妊婦が交通事故に遭った場合、本人の身体はもちろんのこと、胎児への影響が心配になりますよね。
妊婦の場合には、通常よりも不安なことが多く、精神的にも大きな負担がかかることから、慰謝料も高くなるのではないかと考える人もいるでしょう。
基本的に、妊婦という理由だけで、慰謝料が通常よりも高額になることはありません。
ですが、胎児への影響によっては慰謝料が増額する場合もあります。
この記事では、主に次のことについて解説しています。
- 妊婦が交通事故に遭った場合に請求できる慰謝料
- 妊婦が交通事故に遭った場合に押さえておくべきポイント
- 妊婦が交通事故に遭った場合の慰謝料請求のタイミング
ぜひ参考にしてください。
目次
交通事故の被害者が妊婦なら慰謝料は高くなる?
基本的に、妊婦という理由だけで、慰謝料が通常よりも高額になることはありません。
妊婦でも、一般的な交通事故の慰謝料相場をもとに慰謝料額が決まります。
ただし、事故によって中絶や流産をした場合には慰謝料の増額が認められる可能性があります。
出産後、胎児に後遺症が残った場合には別途胎児の慰謝料請求が認められる可能性があります。
妊婦が交通事故に遭った場合に請求できる慰謝料
妊婦が交通事故に遭った場合に請求できる慰謝料について、次の4つのケース別に見てみましょう。
胎児に影響がないケース
胎児に影響がないケースでは、通常の被害者と同様に、妊婦本人に対する入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料が請求できます。
入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、事故によるケガや入通院によって生じる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、事故によるケガが原因で後遺障害が残った場合に、その精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
後遺障害慰謝料を請求するためには、後遺障害等級の認定が必要です。
死亡慰謝料
妊婦本人が死亡した場合には、死亡慰謝料が請求できます。
死亡慰謝料とは、事故で被害者が死亡したことにより、被害者が被った精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
死亡慰謝料には、死亡した本人に認められるものと、遺族に認められるものがあります。
中絶・流産したケース
事故によって中絶・流産したケースでは、妊婦本人に対する慰謝料が増額される傾向にあります。
事故によって中絶・流産した場合、胎児に対する慰謝料請求は認められません。胎児は、生まれてくる前の段階では損害賠償を請求する権利を持たないため、法定代理人(親)が胎児の権利を代わりに行使できないからです。
胎児に対する慰謝料が認められない代わりに、妊婦本人(母親)の慰謝料を増額する傾向にあります。
次のような事情がある場合には、慰謝料が高額になる傾向にあります。
- 妊娠期間が長い(出産日が近い)
- 長年の不妊治療により妊娠した
- 初産
- 他に子どもがいない
自賠責保険においても、妊婦が胎児を死産・流産した場合には、母親への慰謝料が別途以下のように加算されます。
妊娠月数(週数) |
慰謝料加算額 |
12週以内 |
30万円 |
13週~24週 |
50万円 |
25週以上 |
80万円 |
早産したケース
事故によって早産したケースでは、早産のためにかかった治療費・入通院慰謝料を請求できる場合があります。
ただし、事故と早産との間に因果関係が認められる場合に限られます。
胎児に後遺症が残ったケース
事故によって胎児に後遺症が残ったケースでは、妊婦本人の慰謝料のほかに、生まれてきた子どもの治療費・後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益を請求できます。
後遺障害逸失利益とは、事故により障害が残ってしまうことで、健常時よりも労働能力が低下し、それに伴い生涯収入の減少が予想される部分の収入のことです。
生まれてきたことで、妊婦本人とは別に、子ども本人の慰謝料請求ができます。
ただし、事故と子どもの障害に因果関係が認められる場合に限られます。
妊婦が交通事故に遭った場合に押さえておくべきポイントは?
