電動キックボードの事故に遭ったらどうすればいい?対処法を徹底解説

シェアリングサービスの拡大等により、日本でも都市部を中心に普及しつつある電動キックボード。

交通渋滞の緩和や環境負荷の低減が期待できる交通手段として、注目を集めています。

道路交通法の改正に伴い、一定の基準を満たす電動キックボードは、16歳以上であれば運転免許がなくても運転できます。

手軽に乗れる便利な小型モビリティですが、利用者数の増加とともに事故件数も増加しています。

この記事では、電動キックボードの事故にまつわる以下の疑問について、詳しく解説します。

  • 電動キックボードの事故に遭ったらどうすればいい?
  • 電動キックボードの事故で被害を受けたら損害賠償金を請求できる?
  • 電動キックボードの事故の損害賠償金はどこに請求する?

「加害者が電動キックボードだから、怪我をしたけど泣き寝入りするしかないのかな」等と諦める必要はありません。冷静に対処して、納得のいく解決を図りましょう。

電動キックボードの事故に遭った直後にすべき3つのこと

電動キックボードの事故に遭ったら気が動転するのも無理もありませんが、事故直後の対応を誤ると、泣き寝入りせざるを得なくなる可能性があります。

落ち着いて、以下の3つのことを行いましょう。

警察に事故発生の報告をする

警察に事故発生の報告しましょう

交通事故が発生したら、当事者双方は警察へ報告する義務があります。

特に怪我をした場合、人身事故の届出をしなければ人身事故扱いの交通事故証明書が交付されないため、加害者側の自賠責保険(共済)から補償を受けられない可能性もあります。

警察に届け出ることで、事故の事実関係もはっきりさせられるため、後日のトラブルも防ぎやすくなるでしょう。

電動キックボードの事故に遭ったら、速やかに警察へ連絡しましょう。

加害者の連絡先を確認する

加害者の連絡先を確認しましょう

加害者を特定し連絡先を入手しておけば、後日、損害賠償について連絡できます。

以下の情報を確認しておきましょう。

  • 加害者の氏名・住所・連絡先
  • 加害車両の登録ナンバー
  • 加害者が加入している自賠責保険(共済)・任意保険の会社名・保険証券番号

加害者が業務中に起こした事故であれば、勤務先も確認しておきましょう。

業務中の事故であれば、加害者だけでなく勤務先も損害賠償責任を負うことがあります。

警察の到着を待つ間等に、加害者の連絡先を確認しましょう。

早急に医療機関を受診する

早急に医療機関を受診しましょう

自覚症状がない、受診するほどの痛みがない場合も、以下の理由から医療機関を受診することをお勧めします。

  • 自覚がないだけで骨折や内臓を損傷している可能性がある
  • 事故から受診までに期間が空くと、事故との因果関係が証明できない可能性がある

頭を打った場合等、時間が経ってから症状が出るケースもあるため、外傷がなくても早急に医療機関を受診しましょう。

電動キックボードの事故で被害を受けたら損害賠償金を請求できる?

電動キックボードの事故で被害を受けたら、自動車やバイクとの事故と同じように、損害賠償金を請求できます

電動キックボードは、道路交通法上の車両に該当し、性能等により以下の3つの車両区分に分類されます。

  • 一般原動機付自転車
  • 特定小型原動機付自転車
  • 特例特定小型原動機付自転車

どの車両区分に属するかにより、運転免許の要否や走行場所に違いがありますが、すべての電動キックボードに自賠責保険の加入が義務付けられています。

電動キックボードの事故で被害を受けたら、加害者が乗車していた電動キックボードの種類にかかわらず、損害賠償金を請求できます。

電動キックボードの事故で怪我をした場合に請求できる損害賠償金

電動キックボードの事故で怪我をした場合、被害内容に応じて、以下の8つの損害賠償金を請求できます。

  • 治療費
  • 入院雑費
  • 付添看護費
  • 付添人交通費
  • 休業損害
  • 傷害慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 逸失利益

