交通事故で追突された被害者が適正な賠償金獲得のためにすべきこと

追突された被害者が適正な賠償金を得る方法

追突事故とは、後続の車両が前方不注意などによって前方の車両に追突する交通事故のことです。
追突された被害者の方は、身体の痛みやむちうちの不安、そして加害者側保険会社との示談交渉に対する不安を抱えているかもしれません。
追突事故は、被害者側の過失がゼロのもらい事故に該当するケースも多いですが、適切な知識を持たずに対応すると、本来受け取れるはずの賠償金が受け取れない可能性もあります。
この記事では、交通事故で追突された被害者の方が適正な賠償金を獲得するために、事故直後から示談交渉までに取るべき7つの行動を解説します。
ぜひ参考にしてください。

目次

交通事故で追突された被害者が適正な賠償金獲得のために取るべき行動

交通事故に遭った直後から、治療を受ける段階、示談交渉を完了するまでのプロセスは、将来の賠償金の額を決定づける重要な期間です。
ここでは、適正な賠償金を獲得するために取るべき7つの行動について解説します。

①周囲の安全確保と警察への届け出を行う

被害者が最優先で確認し、実行すべき事項の第一は、周囲の状況に応じて安全を確保した後、必ず警察に届け出ることです。
車両の運転手には、警察に報告する義務があります(道路交通法第72条事故報告義務)。
警察への報告を怠ると、交通事故証明書が作成されません。
交通事故証明書とは、交通事故が起きたことを証明する公的な書類です。
事故発生の日時・場所・当事者の氏名・乗っている車の車両番号などが記載されます。
事故による治療費などの損害を加害者側の保険会社に請求するには、交通事故証明書の提出が必要です。
したがって、必ず警察に届け出を行い、交通事故証明書を作成してもらいましょう。
さらに、少しでもけがをした場合には、人身事故として届け出ることが重要です。
物損事故として届け出をした場合は、後に、けがの治療費が発生しても適正な賠償金を受け取れない可能性があります。
事故後に痛みが出たなど、物損事故として届け出た後にけがが判明した場合は、速やかに警察に連絡し、人身事故へ切り替える手続きが必要です。
大したことないからと、警察に届け出ずに、その場で和解するのは避けましょう。

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②弁護士費用特約の有無を確認する

ご自身が加入している自動車保険、火災保険、またはクレジットカード付帯の保険などの弁護士費用特約の有無を確認することです。
弁護士費用特約とは、交通事故の被害者の弁護士費用を、保険会社が一部負担してくれる特約です。
弁護士費用のことを考えると、弁護士に依頼することを躊躇する人も多いでしょう。
ですが、弁護士費用特約がある場合には、あなたが加入する保険会社が弁護士費用を負担してくれます(ただし、弁護士費用は300万円の上限(法律相談料は10万円の上限)があります。)。
後方からの一方的な追突事故の場合、追突した側(加害者側)の過失が100%となるケースが多いです。
あなたの過失がゼロの場合、あなたの加入する保険会社は交渉を代行できません。
そのため、あなたは一人で加害者側の保険会社と交渉しなければなりません。
弁護士費用特約が使える場合、費用負担を気にすることなく、最初から弁護士に依頼できるため、適正な賠償金を獲得できる可能性が高まります。
したがって、早めに弁護士特約について確認しましょう。

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③事故直後は必ず病院で診察を受ける

追突事故の場合、事故直後は痛みがなくても、事故から数日後に症状が出始めるケースもあります。
大したことないと思っても、必ずその日のうちに整形外科を受診しましょう。
事故から病院受診までの期間が空くと、症状と事故との因果関係が否定され、適正な賠償金を受け取れない可能性があります。
追突事故に遭ったら、事故直後に受診し、必ず診断書を作成してもらいましょう。

