イヤホンしながら自転車は違反?片耳は?【道路交通法の改正も解説】

自転車のイヤフォン使用は違反? 片耳使用や法改正も解説

好きな音楽を聴きながら運転する、友人と電話しながら運転するなど、日常の一部の感覚で、自転車に乗っている間もイヤホンをつける人もいるかもしれません。
しかし、その手軽さとは裏腹に、イヤホンをしながらの自転車の運転は、周囲の音を遮断し、事故の危険性を高めます。
さらに、2024年(令和6年)11月1日の道路交通法改正により、自転車の危険行為に対する取り締まりが強化されています。
この記事では、イヤホンをしながらの自転車が違法なのかについて、利用者の具体的な疑問と合わせて解説します。万が一の事故で高額な損害賠償責任を負うリスクについても解説します。
ぜひ参考にしてください。

イヤホンをしながらの自転車の運転は違反?

イヤホンをしながらの自転車の運転は違反になる可能性があります。
道路交通法には、自転車運転中のイヤホンの使用について、直接の規定はありません。 しかし、道路交通法が定める安全運転義務違反各都道府県の条例によって、違反となる可能性があります。
多くの利用者が抱く「道路交通法上は問題ないのではないか。」との認識は誤りであり、違反が確認されれば罰則の対象となる可能性があります。

道路交通法が定める安全運転義務違反に該当する可能性

道路交通法とは、日本の道路における交通の安全と円滑を図り、道路の交通に起因する障害の防止を目的として定められた法律です。
この法律は、自動車だけでなく、自転車を含むすべての車両や歩行者が、日本の公道を通行する際に守るべき基本的なルールを定めています。
道路交通法自体には、【イヤホンを使用しながら自転車を運転してはならない旨】の直接的な禁止規定は設けられていません。
しかし、自転車運転中のイヤホンの使用は、道路交通法第70条に定められた安全運転義務に抵触する可能性が高く、この義務違反によって罰則が適用される場合があります。

安全運転義務違反(道路交通法第70条)

道路交通法第70条では、すべての車両(自転車を含む)の運転者には、安全な運転をする義務が課せられています。
(安全運転の義務)
第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
参照:道路交通法 | e-Gov 法令検索

イヤホンとの関係

自転車運転中にイヤホンを使用し、周囲の音が聞こえない状態で運転すると、適切な運転操作や注意を怠ったと判断され、安全運転義務違反に問われる可能性があります。
安全運転に不可欠な周囲の音には、以下のようなものが含まれます。

  • 救急車やパトカーなどの緊急車両のサイレン
  • 他の車両や自転車が追い抜きを知らせるために鳴らす音
  • 歩行者や他の運転者から危険を知らせるための声かけ など

イヤホンで耳を塞ぐ行為は、周囲の状況が把握できていない・危険が迫っている状態につながり、事故の直接的な原因となり得る可能性があります。

罰則

この違反だけで直ちに罰則が適用されるわけではありません。しかし、イヤホン使用が原因で他の車両や歩行者と事故を起こしたり、交通の危険を生じさせたりした場合には、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金に処される可能性があります。

各都道府県が定める都道府県条例違反に該当する可能性

各地方自治体は、地域の交通安全を確保するために、イヤホンの使用を具体的な条例または規則で禁止または制限しています。
これが、道路交通法の抽象的な規定を補完し、実務上の取り締まりの根拠となっています。ほとんどの都道府県でこの種の規制が設けられているため、自転車運転中のイヤホンの使用は、違反になる可能性が高いでしょう。

都道府県条例の具体例

ここでは、東京都・大阪府・北海道・京都府を例に挙げて紹介します。

都道府県 禁止を定めている法令 禁止の判断基準
東京都 東京都道路交通規則第8条5号 安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態
大阪府 大阪府道路交通規則第13条4号 安全な運転に必要な交通に関する音又は声を聞くことができないような音量
北海道 北海道道路交通法施行細則第12条6号 安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態
京都府 京都府道路交通規則第12条12号 安全な運転に必要な交通に関する音又は声を聞くことができないような状態

ほとんどの条例は、イヤホンの使用そのものを禁止しているのではなく、【安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で運転すること】を禁止しています。

罰則

条例違反は、公安委員会遵守事項違反として取り締まられ、多くの自治体で、5万円以下の罰金が科されます。

片耳イヤホンや骨伝導イヤホンでも違反になるのか?

多くの自転車利用者は、「片耳だけなら大丈夫。」「音量を小さくしていれば問題ない。」などと、自己解釈しがちです。
しかし、この認識は法的リスクを伴います。
イヤホンの種類や装着方法(片耳、両耳、ワイヤレス、骨伝導式など)は、違反の適否を判断する際の絶対的な基準ではありません。
規制の焦点となるのは、その使用によって【安全な運転に必要な交通の音や声が聞こえない状態】にあるかどうかです。

片耳イヤホン

片耳だけイヤホンを装着していても、音量が大きすぎたり、交通量の多い場所であったりすれば、【安全な運転に必要な音が聞こえない状態】と判断され、違反となる可能性があります。

