自転車ノーヘルで事故に遭った!着用の努力義務と過失割合への影響

自転車ノーヘル事故 努力義務と過失割合の影響

自転車にノーヘル(ヘルメット非着用)で乗っている際に、自動車と衝突事故を起こした方もいらっしゃるでしょう。
ヘルメットを着用しなかったことへの後悔と、今後の示談交渉に対する不安を感じているかもしれません。
この記事では、2023年4月に改正された自転車のヘルメット着用の努力義務化について触れつつ、実際にノーヘルで事故に遭った場合のリスクと対処法について解説します。
ぜひ参考にしてください。

自転車のヘルメット着用は努力義務だからノーヘルでも大丈夫?

「自転車のヘルメットは努力義務だから大丈夫。」と考えるのはやめましょう。
自転車のヘルメット着用の努力義務化の背景と自転車事故の死亡データについて解説します。

自転車のヘルメット着用の努力義務化

2023年(令和5年)4月1日の道路交通法改正により、全ての自転車利用者にヘルメット着用が努力義務として課されました。
努力義務とは、法律上の拘束力や強制力はなく、その行為を促すための規定です。
これは、ヘルメット着用が個人の安全を確保するために重要との認識が社会的に広まったことを背景としています。
しかし、多くの方が「罰則がないなら着用しなくても問題ない。」と認識しており、この点が、未だ多くの人がヘルメット非着用で自転車に乗る現状に至っています。
努力義務化は、事故後の示談交渉において、被害者にとって不利な修正要素として機能する可能性も十分あり得るでしょう。

自転車事故の死亡者のデータ

image1

警視庁のデータによれば、東京都が過去5年間(令和2年~令和6年)の事故を分析した結果、自転車事故で死亡された人の64%が頭部を損傷していたとされています。
さらに、ヘルメット非着用の場合の致死率は、着用していた場合に比べて1.8倍も高いことを示すデータも存在します。
ヘルメットが命を守るための効果的な手段であることは明白です。
参照:自転車用ヘルメットの着用 警視庁

自転車のノーヘルでの事故が過失割合に影響する可能性

自転車のノーヘルでの事故が過失割合に影響する可能性もあります。
過去の裁判例と合わせて解説します。

ノーヘルがもたらす過失割合への影響

過失割合とは、発生した事故に対する当事者双方の責任や不注意の度合いのことです。
加害者:被害者=9:1や7:3のように表されます。
自動車と自転車との事故の場合は、一般的に、自動車の運転手の過失割合が高く、自転車の運転手の過失割合が低くなる傾向があります。
しかし、ヘルメット非着用の場合、過失割合において自転車の運転手側が不利になる可能性があります。
これは、ヘルメット非着用が事故の直接の発生原因であることを意味するのではなく、ヘルメット非着用が、損害の拡大に寄与したと判断されるためです。
重要なのは、ヘルメット非着用と損害拡大との間に相当因果関係があるかどうかです。
頭部外傷を伴うケースではこの因果関係が認められやすく、賠償額が減額される可能性が高いです。なぜなら、ヘルメットを着用していれば、損害の拡大を防げた可能性が高いからです。
内臓破裂や手足の骨折など、ヘルメットの着用有無が負傷の程度に影響しないと考えられるケースでは、賠償額にも影響がない可能性があるでしょう。