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④適切な頻度で通院し医師に症状を正確に伝える

治療期間中は、自己判断で通院を中断したり、治療をやめたりしてはいけません。
特に、通院の頻度が途中で途切れると、【すでに症状が回復した・治療の必要性なし】と加害者側の保険会社に判断されやすく、治療費の打ち切りや、後の示談交渉で不利になります。
追突事故の場合は、むちうちの後遺症が残るケースもあります。
後遺症が残った場合、後遺障害等級が認定されることで、後遺症を理由とする後遺障害慰謝料後遺障害逸失利益の請求ができます。
しかし、通院頻度が低いと、適正な等級認定が得られない原因となります。
さらに、後遺障害等級認定では、医師の作成する後遺障害等級診断書も重要です。
後遺障害等級認定は、基本的に、書類審査のみで行われるため、診断書に症状が具体的かつ適切に記載されることが、後遺障害認定を申請する際の重要な根拠となります。
したがって、些細な症状でも、必ず医師に伝えましょう。

⑤症状固定とされたら後遺障害等級認定を申請する

症状固定とされた後に後遺症が残っている場合には、後遺障害等級認定の申請をします。
後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料後遺障害逸失利益が請求できます。
後遺障害等級が認定されるのとされないのとでは、獲得できる賠償金に差が生じます。
適正な後遺障害等級認定を得るためには、弁護士に依頼し、被害者請求による申請がおすすめです。
弁護士は、申請前の段階から医師と連携を取り、適切な医学的証拠を収集するための助言を提供してくれます。

【Point|後遺障害等級認定の被害者請求とは】
交通事故の後遺障害等級認定を申請する方法は、次の2つです。

  • 被害者請求
  • 事前認定 適正な認定結果を獲得するためには、被害者請求がおすすめです。
申請方法 メリット デメリット
被害者請求
  • 自分で資料の準備をするため、有利な資料を集めるなど主張立証の工夫ができ、納得した結果が得られやすい
  • 認定結果後、自賠責保険の限度額分までは先払いを受けられる
  • 提出書類の準備と申請手続きに時間と手間がかかる
事前認定
  • 保険会社が提出書類の準備や申請手続きなど全て行ってくれる
  • 保険会社は、事務的に必要最低限の書類のみ提出するため、被害者に有利な資料が提出されているかわからない
  • 認定結果後、すぐに賠償の支払いを受けられず、示談交渉成立後一括での支払いになる

被害者請求による申請は、時間と手間がかかる分、納得のいく認定結果を得やすいのが特徴です。
弁護士に依頼することで、手続きのサポートを受けられるだけでなく、あなたに有利な資料を精査してもらえるでしょう。

交通事故の後遺障害等級認定とは|認定を受けるための5つのポイント

⑥後遺障害等級認定後に示談交渉を開始する

保険会社が、治療期間中または症状固定が確定する前に、示談を持ちかけてくる場合もあるかもしれません。
しかし、治療が完全に終わる前に示談に応じると、その後に症状が悪化したり、後遺障害が認定されたりした場合でも、追加の治療費などを請求することが難しいです。
焦って示談に応じるのではなく、必ず治療を優先し、不安や疑問を感じたら、交渉を開始する前に弁護士に相談することをおすすめします。

⑦弁護士に依頼し弁護士基準での交渉を行う

慰謝料の算定基準には、次の3つの基準(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判所基準))があります。どの基準を用いるかによって、もらえる賠償金が異なります。

基準 概要
自賠責基準 自動車を運転する人が必ず加入する強制加入保険が算定する際の基準 被害者救済を目的とした最低限の補償
任意保険基準 加害者の任意保険会社が算定する際の基準 保険会社により算定基準が異なるため非公開
弁護士基準(裁判所基準) 過去の裁判例に基づき設定された基準 裁判や弁護士による示談交渉において慰謝料を算定する際に用いられる

このうち、弁護士基準(裁判所基準)により算定した賠償金が一番高くなります。

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ご自身で交渉をし、実際に弁護士基準による慰謝料を獲得するのは難しいです。
あなたひとりで弁護士基準での交渉を試みても、保険会社は応じてくれない可能性が高いからです。
弁護士に依頼することで、弁護士基準をベースに交渉ができるため、慰謝料の増額が見込めます。
適正な賠償金を獲得するには、弁護士の介入により、弁護士基準で請求しましょう。

