交通事故のしびれは後遺障害に認定?原因・対応・慰謝料を徹底解説

交通事故のしびれ 後遺障害に該当する?

「事故から数日経って、手先がビリビリし始めた」
「しびれが取れず、仕事に集中できない」
交通事故の後、こうしたしびれや違和感にひとりで悩んでいませんか?
目に見えない症状だからこそ、なかなか周囲に辛さを理解してもらえず、不安を感じている方は多くいます。
しびれは、交通事故によって生じ得る正当な傷病であり、症状や検査結果、通院状況などによっては後遺障害として認定され、補償の対象となる可能性があります。
特に、事故後しばらくしてからしびれが出た方や、「異常なし」と言われたまま違和感が続いている方は、対応次第で補償結果が変わる可能性もあります。
交通事故によるしびれや神経症状は、むちうちなどの傷病、後遺障害等級認定、そして慰謝料を含む損害賠償金と密接に関係する論点です。
この記事では、主に以下の内容について解説します。

  • しびれが残る場合の対応・通院時のポイント
  • しびれが該当し得る後遺障害等級
  • しびれが後遺障害として認められた場合の慰謝料・逸失利益について
【この記事の結論】
交通事故後のしびれは、後遺障害として認定され、補償される可能性がある。
事故直後からの適切な検査・一貫した通院・医師への症状の正確な伝達が重要。
弁護士基準で交渉することで、慰謝料の増額が見込めるケースがある。

目次

交通事故後のしびれセルフチェック

次のような症状がある場合、交通事故との関連が疑われます。

  • □事故後から、手・指・腕・足にしびれや感覚障害がある
  • □首や腰を動かすと、しびれが残ることがある
  • □病院では「異常なし」と言われたが、違和感や神経症状が続いている
  • □日常生活や仕事に集中しづらい

※本チェックは目安であり、症状の原因や診断を行うものではありません。
1つでも当てはまる場合は、交通事故との関連を確認するためにも、早めに医療機関を受診し、医師に症状を伝えて記録してもらうことが重要です。
さらに、後遺障害認定や慰謝料請求を見据えた初期対応が重要になります。次章では、よくある誤解と注意点を整理します。

交通事故後のしびれでよくある不安と誤解

交通事故後のしびれに悩む方が直面する、不安や誤解について整理します。
もし、以下の項目に当てはまるものがあれば、それは決してあなただけの悩みではありません。

不安1|まだ軽いしびれだから、様子見でも大丈夫?

早めの受診が有効とされています。
「そのうち治るだろう」と我慢するのは禁物です。しびれの症状は、神経がダメージを受けているサインかもしれません。
事故から受診までの期間が空くと、保険会社から、そのしびれは事故とは無関係(日常生活で起きたもの)と判断され、治療費が支払われないリスクが高まります。
少し違和感がある程度でも、早めに受診することが望ましいと考えられます。

不安2|レントゲンで「異常なし」と言われたら、諦めるしかない?

いいえ、諦める必要はありません。 レントゲンは骨の状態を見るもので、神経そのものや、神経のダメージは直接映りません。
レントゲン検査で「異常なし」と言われても、しびれが続く場合は、MRIで神経の状態を確認したり、神経学的検査を受けたりすることで、原因が明らかになることがあります。
画像に映らない=症状がないわけではありません。

不安3|保険会社に「そろそろ治る時期」と言われたら従うべき?

痛みやしびれがあるなら、治療を止める必要はありません。
保険会社の担当者が、「一般的に3か月程度で治る」などと説明することがあります。
しかし、治り方には個人差があります。 治療を終了するかどうかを決めるのは保険会社ではなく、主治医です。しびれが残っているのに無理に治療を終了し、そのまま示談に応じると、適正な補償を受け取れないおそれがあります。

《ここが法的ポイント》
被害者の方の中には、医学的な判断と保険会社の主張を混同してしまう人がいます。
医学的な判断については、保険会社の意見ではなく、主治医の意見を尊重する必要があります。

交通事故後にしびれが生じる一般的な原因

※本章は、交通事故に関する法的実務の解説を目的とするものであり、診断・治療・医学的判断を行うものではありません。
症状については、必ず医師の診断を受けてください。

そもそも、なぜ事故後にしびれが起こるか、その主な原因は以下のとおりです。

むちうち症(頚椎捻挫)による神経への影響

追突などの衝撃で、首が前後にムチのようにしなり、首周辺の神経が引き伸ばされたり圧迫されたりします。
この結果、首だけでなく、神経がつながる肩・腕・手の指先などにしびれや感覚障害などの神経症状が放散するのが特徴です。
事故との因果関係を証明するためには、いつ・どこにどの神経症状が出るかを記録することが重要です。
むちうちの症状や治療方法については、以下の記事も合わせてご参照ください。