骨伝導イヤホン

骨伝導イヤホンでも、音量や状況次第で周囲の音が遮断されていれば、取締りの対象となり得ます。

違反かどうかは個別具体的に判断される

片耳イヤホンや骨伝導イヤホンが違反かどうかは、個別具体的に判断されます。
警察庁の通達にも、次のように示されています。

イヤホン等の使用という外形的事実のみに着目して画一的に違反の成否を判断するのではなく、例えば、警察官が声掛けをした際の運転者の反応を確認したり、運転者にイヤホン等の提示を求め、その形状や音量等から、これを使用して自転車を運転する場合に周囲の音又は声が聞こえない状態となるかどうかを確認したりすることにより、個別具体の事実関係に即して違反の成否を判断すること。
引用元:イヤホン又はヘッドホンを使用した自転車利用者に対する交通指導取締り上の留意事項等について(通達)|警察庁Webサイト

実際には、警察官の現場での判断に委ねられる部分が大きいため、少しでも安全に支障をきたす可能性がある場合は使用を控えるのが賢明です。

2024年(令和6年)の法改正動向|ながら運転と青切符制度

日本の自転車運転に関する規制は、近年急速に厳罰化の方向に向かっています。
特に、2024年(令和6年)の法改正の動きは、イヤホン使用を含む全ての危険行為に対する取り締まりを強化するものであり、利用者にとって危機感を持つべき要素です。

自転車のながら運転(スマホ操作)の罰則強化とその適用範囲

2024年(令和6年)11月には、自転車によるながら運転(スマートフォンでの通話や画面注視)に対する罰則が強化されました。
これはイヤホンによる聴覚の遮断とは直接的に異なりますが、運転中の注意力の散漫(注意義務違反)の点で共通の根幹を持ち、社会全体の自転車運転に対する目が厳しくなっていることを示しています。
強化された罰則は以下のとおりです。

違反行為 罰則
通常のながら運転(通話・保持・画面注視など) 6か月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金
ながら運転により道路における交通の危険を生じさせた場合 1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金

イヤホン使用による安全運転義務違反と、スマートフォン操作によるながら運転は、どちらも安全を軽視した行為として、重い刑事罰のリスクを伴います。

自転車の交通反則通告制度(青切符)|いつから導入?

自転車運転における規制強化の重大なポイントは、交通反則金通告制度(通称:青切符)の導入です。
これは2024年(令和6年)5月24日に公布された改正道路交通法に基づき、2026年(令和8年)4月1日から導入されます。
これまで、自転車の交通違反に対しては、刑事手続きを伴う赤切符(罰金)が原則でした。
しかし、青切符制度が導入されると、16歳以上の運転者は、信号無視や一時不停止などの特定の危険行為に対して、一定期間内に反則金を納めれば、刑事裁判や家庭裁判所の審判を受けないで事件が終結します。
反則金制度の導入により、取り締まりの手続きが簡略化され、警察官が現場で違反を摘発するハードルが下がります。これにより、イヤホン使用による条例違反や安全運転義務違反の取り締まり件数が、今後増加する可能性があるでしょう。

イヤホンをしながらの自転車も青切符の対象

イヤホンをつけて周りの音が聞こえない状態での自転車の運転は、青切符の対象となる場合があります。
単に反則行為をしただけでなく、交通事故につながる危険な運転行為をした場合や警察官の警告に従わずに違反行為を継続した場合に取り締まりの対象になる可能性があります。
違反した場合は、公安委員会遵守事項違反(反則行為)として、反則金5,000円が科されます。
ただし、イヤホンを片耳のみに装着しているときや、オープンイヤー型イヤホン・骨伝導型イヤホンなど、装着時に利用者の耳を完全には塞がないものについては、安全な運転に必要な音または声が聞こえる限りにおいて、違反にはなりません。

危険行為を繰り返すと自転車運転者講習の受講命令の対象に

自転車の運転者が、危険行為を3年以内に2回以上繰り返した場合、都道府県公安委員会は、その運転者に自転車運転者講習の受講を命じられます。
この危険行為には、安全運転義務違反(イヤホン使用によるものを含む)、信号無視、遮断踏切への立ち入り、指定場所一時不停止、酒酔い運転などが含まれます 。
この講習の受講命令に従わなかった場合、さらに5万円以下の罰金が科されます。
自転車利用者に対する法的責任が重層的に強化されていることがわかるでしょう。

イヤホンをしながらの自転車事故は高額な損害賠償責任を負うリスクも

イヤホンをしながらの運転には、罰則や講習命令などの行政的・刑事的リスクだけでなく、万が一事故を起こした場合に、高額な損害賠償責任を負うリスクが潜んでいます。
交通事故における損害賠償額は、当事者双方の責任の程度を示す過失割合に基づいて決定されます。
加害者が自転車を運転中にイヤホンを使用しており、それが安全運転義務違反と認定された場合、この過失割合は通常よりも高く設定される可能性が高いでしょう。
過失割合が高くなるということは、加害者側が支払うべき損害賠償金(治療費、休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料など)の負担が増えることを意味します。
例えば、加害者側の過失が10%上がるだけで、賠償額は数百万円単位で変わる可能性もあります。
安易なイヤホンの使用が、高額な損害賠償に繋がるおそれもあります。

まとめ

イヤホンをしながらの自転車運転は、道路交通法上の安全運転義務違反または都道府県条例によって、違反の対象となる可能性があります。
さらに、今後青切符制度の導入などで自転車の危険行為への罰則が強化される流れにあります。
違反にあたるかどうかだけでなく、ご自身の身の安全と万が一事故を起こした際の高額な損害賠償責任のリスクを避けるためにも、自転車に乗る際はイヤホンの使用を控えることが最も賢明な選択と言えるでしょう。

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