交通事故で追突された際の対応を間違えると賠償金が減る理由

前章で、適正な賠償金を獲得するために取るべき行動を提示しました。
では、なぜそれらの行動が重要なのかについて、解説します。

人身事故で届け出ないと補償が受けられなくなる可能性

事故直後に痛みが軽微だと、物損事故として処理を済ませるケースもあるかもしれません。
しかし、物損事故として届け出を行った場合、後からむちうちなどの症状が悪化した場合でも、治療費や慰謝料などの人身損害に対する適切な補償を受けられなくなるリスクが高まります。
物損事故はモノの損害を扱うものであり、治療費や慰謝料を含む適切な補償を受け取るためには、人身事故に切り替える必要があります。

あなた一人で加害者側の保険会社と交渉すると不利になる可能性

被害者側に過失がない場合、加入している保険会社に示談交渉を代行してもらえません。
そのため、あなた一人で、加害者側の保険会社と示談交渉する必要があります。
専門的な知識と豊富な交渉経験を持つ加害者側の保険会社と一人で渡り合わなければならない状況に置かれます。
この交渉力の格差が、結果として被害者にとって不利な条件での示談成立を招く可能性があります。

加害者側の保険会社から治療費の打ち切りを打診される可能性

治療期間が長引いたり、逆に治療頻度が少なかったりすると、治療の必要性・相当性がなくなったとして、加害者側の保険会社から治療費の打ち切りを打診されることがあります。
保険会社も営利企業のため、自社の支払う保険金を最小限に抑えたいとの考えがあるからです。
症状がまだ残っているにもかかわらず治療をやめると、適正な後遺障害の認定が受けられなくなるなど、将来的な賠償金に影響が出ます。

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後遺障害等級認定は簡単ではない

後遺障害等級認定は簡単ではありません。
特に、追突事故に多いむちうちによる後遺症(神経症状)は、画像診断で客観的な証拠が出にくい特徴があります。
適切な後遺障害等級認定を得るためには、治療期間中の通院頻度医学的所見の揃え方症状固定時期の判断など、専門的な知識が必要です。
これらの手続きを誤ると、非該当と判断され、後遺障害慰謝料や逸失利益を獲得できないリスクがあります。

むちうちで後遺症が残った…後遺障害の慰謝料相場・逸失利益を解説

保険会社が提示する金額が適切な賠償金とは限らない

被害者が獲得できる慰謝料の算定基準には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)の3種類があります。
保険会社が示談交渉で提示してくる金額は、通常、自賠責基準に近いか、自社独自の任意保険基準に基づいています。
弁護士に依頼せずに交渉を進めると、弁護士による示談交渉や裁判で用いられる弁護士基準よりも低い基準での示談を迫られる可能性があります。

弁護士基準で慰謝料はどのくらい増える?

後遺障害等級が認定された場合に請求できる後遺障害慰謝料について、弁護士基準でどのくらい増えるのか解説します。
追突事故に多いむちうちによる後遺症(神経症状)で認定されやすいのは、12級または14級です。

障害等級 障害の内容
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

認定された等級ごとに、各基準それぞれ後遺障害慰謝料が定められています。
自賠責基準弁護士基準でもらえる後遺障害慰謝料の差は、次のとおりです。
【12級13号】

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【14級9号】

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算定基準が異なるだけで、これだけの差が生じます。
なお、任意保険基準は、各保険会社が定めているため、その基準は非公開です。
一般的に、自賠責基準より少し高く、弁護士基準よりは低い傾向にあります。
したがって、弁護士のサポートのもと、弁護士基準での請求をすることで、慰謝料増額に繋がる可能性が高いでしょう。

交通事故の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリットと依頼後の流れを解説

交通事故で追突されたら過失割合は必ず100:0になる?

