遺言書作成
相続人同士で揉めないようにするためにも、資産がある人は遺言書を作成すべきです。
このページでは、遺言書を作るために必要な知識をお伝えします。
「遺言書を作成しておいてくれれば争いにならなかったのに…」と言われないためにも、ぜひご参考にしてください。
遺言書について
いざ遺言書を書こうにも、わからないことは多いのではないでしょうか?
よくある悩みは…
- 遺言書はを作成すると言っても、どのような方法で作成するのか?
- どのような点に気を付けなければならないのか?
- どんな種類があるのか?
ここでは、遺言書の種類、作成方法、遺言書作成時の財産調査について説明します。
せっかく作った遺言書が無効にならないよう、ポイントを押さえていきましょう。
遺言書とは
遺言書とは、被相続人の財産のわけかたが記入されている書面です。
遺産分割協議や法律で決められた法定相続分よりも、遺言書に記載された内容が優先されます。
ただし、一定の範囲の法定相続人には最低限の権利を保障する、遺留分という制度もあります。
遺言書を作成するメリット
遺言書を作成するメリットは、相続人同士のトラブルを避けることです。遺言書が無い場合、法定相続人同士で、遺産分割協議をします。
遺産分割協議で一番大変なのは、①相続人全員参加し、②全員の同意を得なければいけない点です。
1人でも参加しない者がいたり、遺産分割案に賛成しない者がいたりした場合には、いつまでも合意にたどり着けません。
遺言書で誰に何をどのくらい渡すのかを指定しておけば、自分の財産を遺したい人に相続ができるので、例えば分割が難しい自宅などの不動産は分割せず、1人の相続人に相続させることができます。
遺言書の種類
遺言書には以下の3つの種類があります。順番にみていきましょう。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が「自筆」ですべての文を書く遺言です。日付・署名を記入し、捺印をします。
代筆や、ワープロ・パソコンで作成した自筆証書遺言は原則無効です。
ただし、平成31年1月13日以降に作成された自筆証書遺言については、財産目録の部分は自筆でなくともよくなりました。
遺言書に別紙として添付する財産目録については、パソコンなどで作成したものを添付できます。登記事項証明書や預貯金の通帳のコピーを添付できます。
自筆証書遺言のメリットは、以下の2点です。
- いつでも無料で作成できる
- 内容を誰にも知られずに作成できる
自筆証書遺言のデメリットは、以下の4点です。方式が厳格なため、例えば訂正した場合などに、方式不備で無効になってしまうことがある点です。
- 方式が厳格なため、方式不備などで無効になる可能性がある
- 家庭裁判所で検認手続きをする必要がある
- 自筆証書遺言の保管制度を利用していない場合、破棄・隠匿・改ざんの恐れがある
- 全文自筆のため、手が不自由の場合に利用できない
このように、自筆証書遺言には様々なデメリットがあります。
公正証書遺言
自筆証書遺言のデメリットを補う方法として、公正証書遺言があります。
公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらう遺言です。遺言者が公証人に遺言の内容を伝えて、それに基づいて法律の専門家である公証人が作成するため、方式不備で無効になる恐れがありません。
公正証書遺言は無効になるおそれ恐れがないというメリットのほかに、以下3点のメリットがあります。
- 家庭裁判所で検認手続きをする必要が無い
- 破棄・隠匿・改ざんの恐れが無い
- 公証人が遺言者の署名を代筆できる
公正証書遺言のデメリットは、以下の2点です。
- 公証人に依頼するので費用がかかる
- 証人2名の立会が義務付けられており、遺言の内容を証人に知られる
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、遺言者が作成した遺言を2名以上の証人と一緒に公正役場に持ち込み、遺言書の存在を保証してもらう形式の遺言書です。
自分の遺言であることを公証人に証明してもらうため、署名と押印さえ遺言者がおこなえば、遺言書の本文はパソコンや代筆による作成で問題ありません。
署名、押印した遺言書を封筒に入れて、遺言書に押印した印で封印をします。そのうえで公証人および証人2名の前にその封書を提出し、自己の遺言書である旨および氏名、住所を申述します。
公証人が、その封筒上に提出した日付および遺言者の申述を記載し、公証人・証人・遺言作成者が封筒に署名押印します。
秘密証書遺言のメリットは、以下の3点です。
- 遺言書が間違いなく遺言者本人のものであることを明確にできる
- 破棄・隠匿・改ざんの恐れが無い
- 内容を誰にも知られずに作成できる
秘密証書遺言のデメリットは、以下の3点です。
- 家庭裁判所で検認手続きをする必要がある
- 検認前に封を開けると秘密証書としての効力を失う
- 公証人が遺言書の内容を確認できないので、法的な不備が存在する可能性がある
遺言書の作成方法
ここでは、遺言書の作成方法をみていきます。
遺言書を作成する前提として、必ずやらなければならないことは、以下の3つです。
- 自分の財産を把握する
- 「何を、誰に、どれくらい」相続させるか決める
- 必要書類を準備する
まずは、不動産・預貯金・有価証券・生命保険等の財産をすべて書き出します。そしてそれらを誰に、どのように相続させるかを決めます。
