交通事故の慰謝料相場と計算方法|弁護士基準で増額するポイント・示談交渉の注意点

交通事故の慰謝料相場 正当な賠償金ガイド

交通事故の被害に遭われた方が直面する最も切実な問題、それは「適正な賠償金を受け取れるのだろうか」との不安ではないでしょうか。保険会社から提示された賠償金額が果たして妥当なものなのか、疑問に感じる方も少なくないでしょう。
保険会社が最初に提示する賠償金額は、過去の裁判例をもとに定められた法的正当性の高い弁護士基準(裁判基準)で算出した金額と比べると低額であることがほとんどです。その差額は、むちうちなど比較的軽度の傷害事案でも数十万円、重傷や死亡事故では数千万円に及ぶこともあります。
この記事では、慰謝料の相場や計算方法、増減要因など、正当な賠償金を獲得するために被害者が知っておくべきことを詳しく解説します。
ぜひご一読いただき、今後の対応の参考にしてください。

目次

交通事故の慰謝料とは?金額が決まる3つの基準と仕組み

交通事故における慰謝料とは、被害者が事故によって被った精神的苦痛を補償するための損害賠償項目です。
民法第709条民法第710条をその法的根拠とし、加害者は被害者の権利を侵害したことにより生じた損害を賠償する責任を負います。
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。 引用:民法/e-Gov法令検索 一般に賠償金や示談金と呼ばれるものは、治療費や休業損害、逸失利益、慰謝料などを含む総称ですが、実務上、最も算定基準による金額の乖離が大きく、かつ交渉において争点となりやすいのが慰謝料です。慰謝料は被害者の主観的な苦痛を対象としますが、実務上は公平性の観点から定型化・客観化された基準に基づいて算定されます。
この章では、以下の3つの項目に分けて、慰謝料の種類や算定基準、その背景となる仕組みについて解説します。

  • 交通事故の慰謝料は3種類ある
  • 交通事故の慰謝料額を左右する3つの算定基準
  • なぜ保険会社の提示額は低いのか?

交通事故の慰謝料は3種類ある

交通事故の慰謝料は、その発生原因と損害の性質により以下の3種類に分類され、それぞれ独立して計算されます。

① 入通院慰謝料

交通事故による受傷から怪我が完治または症状固定(これ以上治療しても改善が見込めない状態)に至るまでの期間、入院や通院を余儀なくされたことによる精神的苦痛に対して支払われる金銭です。
入通院慰謝料は、原則として総治療期間と実治療日数に基づいて算定されます。実際にどの程度の痛みを伴ったかという主観的要素よりも、治療期間という客観的数値が重視されます。

② 後遺障害慰謝料

交通事故により負った怪我の治療を継続したものの身体に障害が残り、その障害が自賠責保険の等級認定機関によって後遺障害等級に認定された場合に支払われる金銭です。
後遺障害等級とは、交通事故による後遺症をその種類と症状の程度に応じて1〜14の等級に分類したものです。数字が小さくなるほど症状が重くなり、後遺障害の内容や症状が残った部位によってさらに号で細かく分類されます。
後遺障害慰謝料は将来にわたって不自由な生活を強いられることへの精神的苦痛を償うものですから、認定された後遺障害等級に応じて基準額が定められています。
等級が認定されない(非該当)場合は、原則としてこの慰謝料は発生しません。そのため、等級認定の可否は受け取れる賠償金額に多大な影響を与えます。
参考:後遺障害等級表/国土交通省

③ 死亡慰謝料

交通事故により被害者が死亡した場合に、被害者本人の無念さと遺族(近親者)が被る精神的苦痛に対して支払われる金銭です。
死亡慰謝料には、被害者本人の慰謝料と、遺族(近親者)が独自に請求できる固有の慰謝料の2種類があります。
被害者が即死した場合でも、被害者本人に慰謝料請求権が発生します。慰謝料請求権は相続されるため、相続人が行使できます。
死亡慰謝料の金額は、被害者の家庭内における役割(一家の支柱、母親、独身者など)ごとに相場が定められており、遺族固有の慰謝料と併せて総額が調整されることが多いです。

