交通事故慰謝料が自賠責の限度額を超えたらどうなる?

自賠責保険は、被害者の損害を大きく傷害・後遺障害・死亡の3つに分けて、損害項目ごとにその支払基準や限度額を定めています。

交通事故により発生した慰謝料等の損害が、自賠責保険の支払限度額を超えたらどうなるのでしょうか?

この記事では、自賠責保険の支払限度額が超えた場合の対応方法等について解説します。

交通事故慰謝料が自賠責の上限額を超えたらどうなる?

ここでは、自賠責保険の支払限度額について解説します。

自賠責保険の支払限度額

自賠責保険では、以下のとおり支払限度額が設けられています。

  • 傷害による損害:120万円
  • 後遺障害による損害:75万円~4,000万円(後遺障害等級による)
  • 死亡による損害:3,000万円

傷害による損害

傷害による損害とは、自動車事故により受傷した被害者がその治療のために医療機関に入院・通院している間の損害です。

傷害による損害については、自賠責保険から以下の費用として合計120万円までの補償が受けられます。

  • 治療関係費
  • 休業損害
  • 傷害慰謝料

治療関係費には、以下のような費用が含まれます。

  • 応急手当費
  • 診察料
  • 入院料
  • 手術費
  • 通院交通費
  • 付添看護費
  • 入院雑費
  • 装具・器具等購入費
  • 文書料等

傷害による損害には、死亡に至るまでの傷害による損害も含みます。

後遺障害による損害

後遺障害とは、事故による怪我の治療を行い症状が固定した後、医師がこれ以上の改善が見込めないと判断し、かつ身体に障害が残った状態です。

後遺障害が残った場合には、傷害に対する保険金とは別に、後遺障害慰謝料後遺障害による逸失利益が支払われます。

後遺障害による損害の支払限度額は、以下のとおりです。

  • 後遺障害等級(1級~14級)に応じて3,000万円から75万円
  • 神経系統・精神・胸腹部臓器に著しい障害を残して常時介護が必要な場合は4,000万円

死亡による損害

被害者が死亡した場合の損害は、以下の4項目から成っています。

  • 葬儀費
  • 死亡本人の慰謝料
  • 遺族の慰謝料
  • 死亡による逸失利益

葬儀費は原則60万円です。ただし、立証資料で60万円を超えることが明らかな場合は100万円までの範囲で実費が認定されます。

死亡による損害の支払限度額は3,000万円です。

自賠責を超える部分は加害者側に請求できる

交通事故による損害について、自賠責保険から補償を受けられなかった部分は加害者側に請求できます。

加害者が任意保険に加入している場合は、通常、加害者側の保険会社に超過部分を請求します。加害者が保険未加入の場合は、加害者本人に請求します。

交通事故の傷害慰謝料が自賠責保険から貰えないことはある?

ここでは、自賠責保険から交通事故の傷害慰謝料を受け取れない可能性があるケースを紹介します。

治療関係費や休業損害が120万円を超えた場合

交通事故で怪我をした場合、治療関係費・休業損害・傷害慰謝料を全部合わせても損害金が120万円以内に収まる場合には、傷害慰謝料全額の支払いを受けられます。

既に支払われた治療関係費や休業損害の合計額が120万円を超える場合には、自賠責保険から傷害慰謝料は受け取れません。別途加害者側への請求が必要です。

被害者の過失が100%の場合

交通事故の発生について被害者に100%の過失がある場合には、自賠責保険から補償を受けられません。慰謝料だけでなく治療関係費や休業損害も支払われません。

なお、自賠責保険では、被害者の過失割合が7割以上の場合に保険金額が減額されます。

被害者の過失割合に応じた減額率は以下のとおりです。

被害者の過失割合

後遺障害または死亡案件

傷害案件

7割未満

減額なし

減額なし

7割以上8割未満

2割減額

2割減額

8割以上9割未満

3割減額

2割減額

9割以上10割未満

5割減額

2割減額

ただし、傷害による損害額が減額により20万円以下となる場合は、20万円となります。

そのため、被害者の過失割合が7割以上の場合は、傷害慰謝料を含む損害金全体が減額されます。

交通事故の過失割合とは|決め方・納得できない場合の反論方法を紹介

交通事故慰謝料の自賠責基準はいくら?基準を超えた慰謝料も加害者に請求できる?

ここでは、自賠責基準の傷害慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の支払基準と自賠責基準を超える慰謝料の請求方法を解説します。

自賠責基準の慰謝料

傷害慰謝料

傷害慰謝料は、認定日数1日につき4,300円(2020年3月31日以前に発生した事故の場合は4,200円)です。

認定日数は、次のいずれか少ない方の日数です。

  • 実治療日数の2倍
  • 総治療期間

上記のほか、認定日数の出し方には、以下のルールが定められています。

  • あんま・マッサージ・指圧師、鍼師、灸師の施術日数は2倍せず実施術日数とする
  • 柔道整復師(整骨院)の施術日数は医師の治療日数と同様に2倍する
  • 長管骨等のギプス固定の装着期間の日数は医師の実治療日数と同様に2倍する
  • 総治療期間は、通常、事故の日から治療最終日までとする

