遺族年金とは|遺族年金がもらえる人や受給金額の目安

遺族年金は、生計を支えていた人が亡くなった際に、家族の生活を支える重要な制度です。遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類あります。
それぞれ、支給される金額や受給条件は異なります。遺族年金がもらえる人や金額、受給期間について解説します。
目次
遺族年金とは
遺族年金とは、配偶者や親が亡くなった際に、遺族の所得を保証するための年金です。
亡くなった方の収入で生計を維持していた場合、残された家族は生活がままならなくなってしまいます。
遺族の生活を支えるためのセーフティネットとして、遺族年金の制度が設けられています。
遺族年金の種類は、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2つです。
年金の加入状況、子どもの有無、年齢などによって受け取れる遺族年金は異なります。
また、生計を支えていた方が亡くなった際に受け取れるお金として、遺族年金以外にも寡婦年金(かふねんきん)や死亡一時金などがあります。
これらは、遺族が今後の生活を維持していくための大切なお金です。
遺族年金などを受け取るには、自分で手続きする必要があり、期限も設けられているため、早めの申請を心掛けましょう。
遺族年金の種類
遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2つがあります。
遺族基礎年金
遺族基礎年金とは、国民年金に加入し、生計を支えていた方が亡くなった際に、配偶者や子どもに支給される年金です。
遺族基礎年金を受け取るには、おおまかに以下の条件を満たしている必要があります。
- 国民年金に加入していた人に生計を支えられていたこと
- 18歳未満の子どもがいること
たとえば、個人事業主の夫と専業主婦の妻のケースだと、夫の収入で生計を維持していたことになります。
この場合、夫が亡くなった際、妻は遺族基礎年金を受け取れます。しかし、妻が亡くなった際に、夫は遺族基礎年金を受け取れません。
また、18歳未満の子どもがいない場合も、遺族基礎年金は受け取れません。
遺族基礎年金がもらえる期間としては、子どもが18歳に到達するまでです。
受給できる金額は、子どもの人数によって決まります。
遺族厚生年金
遺族厚生年金とは、厚生年金に加入していた方が亡くなった際、遺族に支払われる年金です。
遺族厚生年金を受け取れるのは、配偶者、子、父母、孫、祖父母と、遺族基礎年金よりも受給対象者が広くなります。
国民年金のみに加入していた人(自営業や個人事業主など)が亡くなった際、受け取れるのは遺族基礎年金のみで、遺族厚生年金は受け取れません。
また、遺族基礎年金とは違い、子どもがいなくても遺族厚生年金は受け取れます。
受給できる金額は、厚生年金に加入していた期間や、過去の収入によって決まります。
遺族基礎年金がもらえる人【遺族基礎年金】
遺族基礎年金がもらえる人や条件、金額について説明します。
受給要件
遺族基礎年金をもらえるのは、次のいずれかの条件を満たす人です。
1. 国民年金の被保険者である間に死亡したとき
2. 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
3. 老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき
4. 老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
1と2については、国民年金の加入期間において、3分の2以上国民年金を納めている必要があります。
ただし、3分の2以上納めていなくても、亡くなった日までの直近1年間で、保険料の未納がなければ受給要件を満たせます。
老齢基礎年金の受給権者や受給資格とは、保険料の納付期間が25年以上(免除期間を含む)ある人を指します。
遺族基礎年金は、亡くなった方が国民年金を滞納していた場合などは、受給できない可能性があるので注意が必要です。
受給対象者
遺族基礎年金をもらえる人は、子のいる配偶者、または子です。
死亡した方に生計を維持されていた以下の遺族が受け取ることができます。
なお遺族厚生年金を受給できる遺族の方はあわせて受給できます。
1.子のある配偶者
2.子
子とは、18歳になった年度の3月31日を迎えていない人、もしくは20歳未満で障害等級が1級または2級の状態にある人のことを指します。
つまり、子どもがいない場合は、遺族基礎年金を受給できません。
受給金額(令和7年度)
遺族基礎年金でもらえる金額は、おおむね子どもの人数によって決まります。具体的な金額は以下のとおりです。
昭和31年4月2日以後生まれの方 | 831,700円 + 子の加算額 |
昭和31年4月1日以前生まれの方 | 829,300円 + 子の加算額 |
子の加算額は、以下の金額になります。
1人目および2人目の子 | 各239,300円 |
3人目以降 | 各79,800円 |
仮に、18歳未満の子どもが二人いる場合、受け取れる老齢基礎年金は1,294,600円(月額107,883円)です。
