交通事故に遭って収入が減った場合、休業損害を得たいと思うのは、給与所得者も自営業者も同じです。
しかし、自営業者の方が交通事故に遭った場合、適切な休業損害をもらうのは給与所得者よりも難しいといわざるを得ません。
そこで今回は、自営業者が交通事故に遭った場合の休業損害について解説します。
目次
自営業者の休業損害
自営業者の休業損害とはどのようなものか解説します。
休業損害とは何か
休業損害とは、交通事故による負傷等で仕事を続けることが困難になった場合に、休業によってより生じる収入の減少を補償するものです。
自営業者は給与所得者と異なり、定期的な給与が補償されていないため、休業損害の請求は重要です。
自営業者と給与所得者の違い
給与所得者の場合は、事故前の給与明細と、会社が作成する休業損害証明書等に基づいて、実際に休んだ日の給与を想定し計算されることで休業損害を請求できるため、請求は比較的容易です。
自営業者の場合は、給与所得者よりも休業損害の計算が複雑になります。
自営業者の収入は固定していないことが多く、確定申告書上の所得や固定経費を考慮することが必要となるからです。
基礎収入は、通常事故に遭う前年の確定申告において申告された所得額に基づいて算出されますが、実際の収入が確定申告とは異なる場合、さらに証明が必要となります。
自営業者が休業損害を受け取るためには、給与所得者の場合よりも証明が難しいことがあります。
自営業者に休業損害が認められるためには
以下では、自営業者に休業損害が認められるための条件について解説します。
事故による減収の証明
自営業者が交通事故に基づく休業損害を請求するには、事故により減収したことを証明する必要があります。
具体的には、収入が発生していた期間の確定申告書や売り上げ帳簿などを利用して、事故が業務に影響を及ぼしたことを具体的に証明することが求められます。
とりわけ、前年の所得は休業損害の計算の基礎となるため、証拠資料が必要です。
休業損害の請求に必要な書類
休業損害の請求に必要な書類にはどのようなものがあるでしょうか。
確定申告書
休業損害を請求するために必要な書類の中で最も重要なものは、確定申告書です。
確定申告書は収入を基礎づける資料となり、一般的には、これに基づいて、事故前の平均所得を計算して、ここから実際にどれだけ減収したかを提示することとなります。
固定経費の証明書類
固定経費を証明するために家賃支払い証明や従業員の給料の支払い記録も必要です。
これらの固定経費は休業中も発生し、休業損害において認められる可能性があるので、上記の資料などは重要です。
休業損害の計算方法
自営業者の休業損害の算定方法について解説します。
資格基礎収入の算定
最初に基礎収入を算定します。
基礎収入は、多くの場合、事故が発生した前年の確定申告書の所得額に基づいて算出されます。
確定申告をしていない場合や、確定申告書に記載されている所得よりも実際の収入が多い場合には、差額を証明するために追加資料を求められることが多いです。
一切確定申告していない場合や確定申告していない収入がある場合は、基礎収入の認定は厳密にされています。
固定経費の考慮
休業損害では、自営業者が負担する固定経費も考慮されます。
固定経費とは、事業運営に不可欠で休業中も支払いが避けられない経費を指します。代表的なものは、家賃や従業員の給与などです。
ただし、休業しなければ発生しなくなる流動経費(例:材料費など)は、請求できません。
計算方法
休業損害は、基礎収入を日額に換算して、それを実際の休業日数と掛け合わせて算定します。
日割り計算では、通常、年間の収入を365日で割る方法が用いられますが、実情に応じて他の方法が用いられることもあります。
季節によって収入に変動がある業種の場合には、事故の前年だけでなく、それ以前の複数年のデータをもとに調整することもあります。
休業損害の請求手続
休業損害の請求手続は以下のとおりです。
書類の提出等
所定の書類を揃えて提出します。
具体的には、収入を証明する確定申告書や損益計算書、固定経費を証明する家賃証明や従業員の給与明細等を提出します。
事故の内容や損害の程度に応じて、追加書類が必要になることもあります。
保険会社の指示に従って提出できるよう準備することが必要です。
証明の準備
上記の提出書類の他にも、保険会社から事実の証明が求められる場合があるので、そのための準備も必要です。
例えば、休業期間を証明するために、スケジュール帳や取引先との連絡記録を保管するなどです。
請求書類の不足や不備は、手続の遅延や損害の不承認につながりかねません。準備は丁寧かつ確実に行いましょう。
休業損害の請求の注意点:変動する収入の証明
自営業者の場合、収入が大きく変動する場合もあり、そのようなケースにおいて前年の確定申告書を提出するだけでは、実際に発生した損害を補償してもらえないこともあります。
例えば、事業が拡大して収入が増加している時に事故に遭った場合などが挙げられます。
このような場合には、直近の収入状況を示す証拠を揃えて、適切に計算してもらうようにする必要があります。
さいごに
自営業者の休業損害は、実態を反映した適正な金額の補償を受けるのが難しいことがお分かりいただけたことと思います。
日頃から、確定申告をしっかり行い、収入に関する資料を整理するなど、万が一の時に備えた準備が必要ですが、急激に大きく収入が変わったときなどは、それだけでは対応しきれないこともあり得ます。
休業損害の手続を弁護士に相談すれば、自分だけでは証明が難しい場面でも的確に必要な資料の指摘を受けられ、より収入実態に即した休業損害を給付してもらいやすくなります。
ネクスパート法律事務所は、自営業者の方が交通事故に遭った場合の休業損害に精通した弁護士が在籍しており、休業損害の請求に適切に対応できます。
交通事故の休業損害の請求でお困りの自営業者の方は、ぜひお気軽に当事務所にご相談ください。