交通事故の被害に遭った場合、一般的には加害側の保険会社と示談交渉を行います。
被害者が自ら交渉を行う場合は、保険会社から提示された示談金の額が適正かどうかわからず、示談を成立させてよいのか判断がつかないこともあるでしょう。
示談金の額は、交通事故の種類や事故の状況、怪我の程度によって異なります。
この記事では、示談金として被害者が請求できる損害項目や示談金の相場・計算方法を解説します。
目次
交通事故の示談金とは?
ここでは、交通事故の示談金の概要と慰謝料との違いについて解説します。
当事者間で合意した損害賠償金
示談金は、交通事故の被害者が被った損害を金銭に換算したもので、当事者間の交渉を経て、双方の合意のもと被害者に支払われる損害賠償金です。
慰謝料と示談金の違い
示談金は、加害者から支払われる損害賠償金の全部であり、慰謝料はその一部です。
交通事故の示談金の内訳(損害項目)
ここでは、交通事故の示談金の内訳(損害項目)について解説します。
交通事故により発生しうる損害項目は、大きく分けると、以下の4つに分類されます。
- 積極損害
- 消極損害
- 精神的損害(慰謝料)
- 物的損害
被害者が加害者に請求できる示談金の額は、被った損害の内容に応じて異なります。
積極損害
積極損害とは、交通事故により支出を余儀なくされた損害です。
積極損害には、主に人身損害に関わる以下の費用が挙げられます。
- 治療費
- 付添看護費
- 入院雑費
- 通院交通費
- 葬儀関係費
- その他の費用
治療費
症状固定までの治療費
症状固定までの治療費や入院費は、傷害の治療に必要かつ相当な範囲であれば、実費全額が損害として認められます。
鍼灸・あんま・マッサージ等の医師以外が施術する場合の治療費は、原則として医師による指示がある場合に限り、損害として認められます。
ただし、医師の指示がない場合でも、症状の回復に有効で、施術内容が合理的かつ費用・期間等も相当な場合には、損害として認められることもあります。
症状固定後の治療費・将来の治療費
症状固定とは、これ以上治療しても症状が改善しない状態を指すため、症状固定後の治療費は原則として損害として認められません。
ただし、現実には改善が期待できなくても、リハビリテーションや保存的治療が必要なケースで、その支出が相当な場合には、損害として認められることもあります。
付添看護費
入院付添看護費
入院付添看護費は、原則として以下の場合に損害として認められます。
- 医師による付添の指示がある場合
- 被害者の受傷の程度・年齢により必要性がある場合
被害者が入院した病院が完全看護体制である場合でも、傷害の程度が重大で家族の補助が必要な場合には、損害として認められることもあります。
通院付添看護費
通院付添看護費は、被害者が幼児や身体障害者であるなど、付き添いの必要性が認められる場合には、損害として請求できます。
将来の付添看護費
被害者に重度の後遺障害が残った場合は、医師の指示や症状の程度により、その必要性がある場合に、将来の付添看護費が損害として認められます。
入院雑費
入院に伴い、おむつ代や日用品等のさまざまな雑費が発生します。
入院雑費はその費用が多品目にわたるため、実務上は入院日数に一定額を乗じた金額が損害として認められます。
被害者に重度の後遺障害が残り、症状固定後も入院生活を余儀なくされる場合などには、将来の雑費も損害として認められることがあります。
通院交通費
被害者の通院交通費は、損害として認められます。
損害の算定において基準となるのは、原則として以下の費用です。
- バス・電車等の公共交通機関の利用料金
- 自家用車による通院の場合は、ガソリン代および駐車料金
傷害の程度やその他の事情によって、公共交通機関での通院が困難な場合には、タクシー料金が損害として認められることもあります。
近親者が付き添いのために負担した交通費は、その必要性がある場合には損害として認められます。
葬儀関係費
葬儀関係費には、葬祭費のほか供養料、墓碑建立費・仏壇費・仏具購入費等があります。
葬儀関係費は、被害者・遺族の宗教や地域の習慣によって規模や内容が異なり、支出される金額もさまざまです。
しかし、交通事故により予期せぬ時期に急きょ葬儀をしなければならなかった場合、その葬儀は世間一般に行われる規模での標準的な葬儀と想定できます。
実務上、葬儀関係費は基準額が定められています。基準額以上の規模の葬儀関係費を支出しても、特別な事情がない限り、基準額の限度で損害として認められます。