交通事故の慰謝料額を左右する3つの算定基準

交通事故の慰謝料を算定する基準には以下の3つがあり、どの基準を用いるかによって算定結果は大きく変わります。

基準名 性質と特徴 水準
自賠責保険基準 自動車損害賠償保障法に基づき、すべてのドライバーに加入が義務付けられている強制保険の基準。 被害者に対する最低限の補償を確保することを目的としており、支払限度額や日額計算式が法令等で定められている。 あくまで最低保障であるため、金額は3つの基準の中で最も低い。 最低
任意保険基準 各自動車保険会社が独自に定めている内部基準(非公開)。 自賠責基準よりは若干高額になることもあるが、営利企業としてのコスト抑制(支出削減)の力学が働くため、弁護士基準に比べると低額となることが多い。 低~中
弁護士基準 (裁判基準) 過去の裁判例から導き出された法的正当性の高い基準。 日弁連交通事故相談センターが発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称:赤い本)」や「交通事故損害額算定基準(通称:青い本)」などに掲載されている。 裁判になった場合に認められる可能性が高い金額であり、3つの基準の中で最も高額となる。 最高

被害者が保険会社から最初に提示される賠償金額は、多くの場合、任意保険基準(または自賠責基準に近い基準)で算出されています。そのため、弁護士基準で算出される、被害者が本来受け取るべき法的に正当な賠償額とは乖離があることがほとんどです。
保険会社は「これが当社の規定です」などと説明するかもしれませんが、それはあくまで保険会社側の都合による一方的な基準です。示談交渉では、いかにしてこの基準の格差を埋め、弁護士基準に近づけるかがポイントです。

なぜ保険会社の提示額は低いのか?

保険会社は営利企業ですから、支払う保険金を可能な限り抑えたいと考えるのが通常です。
そのため、任意保険基準など独自の算定方式を採用し、弁護士基準よりも低い金額を提示することが一般的です。
被害者が適正な賠償金の相場を知らないことを利用し、保険会社は自社の任意保険基準や自賠責基準に近い金額を「これが相場です」などと言って提示するケースも見られます。
保険会社は事案処理の効率化や企業利益を重視するため、被害者に対して最大限の補償を行うことは期待できません

【早見表】交通事故の慰謝料相場

怪我の種類や症状ごとに大まかな慰謝料の相場観を把握することは、適正な慰謝料を獲得するうえで大切なポイントです。
怪我の程度や症状が異なれば治療期間や後遺症の有無なども変わるため、受け取る慰謝料額に差が生じます。あらかじめ慰謝料相場を頭に入れておくことで、保険会社から提示された金額が妥当かどうか判断しやすくなるでしょう。
この章では、交通事故の慰謝料相場を早見表で紹介します。
ぜひ参考にしてください。

入通院慰謝料の相場早見表

自賠責基準、弁護士基準における入通院慰謝料額は以下のとおりです。

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※自賠責基準は日額4,300円で計算
※自賠責基準は1月あたり15日以上通院した場合の金額
なお、任意保険基準は非公開のため、自賠責基準と弁護士基準を紹介しています。

後遺障害慰謝料の相場早見表

自賠責基準、弁護士基準における入通院慰謝料額は以下のとおりです。

後遺障害等級 自賠責基準 弁護士基準
1級 1,150万円 2,800万円
2級 998万円 2,370万円
3級 861万円 1,990万円
4級 737万円 1,730万円
5級 618万円 1,400万円
6級 512万円 1,180万円
7級 419万円 1,000万円
8級 331万円 830万円
9級 249万円 690万円
10級 190万円 550万円
11級 136万円 420万円
12級 94万円 290万円
13級 57万円 180万円
14級 32万円 110万円

※2020年4月1日以降に発生した交通事故の場合
例えば、むちうち症で認められる可能性がある14級では、自賠責基準と弁護士基準とで78万円の差が生じる可能性があります。
等級が上がれば上がるほど、自賠責基準と弁護士基準の差は大きくなります

死亡慰謝料の相場早見表

自賠責基準、弁護士基準における死亡慰謝料額は以下のとおりです。

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自賠責基準では、被害者本人の慰謝料と遺族(近親者)の慰謝料をそれぞれ計算し、合算した金額が死亡慰謝料となります。なお、被害者に被扶養者がいる場合は、被扶養者加算がなされます。
弁護士基準は、遺族(近親者)の慰謝料や被扶養者加算を含めた金額です。

入通院慰謝料の計算方法と注意点

入通院慰謝料の計算は、どの基準を用いるかによって方法が大きく異なるため、その仕組みを正確に理解する必要があります。
この章では、入通院慰謝料の計算方法や注意点について、以下の3つの項目に分けて詳しく解説します。