以下で、詳しく紹介します。

治療費

治療費を請求できます。

事故で負った傷害の治療のためにかかった実費のうち、必要性かつ相当性があるものは、治療費として認められます。

以下のような費用も、医師の指示がある場合は、治療費として認められる可能性があります。

  • 個室を利用した際の差額ベッド代
  • 治療器具・医薬品代

入院雑費

入院した場合、入院雑費も請求できます。

傷害の治療のために入院した場合に必要となる、以下のような物品の購入費用は、入院雑費として認められます。

  • 洗面用具・食器類・下着・ティッシュ等、入院する際に必要となる物品の購入費
  • テレビカード代
  • 紙おむつ代

付添看護費

付添が必要となった場合、付添看護費も請求できます。

付添看護費とは、傷害の治療のために被害者本人が通院・入院した際に、介助や看護をした付添人に支払われる金銭で、付添の必要性がある場合に認められます。

付添看護費が認められるのは、以下のようなケースです。

  • 医師の指示がある場合
  • 傷害の程度が重篤で付添の必要がある場合
  • 傷害を負ったのが年少者である場合

付添人交通費

付添が必要となった場合、付添人交通費も請求できます。

付添人交通費とは、被害者本人の通院・入院の付添のためにかかった交通費で、電車・バス等の公共交通機関の利用料金を基準に算出するのが一般的です。

ただし、以下のようなケースでは、タクシー料金が付添人交通費として認められる可能性があります。

  • 医師の指示がある場合
  • 公共交通機関の利用が困難な場合(歩行が困難・公共交通空白地域等)

休業損害

休業した場合、休業損害も請求できます。

休業損害とは、事故で負った傷害の治療や療養のために休業した、不十分な就労を余儀なくされた場合に、得られなかった収入です。

現実に得られなかった収入が補償されるため、以下のような理由による減収も休業損害として認められます。

  • 通院のための遅刻・早退
  • 休業による賞与の減額・不支給
  • 休業による降格・昇進の遅れ

休業損害については、以下関連記事で詳しく解説しています。

交通事故の休業損害とは|職業別の計算方法や請求時の注意点を解説

傷害慰謝料

傷害慰謝料(入通院慰謝料)も請求できます。

入通院慰謝料とは、事故で負った傷害の治療のために通院・入院を余儀なくされた精神的苦痛を慰謝するための金銭です。

入通院慰謝料を算定する基準には以下の3つがあり、どの基準を使うかにより金額に差が生じます。

  • 自賠責基準
  • 任意保険基準
  • 弁護士基準

入通院慰謝料の計算方法については、以下関連記事で詳しく解説しています。

交通事故慰謝料の計算方法を詳しく解説【入通院・障害・死亡別】

後遺障害慰謝料

後遺障害が残った場合、後遺障害慰謝料も請求できます。

後遺障害慰謝料とは、事故で負った傷害が完治せず、後遺障害が残った精神的苦痛を慰謝するための金銭で、後遺障害等級が認定された場合に支払われます。

後遺障害には1〜14級までの等級があり、傷害等級に応じた慰謝料額が基準ごとに設定されています。

自賠責基準・弁護士基準の後遺障害慰謝料の額は、以下関連記事で紹介しています。

後遺症の等級と慰謝料の比較

逸失利益

後遺障害が残った場合、逸失利益も請求できます。

逸失利益とは、事故に遭わなければ得られたはずの将来の利益です。

事故により後遺障害を負った場合、後遺障害の程度により、これまでの労働ができなくなったり、一部しかできなくなったりすることもあるでしょう。労働ができなくなった度合いに応じて、将来得られるはずだった収入金額が、逸失利益として認められます。

後遺障害が残ったものの収入が減少していない場合は、原則として逸失利益は認められません。

ただし、収入が減少していなくても、以下のような特別な事情があれば、逸失利益が認められる可能性があります。

  • 本人の努力により収入が減少していない
  • 将来の昇進・昇給・転職で不利益を受けるおそれがある

逸失利益の計算方法や請求時のポイントについては、以下関連記事で詳しく解説しています。

逸失利益の計算方法や請求時のポイントとは?【わかりやすく解説】

電動キックボードの事故で損害賠償金の支払いが命じられた事案

電動キックボードの事故で損害賠償金の支払いが命じられた事案を紹介します。

歩道で2人乗りの電動キックボードと衝突した女性が、首を骨折する重傷を負った事案です。

なお、運転者の男性は自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)などの疑いで逮捕され、大阪簡裁に罰金50万円の略式命令を下されています。

女性は、電動キックボードを運転していた男性、同乗していた女性に対し、それぞれ治療費等の損害賠償を求めて訴訟を提起しました。

大阪地裁は、同乗者の女性の帽子が後ろに乗っていた運転者の男性の視界を遮ったとして共同不法行為にあたると判断し、運転していた男性、同乗していた女性それぞれに対し、約1,110万円の損害賠償金の支払いを命じています。

参考:2人乗りキックボードの衝突事故、同乗者にも1100万円の賠償命令|朝日新聞

電動キックボードの事故の損害賠償金はどこに請求する?