その他の費用
家屋・自動車等改造費
事故により車椅子での生活を余儀なくされた場合などには、居宅内の工事(廊下や浴室等の改造や段差解消等)や、自動車の改造・介護用自動車の購入等が必要になることがあります。
家屋・自動車等の改造費は、以下の事情を考慮して、必要かつ相当なものが損害として認められます。
- 被害者の後遺障害の程度・内容
- 被害者の現状
- 家族の利便性 など
自動車など耐用年数の関係で将来買い替えが必要なものは、将来の改造費用も損害として認められることがあります。
装具・器具等購入費
以下のような装具・器具購入費も、症状の内容・程度に応じて、必要な範囲で損害として認められます。
- 車椅子
- 義手、義足、義歯、義眼、装具等
- 介護用品・器具(電動ベッド、介護支援ベッド、歩行訓練器など)
- 眼鏡・コンタクトレンズ
一定期間で交換の必要があるものは、装具・器具が必要な期間の範囲内で、将来の費用も認められます。
消極損害
消極損害とは、事故がなければ得られたはずなのに、事故により得られなくなった財産的損害です。
消極損害には、休業損害と逸失利益があります。逸失利益の種類には、後遺障害による逸失利益と死亡による逸失利益の2つがあります。
休業損害
休業損害とは、被害者が事故による受傷の治療または療養のために、休業または不十分な就業を余儀なくされたことにより、本来なら得られた収入を得られなくなったことによる損害です。
傷害の治癒または症状固定までの間に生じた減収部分が損害として認められます。
休業損害は、事故前の収入を基礎とする現実の収入源を補償するものであり、休業以外の遅刻・早退などにより生じた減収も含まれます。
後遺障害による逸失利益
後遺障害による逸失利益とは、被害者に後遺障害が残り、労働能力が減少したことにより失った、将来得られるはずの利益の減少です。
休業損害が症状固定時までの現実の収入源を補償するのに対し、逸失利益は症状固定後の労働能力喪失による減収を補償するものです。
死亡による逸失利益
死亡による逸失利益とは、被害者が事故により死亡しなければ得られたはずの経済的利益を失ったことによる損害です。
死亡による逸失利益は、基本的には後遺障害による逸失利益と類似し、労働能力が100%失われた場合と考えられます。
ただし、被害者が死亡していることから、生活費の支出を免れた利益分の調整のため、生活費が控除されます。
精神的損害(慰謝料)
慰謝料は、被害者に生じた精神的損害(苦痛)をてん補するものです。
実務では、次の3つに分けて算定します。
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
- 死亡慰謝料
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、病院に入院・通院したことに対して支払われる慰謝料です。
治療のために要した入院・通院の期間に基づいて算定します。
その際に用いられる算定基準には、次の3つがあります。
- 自賠責基準:自賠責保険の算定に利用する基準
- 任意保険基準:各保険会社が独自に定めている基準
- 弁護士(裁判)基準:裁判所や弁護士が用いる基準
どの基準が用いられるかは、自賠責保険か否か、保険会社が示談案を提示する場合か否か、弁護士が介入しているか否か、裁判か否かによって異なります。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、後遺障害が生じたことに対して支払われる慰謝料です。
これ以上治療を続けても改善ができない場合に症状固定となり、後に残る障害が後遺障害となります。
後遺障害慰謝料は、基本的に自賠責保険(損害保険料率算出機構)で認定された後遺障害等級ごとに算定されるのが基本です。
弁護士(裁判)基準でも、等級ごとに慰謝料額の目安が示されています。
死亡慰謝料
死亡慰謝料は、被害者が死亡したことに対して支払われる慰謝料です。
死亡慰謝料の算定にも、3つの基準のいずれかが用いられます。
物的損害
物的損害は、車両の損傷や車両に積載していた物品の破損、事故により建物を損傷した場合などの損害です。
最も多いのは車両の損害で、主な損害項目として以下のものが挙げられます。
- 車両修理費等
- 代車使用料
- 休車損
- 評価損
交通事故の示談金の相場や計算方法は?