  • 自賠責保険基準の計算式と120万円の壁
  • 任意保険基準の傾向
  • 弁護士基準(赤い本)の計算式

自賠責保険基準の計算式と120万円の壁

自賠責基準における入通院慰謝料は、認定日数1日につき4,300円(2020年3月31日以前に発生した事故は4,200円)です。
自賠責基準の計算式は以下のとおりです。

4,300円×認定日数

認定日数は、以下のいずれか少ない方が採用されます。

  • 実治療日数の2倍
  • 総治療期間

具体的に、以下の2つのケースで入通院慰謝料を計算してみましょう。

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なお、自賠責保険の「傷害部分」(治療費・休業損害・慰謝料など)の支払限度額は120万円であり、これを超える部分は自賠責では補償されません。そのため、治療費が高額になると慰謝料が受け取れないこともあります。

任意保険基準の傾向

任意保険基準は保険会社ごとに異なりますが、一般的には自賠責基準よりやや高い程度です。
弁護士基準に比べて低額になることがほとんどですから、たとえ保険会社が「これが相場です」などと言っても、鵜呑みにするのは賢明ではありません。
他の基準と比較検討することが大切です。

弁護士基準(赤い本)の計算式

弁護士基準では、「赤い本」(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)に掲載された以下の2種類の算定表を用います。
別表Ⅰ:通常使用する表

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別表Ⅱ:むちうちや軽い打撲・軽い挫創などの他に他覚初見がない場合に使用する表

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上欄は入院月数左欄は通院月数です。通院のみの場合の基準額は、左欄の通院月数の右隣に記載の金額(黄色マーカー部分)です。
入院・通院の月数は、原則として実際に入院・通院していた期間です。入通院期間が1か月に満たない場合や日数を月数になおして端数が出る場合は、1か月を30日として日割り計算をするのが一般的です。
具体的に、以下の2つのケースで入通院慰謝料を計算してみましょう。

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後遺障害等級認定と後遺障害慰謝料の算定方法

後遺障害慰謝料は、認定される後遺障害等級によって金額が決まるため、等級認定プロセスが非常に重要です。
この章では、以下の2つの項目に分けて後遺障害等級認定と後遺障害慰謝料の算定方法について詳しく解説します。

  • 後遺障害等級とは?認定までの流れ
  • 後遺障害慰謝料の算定方法

後遺障害等級とは?認定までの流れ

後遺障害等級とは、交通事故による後遺症を症状の程度に応じて1〜14級に分類し、さらに各級を号で細分化した制度です。
後遺障害等級認定の申請方法は、以下の2つがあります。

  • 事前認定:加害者が加入する任意保険会社に申請してもらう方法
  • 被害者請求:被害者が自ら資料を集めててい直接申請する方法

事前認定は資料収集の手間はありませんが、提出書類の内容を被害者側でコントロールできないため、必要な資料が十分に揃わない可能性があります。
被害者請求にすれば被害者にとって有利になる資料を提出できるため、適切な後遺障害等級が認定される可能性が高まります。
ここでは、被害者請求における後遺障害等級の認定までの一般的な流れを紹介します。

  1. 医師より症状固定の診断を受ける
  2. 医師に後遺障害診断書の作成を依頼する
  3. 後遺障害の存在、症状、程度を証明できる書類を収集する
  4. 加害者が加入する保険会社に申請書類を提出する
  5. 保険会社から審査機関(損害保険料率算出機構)に申請書類が渡り、審査が行われる
  6. 加害者が加入する保険会社を通じて審査結果が通知される

後遺障害診断書の内容が曖昧または不備がある場合、適切な等級が認定されないおそれがあります。等級認定において後遺障害診断書の記載内容は非常に重要ですので、不安があれば弁護士のサポートを受けることを積極的に検討しましょう。
後遺障害等級認定の申請については、以下関連記事で詳しく解説しています。

【交通事故】後遺障害等級認定の申請手続きとは?|必要書類や所用期間も解説

後遺障害慰謝料の算定方法

2章で紹介したとおり、後遺障害慰謝料は認定された後遺障害等級に応じて慰謝料額が設定されています。適切な後遺障害等級の認定を受けることが大切です。
等級別の具体的な後遺障害の内容は、以下の後遺障害等級表をご参照ください。
参考:後遺障害等級表/国土交通省

