交通事故直後は、突然受けた衝撃で興奮状態にあり、痛みや痺れなどの症状を感じないことがあります。
しかし、目立った怪我や症状がなくても、事故から数日後に出現することもよくあります。身体に衝撃を感じたときには、速やかに整形外科などの医療機関に行き、医師の診察を受けましょう。
交通事故により負傷した場合、事故現場近くの医療機関で診察を受けるケースも多いです。
初診時に診察を受けた医療機関が自宅や勤務先から遠い場合や、医師の治療方針や対応に不満がある場合には、治療の途中でも転院できるのでしょうか?
この記事では、交通事故による怪我の治療を整形外科(医療機関)で受けるべき理由や整骨院利用時・転院時の注意点を解説します。
目次
交通事故による怪我の治療を整形外科(医療機関)で受けるべき理由
ここでは、交通事故による怪我の治療を整形外科などの医療機関で受けるべき理由を解説します。
診断書は医師のみが作成できる
診断書は、交通事故による受傷の程度を証明する重要な書類です。
交通事故によって怪我をした場合、以下のような場面で、交通事故による受傷を証明する診断書の提出が求められます。
- 警察署に人身事故の届出をするとき
- 加害者本人や保険会社に損害賠償を請求するとき
- 会社に休業を申請するとき
診断書は、自ら患者を診察した医師のみが作成できます(医師法第20条)。
整骨院や接骨院等で整復や固定等の施術を行う柔道整復師は、医療類似行為を行える国家資格者ですが、診断権はなく診断書も作成できません。
医師による診断・治療を受けていないと、以下のようなリスクが生じます。
- 加害者側から治療費や傷害慰謝料などを支払ってもらえない
- 後遺障害が残っても等級の認定を受けられず後遺障害に対する補償が受けられない
事故直後は症状がなくても、後から痛みや痺れが生じることがあります。交通事故に遭ったら、必ず医療機関を受診して医師に診断書の作成を求めましょう。
医学的根拠に基づく治療が受けられる
整形外科などの医療機関を受診すれば、X線検査やCT・MRI検査で骨や神経の状態・損傷の度合いを詳細に確認した上で、医学的根拠に基づいた適切な治療を受けられます。
交通事故による怪我の治療費等は、必要かつ相当な治療行為の費用であれば、実費全額が損害として認められます。
必要かつ相当な治療行為の費用とは、一般的に、以下の2点を満たすものと解されています。
- 医学的見地からみて当該傷害の治療として必要性および相当性が認められる治療行為
- その報酬額が社会一般の水準と比較して妥当なもの
裏を返せば、医学的に必要性・相当性がない治療行為(過剰診療)や、社会一般の診療水準に比較して著しく高額な報酬が生じる治療行為(高額診療)の費用は、損害として認められない可能性が高いと言えます。
医学的な合理性・必要性は、被害者側が個別具体的に立証しなければなりません。
一般に、整形外科などの医療機関で行われる西洋医学に基づく治療は、現代医学に基づくものであり、その効果については科学的に説明が可能とされています。
医療機関を受診していれば、診断書や診療録から治療状況を確認でき、治療の必要性・相当性に疑義が生じた場合でも主治医に意見を求められます。
事故との因果関係を立証しやすくなる
交通事故と関係のない怪我や既往症に関する治療費は、加害者が負担すべき損害賠償義務の範囲には含まれません。
事故から相当期間が経過してから医療機関を受診しても、医師は交通事故による怪我かどうかを判断できないため、事故と怪我との因果関係を証明できないことがあります。
目立った怪我や痛みがなくても、事故直後に医療機関を受診して医師の診察や必要な検査を受けていれば、怪我と事故との因果関係を立証しやすくなります。
加齢による頚椎椎間板の退行性変化が疑われるむちうち症など、一見して交通事故による怪我であるかどうか判断ができない傷病でも、事故前後の診療録や検査画像に医師の意見書を加えて因果関係を立証できることもあります。
交通事故に詳しい整形外科に転院したい!治療途中に転院してもいい?
交通事故に遭い、整形外科などの医療機関に通院している場合でも、様々な事情により病院を変えたいと思うこともあるでしょう。
交通事故の怪我の治療途中でも転院は可能なのでしょうか?