交通事故のむちうち治療に関する疑問解消と適正な賠償金を得るコツ

神経根や末梢神経の損傷

事故の直接的な打撃により、手足の感覚を司る神経根や末梢神経が傷つくケースです。

  • 皮膚の上から触った感覚が鈍い(感覚障害)
  • 手に力が入りにくい、箸がうまく持てない(運動障害)

といった症状が現れることがあります。

事故直後ではなく後からしびれが現れる理由

「事故当日は平気だったのに」という方は少なくありません。
事故直後はアドレナリンの分泌などにより興奮状態にあり、痛みを感じにくくなっています。 さらに、数日かけて筋肉の炎症が広がり、神経を圧迫し始めることで、遅れて症状が出ることがあるためです。

《ここが法的ポイント》
法律実務において重要なのは、【しびれの原因が交通事故によること(因果関係)】の立証です。
事故から時間が経ってから症状を訴えると、因果関係が否定されやすくなります。
だからこそ、初期段階での症状の記録化と医療機関の受診が重要です。

交通事故のしびれは後遺障害として認定される可能性がある

治療を続けても改善が乏しく、しびれや神経症状が残る場合(症状固定)は、後遺障害として認定される可能性があります。
認定にあたっては、事故との因果関係の立証が重要であり、神経症状や感覚障害の記録が審査のポイントとなります。

後遺障害が認定されると後遺障害慰謝料と逸失利益が請求できる

しびれが後遺障害として認定されると、治療費や休業損害などとは別に、後遺障害慰謝料後遺障害逸失利益(将来の収入減への補償)を受け取ることができます。

【重要用語】「症状固定」とは?
しびれが残ったまま治療を続けていると、医師や保険会社から「そろそろ症状固定(しょうじょうこてい)ですね」と言われることがあります。
これは、これ以上治療をしても、大幅な改善が見込めない状態(=後遺症が残った状態)を指す医学的・法的な区切りです。
症状固定前:保険会社から治療費・休業損害が支払われる
症状固定後:治療費の支払いが終わり後遺障害等級の審査へ移行する
このタイミングを誤ると、本来もらえるはずの治療費がもらえなくなったり、早すぎて後遺障害が認められなかったりするため、症状固定の時期は慎重に判断する必要があります。

症状固定については、以下の記事も合わせてご参照ください。

交通事故で症状固定|症状固定の意味とその後にすること

しびれで認定されうる後遺障害等級

しびれ(神経症状)で認定される可能性がある等級の典型例は、12級13号14級9号です。

等級 認定のポイント 慰謝料の目安
(弁護士基準)
12級13号 MRI画像などで神経圧迫の異常が他覚的(客観的)に証明できるもの 約290万円
14級9号 画像上の異常は明確ではないが、事故状況や治療経過から症状の存在が医学的に説明(推定)できるもの 約110万円

慰謝料額は、弁護士が介入した場合に目指すべき弁護士基準に基づく一般的な目安です。
実際の金額は、事故の過失割合や個別の事情により異なりますので、必ずしもこの金額が保証されるものではありません。

14級と非該当の大きな壁

画像に異常が写りにくいしびれの症状は、対策をしないと非該当(後遺障害ではない)と判断される可能性が高いのが特徴です。
14級に認定されるか、非該当と判断されるかによって、後遺障害慰謝料や逸失利益を含めた損害賠償額に、結果として数百万円単位の差が生じることもあります。
適切な補償を受けるためにも、医学的な証拠を積み上げることが重要です。

【この章のポイント整理】
✔ 12級は「他覚的所見(画像)」、14級は「医学的な説明」が鍵となる
✔ 画像に映らなくても、後遺障害14級の可能性は残されている

交通事故によるしびれが後遺障害に認定される仕組みや、後遺障害等級認定のポイントについては、以下の記事も合わせてご参照ください。

交通事故の後遺障害等級認定とは|認定を受けるための5つのポイント

実務上交通事故のしびれでよくあるトラブル

ここでは、実務上、交通事故のしびれでよくあるトラブルについてご紹介します。

トラブル1|医師に症状を具体的に伝えない

医師に「首が痛いです」などとだけ伝え、手や腕の神経症状や感覚障害、しびれが残る症状を伝えないケースです。
カルテに「疼痛(痛み)」のみ記載されると、後からしびれや神経症状が残る場合に、「事故当初には無かった症状だ」として事故との因果関係を否定されるリスクがあります。
事故との因果関係を証明するためには、しびれや感覚障害の具体的な表現を医師に正確に伝えることが重要です。