ノーヘルについて触れられた裁判例

ノーヘルについて触れられた裁判例について紹介します。
神戸地裁平成31年 3月27日判決では、ノーヘルの過失割合への影響を否定しました。
事故当時12歳の子がヘルメットを着用せず自動車と衝突した事案です。
事故当時は、道路交通法63条の11の改正前(平成25年法律第43号による改正前同法63条の10)で、児童・幼児の保護者に対して、児童・幼児にヘルメットの着用の努力義務が定められていました。
裁判所は、児童・幼児の保護責任者に対し、努力義務として当該児童・幼児へのヘルメットの着用を定めているにすぎないし、本件事故当時、児童・幼児の自転車乗車時のヘルメット着用が一般化していたとも認められないから、ヘルメットを着用していなかったことを不利に斟酌すべき過失と評価するのは相当でないとしました。
東京地裁令和4年8月22日判決では、ノーヘルの過失割合への影響を一定程度認めました。
信号機が設置された交差点で、自転車が青信号に従い横断歩道を走行中、対向方向から左折してきた自動車と衝突した事案です。
本件事故は平成29年東京都で発生し、東京都自転車安全利用条例では平成25年7月1日から全世代の自転車利用者のヘルメットの着用が努力義務と定められていました。
裁判所は、ヘルメットの着用につい、条例上は努力義務に留まるものの、自転車運転者が本件事故によって実際に頭部を負傷したことを踏まえると、ヘルメットを着用していれば、被害を軽減できた可能性も否定できず、過失を考慮する際の事情といえるとしました。
つまり、ヘルメットをしていれば被害拡大を防げたのに、ヘルメットをしなかったことで被害が大きくなった場合には、過失が認められる可能性があります。
今後、ヘルメット着用の努力義務が定着するにつれ、ノーヘルの過失が認められる事例も多くなる可能性があるでしょう。

過失割合は正しい?自転車のノーヘル事故は弁護士に依頼すべき理由

事故の被害者として、相手方保険会社から提示された過失割合や賠償額が不当であると感じた場合は、一度弁護士に相談することをおすすめします。
示談交渉のプロである保険会社に対し、被害者個人が自力で交渉を進めるのは困難であり、多くのケースで不利な条件を押し付けられる結果となりかねません。
しかし、弁護士に依頼することで、適正な過失割合・適切な賠償金額で示談できる可能性が高まります。
自転車のノーヘル事故は弁護士に依頼すべき理由は、主に次の3つです。

  • 適正な過失割合を判断できる
  • 賠償金を増額できる可能性が高い
  • 精神的・物理的負担から解放される

以下、詳しく解説します。

適正な過失割合を判断できる

適正な過失割合を判断できます。
保険会社が提示する過失割合は、必ずしも客観的な事実に基づいているとは限りません。
弁護士は、警察が作成した実況見分調書やドライブレコーダーの映像、目撃者の証言などの客観的な証拠を収集・分析し、過去の判例や専門書に基づいて、保険会社の主張に法的な根拠をもって反論します。
特に、ノーヘルの事実は、あなたに不利な修正要素として主張される可能性が高いです。
弁護士に依頼することで、法的な根拠をもとに適正な過失割合を主張し、あなたにとって有利な条件を導き出せるでしょう。

交通事故の過失割合とは|決め方・納得できない場合の反論方法を紹介

賠償金を増額できる可能性が高い

賠償金を増額できる可能性が高いです。

Image2

慰謝料の算定基準には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判所基準)の3種類があります。
このうち、弁護士基準(裁判所基準)により算定した慰謝料が一番高くなります。
しかし、保険会社は、通常、任意保険基準や自賠責基準に基づく金額を提示するため、裁判で認められる金額よりも低いことがほとんどです。
弁護士が交渉を行うことで、弁護士基準での請求が可能となり、慰謝料などの損害賠償金が増額する可能性が高いでしょう。

交通事故慰謝料は弁護士基準でどの程度増額?弁護士費用で損しない?

精神的・物理的負担から解放される

精神的・物理的負担から解放されます。
示談交渉は、相手方保険会社との煩雑な書類のやり取りや、主張に対する反論など、被害者にとって精神的ストレスを伴います。
特に、ノーヘルの事実が、あなた自身の後ろめたさにもなることから、保険会社の言いなりになる可能性が高いでしょう。
弁護士に依頼すれば、交渉や手続きを全て任せられるため、あなたは治療に専念し、精神的な負担から解放されるでしょう。

まとめ

「自転車のヘルメットは努力義務だから大丈夫。」と考えるのはやめましょう。
自転車のノーヘルによる事故は、賠償金に影響を与える可能性だけでなく、あなたの命の危機にも繋がります。
自転車のノーヘルで事故に遭われた方は、早めに弁護士にご相談ください。
相手方保険会社によっては、過度にあなたに不利な過失割合を主張する可能性も否定できません。
ネクスパート法律事務所では、交通事故事案の解決実績を豊富にもつ弁護士が多数在籍しています。
初回相談は30分無料です。ぜひ一度ご相談ください。

お問い合わせ

 

 

ページの上部へ戻る