ここでは、交通事故による怪我の治療中の転院の可否と転院時の注意点等について解説します。
転院は可能
交通事故による怪我の治療に限らず、転院するかしないかは基本的に患者の自由です。
現在治療を受けている医師の治療方針や技量に不満がある場合には、より納得のいく治療を受けられる病院への転院を検討してみても良いでしょう。
ただし、転院する際にはデメリットや注意点を踏まえて慎重に検討しなければなりません。
治療途中で転院するデメリット
正当な理由がなければ相手方保険会社が転院を認めないことがある
転院そのものは被害者の自由ですが、加害者側の保険会社が必ずしも転院後の治療費を支払ってくれるわけではありません。
以下のような場合には、治療費や通院交通費の内払いを拒否されたり、転院に難色を示されたりすることがあります。
- 自宅や勤務先から遠い病院に通院することで通院交通費が高くなる場合
- 医学的見地から治療の効果が判然としないのに治療期間が長期化している場合
転院を繰り返すと後の示談交渉等で不利な立場に置かれる可能性がある
転院先で納得のいく治療が受けられないと、さらに転院を考えることもあるでしょう。
しかし、転院を繰り返すと複数の医療機関で診療録が作成されることになるため、治療や症状の経過を把握しづらくなったり、示談交渉時に治療の必要性・相当性を否定されたりするおそれがあります。
転院先の医師に後遺障害診断書の作成を拒否される可能性がある
医師は、医師法19条の規定により、患者から診断書の作成を求められた場合には、正当な理由がある場合を除き、診断書を発行しなければなりません。
しかし、転院先で治療を開始してから症状固定までの期間が短い場合には、転院先の医師が受傷から症状固定までの症状の推移が分からないという理由で、後遺障害診断書の作成を拒否することがあります。
作成に応じてもらえても、転院前の治療状況を正確に反映した後遺障害診断書を作成してもらえない可能性もあります。
転院により治療や症状の経過が把握しにくくなると、治療の必要性・相当性や事故との因果関係を立証する書面として内容の乏しい後遺障害診断書を提出することとなり、その結果、適正な後遺障害等級認定を受けられない可能性もあります。
転院時の注意点
合理的な転院理由があるか検討する
転院を決める前に、合理的な転院理由があるか検討しましょう。
以下のような場合には、加害者側の保険会社にも比較的転院が認められやすい傾向にあります。
- 現在治療を受けている医師の治療方法や対応に不満がある
- 現在通院・入院中の病院では受けられない特殊な治療を受けたい
- 通院が不便、転居等により現在通院中の病院で治療を続けることが困難になった
- 別の病院で治療を受けるよう主治医から勧められた
現在治療を受けている主治医から「これ以上は治療を続けても回復しない。」と言われたにも関わらず、入通院慰謝料の増額を目的として治療を継続するために転院することは控えましょう。不必要な治療を受けると、その治療の必要性・相当性が否定され、思いもよらぬ結果に至る可能性があります。
治療開始後なるべく早い段階で転院する
一定期間が経過した後の転院は、治療費の打ち切りや後遺障害診断書作成拒否等のリスクが生じます。
そのため、転院を検討する場合はなるべく早い段階で決断することをおすすめします。
事前に相手方保険会社の了承を得る
転院前に、加害者側の保険会社の了承を得ましょう。
転院の事実を知らせていない場合、転院の経緯や治療内容に疑義を持たれて、治療費の支払いを拒否される可能性があります。
診療情報提供書を作成してもらう
現在通っている病院には、転院する旨を伝えて紹介状および診療情報提供書の作成を依頼しましょう。医師には応召義務があるため、紹介状がなくても通常は受診を拒否されることはありませんが、スムーズな転院のためには紹介状を用意していた方が良いでしょう。
診療情報提供書には、紹介状の情報(患者の氏名、年齢、性別、症状や傷病名)に加え、治療方針や症状の経過などの詳細な診療情報が記載されています。
診療情報提供書を転院先に提出すれば、転院先の医師が患者の症状等を迅速に把握できるため、適切な治療が受けられ、後遺障害が残った場合の後遺障害診断書の作成に必要な情報も提供できます。
重複して同じ検査を行わずに済むため、治療費の自己負担が必要な場合にも、無駄な支出を避けられます。
交通事故による怪我の治療で整形外科と整骨院を併用してもいい?
ここでは、交通事故による怪我で整骨院や接骨院に通院する際の注意点を解説します。
整骨院での施術は医師の指示ないし同意を得るのがベター
整骨院や接骨院での施術は、施術効果を必ずしも科学的・合理的に説明できないと考えられていることから、交通事故と相当因果関係が認められるかどうかが問題となります。
整骨院や接骨院等での施術費が損害として認められるためには、一般に、以下の要件を充たす必要があると考えられています。
- 施術の必要性
- 施術の有効性
- 施術内容の合理性
- 施術期間の相当性
- 施術費の相当性
医師の指示がなくても、上記要件を充たせば事故との因果関係が認められると解されていますが、医師の指示があれば施術の医学的合理性を推認させる事情と言えるので、上記①~③は認められやすくなります。
医師から明確・積極的な指示がなくても、整骨院等への通院を承認(同意)していたとみられるような事情があれば、施術と事故との相当因果関係を認める裁判例もあります。
整骨院に通院する場合も並行して整形外科を受診するのが大切
整骨院や接骨院での施術は、整形外科(医療機関)での治療と並行して受けましょう。
定期的に医師の診察や必要な検査を受け、今後の治療方針を示してもらうことが重要です。
医師がこまめに経過を観察し、整骨院や接骨院での施術の必要性・有効性を判断していれば、治療費や慰謝料の支払いを受けやすくなります。
まとめ
交通事故による受傷の有無や程度は、医師による診断・検査を受けなければ正しく把握できません。
交通事故で身体に衝撃を感じたら、自覚症状がなくても、必ず整形外科などの医療機関を受診して、医師に診断書の作成を依頼しましょう。
整骨院で施術を受ける場合や治療途中で転院する場合、加害者側の保険会社への説明を怠ると、後の示談交渉で不利な立場に置かれる可能性があります。
弁護士に依頼すれば、治癒または症状固定前の保険会社との交渉も任せられます。
交通事故の被害に遭い、怪我の治療や通院に不安がある方は、ネクスパート法律事務所にご相談ください。