ここでは、交通事故の示談金の相場や計算方法について解説します。
【前提】事故状況や受傷状況等によって異なる
示談金の相場は、「物損事故なら〇〇万円、人身事故なら〇〇〇万円」とは、一概には言えません。
交通事故において、被害者が請求できる損害額は、以下のような個別具体的な事情によって異なるからです。
- 事故の状況
- 怪我の程度
- 後遺障害の有無
- 過失割合
加害者側の保険会社が提示した示談金が妥当な金額かどうかを判断するためには、損害項目ごとの相場や算定方法を把握することが重要です。
積極損害の相場
積極損害に含まれる項目の相場は、以下のとおりです。
損害項目 |
相場 |
|
自賠責基準※ (2020年4月1日以降に 発生した事故) |
弁護士(裁判基準) |
|
治療費 |
実費全額(傷害の治療に必要かつ相当な範囲) |
|
付添看護費 |
原則として、12歳以下の子供に近親者等が付き添った場合 ・入院1日につき4,200円 ・通院1日につき2,100円 ※上記以外の場合は、主治医が看護の必要を認めた旨の証明書が必要 |
①近親者の付添の場合 ・入院1日につき5,500円~7,000円 ・通院1日につき3,000円~4,000円 ②職業付添人の付添場合 実費全額 |
入院雑費 |
入院1日につき1,100円 |
入院1日につき1,400円~1,600円 |
通院交通費 |
・原則として、公共交通機関の料金 ・公共交通機関での通院が困難な場合には、タクシー料金(領収証要) |
・公共交通機関の料金 ・自家用車を使用した場合のガソリン代 ・公共交通機関での通院が困難な場合には、タクシー料金(領収証要 |
葬儀関係費 |
原則60万円 ただし、立証資料で60万円を超えることが明らかな場合は、100万円までの範囲で実費が認定される。 |
130万円~170万円 |
その他の費用 (家屋・自動車等改造費、装具・器具等購入費) |
- |
実費全額(必要かつ相当な範囲) |
※自賠責保険の傷害部分(治療関係費、休業損害、入通院慰謝料)の支払限度額は120万円
消極損害の相場
消極損害に含まれる項目の算定方法を解説します。
休業損害
自賠責基準の算定方法
自賠責基準の休業損害は、以下の計算式で算出されます。
日額6,100円(2020年3月31日以前に発生した事故は5,700円)×認定休業日数 |
認定休業日数とは、治療期間内(事故の日から治癒又は症状固定の日まで)に現実に休業し収入の減少があった日数または有給休暇を使用した日数の合計です。
家事従事者(被害者以外に家事従事者がおらず、家事に専業する者)の場合は、実治療日数が休業した日数として認定されます。
弁護士(裁判)基準の算定方法
弁護士(裁判)基準の休業損害は、以下の計算式で算出します。
基礎収入×休業期間 |
休業損害証明書などで休業日数が明確な場合は、基礎収入に休業日数を乗じた金額が休業損害となります。
休業日数が長期にわたり休業の必要性が問題となる場合は、治療期間の限度内で就業困難とするのが相当と考えられる日数を認定休業日数とします。
主婦や失業者など休業日数が明確でない場合は、休業日数を実通院日数や治療期間の総日数に限定して計算することもあります。
基礎収入は、被害者の職業等に応じて下表のとおり算定します。
被害者の職業 |
基礎収入 |
給与所得者 |
以下のいずれかを基礎収入とする。 ①事故前3か月の平均給与を基礎とする ②年間給与・年収を基礎とする |
日雇労働者・非常勤日給者 |
以下の計算式で求めた額を基礎収入とする。 {(日給×過去3か月分の就業日数)÷90日}×休業日数 |
事業所得者 |
得られたはずの収入(売上額)から、これを得るために必要としたはずの原価と経費(主に流動経費)を控除した額を基礎収入とする。 売上額や原価・経費は休業前の実績の平均的数値に基づいて判断する。 |