トラブル2|MRI撮影のタイミングが遅い

事故から数か月以上経ってからMRIを撮影するケースです。
これだと、仮にヘルニアが見つかっても、保険会社から「それは事故のせいではなく、加齢によるものではないか(経年変性)」などと反論されるリスクが高まります。もちろん、遅れて撮影した場合でも認定されるケースはありますが、争いを避けるためには事故直後の画像所見が有力な証拠となり得ます。

トラブル3|医師への気遣いで「よくなりました」と言う

医師に「調子はどうですか?」と聞かれ、まだしびれがあるにもかかわらず、「おかげさまで少しよくなりました」と答えてしまうケースです。
カルテにこのような記載が続くと、保険会社から治療の終了時期について相談や打診がなされる可能性があります。
本当に症状がよくなっている場合は問題ないですが、辛い症状がある場合は、正直に、ありのままを伝えてください。

《ここが法的ポイント》
これらのトラブルに共通するのは、後になってからでは修正が効かないという点です。
そのため、通院中の初期段階から、弁護士の法的助言を受けることが大切です。

交通事故によるしびれがある場合に推奨される対応

前章のトラブルを避けるために、以下のポイントを意識して通院することが重要です。

①医師にしびれの存在を正確に伝える

医師にしびれの存在を正確に伝えることが望ましいです。
整骨院の施術者にだけ伝えていて、整形外科の医師に正確な症状が伝わっていないケースがよくあります。
後遺障害の審査では、医師が書く診断書の記載内容が重視されます。
「いつ」「どの部位が」「どのように」しびれるのかを正確に医師に伝えてください。

②MRI検査・神経学的検査を検討する

MRI検査・神経学的検査を検討することが望ましいです。
レントゲンしか撮っていない場合は、主治医に相談してMRI検査を検討してください。
MRI検査は、神経の圧迫や椎間板の状態を客観的に確認できる重要な検査手段の一つであり、特に12級認定を目指すうえでの重要な判断材料となります。
MRIに異常が写らなくても、神経学的検査を受けることで、神経症状の存在を裏付けられる場合もあります。
・ジャクソンテスト・スパーリングテスト
ジャクソンテスト・スパーリングテストとは、頭を傾けて圧迫し、しびれの誘発を確認する検査です。

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・深部腱反射テスト(DTR)
深部腱反射テスト(DTR)とは、膝や肘の腱をゴムハンマーなどで叩き、患者さんの意思とは無関係に手足が動くか(反射の有無)を確認する検査です。

深部腱反射テストのイラスト

・筋萎縮(きんいしゅく)検査
筋萎縮(きんいしゅく)検査とは、神経麻痺の影響が筋肉に出ているかを確認する検査です。

筋萎縮(きんいしゅく)検査のイラスト

これら3つはすべて、医師が神経の異常を客観的に確認するために行う検査です。
これらの検査結果が陽性(異常あり)で、症状との整合性が医学的に説明できる場合は、画像所見が乏しくても14級に認定される可能性があります。
医師と相談し、検査の実施を検討することが望ましいです。

③継続的に通院する

継続的に通院することが望ましいです。
仕事が忙しいからと通院期間が空いてしまうと、「症状が軽い」「これ以上の治療の必要性なし」などと判断され得る材料になります。
治療方針や通院頻度については必ず主治医の指示に従ってください。 その上で、法的な観点からは、継続的に通院している実績(治療の連続性)が、痛みの存在を証明する重要な要素となります。自己判断で大きな期間を空けないよう注意が必要です。

【この章のポイント整理】
✔ 「しびれ」と「痛み」は区別して、正確な言葉で医師に伝える
✔ MRI検査は事故直後の早い段階で受けることが望ましい
✔ 自己判断で通院を止めると、痛みの証明ができなくなるリスクがある

交通事故のしびれで請求できる慰謝料・逸失利益の考え方

交通事故によってしびれが残った場合の損害賠償金は、症状の重さだけでなく、算出に使用する計算基準によって金額が大きく変動します。

後遺障害慰謝料を算出する3つの基準|自賠責・任意保険・弁護士

後遺障害慰謝料の算定基準には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判所基準)の3種類があります。
このうち、弁護士基準(裁判所基準)により算定した慰謝料が高くなりやすい傾向があります。

慰謝料の3つの条件

後遺障害慰謝料は、自賠責基準と弁護士基準で下表の差が生じます。

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しびれ(神経症状)で認定される可能性のある12級13号と14級9号では、自賠責基準と弁護士基準とで以下の差が生じる可能性があります。

等級 自賠責基準(目安) 弁護士基準(目安) 増額幅(差額)
12級13号 94万円 290万円 約196万円
14級9号 32万円 110万円 約78万円

弁護士のサポートのもと、弁護士基準で請求することで、慰謝料の増額につながる可能性があります。
弁護士基準による慰謝料について、詳しくは以下の記事も合わせてご参照ください。

交通事故慰謝料は弁護士基準でどの程度増額?弁護士費用で損しない?

