高次脳機能障害と損害賠償請求

高次脳機能障害とは、交通事故によって、外部から頭部に力が加わり、脳が損傷を受け、高次脳機能に障害が生じた状態をいいます。

高次脳機能障害患者は、外見からすると異常はみつけられないことがほとんどです。

したがって、被害者の方は、会社や同僚その他周囲の人からの後遺障害への理解を得られないことも多く、二次的な苦しみを味わうことが多くなります。

しかし、事故後の人生を、ご家族等の理解やサポートなしに歩むことは不可能です。

そのため、損害賠償として、後遺障害の等級に応じた慰謝料等を獲得することだけでなく、将来的に介護が必要になる場合の将来介護費も含めて十分な補償を得た上で示談する必要があります。

ネクスパートの弁護士は、高次脳機能障害を負った方のため、治療の方針決定、後遺障害認定及び将来介護費等の獲得に向けて、あらゆるサポートをさせていただきます。

まずは、お気軽にご相談ください。

 

高次脳機能障害とは

事故後の具体的な経過としては、第1段階として、頭部外傷によって脳に回転性の運動が生じ、脳実質に大きなひずみが生じることをきっかけとして、神経細胞体から伸びて他の神経組織と連絡している軸索が損傷を受けます。

この一次性損傷をびまん性軸索損傷といいます。

第2段階として、その後の生体反応の結果として、頭蓋内血腫や脳腫等が徐々に脳を圧迫して脳全体が損傷する等が起こります(二次性のびまん性脳損傷)。

いずれの段階においても、脳の広範囲が損傷されるため、損傷部位が担当する機能の連結した機能(高次脳機能)の障害が現れる点で違いはありませんが、高次脳機能障害の有無を判断するにあたって、画像所見や意識症状の現れ方に大きく影響を及ぼす重要なポイントです。

高次脳機能障害による具体的な症状はいくつか考えられますが、事故後の発生の経過によって、大きく分けると以下の2種類が考えられます。

 

① 意識障害

交通事故の際の一次性損傷による意識障害は、外傷直後からの意識障害を大きな特徴とするのに対し、二次性脳損傷では、頭蓋内血腫や脳腫・脳浮腫が増悪して途中から意識障害が深まるという点で、症状の経過が異なります。

 

② 高次脳機能障害

高次脳機能障害による典型的な症状としては、認知障害(記憶・記銘力障害、注意・集中力障害、遂行機能障害等で、具体的には、新しいことを覚えられない、気が散りやすい、行動を計画して実行することができない等)、行動障害(言動が子どもっぽくなった、マナーやルールを守れない、欲求や感情をコントロールすることができない等)、人格変化(気力の低下、自己中心性等)が挙げられます。

なお、脳外傷による高次脳機能障害は、急性期には重篤な症状が発現していても、外傷後の意識障害の回復経過と同様に、時間の経過とともに症状が改善する傾向を示すのがほとんどです。

したがって、事故後時間が経ってから意識症状が悪化した場合、高次脳機能障害と認定されないことも多いので注意が必要です。

 

高次脳機能障害の有無の判断方法

高次脳機能障害についての損害賠償請求を行う上で、自賠責による等級認定を獲得することはとても重要です。

以下では、自賠責における認定の判断要素を紹介します。

 

① 画像所見

救急や初期段階ではCTのみしか撮影されないことも多々ありますが、CTのみではびまん性軸索損傷を診断するのは不十分ですので、早期の段階でMRIを撮影することをおすすめします。

これらの画像により、脳出血像や脳挫傷痕の確認ができれば、外傷に伴う脳損傷の存在が確認されやすいと言われています。

しかし、現在の画像技術では、びまん性軸索損傷の発症を確認することは困難ですので、事故後ある程度期間が経過した時点で、MRIやCTにより、脳室の拡大や脳全体の萎縮が確認されれば、びまん性軸索損の存在を推認できるとされています。

もっとも、精度の高い画像を撮影することは必須ですので、1.5テスラ以上、拡散強調画像(DWI)及び磁化率強調画像(SWI)によるMRI撮影、その他PET ・SPECT検査により脳内血流の活性程度を明らかにしたり、脳波や誘発電位を測定し、異常波や異常電位が生じていないか確認することも有用です。

 

② 意識障害

昏睡、半昏睡が6時間以上(JCS3ケタorGCS8点以下)、又は意識障害が1週間以上継続(JCS1~2ケタ、GCS13~14点)するというのが条件に挙げられています。

これに加えて、脳挫傷、くも膜下出血、びまん性軸索損傷などの傷病名がついていることが、一定の基準とされています。

 

③ 症状の経過

認知障害、行動障害等の高次脳機能障害が、頭部外傷をきっかけとして発現し、次第に軽減しながら症状が残存する、という、症状の経過をたどるものが、自賠責によって高次脳機能障害として認定される傾向にあります。

ただし、このような経過をたどらない外傷性脳損傷が存在することも一般的に理解されているところではありますが、自賠責は高次脳機能障害として認定しない傾向にあり、裁判例も、自賠責において考慮されるのと同様の要素を検討して判断する傾向が強いです。

もっとも、他の経過をたどる脳損傷であっても、何らかの医学的裏付けを持って主張すれば、裁判所の頭を悩ませ、賠償を認めさせることは可能ですので、諦めずに弁護士に相談しましょう。

 

高次脳機能障害の後遺障害等級

そして、これらの自賠責の認定条件を満たした場合、障害の程度に応じて後遺障害等級が認定されることになります。

この認定の際に必要な診断書を正確に作成してもらうためにも、専門医及び、高次脳機能障害専門の治療を行っている大学病院やリハビリセンターに受診しましょう。

ネクスパートでは、提携医と相談の上、画像診断の見通しを検討するとともに、どのような通院をすべきかも含めて被害者の方およびその家族の方をサポートします。

等級 神経系統の機能または精神の障害
1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
・食事・入浴・用便・着衣等、生命維持に必要な行動について、常時介護を要する
・高度の痴ほうがあるため、常時監視を要する
2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
・食事・入浴・用便・着衣等、生命維持に必要な行動について、随時介護を要する
・著しい判断力の低下や情動不安定があるため、看視を欠かすことができない
3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
・生命維持に必要な行動はできるが、労務に服すことができない
・記憶や注意力等に著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難である
5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
・単純繰返し作業等に限定すれば一般就労可能だが、特に軽易な労務しかできない
・一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には職場の理解と援助を欠かすことができない
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
・特に軽易な労務等に限定すれば一般就労可能だが、軽易な労務しかできない
・一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができない
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
・通常の労務はできるが、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限される
・一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題がある

 

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