家事従事者 |
原則として、賃金センサス第1巻第1表産業計・企業規模計・学歴計・女性労働者の全年齢平均賃金を基礎収入とする。 |
無職者 |
事故前に現に収入を得ていない者に対しては、原則として休業損害が認められない。 ただし、治療が長期にわたる場合で、事故がなければ治療期間中に就職する蓋然性が高いときは、休業損害が認められる。 この場合、失業前の現実収入の額や予想される将来の職業等を参考に、基礎収入を算定する。 |
後遺障害による逸失利益
自賠責基準の算定方法
自賠責基準の後遺障害による逸失利益は、以下の計算式で算定されます。
年間収入額×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数 |
年間収入額は、職業の有無や年齢により、以下のとおり異なります。
別表についてはこちらも併せてご確認ください。
参考:自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準|国土交通省
被害者の属性 |
年間収入額の算出方法 |
有職者 |
以下のいずれか高い方の額 ①事故前または後遺障害確定前のいずれかの額の高い方の年間収入額 ②症状固定時の被害者年齢に対応する年齢別平均給与額(自賠責保険支払基準・別表Ⅳ) ただし、後遺障害確定時の年齢が35歳未満の場合は、以下のいずれか高い方の額 ①症状固定時の被害者年齢に対応する年齢別平均給与額(自賠責保険支払基準・別表Ⅳ) ②全年齢平均給与額(自賠責保険支払基準・別表Ⅲ) |
幼児・児童・学生 |
全年齢平均給与額(自賠責保険支払基準・別表Ⅲ)を年間収入額とする |
家事従事者 |
全年齢平均給与額(自賠責保険支払基準・別表Ⅲ)を年間収入額とする。 ただし、以下の3つの条件を満たす場合は、「その他働く意思と能力を有する者」として年間収入額を算出する。 ・配偶者がいない ・現に勤労所得がない ・同一世帯に家事を専業する者がいる、もしくは一人で生活している |
その他働く意思と能力を有する者 |
症状固定時の被害者年齢に対応する年齢別平均給与額(自賠責保険支払基準・別表Ⅳ)を年間収入額とする。 |
労働能力喪失率は、後遺障害等級に応じた自賠責支払基準・別表Ⅰを採用します。
就労可能年数に対応するライプニッツ係数は、後遺障害確定時の年齢に応じた自賠責支払基準・別表Ⅱ―1の就労可能年数とそのライプニッツ係数を採用します。
弁護士(裁判)基準の算定方法
弁護士(裁判)基準の後遺障害による逸失利益は、以下の計算式で算定します。
<有職者または就労可能者の場合>
基礎収入×労働能力喪失率×喪失期間に対応するライプニッツ係数 |
<18歳未満(症状固定時)の未就労者の場合>
基礎収入×労働能力喪失率×(67歳までのライプニッツ係数-18歳に達するまでのライプニッツ係数) |
労働能力喪失率とは、労働能力の低下の程度です。労働能力喪失率は、自動車損害賠償保障法施行令別表第2を参考とします。
後遺障害における労働能力喪失期間の始期は症状固定日、終期は一般的に67歳です。
逸失利益につき一時金として支払いを求める場合は、将来にわたる逸失利益総額を現在価額に換算する必要があり、そのために中間利息を控除します。
中間利息の控除方法には、ホフマン方式(単利)とライプニッツ方式(複利)がありますが、現在は全国的にライプニッツ方式が採用されています。
死亡による逸失利益
自賠責基準の算定方法
自賠責保険の死亡による逸失利益は、以下の計算式で算定されます。
(年間収入額-本人生活費)×就労可能年数のライプニッツ係数 |
年間収入額の算出方法や就労可能年数のライプニッツ係数は、基本は後遺障害の逸失利益と同じです。
自賠責保険では、年間収入額から差し引く本人生活費を、以下のとおり定めています。
- 死亡した被害者に被扶養者がいる場合:年間収入額の35%
