合や後遺障害等級の判断が確定していない場合などは、安易に合意すると後々不利になる可能性もあるのです。
示談金は一度合意すると後で増額を求めることが難しいため、見通しがはっきりしない段階で合意するのはリスクがあります。
重要なのは、現在の治療の進捗や後遺症の有無、保険会社の示談案の根拠などを総合的に判断することです。
こうした判断はあなただけで行うのは難しい場合もあります。もし提示された条件や症状固定のタイミングなどで疑問が生じた場合には、弁護士に相談することで客観的な視点が得られ、最適な対応を導く助けになるでしょう。

治療が終わらないうちに示談を急かされているケース

交通事故の損害賠償は、実際にかかった治療費や休業損害、入通院慰謝料などが含まれます。治療が続いている段階で示談額を決定すると、将来的に必要となる治療費やリハビリ費用が正当に評価されないリスクがあります。
保険会社が早期解決を理由に示談を急かすケースは少なくありません。しかし、痛みや障害が残るか分からない状態で示談を結んだ結果、後に体に不具合が残っても追加請求が認められない場合もあります。
治療期間の長さにかかわらず、きちんと後遺障害の有無を確認してから示談に臨むべきでしょう。

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示談金の提示額や過失割合に納得できないケース

示談交渉では、保険会社から提示される示談金が低すぎたり、過失割合に納得いかなかったりするケースもあります。
特に過失割合は、わずかな数字の違いで最終的に得られる損害賠償額が変動するため、慎重な検討が必要です。

【参考:過失割合】
賠償額が1,000万円と仮定して、過失割合により最終的に受け取れる賠償金にどれくらいの差が生じるのか見ていきましょう。
・過失割合が加害者9:被害者1のケース
最終的に受け取れる賠償金は、900万円です。
1,000万円-(1,000万円×1/10)=900万円
・過失割合が加害者8:被害者2のケース
最終的に受け取れる賠償金は、800万円です。
1,000万円-(1,000万円×2/10)=800万円

提示額や過失割合に疑問がある場合、正当な根拠を示すよう要求しましょう。保険会社は必ずしも被害者の利益を最優先とするわけではなく、契約条件や社内基準に基づいて対応します。被害者の希望と異なる判断を示す場合もありますから、冷静に対処する姿勢が大切です。
納得できなければ、示談を成立させる前に弁護士に相談することが大切です。

後遺障害等級の認定結果に争いがあるケース

後遺障害等級は、症状固定後も残った障害の程度を分類するための基準であり、最終的な賠償額を大きく左右します。
しかし、実際には医師の見解や検査結果の不備などで、適切な等級認定を得られないケースもあります。
後遺障害が残っているにもかかわらず、非該当や低い等級を認定された場合、示談を急ぐことはおすすめしません。
後遺障害等級に納得できない場合は、弁護士に相談し、異議申立てや再認定の道を模索することが重要です。

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弁護士への依頼を検討しているケース

加害者が任意保険会社に加入している場合には、あなたの交渉の相手方は、保険会社の担当者です。
保険会社の担当者は、数々の交渉経験を持ち、交通事故事案の示談交渉に長けています。 したがって、交渉力の差が生じることは避けられません。ですが、交通事故事案に強い弁護士であれば、保険会社の担当者と対等な交渉を実現でき、あなたにとって有利な解決を導けるでしょう。
弁護士の依頼を検討している場合には、弁護士を選任できるまでは、示談を急がずに弁護士とよく相談するのが望ましいでしょう。

交通事故で示談をしない・断る場合に検討すべき3つの方法

示談が成立しない場合や、保留が長期化する場合には、代替の手段を検討することも大切です。
主な対処方法は、次の3つです。

  1. 自賠責保険への被害者請求
  2. 交通事故紛争処理センター(ADR)を利用する
  3. 民事裁判を起こす(民事訴訟)

    これらの方法はいずれもメリット・デメリットがあるため、費用や時間、解決のスピードなどを踏まえながら選ぶことが大切でしょう。示談を行わないと決める前に、どのルートなら最適に解決できるかを慎重に見極める必要があります。
    特に、裁判は最終手段となりやすいですが、手間と出費がかさむ点が避けられません。保険会社を介さずに直接請求できる被害者請求や、第三者の仲介を利用したADRなども検討することで、解決への道が開ける場合があります。