子どもが18歳を迎えた場合は、その子に対する加算額はなくなります。
なお、遺族基礎年金の金額は、物価や賃金の変動などにより、毎年見直されます。
遺族年金がもらえる人【遺族厚生年金】
遺族厚生年金がもらえる人や条件、金額について説明します。
受給要件
遺族厚生年金をもらえるのは、次のいずれかの条件を満たす人です。
1. 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
2. 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
3. 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき
4. 老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
5. 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
1と2については、遺族基礎年金と同じように、国民年金の加入期間において3分の2以上、保険料を納めている必要があります。
ただし、死亡日までの直近1年間で未納がなければ受給要件を満たせます。
通常、厚生年金の保険料は会社の給料から天引きされるため、未納になることはありません。
老齢厚生年金の受給権者や受給資格とは、保険料の納付期間(免除期間を含む)が25年以上ある人のことを指します。
受給対象者
遺族厚生年金をもらえる人は、亡くなった方に生計を維持されていた配偶者、子、父母、孫、祖父母です。
死亡した方に生計を維持されていた以下の遺族のうち、最も優先順位の高い方が受け取ることができます。
なお遺族基礎年金を受給できる遺族の方はあわせて受給できます。
1. 子のある配偶者
2. 子(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方。)(※1)
3. 子のない配偶者(※2)
4. 父母(※3)
5. 孫(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方。)
6. 祖父母(※3)
上記の中で、最も優先順位が高い人のみが遺族厚生年金を受け取れます。
遺族厚生年金の受給対象者は、遺族基礎年金よりも広く、子どもがいない配偶者も受け取れます。
ただし、子どもがいない30歳未満の妻である場合、受給できる期間は5年です。
子どもがいない夫の場合は、55歳以上に限り受給できます。
”生計を維持されていた”とは、同居していたこと、収入が一定以下であること(収入が850万円未満または所得が655万5千円未満)を指します(生計維持|日本年金機構)。
つまり、同居していない父母や、自分の収入が850万を超えている場合、遺族厚生年金は受け取れません。

受給金額
遺族厚生年金でもらえる金額は、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額です。
報酬比例部分は以下のように計算しますが、手元に資料がないと、簡単に計算することはできません。
報酬比例部分 =(平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 平成15年3月以前の加入期間の月数)+(平均標準報酬月額 × 5.418/1000 × 平成15年4月以降の加入期間の月数)
参考となる遺族厚生年金の金額は、公益財団法人生命保険文化センターのサイトに掲載されている以下の表をご覧ください。
子どものいる妻 子ども3人 年額1,904,355円(月額158,696円) (遺族基礎年金+遺族厚生年金)
子ども2人 年額1,824,555円(月額152,046円) (遺族基礎年金+遺族厚生年金)
子ども1人 年額1,585,255円(月額132,105円) (遺族基礎年金+遺族厚生年金)
子どものいない妻 妻が65歳未満の期間 (夫死亡時に妻が40歳未満の場合)
年額514,255円(月額42,855円) (遺族厚生年金)
妻が65歳未満の期間 (夫死亡時に妻が40~64歳の場合)
年額1,138,055円(月額94,838円) (遺族厚生年金+中高齢寡婦加算)
妻が65歳以降の期間 69歳以下の人:年額1,345,955円(月額112,163円) 70歳以上の人:年額1,343,555円(月額111,963円)
(遺族厚生年金+妻の老齢基礎年金)
計算条件
※遺族基礎年金を受け取る妻(子どものいる妻)の年齢は68歳以下として計算。
※遺族厚生年金は死亡した会社員・公務員などの平均標準報酬額を41.7万円、加入期間25年(300月)として計算(厚生年金加入中の死亡では加入期間が300月未満の場合、300月で計算される)。
※妻は40年間国民年金に加入し、老齢基礎年金を満額受給するものとして計算。
※遺族厚生年金には経過的寡婦加算は含まない。
遺族厚生年金の目安を調べるには、毎年送られてくるねんきん定期便を確認するとよいでしょう。
ねんきん定期便には、これまでの加入実績に応じた老齢厚生年金の見込み額が記載されています。
この金額の4分3が、遺族が受け取れる遺族厚生年金の目安となります。
遺族年金はいつまでもらえる?