- 死亡した被害者に被扶養者がいない場合:年間収入額の50%
弁護士(裁判)基準の算定方法
死亡による逸失利益は、以下の計算式で算定します。
基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数のライプニッツ係数 |
基礎収入や就労可能期間、中間利息控除については、後遺障害による逸失利益の場合と同じす。
精神的損害(慰謝料)の相場
入通院慰謝料
自賠責保険の算定方法
自賠責保険の入通院慰謝料は、以下の計算式で算定されます。
日額4,300円(2020年3月31日以前に発生した事故は4,200円)×認定日数 |
認定日数は、以下のいずれか少ない方の日数です。
- 実治療日数の2倍
- 総治療期間
ただし、自賠責保険の傷害部分(治療関係費、休業損害、入通院慰謝料)の支払限度額は120万円です。
弁護士(裁判)基準の算定方法
弁護士(裁判)基準の入通院慰謝料は、原則として入通院期間を基礎として、別表Ⅰを用いて算定します。
被害者の入院月数を上欄から求め、左欄から通院月数を求めて両者が交わる欄の金額(万円単位)が慰謝料の基準額です。
むちうち症で他覚所見がない場合や軽い打撲・挫創の場合は、入通院期間を基礎として別表Ⅱを用いて計算します。
通院が長期にわたる場合は、症状や治療内容、通院頻度をふまえ実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定の通院期間の目安とすることもあります。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料の相場は、下表のとおりです。
後遺障害等級 |
自賠責基準※ |
弁護士(裁判)基準 |
第1級 |
1,150万円 |
2,800万円 |
第2級 |
998万円 |
2,370万円 |
第3級 |
861万円 |
1,990万円 |
第4級 |
737万円 |
1,670万円 |
第5級 |
618万円 |
1,400万円 |
第6級 |
512万円 |
1,180万円 |
第7級 |
419万円 |
1,000万円 |
第8級 |
331万円 |
830万円 |
第9級 |
249万円 |
690万円 |
第10級 |
190万円 |
550万円 |
第11級 |
136万円 |
420万円 |
第12級 |
94万円 |
290万円 |
第13級 |
57万円 |
180万円 |
第14級 |
32万円 |
110万円 |
※2020年4月1日以降に発生した事故の後遺障害慰謝料
死亡慰謝料
死亡慰謝料の相場は、下表のとおりです。
被害者 |
自賠責基準※ |
弁護士(裁判)基準 |
一家の支柱 |
400万円 |
2,800万円 |
母親、配偶者 |
2,500万円 |
|
その他 |
2,000万円 ~2,500万円 |
※2020年4月1日以降に発生した事故の後遺障害慰謝料
自賠責保険では、被害者本人のほか、慰謝料請求権者(被害者の父母・養父母、配偶者、子)の人数に応じて、以下のとおり遺族の慰謝料が支払われます。
- 慰謝料請求権者が1人のとき:550万円
- 慰謝料請求権者が2人のとき:650万円
- 慰謝料請求権者が3人のとき:750万円
被害者に、被扶養者(配偶者、未成年の子、65歳以上の父母)がいる場合には、200万円が加算されます。
弁護士(裁判)基準の死亡慰謝料の額は、遺族の慰謝料も含めた金額です。
ただし、被害者の死亡に起因して近親者が精神的疾患を負うなど特段の場合には、別途近親者の慰謝料分が増額されることもあります。
物的損害の相場
物的損害については、積極損害・消極損害や精神的損害(慰謝料)のように、目安となる相場が示されていません。
自賠責保険金の支払い対象は人身事故に限られるため、自賠責保険では物損事故に対する補償を受けられません。