①自賠責保険への被害者請求

自賠責保険への被害者請求とは、交通事故の被害者が加害者側の自賠責保険会社に対し、直接損害賠償金を請求する手続きです。
通常、交通事故の賠償請求は加害者側の任意保険会社を通じて行われますが、この被害者請求は、その手続きを待たずに、被害者自身が加害者側の自賠責保険会社に対して、保険金の支払いを求めることができる権利です。
自賠責保険は、交通事故の被害者に対する最低限の補償を目的とした強制保険です。被害者請求の制度は、加害者の経済状況や任意保険の有無に関わらず、被害者が迅速に治療費などの補償を受けられるよう、法律(自動車損害賠償保障法)で認められています。

請求できる項目

被害者請求で請求できる主な損害項目は以下のとおりです。

  • 治療費:事故による傷害の治療にかかった費用
  • 休業損害:事故による負傷で仕事を休んだことによる損害
  • 慰謝料:入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料
  • 逸失利益:後遺障害や死亡によって将来得られなくなった収入など

請求のタイミング

被害者請求は、一般的に治療終了後、損害額が確定してから行われますが、治療費や休業損害など一部の損害については、示談成立を待たずに治療中でも仮払いとして請求することも可能です。
示談がまとまらない場合でも、自賠責保険の範囲内で先に受け取れる補償があるため、すぐに治療費や生活費に充てることができるメリットがあります。
ただし、被害者請求で受け取れる金額には上限があります。

損害の種類 支払上限額(被害者1名につき)
傷害による損害 120万円
後遺障害による損害 75万円~4,000万円(等級による)
死亡による損害 3,000万円

実際の損害を全てカバーできるわけではありません。高額な逸失利益や後遺障害に対する賠償を求める場合は、別途任意保険や裁判を通じて請求する必要があります。
参照:国土交通省『限度額と補償内容(2025年版)』

②交通事故紛争処理センター(ADR)の利用

交通事故紛争処理センター(ADR)とは、交通事故に関する損害賠償の示談交渉がまとまらない場合に、被害者と加害者側(保険会社など)の間に入って中立・公正な立場から和解のあっせんや審査を行う機関です。
利用料は無料で、弁護士費用や相談料もかかりません。
この制度を利用することで、被害者・加害者の誤解や行き違いを第三者が整理し、中立・公正な立場から、被害者の正当な利益を踏まえた公平な解決案(あっせん)を提示してもらえるのが利点です。
裁判ほどの費用や手間がかからない点もメリットといえるでしょう。
ただし、紛争処理センターであっせんを行っても、必ず合意に至るとは限りません。話し合いがまとまらなければ、最終的には裁判に移行する可能性がある点は念頭に置きましょう。
参照:公益財団法人 交通事故紛争処理センター

交通事故紛争処理センターとは|利用方法やメリット・デメリット

③民事裁判(民事訴訟)

示談交渉が完全に決裂した場合や、過失割合などで大きく対立している場合には、裁判を起こすことが選択肢として考えられます。
裁判所の判断によって損害賠償額や責任の範囲を法的に確定させるため、示談交渉のような不透明さは減るでしょう。
しかし、民事裁判は書類準備や証拠収集が必要となり、時間も長期に及ぶことが多いです。さらに、裁判所の判決が必ずしも自分に有利になるとは限らず、思ったほどの賠償額が認められない場合もあります。
そのため、裁判に踏み切るかどうかはリスクとリターンを十分に検討することが重要です。交渉での解決が難しい場合でも、弁護士の意見を取り入れながら最善の選択肢を探りましょう。

示談交渉がもつれる理由とトラブル事例

示談交渉は時に感情的になったり、条件の不一致が続いたりして長期化する傾向があります。
示談がスムーズに進まない背景には、当事者同士の主張の食い違いだけでなく、専門的な知識不足や保険会社の対応姿勢など、さまざまな要因が複雑に絡み合っていることが多いです。過失割合や慰謝料の金額など、納得できない部分については納得のいくまで交渉を続ける必要があります。しかし、ただ感情に任せると冷静な合意を得るのが難しくなり、結果としてトラブルが深刻化することもあります。
こうしたトラブルを回避するには、事前にできるだけ正確な情報を収集し、交渉のポイントを把握しておくことが大切です。

