更新日:2025年7月25日 (金)
公開日:2023年7月25日 (火)
交通事故の過失割合に納得できないときの対処法|変更を求める手順
サマリー
交通事故の示談交渉において、相手方の保険会社から提示された過失割合に納得がいかず、そのまま受け入れてよいのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。過失割合は受け取る賠償額に大きく影響するため、疑問がある場合は安易に合意せず、事故状況を正しく反映させた割合であるかを慎重に確認することが大切です。この記事では、過失割合が決まる仕組みや揉めやすいケースをはじめ、不満があるときの具体的な対処法や弁護士に相談するメリットについてわかりやすく解説します。
-
6
交通事故の過失割合が決まる仕組み
交通事故における過失割合とは、発生した事故に対する双方の責任(不注意や義務違反など)の割合を数値化したものです。過失割合は警察が現場で決定するものではなく、民事上の損害賠償問題を解決するための示談交渉において、当事者同士の話し合いと合意によって決定されます。
損害賠償の実務では、まず治療費や慰謝料、休業損害などの損害総額を算定します。そのうえで、決定した過失割合に基づいて過失相殺が行われ、最終的に加害者側から支払われる具体的な賠償金の金額が算出されます。
過失割合は最終的に受け取る賠償額に大きく影響するため、示談交渉における重要な協議事項となります。
任意保険会社や代理人を交えた交渉の流れ
加害者が任意保険に加入している場合は、保険会社の示談代行サービスにより、加害者本人ではなく保険会社の担当者が交渉窓口となるのが一般的です。保険会社は、過去の裁判例を基準として事故類型ごとの基本割合を算出し、具体的な過失割合を被害者側に提示します。
被害者側は提示された内容を検討し、受け入れるか再交渉を求めるかを判断します。被害者自身が交渉を進めることも可能ですが、弁護士などの代理人を立てている場合は、代理人と加害者側の保険会社との間で事故状況や修正要素に関する協議が行われます。
双方が提示された過失割合や損害額に納得し、合意書(示談書など)を取り交わすことで示談が成立し、過失割合が確定します。当事者双方が合意に至らない限り、一方の提示だけで割合が強制的に決まることはありません。
過失割合で争いになりやすいケース
交通事故の示談交渉において、双方が最初から納得してスムーズに過失割合が確定するケースばかりではありません。事故の状況や損害の大きさ、当事者同士の認識の違いによって、過失割合をめぐる意見の対立が生じやすい傾向があります。
事故状況を示す客観的な証拠が乏しい場合
事故現場の様子や当時の状況を示す客観的な証拠が少ないと、過失割合で争いになりやすくなります。客観的証拠には、ドライブレコーダーや防犯カメラの映像、事故現場や車両の損壊状況を写した写真、警察が作成する実況見分調書、目撃者の証言などが挙げられます。
こうした判断材料が乏しい場合、事故態様の詳細を正確に把握することが困難になります。結果として、過失の有無や程度を客観的に評価できず、双方が自己に有利な推測に基づいて主張を繰り広げることにつながります。
損害額が高額で過失相殺の影響が大きい場合
怪我の程度が重い人身事故や高額な車両の損害など、全体の損害額が大きくなる事故ほど、過失割合の決定において揉めやすくなります。
例えば、損害額が1,000万円と認められたケースにおいて、2割(20%)の過失相殺が適用されると、受け取れる賠償額は800万円となり、差額は200万円にのぼります。
損害額が高額であるほど、過失割合が1割変わるだけでも最終的な賠償金額に数十万〜数百万円の大きな差が生じるため、交渉がシビアになりやすい傾向があります。
当事者間の主張の食い違いや感情的な対立がある場合
事故発生時の信号の色や一時停止の有無、走行速度など、事故当時の状況について加害者と被害者の認識が真っ向から食い違うことは少なくありません。
お互いに「相手に過失がある」と感情的になって譲歩を拒んでしまうと、当事者同士の協議だけでは話し合いが平行線をたどり、解決までの期間が長期化する要因になります。
相手方の保険会社が一方の言い分のみを前提としている場合
相手方の任意保険会社は、自社の加入者(加害者)からのヒアリング内容や申告に基づいて初期の過失割合を試算することが一般的です。
加害者の主張のみを鵜呑みにして事故状況が客観的に検証されていない場合、被害者側から見ると実態とかけ離れた一方的で不利な過失割合が提示されることになり、強い不満や不信感につながります。
過失割合に納得できないときの対処法
相手方の保険会社から提示された過失割合に納得がいかない場合、安易に示談書へ署名・捺印をせず、適切な手順を踏んで対応することが大切です。ここでは、過失割合を見直すための具体的な対処法を解説します。
客観的な証拠を集めて反論する
過失割合の変更を求めるためには、事故当時の状況を正確に証明できる客観的な証拠を提示して再交渉を行う必要があります。相手方に一時停止違反や前方不注意などの事情があれば、過失割合が修正される可能性があります。
過失割合の主張や見直しに有効とされる客観的証拠には、主に以下のようなものがあります。
- ドライブレコーダーの記録映像
- 事故現場付近の防犯カメラの映像
- 事故現場および車両の損壊状況がわかる写真
- 第三者である目撃者の証言
相手方の主張を鵜呑みにせず、客観的証拠をもとに事故態様を正確に主張することが重要です。
ADR機関(裁判外紛争解決手続)を利用する