死亡慰謝料の計算方法と遺族が請求できる権利

死亡事故では、被害者本人の精神的苦痛だけでなく、遺族の精神的苦痛も賠償の対象となります。
この章では、死亡慰謝料と遺族が請求できる権利について、以下の3つの項目に分けて詳しく解説します。

  • 自賠責基準|遺族加算と上限額
  • 弁護士基準|被害者の家庭内での役割による相場
  • 死亡慰謝料以外の損害項目

自賠責基準|遺族加算と上限額

自賠責基準では、被害者本人の慰謝料に遺族(近親者)の慰謝料を加算する積上げ方式で算定されます。

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例えば、一家の支柱(夫)が死亡、妻と子2人(請求者3人)が遺族の場合、以下のように計算します。

被害者本人の慰謝料400万円+遺族の慰謝料750万円+被扶養者加算200万円=1,350万円

弁護士基準|被害者の家庭内での役割による相場

弁護士基準では、被害者の家庭内での役割ごとの相場があります。
なお、この金額は、被害者本人の慰謝料と遺族(近親者)の慰謝料を合算した総額です。

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弁護士基準では、被害者が家庭や社会で果たしていた役割が慰謝料の算定に大きく影響します。一家の支柱として収入を支えていた場合には高額の慰謝料が認められやすく、専業主婦(主夫)でも家事労働の価値が考慮されることがあります。
慰謝料の基準を適切に主張することで、遺族が受け取れる賠償金は大きく変わるでしょう。

死亡慰謝料以外の損害項目

死亡事故の場合、死亡慰謝料以外に以下の損害項目も請求できます。

① 葬儀費用

葬儀を執り行うためにかかった以下のような費用も損害賠償の対象です。

  • 葬儀費用
  • 供養料
  • 仏壇費
  • 墓碑建立費
  • 仏具購入費

実務では、葬儀費用について130〜170万円程度を目安とする扱いが一般的です。なお、葬儀の規模や社会的地位などによっては基準額を超える葬儀費用が認められることもあります。

② 死亡逸失利益

死亡逸失利益とは、被害者が死亡しなければ得られたはずの利益です。
交通事故により被害者が死亡した場合、生きていれば得られたはずの収入が得られなくなるため、死亡逸失利益が認められます。
死亡逸失利益については、以下関連記事で詳しく解説しています。

逸失利益とは?計算方法・後遺障害等級・保険会社が否定するケース

交通事故で慰謝料が増額されるケース

交通事故の状況によっては慰謝料が増額されることがあります。
慰謝料が増額される主なケースとして、以下の3つを紹介します。

  • 被害者の過失割合が低い場合
  • 加害者の悪質性が高い場合
  • 精神的苦痛が大きいと認められる場合

被害者の過失割合が低い場合

事故の原因となった過失割合が加害者側に偏っていればいるほど、被害者の慰謝料が増額されやすくなります。
被害者の運転態度や危険回避行動が十分であった場合、過失相殺が小さくなり、その分だけ最終的に受け取れる慰謝料が高額になります。
過失割合の主張を適切に行うことが大切です。

加害者の悪質性が高い場合

加害者の行為が極めて悪質な場合、相場以上の慰謝料が認められることがあります。
具体的に、以下のような行為があれば悪質性が高いと判断される可能性があります。

  • 飲酒運転、無免許運転
  • ひき逃げ(救護義務違反)
  • 著しいスピード違反、信号無視
  • 事故後の証拠隠滅や不誠実な態度

これらは社会的に見ても重大な過失とされるため、被害者の精神的苦痛がより深刻と評価されやすいからです。
示談交渉では、加害者の違反内容を正確に把握し、その悪質性を根拠としてしっかりと主張することがポイントになります。

精神的苦痛が大きいと認められる場合

交通事故によって通常以上の精神的苦痛が認められる場合も慰謝料が増額される可能性があります。
具体的に、以下のような事情があれば精神的苦痛が大きいと判断される可能性があります。