過失割合の折り合いがつかないケース

交通事故における損害賠償では、加害者と被害者それぞれの過失の度合いが争点となりやすいです。
少しの違いでも、最終的に支払われる賠償額が大きく変わるため、お互いにより有利な過失割合を主張する傾向が見られます。過失割合の判断には、過去の判例や事故発生時の環境(信号の有無や車両の速度など)を参考にするのが一般的です。しかし、当事者が主観的に意見をぶつけ合うだけでは話が平行線に陥る可能性が高いでしょう。
交渉が難航する場合は、事故対応に精通した弁護士の意見を取り入れ、妥当な基準に基づいた話し合いを続けることが重要です。

保険会社が提示する金額への不満による長期化

保険会社が提示する示談金額は、必ずしも被害者の希望や実際の損害に見合った数字ではない場合があります。
例えば、慰謝料の算定基準には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判所基準)の3種類があります。
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このうち、弁護士基準(裁判所基準)により算定した慰謝料が一番高くなります。
加害者側の保険会社が最初に提示してくる慰謝料は、任意保険基準により算定した金額で、弁護士基準に比べて低額であることがほとんどです。
こうした提示金額に対し被害者が納得できず拒否すると、交渉が平行線をたどり時間だけが経過してしまいます。さらに、保険会社からの説明が不十分だと不満は増し、早期の解決が難しくなるでしょう。
示談金の根拠を具体的に尋ねたり、弁護士に依頼して相場や公的基準を照らし合わせたりすることで、客観的な妥当性を確認できます。 納得感を得られるまで交渉し、必要ならば紛争処理機関や裁判も検討する姿勢が大切です。

交通事故の示談が長引く8つの原因と早期解決のポイントを徹底解説

示談しないと加害者はどうなる?刑事責任と民事責任の関係

交通事故の加害者は、民事だけでなく刑事面での責任も問われる可能性があり、示談が成立しているか否かが刑事手続きに一定の影響を与えます。
交通事故における加害者の責任は、被害者への損害賠償を担う民事上の責任と、道路交通法や刑法上の責任を問われる刑事上の責任が存在します。
示談は被害者との和解であり、被害感情の軽減や被害者救済に寄与するため、刑事手続きでの量刑にも影響する場合があります。
一方で、被害者が示談を拒否すると、加害者は被害者との和解ができないまま刑事手続きを受けることになります。
示談の成立は、刑事処分において被害回復の努力として情状面で考慮されることがあり、示談しない場合被害者が示談を拒否する場合には、結果的に実刑や罰金の額などが重くなる方向に影響する場合があります。
つまり、加害者が示談を望む理由のひとつには、被害者への謝罪や被害弁償を通じて刑事責任を軽減したいという意図があるのも事実です。

示談で刑事責任が軽減される仕組み

加害者が事故後、真摯に謝罪し、被害者と合意を得て示談を成立させると、検察や裁判所は加害者の反省や被害の回復状況を考慮し、刑事責任を一定程度軽減する場合があります。
これは被害者が加害者を許した、あるいは損害が十分に補償されたと評価されることが背景にあります。
具体的には、罰金刑や執行猶予付き判決が選択されることもあります。もちろん、示談だけで刑事責任が決まるわけではありません。
事故の重大性や加害者の過去の違反歴などによっては、示談の有無に関わらず厳しい処分が下される場合もあります。

被害者側が示談をしないときの民事上のリスク

民事上の責任については、示談が成立しないと、被害者から民事裁判を起こされるリスクがあります。
結果的に金銭的な負担が増すおそれや解決までの期間が長期化する可能性があります。示談で合意していればある程度金額が見通せますが、裁判では請求の範囲が広がることも少なくありません。

弁護士に依頼するメリット|交通事故の示談を早く終わらせたい!