しびれと逸失利益が問題になるケース

後遺障害が認定された場合は、逸失利益(将来の収入減に対する補償)が問題となることがあります。
一般的には、後遺障害が認定された場合、逸失利益も損害として評価されることが多いと考えられます。ただし、症状の内容や労働への影響の程度によっては、争いになることもあります。
特に、画像所見の乏しい14級の場合は、労働能力喪失期間について保険会社と争いになる可能性があります。
適正な逸失利益を獲得するためには、以下のような点を具体的・論理的に主張する必要があります。

  • 手先のしびれで作業効率が落ちている(PC入力、精密作業など)
  • 痛みやしびれで集中力や持久力が低下している
  • 将来的な昇進や業務選択に制限が生じている

交通事故における逸失利益の計算方法や保険会社と争いになり易いケースについて、詳しくは以下の記事も合わせてご参照ください。

逸失利益とは?計算方法・後遺障害等級・保険会社が否定するケース

【この章のポイント整理】
✔ 損害賠償額は「症状」だけでなく「計算基準」によって大きく変わる
✔ 後遺障害が認定された場合、慰謝料だけでなく逸失利益が争点になりやすい

交通事故のしびれについて弁護士に相談するメリット

交通事故のしびれについて弁護士に相談するメリットをご紹介します。

メリット1|後遺障害認定の確率を高めるサポート

後遺障害の申請には、専門的な知識が必要です。
弁護士は、医師作成の診断書に不備がないかをチェックしたり、有利になる資料を添付したりするなど、認定の可能性を高めるための戦略を立てます。

メリット2|保険会社とのストレスからの解放

治療費の打ち切り打診など、保険会社とのやり取りに精神的な負担を感じる方もいます。
弁護士に依頼すれば、交渉窓口をすべて任せることができ、治療や仕事に専念できる環境が整います。

メリット3|慰謝料の増額交渉

ここが経済的なメリットです。
しびれのような神経症状(14級や12級)でも、弁護士基準で再計算することで、最終的な受取額が増額される可能性もあります。
保険会社の提示額に納得がいかない場合、それが適正額なのかどうかを確認するだけでも相談の価値があります。

交通事故のしびれに関するよくある質問(FAQ)

交通事故のしびれに関するよくある質問について、一問一答形式で解説します。

むちうちのしびれはいつまで続きますか?

一般的には3か月~6か月程度とされていますが、個人差が大きく、6か月以上症状が残ることもあります。
自己判断で治療を止めず、医師と相談してください。

しびれが左右どちらか(片側だけ)でも後遺障害になりますか?

後遺障害になる可能性があります。
むしろ、神経の圧迫は左右どちらかに偏って生じることが多いため、片側だけのしびれは医学的に不自然ではありません。
重要なのは、MRIなどの画像所見(神経の圧迫箇所)と、実際にしびれている側(右か左か)が一致していることです。
この整合性が確認できれば、有力な認定根拠となり得ます。

整骨院(接骨院)に通っていますが、整形外科にも行くべきですか?

はい、整形外科への定期的な受診が推奨されます。
後遺障害診断書を書けるのは医師だけです。整骨院のみの通院では、後遺障害が認定されない可能性があります。
整骨院(接骨院)に通う場合でも、最低月1、2回は整形外科を受診することをおすすめします。

まとめ|しびれへの不安を解消し適正な補償を得るために

交通事故によるしびれで重要なのは、症状そのものだけでなく、事故との因果関係を裏付ける記録と対応です。
交通事故によるしびれは、外見からは分からない辛さがあります。
「気のせいかもしれない」「保険会社の言うとおりにしたほうがいいのかも」とひとりで抱え込まず、一度弁護士に相談することをおすすめします。
ネクスパート法律事務所では、交通事故事案に強い弁護士が多数在籍しています。
後遺障害に認定される可能性はあるのか、弁護士が法的観点からアドバイスいたします。
不安な気持ちを解消し、納得のいく解決を目指すために、まずはお気軽にお問い合わせください。

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