当事者同士の話し合いで合意に至らない場合は、裁判外紛争解決手続(ADR)の利用が選択肢となります。交通事故に関する代表的なADR機関としては、公益財団法人日弁連交通事故相談センターや公益財団法人交通事故紛争処理センターが挙げられます。
ADR機関では、中立的な立場の弁護士などが間に入り、双方の意見を聴取したうえで和解や示談のあっせんを行います。裁判と比較して手続きが柔軟であり、利用手数料が原則として無料であるため、費用を抑えつつ迅速な解決を図りやすい特徴があります(※実際の解決までの期間や結果は事案によって異なります)。
あっせんで合意できない場合でも審査・裁定の手続きへ移行できる場合があり、提示された裁定案を被害者側が承諾したときは保険会社側に拘束力が生じる仕組みとなっています。
民事訴訟(裁判)を提起して判断を仰ぐ
示談交渉やADRでも過失割合の争いが解消されない場合は、裁判所へ民事訴訟を提起して法的な解決を図ることになります。
交通事故訴訟では、双方の主張や証拠が出揃った段階で、裁判所から過失割合を含めた和解案が提示されることが一般的です。判決に至る前に和解が成立すれば、早期解決や当事者による任意の履行が期待できます。
和解が成立しなかった場合は、当事者尋問などを経て、裁判所が客観的な証拠に基づき判決として適正な過失割合を最終決定します。
過失割合の交渉を弁護士に依頼するメリット
交通事故の過失割合について相手方保険会社と意見が対立した場合、当事者だけで話し合いを続けるのは容易ではありません。弁護士に交渉を依頼することで、法的な見地からの主張や手続きの円滑化など、さまざまなメリットが期待できます。
相手方保険会社との直接交渉による精神的負担を軽減できる
過失割合に不満がある場合、相手方や保険会社に対する不信感や感情的な対立から、示談交渉そのものが大きなストレスになるケースが少なくありません。
弁護士に依頼すると、相手方保険会社とのやり取りの窓口をすべて弁護士に任せることができます。直接やり取りをする精神的な負担から解放され、冷静な話し合いを進めやすくなります。
過去の裁判例に基づいた適切な過失割合の主張が期待できる
過失割合は、事故の基本類型や過去の裁判例をもとに、個別の修正要素を加味して判断されます。相手方の保険会社が提示する割合が、必ずしも法的に妥当とは限らない場合があります。
判例や法的知見を踏まえた弁護士が介入することで、事故状況の個別事情を法的に分析し、適切な過失割合を導き出して説得力のある主張を行うことが期待できます。
実況見分調書などの客観的資料の取得をスムーズに進められる
過失割合を争う際には、警察が作成した実況見分調書などの刑事記録をはじめとする客観的な証拠の収集が欠かせません。
個人では手続きの進め方や入手時期の判断が難しい場合もありますが、弁護士であれば適切な手順で刑事記録を取り寄せ、証拠に基づいた具体的な反論の準備を整えることが可能です。
過失割合に疑問がある場合は弁護士への相談を検討
交通事故の示談交渉において、相手方の保険会社から提示された過失割合に疑問や不満を抱いた場合、安易に合意書へ署名・捺印することは避ける必要があります。
一度示談が成立してしまうと、後からその内容を覆したり再交渉を行ったりすることは法的に極めて困難になります。
提示された内容に納得がいかないときは、相手方の主張をそのまま受け入れるのではなく、ドライブレコーダーや現場の状況などの客観的な証拠をもとに、事故の態様が正確に反映されているかを慎重に検討することが大切です。
客観的な証拠に基づいた冷静な状況把握が重要
事故当事者同士の記憶や主張が食い違っている場合、感情的な対立が深まり、話し合いが平行線をたどってしまうことも少なくありません。
相手方の保険会社が提示する過失割合は、必ずしも裁判例などの法的な基準に厳密に合致しているとは限らず、相手方契約者の言い分のみを前提としているケースも見受けられます。
そのため、双方が主張する事実関係のどこに食い違いがあるのかを明確にし、客観的な証拠と過去の裁判基準に照らし合わせて見極める作業が不可欠となります。
法的判断や証拠収集に不安がある場合は法律相談を活用
事故状況の立証に必要な証拠をどのように集めればよいかわからない場合や、過去の裁判例における類似事案の判断基準を調べるのが難しい場合は、弁護士への相談を検討するとよいでしょう。
法律相談を利用することで、法的な見通しや収集すべき証拠についての助言を得ることができ、今後の対応方針を整理しやすくなります。
提示された過失割合に対して疑問や不安を感じている場合は、示談成立前に法律相談などの機会を活用し、適切な判断に向けた検討を進めることが選択肢の一つとなります。
まとめ
提示された過失割合は受け取る損害賠償金の額を大きく左右するため、納得がいかないまま示談に応じることは避ける必要があります。
過失割合の変更や見直しを求める際には、ドライブレコーダーの映像や実況見分調書といった客観的な証拠を揃えたうえで、過去の裁判例に照らして論理的に主張を組み立てることが求められます。
当事者間での話し合いが難航する場合や、証拠の収集・法的判断に迷う場合は、ADR機関の利用や弁護士への相談など、適切な手続きや注力分野における知見を活用しながら慎重に対応を進めていくことが重要です。
コラム監修者
JUNICHI TASHIRO
所属:福岡オフィス 支店長
福岡県北九州市出身。小倉高校、岡山大学法学部、神戸大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所福岡オフィス所長として、依頼者にとって何が大事かを第一に考え、スピード感をもって解決することを信条とし、どこの事務所よりもネクスパート法律事務所に依頼したいと思ってもらえるよう日夜奮闘中。