交通事故に遭った場合、誰もが動揺してしまいます。
妊婦であれば、なおさら不安になることでしょう。
妊婦が交通事故に遭った場合に押さえておくべきポイントとして、次の2つが挙げられます。
- 警察や救急隊員等に妊婦中であることを告げる
- 事故後も定期的にかかりつけの産婦人科を受診する
以下、詳しく見ていきましょう。
警察や救急隊員等に妊娠中であることを告げる
警察や救急隊員等に妊娠中であることを告げましょう。
警察や救急隊員等に妊娠中であることを告げることで、産婦人科対応もできる適切な医療機関に搬送してもらえるでしょう。
妊婦の場合には、薬や検査方法によっては避けた方がよい場合もあります。
産婦人科対応もできる適切な医療機関に搬送してもらうことで、適切な治療を受けられるでしょう。
事故後も定期的にかかりつけの産婦人科を受診する
事故後も定期的にかかりつけの産婦人科を受診しましょう。
事故直後は症状がなく、胎児にも影響なしと言われた場合であっても、後日症状が出てくることもあります。
事故後も定期的にかかりつけの産婦人科を受診しましょう。
ただし、慰謝料請求の観点からは、被害者自身の判断で必要以上に病院を受診すると因果関係を否定される可能性があります。
主治医の指示に従うことが前提ですが、出血等何らかの症状があった場合には、直ぐに受診しましょう。
妊婦が交通事故に遭った場合の慰謝料請求のタイミングは?
一般的な交通事故の慰謝料請求のタイミングは、下表の3つに分けられます。
事故の種類 |
慰謝料請求のタイミング |
人身事故(後遺障害なし) |
治療終了後 |
人身事故(後遺障害あり) |
後遺障害認定後 |
死亡事故 |
葬儀後(一般的には四十九日が過ぎた後) |
では、妊婦が交通事故に遭った場合の慰謝料請求のタイミングはいつになるのかについて見ていきましょう。
中絶・流産の場合を除き原則出産してから示談交渉を始める
妊婦の場合には、中絶・流産の場合を除き原則出産してから示談交渉を始めましょう。
事故後の検査段階では胎児への影響がないとされていたとしても、実際に生まれるまでは事故の影響の有無はわかりません。
出産前に示談が成立してしまうと、出産後に胎児への影響が発覚した場合であっても、再度示談交渉をするのは難しいです。
したがって、原則出産してから示談交渉を始めましょう。
加害者側の保険会社から示談交渉を迫られている場合には、妊婦であることを伝え、出産が終わるまで待ってもらうようにきちんと伝えましょう。
なお、出産までに事故によるケガの治療が終了していない場合には治療終了後に、後遺症がある場合には後遺障害認定後に示談交渉を始めましょう。
時効成立前に示談交渉を始める
時効成立前に示談交渉を始めましょう。
出産後は、子育てでいっぱいで、示談交渉をする余裕なんてない人がほとんどでしょう。
しかし、交通事故の慰謝料はいつまでも請求できるわけではなく、時効があります。
時効成立前に示談交渉を始めないと、慰謝料請求が認められなくなりますので、時効は必ず把握しておきましょう。
交通事故の慰謝料請求権の時効は原則5年
交通事故の慰謝料請求権の時効は原則5年です。
事故の種類によって、下表のように分けられます。
事故の種類 |
時効期間 |
人身事故(後遺障害なし) |
事故日の翌日から5年 |
人身事故(後遺障害あり) |
症状固定日の翌日から5年 |
死亡事故 |
死亡日の翌日から5年 |
なお、当て逃げ事故やひき逃げ事故等で加害者が不明の場合には、慰謝料請求権の時効は20年です。
自賠責保険会社への被害者請求権の時効は3年
自賠責保険会社への被害者請求権の時効は3年です。
被害者請求とは、交通事故の被害者が、加害者の自賠責保険会社に直接損害賠償額を請求する方法です。
加害者に対する請求と自賠責保険会社に対する請求とでは、時効期間が異なります。
自賠責保険会社に対して被害者請求する場合には、早めに手続きを開始しましょう。
まとめ
妊婦の場合には、慰謝料請求には特有の問題があります。
胎児への影響によっては、慰謝料が複雑になる場合があるでしょう。
妊婦が交通事故に遭った場合には、できるだけ早めに弁護士に相談することをおすすめします。
出産後は子育ての負担も大きいですから、できるだけ負担の少ない形で解決できることが望ましいでしょう。
ネクスパート法律事務所では、交通事故事案の解決実績を豊富にもつ弁護士が在籍しています。ぜひ一度ご相談ください。