交通事故の被害者になったら、加害者に対して損害賠償請求ができますが、注意しなければいけないのが時効の問題です。
交通事故の損害賠償請求は、受けた被害の大きさで請求額が決まるため、請求が確定するまで時間がかかります。のんびりしているといつの間にか時効が目前に迫っていたということもあります。
今回の記事では、損害賠償請求時効について解説します。
目次
交通事故による損害賠償請求権の時効は3年から20年
交通事故による損害賠償請求権の時効は、3年から20年と幅があります。これは加害者が判明しているかどうかや加害者に対してどのような請求をするのかによって違いがあるからです。
ここでは、請求の種類別に時効までの期間といつ時効がスタートするのか(起算点)について解説します。いずれも2020年4月1日以降に発生した交通事故の時効について説明します。
物損事故の損害賠償請求権
交通事故によって車や自転車、洋服や持ち物が壊れてしまった場合、加害者に対して損害賠償請求ができます。
物損事故の損害賠償請求権の時効期間は3年です。
損害および事故の加害者が分かった日の翌日から時効の進行が始まり交通事故の場合、通常、事故発生時に損害と加害者を知ることになるので、事故発生日の翌日から時効が進行します。
人身事故の損害賠償請求権
交通事故によって怪我をした場合、加害者に対して損害賠償請求ができます。
人身事故の損害賠償請求権の時効期間は5年です。
損害および事故の加害者が分かった日から時効の進行が始まり交通事故の場合、通常、事故発生時に損害と加害者を知ることになるので、事故発生日の翌日から時効が進行します。
交通事故で負った傷害が原因で、被害者に後遺障害が残った場合は、症状固定日の翌日から時効期間が進行します。
死亡事故の損害賠償請求権
交通事故によって被害者が死亡した場合、被害者の相続人は加害者に対して損害賠償請求ができます。
死亡事故の損害賠償請求権の時効期間は5年です。死亡事故の場合も、損害および加害者が分かった日から時効の進行が始まります。通常、死亡日(または相続人が被害者の死亡を知った日)の翌日が起算点となります。
事故の加害者が分からない場合
交通事故で当て逃げ・ひき逃げにあったなど事故の加害者が分からない場合の時効期間は下表のとおりです。
状況 |
時効期間 |
加害者が分からないままの場合 |
事故発生日の翌日から20年 |
途中で加害者が判明した場合 (物損事故の場合) |
次のいずれか早い方 ・加害者を知った翌日から3年 ・事故発生日の翌日から20年 |
途中で加害者が判明した場合 (人身事故【傷害】の場合) |
次のいずれか早い方 ・加害者を知った翌日から5年 ・事故発生日の翌日から20年 |
途中で加害者が判明した場合 (人身事故【後遺障害】の場合) |
次のいずれか早い方 ・加害者を知った翌日と症状固定日の翌日のいずれか遅い方から5年 ・事故発生日の翌日から20年 |
途中で加害者が判明した場合 (人身事故【死亡】の場合) |
次のいずれか早い方 ・加害者を知った翌日から5年 ・事故発生日の翌日から20年 |
交通事故による損害賠償請求権の時効の進行が一時的に止まるパターンは?
