更新日:2024年10月2日 (水)

公開日:2024年10月2日 (水)

生命保険は特別受益になる?特別受益に該当するケースを解説

生命保険は特別受益になる?特別受益に該当するケースを解説 生命保険は特別受益になる?特別受益に該当するケースを解説

サマリー

特定の相続人が被相続人から特別に利益を受けることを特別受益といいますが、生命保険金を受け取った場合、特別受益に該当するのでしょうか?

この記事では、生命保険金の扱いについて解説します。

生命保険は特別受益になるのか?

被相続人が加入していた生命保険の保険金を受け取った場合、特別受益にあたるのかどうか、以下で解説します。

生命保険は原則として特別受益にならない

生命保険は、原則として特別受益になりません。

被相続人が自己を保険契約者および被保険者として加入していた生命保険の死亡保険金は、受取人の固有財産であり、相続財産に含まれないからです。

したがって、共同相続人の一人または一部の者を保険金受取人と指定して締結した保険契約に基づく死亡保険金請求権は、原則として特別受益になりません。

例外的に特別受益となる場合がある

特段の事情がある場合は、例外的に特別受益として扱われることがあります

最高裁平成16年10月29日判決は、死亡保険金請求権は原則特別受益に当たらないとするものの、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生じる不公平が、到底是認できないほど著しいと評価すべき特段の事情がある場合には、例外的に特別受益に準ずるものとして持ち戻しの対象となることがあると示しています。

生命保険が特別受益に該当する特段の事情とは?

生命保険を特別受益に準ずるものとして持ち戻しの対象とするかどうかは、個別具体的な事案において、相続人間の不公平が著しいと評価すべき特段の事情があるといえるかが問題になります。

この特段の事情の有無は、以下の要素を総合的に考慮して判断されます。

  • 保険金の額
  • 保険金の額の遺産総額に対する比率
  • 保険金受取人である相続人と被相続人の同居の有無
  • 被相続人の介護等に関する貢献の度合い等の保険金受取人である相続人および他の共同相続人と被相続人の関係
  • 各相続人の生活実態等

具体的に、どのような場合に特段の事情ありとして特別受益の該当性が認められているのか、以下で紹介します。

保険金の金額が大きい

保険金の額が高額な場合、特別受益に該当すると判断される可能性があります。

遺産の総額に匹敵する高額な死亡保険金を受け取った相続人に対して、特別受益に準じて持ち戻しの対象としたとする判例があります(東京高裁平成17年10月27日決定)。

この事例で、保険金受取人として指定された相続人が受け取った保険金額は、1億0129万円でした。

もっとも、保険金額が遺産総額(相続開始時評価額1億0134万円)の99.9%を占めている点も考慮されています。

遺産総額に対して保険金の比率が高い

遺産総額に対して保険金の比率が高い場合は、特別受益に該当すると判断される可能性があります。

死亡保険金の金額が遺産総額の約61%を占めるとして、特別受益に準ずると判断している判例があります(名古屋高裁平成18年3月27日決定)。

遺産総額に対して保険金の金額がどれぐらいの比率を示すと特別受益に該当するのかは明らかではありませんが、遺産総額の3分の1を超える場合に特別の事情を肯定する方向で検討する必要があるとする判例や、概ね5割を超える場合を一つの目安とするものがあります。

このことから、遺産総額に対する比率のみでは判断が一律に決せられないことがわかります。

被相続人と保険金受取人である相続人との関係性が希薄

次のような観点から、被相続人と保険金受取人である相続人との関係性が希薄で、生活保障的要素を加味する必要もない場合は、保険金が特別受益に該当すると判断される可能性があります。

  • 被相続人の介護などに対する貢献の程度
  • 同居の有無および同居期間(または婚姻期間)
  • 保険金受取人として指定された相続人および他の相続人と被相続人との関係
  • 各相続人の生活実態(被相続人の死後、生活保障を必要とするかどうか等)

すなわち、保険金額やその額の遺産総額に対する比率だけでなく、これらの事情も総合的に考慮して、特段の事情の有無が判断されます。

先に述べた東京高裁平成17年10月27日決定の判例では、保険金の受取人が被相続人と同居していたわけでもなく熱心に介護に携わったという事例もありませんでした。他の相続人と比較して特別考慮される理由がないとし、相続人間の公平性を考えて特別受益に準ずる対応にすべきと判断しました。

名古屋高裁平成18年3月27日決定の判例では、被相続人と受取人となった妻の婚姻期間が3年5か月程度だったことから、他の相続人との公平性を考えて、死亡保険金を特別受益に準ずる扱いにした理由の一つに挙げています。

まとめ

相続人の一人が被相続人から高額の生命保険を受け取っている場合、不公平ではないかともやもやした気持ちになる人がいるかもしれません。本記事で述べたように、生命保険金は原則として特別受益に当たりませんが、例外的に特別受益に準じて持ち戻しの対象となる場合もあります。

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コラム監修者

Shunsuke Teragaki

Shunsuke Teragaki

所属:東京オフィス

広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。

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