追突事故は、道路交通法上、後方車が車間距離を保持し、前方車が急停止しても追突を避けられる距離を保つ義務がある道路交通法第26条車間距離の保持義務)と定められているため、原則として後方車(加害者)に重い責任が問われます
しかし、状況によっては、追突された側(被害者)にも過失が問われるケースが存在します。
過失割合が加害者100:被害者0になるケースとならないケースについて解説します。

過失割合が加害者100:被害者0になるケース

追突事故の過失割合は、基本的には追突した側が100%の責任を負う100:0となるケースが多いです。

  • 信号待ちなど完全に停止中の追突事故
  • 渋で停止している際の追突事故
  • 前方車が適切に減速・停止したにもかかわらず車間距離不足による追突事故
    など

過失割合が加害者100:被害者0にならないケース

追突事故でも、追突された側の運転に明確な道路交通法違反があったり、不注意があったりした場合は、過失割合が100:0から修正され、被害者側にも一部の過失が問われることがあります。

  • 不必要な急ブレーキによる追突事故
  • 追い越し妨害による追突事故
  • ハザードランプの不点灯による追突事故
  • 駐停車禁止場所に駐停車中の追突事故など

過失割合に納得できない場合は弁護士に相談を

過失割合に納得できない場合は弁護士に相談しましょう。
加害者側の保険会社から「動いている車同士の事故に100:0はありえない。」などと主張されたり、被害者側の過失が不相当に高かったりと、提示された過失割合に納得がいかない場合、被害者自身で客観的な証拠に基づき反論し、適正な過失割合を判断するのは難しいでしょう。
過失割合は、最終的に受け取る賠償金の額に直結するため、不当に過失を負わされることは避けなければなりません。
過失割合に疑問や不満がある場合は、弁護士に相談し、事故状況から妥当な過失割合を判断してもらうことが、被害者の利益を守るために不可欠です 。

交通事故の過失割合に納得できない!不満があるときの対処法とは?

交通事故で追突された場合に弁護士に依頼すべきメリット

交通事故で追突された被害者が、適正な賠償金を獲得し、同時に心身の健康を取り戻すためには、弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士基準の適用により賠償金が増額する可能性

弁護士基準の適用により賠償金が増額する可能性があります。
保険会社が提示する金額は任意保険基準に基づいていることが多く、過去の裁判例に基づいて算定される弁護士基準に比べて低く抑えられています。
弁護士に依頼することで、この有利な弁護士基準を交渉に適用でき、獲得できる賠償金の増額が見込めるでしょう。

交渉のストレスから解放され治療と回復に専念できる

交渉のストレスから解放され治療と回復に専念できます。
交通事故の交渉のプロでもある加害者側の保険会社と、長期にわたり交渉を続けることは、心身の回復を妨げるストレスとなるでしょう。
弁護士に依頼することで、煩雑な書類作成、頻繁な交渉の電話、心理的な駆け引きから解放され、被害者は心身の回復にのみ専念できます。

後遺障害等級認定を有利に進めるためのサポートを受けられる

後遺障害等級認定を有利に進めるためのサポートを受けられます。
追突事故に多いむちうちは、目に見える画像所見が出にくいため、保険会社に軽視され、適正な後遺障害等級認定を受けることが難しいのが実情です。
弁護士は、治療の段階から医師への所見の伝え方、必要となる医学的証拠(MRIなど)の収集、自賠責損害調査事務所への提出書類の作成について助言を行い、被害者が適正な等級を獲得できる可能性を高めます。

まとめ

交通事故で追突された被害者にとって、適正な賠償金を獲得するためには、事故直後から適切な行動を取ることが重要です。
さらに、弁護士費用特約がある場合には、実質的な費用負担なし(上限300万円)で弁護士に依頼できます。
少しでも疑問や不安を感じた場合には、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
ネクスパート法律事務所では、交通事故事案の解決実績を豊富にもつ弁護士が多数在籍しています。
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