裁判や交渉実務では、損害内容に応じて、相当な範囲内の費用が損害として認められます。
各項目の損害の算定方法を確認しましょう。
車両修理費等
修理費|被害車両の修理が可能な場合
被害車両が修理可能な場合には、修理費相当額が損害として認められます。
修理費は、自動車修理工場の見積書・請求書をもとに、当事者間で以下の点を確認・検討して認定します。
- 見積書・請求書に記載された内容が被害車両の衝突部位と整合性があるか
- 修理する必要性があるか
- 金額が妥当なものがあるか
修理費は、相当なものでなければならず、過剰な修理費用は認められません。
例えば、損傷を受けた箇所だけでなく全面塗装を行った場合は、その相当性が争われます。
経済全損|被害車両の修理費が車両の時価を超えている場合
被害車両の修理費が当該車両の時価等を超えている場合(経済全損にあたる場合)は、車両損害として認められるのは、修理費ではなく車両の時価等となります。車両の時価はオートガイド自動車価格月報や中古車価格ガイドブックを参考に算定します。
車両の買い替え差額|被害車両の修理が不能な場合
被害車両が修理不能な場合には、車両を買い替えることになるのが通常です。この場合には、事故時の車両の時価と、事故後の車両の売却代金(スクラップとしての売却代金)の差額が損害となります。
中古車の時価は、原則として同一の車種・年代・型・同程度の使用状態・走行距離などの自動車を中古市場で取得し得る価格が損害となります。
代車使用料
被害車両の修理期間中や新車買い替え期間中に、代わりの車両を使用した場合は、その代車費用が損害として認められる場合があります。
使用する代車は、被害車両と車種・年式などが同程度のものが認められます。
代車を借りられず、かつ電車やバス等の公共交通機関の利用もできずにタクシーを利用した場合は、タクシー代が損害として認められることもあります。
休車損
被害車両が営業用車両の場合は、休車損が損害として認められる可能性があります。
休車損とは、事故のために車両が使用できなくなった場合、その期間、使用できていれば得られたであろう利益に相当する損害です。
タクシーやバスなどの営業車に限らず、社員の送迎や商品の集配に用いられる車両など、営業目的に使用されている車両であれば、休車損を請求できる可能性があります。
ただし、代用できる車両が他にある場合や代車費用が認められる場合は、休車損は認められません。
休車損は、以下のいずれかの計算式で算定します。
- 1日あたりの営業車使用による収入×相当な修理期間-ガソリン代等の諸経費
- 1日あたりの営業車使用による収入×買い替えに要する期間-ガソリン代等の諸経費
評価損
以下のような場合は、評価損(格落ち損)が認められる可能性があります。
- 修理しても車両の機能や外観が修復されない
- 車両の機能や外観が修復されていても事故歴が残るため売却価格が下がる
評価損が認められるか否かは、以下の点を考慮して、修理費を基準に判断される傾向にあります。
- 修理の程度
- 車種
- 登録年度
- 走行距離
その他
以下のような雑費も事故と相当因果関係が認められれば、損害として請求できます。
- 車両保管料
- レッカー代
- 時価査定料
- 通信費
- 交通事故証明書交付手数料
- 廃車料
車両が修理不能なため車両の買い替えを行った場合は、買い替えに必要な諸費用も損害として認められます。買い替えに必要な諸費用の具体例は、以下のとおりです。
- 自動車取得税
- 自動車重量税
- 自動車税
- 自賠責保険料
- 登録に必要な費用
- 車庫証明費用
- 廃車費用
ただし、全損した車両の場合は車両を廃車することで、前納した自動車税、自動車重量税、自賠責保険料等の還付を受けられるため、その分は損害から控除されます。
交通事故の示談金はいつ、誰が支払う?