損賠賠償金は、加害者が乗車していた電動キックボードの所有者によって、請求先が異なります。

以下の2つに分けて、損害賠償金はどこに請求すべきか解説します。

加害者がシェアリングサービスを利用していた場合

加害者がシェアリングサービスで提供される電動キックボードを利用していた場合は、シェアリングサービスを行う事業者が加入している保険会社に請求します。

シェアリングサービスを行う事業者は、自賠責保険だけでなく任意保険にも加入している可能性が高いです。

加害者が利用していたシェアリングサービスを行う事業者に保険会社を確認し、請求しましょう。

加害者自身の電動キックボードを使用していた場合

加害者が自ら所有する電動キックボードを使用していた場合は、加害者の保険加入状況により、請求先が異なります。

加害者が自賠責保険(共済)にのみ加入しているケース

加害者が加入している自賠責保険(共済)に請求します。

自賠責保険(共済)で賄えない部分は、加害者本人に直接請求します。

加害者が任意保険と自賠責保険(共済)に加入しているケース

加害者が加入している任意保険会社に請求します。

任意保険会社との交渉がまとまれば、任意保険会社から一括で損害賠償金が支払われます。

加害者が保険に加入していないケース

加害者が、加入が義務付けられている自賠責保険にも加入していない場合は、治療費等の損害を自己負担し、加害者本人に直接請求します。

加害者と連絡が取れない、加害者との話し合いがまとまらない等の場合は、損害賠償金の支払いを受けられないおそれがあります。

無保険者による事故で加害者に資力がない場合やひき逃げ等により加害者を特定できない場合には、政府保障事業制度を利用することで、自賠責保険の保険金額と同額の補償を受けられる可能性があります。

詳しくは、以下の記事をご参照ください。

政府保障事業制度とは?加害者が無保険だった場合に知っておきたい知識

電動キックボードの事故で被害を受けたら弁護士に相談・依頼を

電動キックボードの事故で被害を受けたら、弁護士に相談・依頼することをお勧めします。

弁護士への相談・依頼を勧める主な理由は、以下の3つです。

  • 適切な過失割合を主張してもらえる
  • 適正な損害賠償額を請求できる
  • 解決までの手続きを一任できる

以下で、詳しく紹介します。

適切な過失割合を主張してもらえる

適切な過失割合を主張してもらえます。

電動キックボードの事故の場合、判断基準となる判例がまだ少ないのが現状です。

そのため、過失割合を決める際に加害者側との交渉が難航する可能性が高いです。

ご自身で対応すると、加害者側の保険会社の言い分に適切に反論できず、過失割合に納得がいかないまま示談に応じるケースも少なくありません。

弁護士に依頼すれば、加害者が運転していた電動キックボードの種類や事故当時の状況から、交通ルール違反等がなかったか適切に判断・主張してもらえます。適正な過失割合で交渉を進められる可能性が高まります。

過失割合は、損害賠償額に影響を与える重要なものです。弁護士に依頼して適切な過失割合を主張してもらうことで、納得のいく解決が図りやすくなります。

適正な損害賠償額を請求できる

適正な損害賠償額を請求できます。

交通事故の損害賠償額を算定する基準は3つあり、どの基準を使うかによって損害賠償額に差が生じます。

保険会社は独自に設けた基準で損害賠償額を算出するため、弁護士基準に比べて低額になる傾向が見られます。

弁護士に依頼すれば、3つの基準のうちもっとも高額な弁護士基準損害賠償額を算定し、近い金額で示談できるよう保険会社と交渉してもらえます。

あなたが被った損害に対する適正な損害賠償額を主張・請求できるでしょう。

弁護士基準については、以下関連記事で詳しく解説しています。

【交通事故】弁護士基準で慰謝料はいくら増額する?増額する理由とは

解決までの手続きを一任できる

解決までの手続きを一任できます。

加害者側との交渉や手続きを弁護士に一任できるため、あなたの精神的・時間的な負担を最小限に抑えて解決を図れます

加害者側の保険会社から治療費打ち切りを受けた、後遺症等級認定の結果に納得できない等の悩みを抱えるケースは少なくありません。

弁護士に依頼すれば、治療費や後遺障害等級認定について悩みやトラブルが生じた場合も都度弁護士に相談できるため、一つひとつ納得しながら手続きを進められます。

法的知識が豊富な弁護士のサポートを受ければ、事故で負った傷害の治療や心のケアに専念しやすくなるでしょう。

まとめ

電動キックボードの事故で被害を受けたら、自動車やバイクとの事故と同じように、損害賠償金を請求できます。

加害者に損害賠償金を請求するためには、事故直後の対応が重要です。事故が発生したら警察に連絡し、加害者の連絡先を確認しましょう。たとえ自覚症状がなくても、早急に医療機関を受診することも大切です。

加害者に損害賠償金を請求する際は、弁護士への相談・依頼を積極的に検討することをお勧めします。弁護士に依頼すれば、適正な損害賠償金を受け取れる可能性が高まります。

適切な補償を受けたいとお考えなら、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。

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