  • PTSDを発症した
  • 被害者が流産した
  • 将来の夢が絶たれた

医療機関での初診時からの症状や精神面への影響を記録しておき、必要に応じて専門医の診断書を取得すると、示談の際に主張しやすくなります。

交通事故で慰謝料が減額されるケース

被害者側の事情によっては慰謝料が減額されることもあります。
慰謝料が減額される主なケースとして、以下の2つを紹介します。

  • 素因減額・損益相殺をされる場合
  • 通院実績が不足している場合

素因減額・損益相殺をされる場合

素因減額・損益相殺により慰謝料が減額されることがあります。
素因減額とは、被害者が元々持っていた疾患(既往症)が損害の拡大に寄与したとされる場合に、その事情が寄与した部分について損害賠償額から差し引くことです。
既存の疾患が影響していると考えられる場合などに、慰謝料が減額されることがあります。
損益相殺とは、交通事故の損害賠償金の二重取りを防ぐための制度です。
休業補償や保険金などがほかの公的制度からすでに支給されている場合は、その分を損害賠償金から差し引くことで調整を図るため、慰謝料が減額されることがあります。

通院実績が不足している場合

通院実績が不足している場合も慰謝料が減額されることがあります。
通院を自己判断で中断した場合や、医師から治療継続を勧められているにもかかわらず必要な治療を受けなかった場合は、慰謝料が少なく見積もられることがあります。
通院実績が少ないと、痛みや不調があっても保険会社がその損害を十分に認めてくれない可能性が高いです。適切な治療を継続し通院記録を確実に残すことが、正当な慰謝料を得るうえで欠かせません。

保険会社との示談交渉・対応のポイント

示談交渉は慰謝料を含む賠償額が決まる重要な場面です。
一度示談すると、後から内容を変更したり、追加で請求したりするのは難しくなるため、慎重に進める必要があります。
この章では、保険会社との示談交渉・対応のポイントを紹介します。
ぜひ今後の対応の参考にしてください。

示談交渉が始まるタイミング

示談交渉は、怪我の治療が終了(完治または症状固定)し損害額が確定した段階で開始されるのが一般的です。
治療が終了したら早々に保険会社から連絡が来ることもありますが、焦って合意すると後遺障害や追加費用が発生した場合に対応できなくなるおそれがあります。
治療や診断が十分でないうちは示談を急がず、医師の指示を優先しましょう。

提示された示談書のチェックポイント

示談書は、示談金や過失割合、後遺障害の有無などが記載された重要な書類です。
金額の内訳や補償範囲の記載が不十分な可能性もあるため、損害項目が正しく反映されているかを入念に確認することが大切です。
一度サインすると撤回するのは難しいです。サインする前に、弁護士に提示額の妥当性を確認することをおすすめします。

示談がまとまらない場合の選択肢

交渉が難航して示談が成立しない場合は、交通事故紛争処理センターの利用も検討してみてください。
交通事故紛習処理センターとは、交通事故の損害賠償に関するトラブルを、中立・公正な立場でその解決を支援してくれる裁判外紛争解決機関(ADR)です。
担当弁護士が双方から提出された証拠を精査し、中立の立場で和解案を提示してくれます。
無料で利用できますので、裁判への移行前の選択肢として検討してみてください。
交通事故紛争処理センターについては、以下関連記事で詳しく解説しています。

交通事故紛争処理センターとは|利用方法やメリット・デメリット

弁護士に依頼するメリットと弁護士費用特約の活用方法

弁護士に依頼することで、慰謝料の増額やスムーズな交渉が期待できます
保険会社とのやり取りに不安がある、自身で対応する自信がない場合は、弁護士のサポートを受けることを積極的に検討してみてください。
特に、弁護士費用特約付きの自動車保険に加入している場合は、自己負担ゼロで依頼できる可能性があるため、迷わず相談しましょう。
この章では、示談交渉を弁護士に任せるメリットと弁護士費用特約の活用方法を詳しく紹介します。

示談交渉を弁護士に任せるメリット

示談交渉を弁護士に任せる主なメリットとして、以下の3つが挙げられます。

① 賠償額の増額

弁護士基準で賠償額を算定・交渉してもらえるため、慰謝料や逸失利益などの大幅な増額が期待できます。

② 精神的負担の軽減

保険会社とのやり取りを弁護士に任せられるため、治療や生活再建に専念できる環境を整えやすいです。

③ 適切な等級認定サポート

後遺障害等級認定の申請において、医師が作成する後遺障害診断書に漏れや不備がないか、添付書類に不足がないか確認してもらえるため、適切な後遺障害等級が認定される可能性が高まります
弁護士に依頼すれば、保険会社の主張に対して法的根拠に基づいて反論できますし、保険会社と同じ立場で交渉に臨めます。適切な賠償金を得られる可能性が高まりますので、弁護士への依頼を積極的に検討してみてください。