ここでは、交通事故の示談金はいつ、誰が支払うのかについて解説します。
加害者加入の保険会社
任意保険では、対人賠償の金額が無制限となっているのが一般的です。
そのため、加害者が示談代行つきの任意保険に加入している場合は、通常、保険会社が示談金を支払います。
任意保険に未加入の場合は加害者本人
加害者が任意保険に未加入の場合は、通常、加害者本人と示談交渉をするため、示談金は加害者本人が支払います。
ただし、加害者(運転者)のほか、以下のような法律上の賠償責任者を示談交渉の相手方とする場合もあります。
- 運行供用者
- 使用者やその代理監督者
- 監督義務者(運転者が未成年の場合はその両親など)
この場合、加害者(運転者)も含めて全員と交渉するか、資力が十分な者との交渉を先行するか等によって、示談金の支払者が変わります。
加害者や法律上の賠償責任者が無資力な場合は、被害者が十分に損害を賠償してもらうことが困難なことがあります。
人身事故では、加害者が加入している自賠責保険から保険金が支払われるため、加害者が任意保険に加入していない場合は、自賠責保険に治療費や慰謝料等を請求できます。
加害者が自賠責保険にも加入していない場合は、政府保障事業制度を利用して、損害のてん補を求めます。
支払時期は示談成立から2~3週間程度
示談金は、示談成立から概ね2~3週間後に支払われるのが一般的です。
交通事故の示談金を受け取ったら確定申告が必要?税金はかかる?
ここでは、交通事故の示談金に税金が課税されるかどうかについて解説します。
示談金は原則非課税
示談金には、原則として税金が課税されません。
所得税・消費税等は課税されませんので、通常は確定申告の必要もありません。
例外的に課税対象となるケース
以下のような場合は、受領した示談金が例外的に課税対象となることがあります。
- 示談成立後、被害者が示談金受領前に死亡し、遺族が示談金を受け取った場合(相続税)
- 被害者が事業者で、事業用物件や商品等の損害金を受け取った場合(所得税・消費税)
- 示談金の受取人が法人の場合(法人税)
交通事故の示談金は弁護士に依頼した方が上がる?
ここでは、交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリットを解説します。
弁護士(裁判)基準で損害金を計算してもらえる
加害者側の保険会社は、自社独自の基準(任意保険基準)で損害額を算定します。
任意保険基準で算定される金額は弁護士基準より低く、自賠責基準とさほど変わらないこともあります。
弁護士に依頼すれば、3つの算定基準のうち最も高い弁護士基準で算定した損害額を請求してもらえます。
保険会社と対等に交渉できる
加害者側の保険会社の担当者は、日常的に交通事故の示談交渉を取り扱っています。
被害者が自ら交渉すると、専門的な知識や交渉力の差から不利な条件を突きつけられても、説得力のある反論をできず、望まない結果に至ることも少なくありません。
弁護士に依頼すれば、加害者側の保険会社とのやり取りを一任できます。
保険会社の担当者を上回る専門的知識や過去の判例を駆使して、被害の正当な回復を主張してもらえます。
後遺障害等級の認定手続きをサポートしてもらえる
後遺障害等級が認定されるかどうかは、提出書類が鍵となると言っても過言ではありません。同じ症状でも診断書の記載内容や提出書類が充実しているか否かによって、認定結果が変わることもあります。
後遺障害に関する知識が豊富な弁護士に依頼すれば、認定に有利に働く書類を提出でき、通院や治療に関するアドバイスも受けられます。
まとめ
交通事故の示談金の相場は、交通事故の種類や怪我の程度、過失割合等により異なります。
弁護士に示談交渉を依頼するかどうかによっても金額が異なります。
弁護士に依頼すれば、弁護士(裁判)基準で損害額を算定してもらえるため、自分で交渉するよりも、示談金を増額できる可能性があります。
加害者側の保険会社から提示された示談金の額に不満がある方は、ネクスパート法律事務所にご相談ください。