必要書類については自筆証書遺言と公正証書遺言で異なってきますが、まずは登記事項証明書と預貯金の通帳の写し、有価証券の写しなどを準備しましょう。
なお、誰に相続させるかを決める時に、戸籍謄本も取得しましょう。遺言作成者と相続人との関係を明確にし、名前を書き間違えないようにするためです。
自筆証書遺言
自筆証書遺言の場合には、遺言書の本文を手書きし、作成日を記載し、署名・押印をします。
財産目録についてはパソコンなどで作成したものや、登記事項証明書、通帳の写し、有価証券の写しなどを添付できます。
自筆証書遺言には決まった書式はないので、「何を、誰に、どのくらい」相続させるかがはっきりわかるように記載しましょう。
作成したら、家族に遺言書を作成したこと、遺言書の保管場所を伝えておきましょう。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場で証人2名の立会いのもと、公証人が作成する遺言です。事前に公証人と打ち合わせをして遺言書の案を作成します。
公証人が公正証書遺言に記載できるように、登記事項証明書、通帳の写し、有価証券の写し、固定資産評価証明書なども準備します。
相続人に相続させるときには、相続人との関係がわかる戸籍謄本、相続人ではない人に相続させるときには、その人の住民票が必要です。
本人の印鑑証明書、実印、戸籍謄本を準備します。印鑑証明書や戸籍謄本、住民票などは、発行から3カ月以内のものが必要です。
作成当日に公証役場に証人を連れていく場合には、証人2名の名前、住所、生年月日、職業を書いたメモを持参します。証人は公証役場に準備してもらえる可能性もあります。
事前の打ち合わせで公正証書遺言に記載する内容が決まった、作成日を決めます。公正証書を作成してもらうためには手数料がかかりますが手数料は作成当日に現金で支払います。
作成当日は公証人が事前の打ち合わせをもとに作成した遺言書を確認する作業などをして、手数料を支払い終了します。
公証人は、法律のプロですが、相続対策や相続トラブル対策の提案やアドバイスはしてくれません。内容についての提案やアドバイスを受けたい場合には、公証役場に行く前に専門家に相談しましょう。
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、遺言の中身を明かすことなく、公証人に遺言の存在を証明してもらう遺言のことです。
遺言者が作成して封をした遺言書を公証役場に持参して、証人2名に立ち会ってもらい、遺言があることを公証人に証明してもらいます。
自筆証書遺言とは違い、遺言書本文が自筆である必要はありません。
遺言書作成時の財産調査
遺言書作成時に、どのような財産があるか、すべて洗い出す必要があります。遺言書にすべての財産が記載されていないと、結局協議することになります。
ここでは、遺言作成時に注意すべき財産調査について説明します。
生命保険金の受取人
通常、生命保険金は、保険契約に基づき受取人が受け取るもので、受取人固有の財産として考えられます。生命保険金の受取人によっては、「相続財産」に含まれる場合があり、それに伴い相続税の対象になる場合もあります。
不動産の詳細
多数の不動産を所有する方は固定資産課税台帳税の(名寄帳)を取得すると、自分の所有する不動産が一覧で確認できて便利です。ただし、固定資産課税台帳(名寄帳)には所有しているすべての不動産が記載されているわけではありません。
固定資産課税台帳(名寄帳)には、その役所内にある課税対象の不動産しか記載されていません。つまり、非課税の公衆用道路などは記載されません。
非課税の不動産を確認するため、名寄帳に記載されている不動産の登記事項証明書を取得しましょう。住宅ローンを組んで購入した場合などには、一般的に共同担保として公衆用道路も記載されている場合があります。
登記事項証明書の確認時に、万が一住宅ローンなどを支払い終わっているにも関わらず抵当権抹消の手続きをしていないことが判明した場合には、早急に抹消手続きをしましょう。
不動産については専門家でないと難しいケースがありますので、わからないときには専門家に相談しましょう。
預貯金や負債の確認
預貯金については全ての金融機関・支店名・口座番号を確認しましょう。すべての通帳を準備し、普通口座および貯蓄口座などの確認をします。
なお、貯蓄口座や定期預金にお金が入っている場合には、普通預金がマイナスになっている場合もありますので、注意が必要です。
また、借入については借入先を把握していない、古い借入があり返済が滞っているままになっているかもしれない等がありましたら、通帳からの定期的な引き落としがされていないか、消費者金融の名前が記載されていないかなどを確認しましょう。
住宅ローンの残高や借入れについても、どこからいくら借入れているのか、残高はどれくらいかなるべく詳しく確認しましょう。
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【解決事例データ/相続】遺言作成から遺言執行にわたる全面的サポート行った相続事例

- 性別:男性
- 依頼者情報:Aさん(90代)
病気の状況がよくないため、自分の望む相続ができるよう事前に相談したい。
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