交通事故による損害賠償請求は、相手との示談交渉がなかなか成立しないなど時間がかかる場合があります。時効の進行を一時的に止めたいと考えた時、下記の4つの方法があります。
加害者や保険会社に裁判上で損害賠償を請求した時
加害者や保険会社に対して、裁判で損害賠償を請求したら、裁判が終わるまで時効の完成が猶予されます。
確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、裁判が終了した(判決が確定した)時点で改めて時効がスタートします(時効の更新)。
権利が確定しないまま手続きが終了した場合は、時効の更新が生じませんが、手続きが終了した時点から6か月を経過するまでの間、引き続き時効の完成が猶予されます。
加害者や保険会社に内容証明郵便等で損害賠償を請求した時
加害者や保険会社に対して、損害賠償を請求する旨の意思を通知したときは、時効の完成が猶予されます。債務者にこのような義務の履行を求める意思の通知を催告といいます。
催告は口頭でも行えますが、口頭で催告がなされた場合は、その事実が証拠として残らないため、配達証明付きの内容証明郵便等で行うのが一般的です。
債権者が債務者に催告を行った場合、催告の時から6か月が経過するまでの間、時効の完成が猶予されます。
なお、時効の完成を猶予する催告は1度しかできないため、利用するタイミングが重要です。
強制執行等をした時
加害者の財産を強制的に差し押さえて損害賠償金を回収する裁判所の手続きを強制執行といいます。強制執行の申立てを行うには、事前に債務名義を取得しなければいけないのですが、強制執行をすると手続きが終わるまで時効の完成が猶予され、終了と同時に時効が更新されます。
なお、取り下げなどで事由が終わった場合は、時効は更新されず、終了から6か月が経過するまでの間、時効の完成が猶予されることになります。
当事者同士が、損害賠償請求について書面で合意した時
加害者と被害者の双方が、損害賠償請求権について協議をすると書面で合意した場合、下記の中でいずれか早い時点までの期間は時効が完成しません。
- 合意があった時から1年が経過した時
- 1年未満の協議期間の合意をした場合は、その期間を経過した時
- 当事者のどちらかから協議を拒否する旨の通知が書面で送られたら、その通知から6か月を経過した時
なお、この合意では、合計5年間まで時効の完成を延ばせます。
交通事故による損害賠償請求権の時効が更新するパターンは?
時効の更新とは、時効の進行を一時的に止めて改めてスタートさせるのではなく、時効のカウントをリセットしてゼロからスタートさせることです。
交通事故による損害賠償請求権の時効がリセットされるパターンを紹介します。
確定判決等によって権利が確定した時
裁判上の請求等(裁判上の請求・支払督促・起訴前の和解・調停・破産手続参加)により、確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定した時は、手続きが終了した(権利が確定した)時点で時効のカウントがリセットされ、ゼロからスタートします。この場合、時効期間は一律で10年です。
強制執行等の手続きが取り下げ・取り消し等されることなく終了した時
裁判所に対して行った強制執行等の手続きが、取り下げや取り消しされることなく終了した時点で時効のカウントがリセットされ、ゼロからスタートします。
損害賠償金の一部が支払われた、支払い条件の提示があった時
加害者から損害賠償金の一部が支払われた、または支払い条件の提示があることを債務の承認といいます。この場合も加害者が債務を承認した時点で時効のカウントがリセットされ、ゼロから新たにスタートします。
交通事故の損害賠償請求を弁護士に依頼するメリットは?
交通事故の損害賠償請求は、加害者と交渉をするなど難しい側面があります。
ここでは、損害賠償請求を弁護士に依頼するメリットについて解説します。
時効を考慮して、迅速な対応ができる
加害者に対して損害賠償請求ができる期間には限りがあります。時効が成立するまでの期間が意外に短いと感じた人も多いことでしょう。示談交渉が難航する場合もありますし、時効を気にするあまり、示談の内容に妥協するのもよくありません。
弁護士に依頼すれば、時効を考慮して相手との示談交渉を迅速に進められます。
相手方とのやりとりを任せることができる
示談交渉を成立させるためには、交通事故の加害者(または保険会社)とのやりとりが必須です。しかし、被害者ご自身で加害者と交渉するのは、思っている以上に精神的に負担がかかります。お互い感情的になって、話し合いがまとまらない可能性もあるでしょう。
弁護士が間に入ることで、冷静に話し合いに臨めますし交渉の一切を任せられます。交通事故後の身体的・精神的負担を軽減できるのは大きなメリットといえます。
まとめ
交通事故の被害者にとって、損害賠償請求はとても大切なことです。納得できる示談内容を得るためには、粘り強く相手と交渉しなければいけませんが、時効にも注意しなければなりません。
事故後は身体的につらいことはもちろんのこと、事故の瞬間を思い出してしまうなど、精神的に追い詰められる場合があります。
そんな時は自分一人で問題を抱えるのではなく、交通事故の案件を多く手がけている弁護士に頼ってみましょう。弁護士であれば、あの時こうすればよかった…と後悔することがないように相手と交渉を進められます。ぜひ早めにご相談ください。