父はすでに他界しており、母の老後、母は弟と地元で近くに住んでいました。
母の財産は多額でしたが、そのほとんどが不動産(賃貸の木造アパート等)でした。
母は、地元にいる弟に、不動産を引き継いで地盤を守りたいという思いから、遺産のほとんどを弟に相続させる旨の遺言を作成し、亡くなりました。
しかし、依頼者も長男として、生前母の面倒を見ていましたし、弟にはすでに母の生前から多額の援助がありました。
依頼者としては、弟と揉めたいわけではないが、最低限受け取れるものは受け取りたい、という思いで、当事務所に依頼して、遺留分侵害額請求(当時の遺留分減殺請求)を行うことになりました。
不動産は、いずれも築30年を超える木造アパートや、古びた一軒家でした。
建物にはほとんど価格がつかない、ということになります。
しかし、アパートは毎月家賃が入ってきており、収益を生む物件です。
不動産の評価によって、受け取れる金額が1000万なのか3000万なのか、大きく変わってきます。
このことから、不動産の評価額をどうするか、大きな争点になりました。
遺留分侵害額請求は、被相続人がお亡くなりのときから1年以内に行使しなければなりません。
また、行使したことを証拠として残すために、内容証明郵便を利用します。
そこで、弁護士は、まず弟宛に内容証明郵便で連絡をして、話し合いによる解決を求めました。
弟は、「地元の不動産屋に聞いた価格はこの通りだ」と、妥当な額は1000万円であると一方的に決めつけて、話し合いがうまく進みませんでした。
その後、弟も弁護士に依頼しましたが、やはり話は進まず、やむなく、訴訟を提起することになりました。
訴訟を提起して、遺産の範囲を確定させた後に、中間合意をという手続をとります。
これにより、裁判所が選任した不動産鑑定士の評価に双方が応じる、ということを互いに確約をします。
裁判所が選任した不動産鑑定士は、中立的な評価をしますので、互いにこれにはもう異議を出しません、ということです。
その後、鑑定結果が出た後、中間合意に従って、双方納得の上、最終的な合意を行うことができました。
交渉では、相手方である弟は、1000万円が限界だと言って譲りませんでしたが、訴訟の結果、弟も納得して依頼者に2500万円を支払う、ということになりました。
家族間で裁判を行うのは憚られますが、逆に裁判をして互いに納得の上、最後は握手で終われるということもあるものです。
不動産の評価で折り合いがつかない、というような場合には、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。