遺族基礎年金がもらえる期間は、子どもが18歳になるまでです。
遺族厚生年金は、受け取る人によって異なりますが、基本的には一生涯もらうことができます。
受給者別の遺族厚生年金が受け取れる期間は、次のとおりです。
受給者 | 受給期間 |
妻 | 一生涯受け取れる ※子どもがいない30歳未満の妻は5年間のみ受給可能 |
夫 | 子がいる場合:子どもが18歳になるまで 子がいない場合:55歳以上の場合に限り受給可能で、一生涯受け取れる(受給開始は60歳から) |
子 | 18歳になった年度の3月31日まで ※障害等級1級または2級の状態にある人は20歳まで |
父母 | 55歳以上の場合に限り受給可能で、一生涯受け取れる(受給開始は60歳から) |
孫 | 18歳になった年度の3月31日まで ※障害等級1級または2級の状態にある人は20歳まで |
祖父母 | 55歳以上の場合に限り受給可能で、一生涯受け取れる(受給開始は60歳から) |
いずれの遺族であっても、亡くなった方に生計を維持されていたことが必要です。
同居していなかった遺族は、遺族厚生年金を受け取れません。
ただし、別居していても、仕送りや健康保険の扶養親族に含まれていた場合は受け取れる可能性があります。
実際に遺族年金を受け取れるかどうかは、ねんきんダイヤルや最寄りの年金事務所に相談してご確認ください。
遺族年金の廃止はいつから?制度改正の内容
近年、SNSなどで遺族年金が廃止されるという話題が見られることがあります。
しかし、現在のところ、遺族年金が廃止される予定はありません。
遺族年金廃止の声が上がった背景としては、遺族年金制度の見直しが予定されているためです。
現在の遺族厚生年金は、男女で受け取れる条件などが違うため、女性の就業率の向上に合わせて、男女差の解消を目的とした見直しが検討されています。
具体的には、これまで30歳以上の女性が夫と死別した場合、無期給付になっていましたが、改正後は男女共有で5年間の有期給付になる見込みです(60歳未満で死別した場合)。
この改正内容がSNS等で大きく話題に上がりました。改正内容について、詳しくは厚生労働省の年金制度改正法案を国会に提出しました、遺族年金制度等の見直しについて(PDF)などをご覧ください。
遺族年金でよくある質問
夫が亡くなった際、妻は遺族年金をいつまでもらえる?
遺族基礎年金は、子どもが18歳になるまで受け取れます。
遺族厚生年金は、妻が30歳未満で、子どもがいない場合は5年間です。
30歳以上、もしくは子どもがいる場合には、一生涯受け取れます(2025年時点)。
遺族年金は今後なくなるの?
遺族年金の制度がなくなる予定はありませんが、見直しが検討されています。
遺族年金の男女差を解消し、子どもが受け取りやすくなるような変更が予定されています。
遺族年金と自分の年金両方もらえるの?
仮に自分の厚生年金と遺族厚生年金、両方の受給資格を満たした場合は、どちらか高い方の金額が支給されます。
まとめ
遺族年金は、残された家族の生活を支える大切なお金です。
遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、それぞれ支給される金額や条件は異なります。
申請の手続きは、年金事務所および街角の年金相談センターの窓口で可能です。
手続きにはさまざまな書類を用意する必要があるため、早めの準備を心掛けましょう。
遺族年金について不明な点がある場合は、ねんきんダイヤルや最寄りの年金事務所から相談可能です。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。