弁護士費用特約の仕組みと活用方法

加入している自動車保険に弁護士費用特約が付帯されている場合は、迷わず弁護士に相談しましょう。
弁護士費用特約とは、法律相談料10万円まで、弁護士費用(着手金・報酬金等)300万円までを保険会社が負担するものです。
賠償額1,500万円程度の事故であれば、弁護士費用は300万円の枠内に収まることが多いため、実質自己負担ゼロで弁護士に依頼できます
なお、弁護士費用特約を使っても等級は下がらないため、翌年の保険料は上がりません。
特にもらい事故(10対0)で被害者に過失がない場合は、被害者側の保険会社は法的に示談交渉を代行できません。弁護士を立てることで対等な立場で交渉できますから、なるべく早期に弁護士に相談することをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

交通事故の慰謝料について、よく寄せられる質問にお答えします。
ぜひ参考にしてください。

受け取った慰謝料に税金はかかる?

交通事故の慰謝料は原則として非課税です。
所得税法上、心身に加えられた損害に対する賠償金(慰謝料、治療費、逸失利益など)は非課税所得とされているため、確定申告の必要もありません。
ただし、社会通念上過大すぎる見舞金や商品在庫の損害に対する賠償を受け取った場合や、死亡事故の場合などは課税対象となることがあります。
あらかじめ税理士や弁護士などに相談し、課税対象になるかどうかを見極めると安心です。

主婦(主夫)でも休業損害や逸失利益は認められる?

主婦(主夫)でも休業損害や逸失利益は認められます
実務上、現いに収入がなくても、家事労働には経済的価値があると評価されるためです。
休業損害や逸失利益を算定する際は、賃金センサスなどの基準を用いるのが一般的です。
賃金センサスとは、政府が毎年発表する賃金構造基本統計調査の結果をまとめた資料で、性別・年齢・学歴・企業規模などの属性別の平均賃金や労働時間が掲載されています。
賃金センサスによって得られる女性の平均賃金などに基づいて、被害者の年齢や性別に合わせた推定賃金を割り出して算定するのが一般的です。
なお、兼業主婦の場合は、パート収入と平均賃金を比較し、高い方を基礎収入として採用することが多いです。
参考:賃金構造基本統計調査|厚生労働省

相手が無保険の場合はどうなる?

加害者が任意保険未加入の場合、自賠責保険へ被害者請求を行い、補償を受けるのが一般的です。
自賠責すら未加入の場合は、自動車損害賠償保障事業(政府保障事業)による救済を求められます。
政府補償事業とは、ひき逃げ事故や無保険者による事故の被害者に対し、国が自賠責保険・共済と同等の損害をてん補する制度です。
てん補される損害の範囲や限度額は自賠責保険の基準と同様であるため、請求し得る慰謝料の額が全額塡補されるわけではありませんが、必要最小限の救済は受けられます。
政府保障事業については、以下関連記事で詳しく解説しています。

政府保障事業制度とは?加害者が無保険だった場合に知っておきたい知識

整骨院・接骨院への通院は慰謝料の対象になる?

整骨院や接骨院への通院も、医師の許可があり、治療の必要性・有効性が認められれば慰謝料の対象として算定されることがあります。
ただし、整骨院・接骨院のみの通院実績では事故との因果関係があいまいと判断されることもあるため、並行して病院で診察を受けるなど、医師の指導を受けることが不可欠です。
客観的な診察記録があるかどうかは示談交渉の上で重要なポイントとなります。

慰謝料請求に時効はある?

交通事故の慰謝料請求には時効があります
人身損害の場合は、原則として民法第724条の2により事故の翌日から5年が経過すると損害賠償請求権は時効により消滅します。
時効が迫っている場合は、示談交渉や法律手段を早めに検討しましょう。
損害賠償請求の時効については、以下関連記事で詳しく解説しています。

交通事故による損害賠償請求の時効は何年?請求の種類別に解説

まとめ

交通事故の慰謝料は、被害者側が正しく理解し、適切に主張しなければ十分に補償されない可能性があります。早めに専門家へ相談することで、適正な賠償金を獲得できる可能性が高まるでしょう。
交通事故対応を弁護士に依頼したいとお考えなら、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。
交通事故に精通した弁護士が、あなたに親身に寄り添い、解決まで伴走します。
ネクスパート法律事務所は、初回無料相談やリモート相談を実施しております。お問い合わせはLINEやメールで24時間受け付けておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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