示談交渉が難航したり、相手保険会社の提示に納得できなかったりしたときは、弁護士への依頼をおすすめします。
以下、弁護士への依頼をおすすめする理由とメリット、さらには多くの人が懸念する弁護士費用について解説します。

弁護士がおこなう交渉サポートと増額交渉

弁護士が代理人として介入すると、保険会社から提示される示談金の根拠をひとつひとつ検証し、適正な賠償基準との比較を行います。
加えて、後遺障害等級や逸失利益の算定などで見落とされがちな部分まで洗い出すことで、増額交渉につながる可能性が高まります。
弁護士によるサポートがあることで、被害者自身には分かりにくい法的根拠や相場を踏まえた交渉が進められます。感情的な対立を避けながら、合理的に示談をまとめるサポートを得られるのはメリットです。
保険会社からの提示に納得できない場合は、弁護士に相談するタイミングを早めるほど結果的に有利な条件となりやすいことも覚えておきましょう。

後遺障害等級認定のサポート

後遺障害等級は、身体に残った障害の程度を1級から14級まで区分して示す制度です。
認定される等級が上がるほど損害賠償金は高くなりますが、診断書や検査データの提出が不十分だと、実際の症状よりも低い等級しか認められないケースも見受けられます。
例えば、適切な画像診断や専門医の所見がなければ、実際の障害が正しく評価されないおそれがあります。後遺障害認定の手続きには、医療や法律の知識が関わるため、医師や弁護士によるサポートが不可欠です。
正しい等級認定を受けることで、適正な示談金を得られる可能性が高まります。
障害の程度を軽く見積もられてしまわないよう、検査や書類準備に力を入れることが重要です。

弁護士費用特約による自己負担軽減の可能性

自動車保険のオプションとして用意されている弁護士費用特約は、弁護士への依頼にかかる費用を保険会社が負担してくれる制度です。
弁護士費用特約がある場合には、費用負担が大幅に軽減されます。 弁護士費用は300万円の上限(法律相談料は10万円の上限)がありますが、多くのケースでは、弁護士費用のほとんどをこの保険でまかなうことができるでしょう。
弁護士費用特約が利用できれば、自己負担を抑えて弁護士に依頼できるケースが多いです。
費用面の負担を気にすることなく弁護士に相談できるのはメリットでしょう。
ご自身の保険契約を一度確認しましょう。

交通事故における弁護士費用特約について詳しく解説

交通事故の示談に関するよくあるQ&A2選

交通事故の示談に関するよくある質問について、一問一答形式でお答えします。

交通事故の示談交渉は自分でできる?

交通事故の示談交渉は、ご自身で進めることは可能ですが、事故内容によっては専門的判断が必要となる場面があります。迷う場合は弁護士に相談することをおすすめします。
特に、人身事故や過失割合が争点となる事故では、ご自身での交渉によって不利益を被るリスクがあります。
ご自身で対応しても問題になりにくいのは、以下のような軽微なケースです。

  • 物損事故のみ:ケガがなく車の修理費のみが損害の場合
  • 損害額が非常に軽微:請求する金額が少額で保険会社の提示額と大きな差がない場合

    適正な賠償金を獲得するためには、弁護士に依頼することをおすすめします。

交通事故の示談交渉で長引く主な原因は?

交通事故の示談交渉が長引く代表的な8つの原因は以下のとおりです。

  • 原因1|治療が長引いていて損害額が確定しない
  • 原因2|過失割合で揉めている
  • 原因3|後遺障害の有無や等級認定に時間がかかる
  • 原因4|慰謝料の算定基準で争いがある
  • 原因5|保険会社の対応が遅い・担当が頻繁に変わる
  • 原因6|弁護士の対応が遅い・方針が合わない
  • 原因7|加害者側が無保険または自賠責保険のみ
  • 原因8|示談が不調・不成立により訴訟やADRへ移行

    自分のケースがどれに当てはまるのかをチェックし、早期対策を講じましょう。
    原因が明確になれば、必要な書類の収集や弁護士への相談など対処の方向性がはっきりするはずです。

交通事故の示談が長引く8つの原因と早期解決のポイントを徹底解説

まとめ

交通事故の示談をせずに交渉を放置すると、時効の成立や裁判への発展など、被害者・加害者双方にデメリットが生じる可能性があります。
しかし、逆に治療の途中や後遺障害の認定に疑義がある段階で早期示談を結ぶのも、適切な補償を受け取れなくなるリスクが伴います。
必要に応じて弁護士に相談することで、示談交渉を有利に進め、リスクを最小限に抑えられるでしょう。
ネクスパート法律事務所では、交通事故事案に強い弁護士が多数在籍しています。
初回相談は30分無料です。ぜひ一度ご相談ください。

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