治療最終日とは、以下のいずれかの日です。

  • 治癒・症状固定の場合はその日
  • 治癒見込み・中止・継続・転医の場合はその日から7日を加算した日

被害者が妊婦で、事故により胎児を死産または流産した場合は、別途以下の慰謝料が加算されます。

  • 妊娠週数12週以内:30万円
  • 妊娠週数13週~24週:50万円
  • 妊娠週数25週異常:80万円

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて以下のとおり金額が定められています。

等級

後遺障害慰謝料

2020年4月1日以降に発生した事故

2020年3月31日以前に発生した事故

要介護1級

1,650万円

1,600万円

要介護2級

1,203万円

1,163万円

1級

1,150万円

1,100万円

2級

998万円

958万円

3級

861万円

829万円

4級

737万円

712万円

5級

618万円

599万円

6級

512万円

498万円

7級

419万円

409万円

8級

331万円

324万円

9級

249万円

245万円

10級

190万円

187万円

11級

136万円

135万円

12級

94万円

93万円

13級

57万円

57万円

14級

32万円

32万円

死亡慰謝料

死亡慰謝料は、死亡本人の慰謝料と遺族の慰謝料として、以下のとおり金額が定められています。

死亡本人の慰謝料

一律400万円(2020年3月31日以前に発生した事故の場合は350万円)

遺族の慰謝料

慰謝料請求者(被害者の父母、養父母、配偶者、子)の人数による。

・慰謝料請求者が1人のとき:550万円

・慰謝料請求者が2人のとき:650万円

・慰謝料請求者が3人のとき:750万円

被害者に被扶養者(配偶者、未成年の子、65歳以上の父母)がいる場合には、200万円が加算される。

弁護士(裁判)基準で慰謝料を算定する

交通事故の慰謝料を算定する基準には、自賠責基準のほかに任意保険基準と弁護士(裁判)基準があります。弁護士(裁判)基準は、3つの基準の中で最も高い水準です。

加害者等への損害賠償請求を弁護士に依頼すれば、弁護士(裁判)基準で算定した慰謝料を請求してもらえるので、自賠責基準を超える慰謝料を受け取れる可能性があります。

慰謝料を算定する3つの基準の違いや相場は、下記関連記事をご参照ください。

【交通事故】入通院・後遺障害・死亡慰謝料相場|増額されるケースとは

自分で交渉しても弁護士(裁判)基準で慰謝料をもらえる?

交通事故の被害者本人が、加害者側の保険会社と示談交渉する際に、弁護士基準で算定した慰謝料を請求すること自体は可能です。しかし、被害者本人が弁護士基準で算定した金額を提示しても、加害者側の保険会社が認めることはほとんどありません。

被害者本人でも、裁判を起こせば、弁護士基準で算定した慰謝料が認められる可能性はあります。ただし、弁護士基準を用いた慰謝料の算定はもちろん、裁判所に自分の言い分を認めてもらうには、法律の知識だけでなく過去の判例や医療に関する知識なども必要です。

保険会社は交通事故の示談交渉の知識に長けているため、専門的な知識のない一般の方が自分で交渉や裁判を行うと、不利な結果を招く可能性があります。

慰謝料を少しでも多く受け取りたい方は、弁護士への依頼をおすすめします。

【交通事故】弁護士基準で慰謝料はいくら増額する?増額する理由とは

交通事故の傷害慰謝料が自賠責の限度額を超えたら何か不利益はある?

ここでは、交通事故の傷害慰謝料が自賠責の限度額を超えた場合の注意点について解説します。

加害者側の任意保険会社が自賠責保険金相当分を一括して払っている場合は、治療関係費・休業損害・傷害慰謝料の合計額が120万円を超える頃になると、治療費の打ち切りを打診されることがあります。

一括対応の場合、任意保険会社は、後日、自賠責保険会社から自賠責保険金相当分を回収できます。傷害に関する賠償金を120万円に抑えられれば、自社の損失を最小限に留められるため、なるべく早く治療を終了させたいと考えています。

加害者側の任意保険会社に治療費の内払いを打ち切られても、ご自身の身体に症状があり、治療により症状の改善が見込める場合には、医師の指示に従い治療を継続しましょう。

交通事故による怪我の治療にも健康保険を利用できます。立て替えた自己負担分は後日加害者に請求できます。

治療の必要性・相当性に争いがある場合には、弁護士への相談をおすすめします。弁護士に依頼すれば、訴訟に移行した場合の見込み等を踏まえて妥協点を探ってもらえるので、自己負担分が回収不能となるリスクも軽減できます。

交通事故の治療費打ち切りを保険会社が打診する理由とスマートな対処法

まとめ

自賠責保険では、以下のとおり支払限度額が設けられています。

  • 傷害による損害:120万円
  • 後遺障害による損害:75万円~4,000万円(後遺障害等級による)
  • 死亡による損害:3,000万円

交通事故による損害賠償金の額が自賠責保険の上限額を超える場合は、超過部分を加害者側に請求できます。

ただし、加害者側との示談交渉には専門的な知識が不可欠です。被害者ご自身が交渉に挑むと自賠責保険の上限を超える金額を受け取れない可能性もあります。

自賠責保険の上限額を超える損害賠償金が発生する場合は、弁護士への依頼をおすすめします。

ネクスパート法律事務所には、交通事故案件の実績・経験が豊富な弁護士が多数在籍しております。交通事故の被害に遭われた方は、ぜひ一度当事務所の無料相談をご利用ください。

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