
交通事故で怪我をした場合、怪我の治療を最優先し、心身の回復に努めることが大切です。
治療費は、加害者側が負担するのが原則です。加害者が自動車保険に加入していれば、加害者が加入する任意保険会社が治療費を医療機関へ直接支払ってくれることが多いため、費用負担なく治療を受けられるでしょう。
しかし、一旦治療費を立て替えて後日請求しなければならないこともありますし、入院・通院のために必要となる費用も工面しなければなりません。怪我の治療のために休業するとなれば、収入減による経済的な不安も重くのしかかるでしょう。
この記事では、交通事故の慰謝料を前払いしてもらえるか、慰謝料を含む損害賠償金の一部を示談前に受け取る方法があるのかについて、詳しく解説します。
損害賠償金の一部を示談前に受け取るための手続き方法や注意点もお伝えしますので、当座の資金確保のために「慰謝料を前払いしてもらえないだろうか」と考えているなら、ぜひご一読ください。
目次
交通事故慰謝料は前払いしてもらえる?
交通事故の慰謝料の前払いはできませんが、損害賠償金の一部を示談に先行して受け取ることは可能です。
そもそも交通事故の慰謝料とは、交通事故によって被害者に生じた精神的苦痛に対する賠償です。慰謝料の金額は、被害者が被った損害の内容や程度、被害者の年齢・職業・収入などの事情を総合的に考慮して決められます。そのため、あなたが被った損害が確定しないと慰謝料額も決められません。
しかし、示談に先行して、既に発生している治療費や休業損害などの確定している損害費目について、損害賠償金の一部を先行して支払ってもらう制度は存在します。
損害賠償金を前払いしてもらう制度とその利用方法については、次章で詳しく解説します。
慰謝料を含む損害賠償金を前払いしてもらう制度と利用方法
損害賠償金は、以下の4つの制度を利用することで、示談に先行して支払いを受けられる可能性があります。
- 加害者が加入する任意保険会社に内払い金を請求する
- 自賠責保険の仮渡金制度を利用する
- 自賠責保険の被害者請求を利用する
- 自身が加入する人身傷害補償保険を利用する
以下で、詳しく紹介します。
加害者が加入する任意保険会社に内払い金を請求する
加害者が加入する任意保険会社に内払い金を請求する方法で、示談に先行して損害賠償金の一部の支払いを受けられる可能性があります。
内払いとは、加害者側の任意保険会社に対して請求することで、示談成立前に休業損害などの交通事故による損害賠償金の一部が先行して支払われる仕組みです。
治療が長引く場合など、損害額が確定しない段階でお金が必要となった際などに利用されます。
特に、休業損害はすぐに補償されないと経済的に困窮するおそれがあるため、支払いを求めるケースが多くみられます。
なお、内払い金は既に発生している損害に対してしか支払われません。
内払い金は、以下の流れで請求するのが一般的です。
- 加害者が加入する保険会社に内払いに応じてもらえるか確認する
- 内払いに必要な書類を収集し加害者が加入する任意保険会社に提出する
内払い金の請求では、以下のような書類の提出が求められるのが一般的です。
- 交通事故証明書
- 通院交通費の領収証または明細書
- 休業損害証明書
- 前年度の源泉徴収票
- 医師の診断書
- 診療報酬明細書
内払い金の請求で必要となる書類は、請求する費目や保険会社によって異なるため、詳細は保険会社に確認してください。
もっとも、内払いは、任意保険会社によるサービスであり、法的に義務付けられた制度ではありません。内払いに応じてもらえるか、どのくらいの金額の支払いを受けられるかは、保険会社によって異なるため、支払いを拒否される可能性があることも念頭に置いておいてください。
自賠責保険の仮渡金制度を利用する
自賠責保険の仮渡金制度を利用する方法でも、示談に先行して損害賠償金の一部の支払いを受けられる可能性があります。
仮渡金制度は、交通事故により死亡または怪我をした被害者が喫緊に必要とする当座の出費に対して速やかに保険金を支払う制度です。
死亡の場合は290万円、怪我の場合はその程度に応じて定められた一定の金額(5万円・20万円・40万円など)を受け取れます。
仮渡金は、以下の流れで請求します。
- 加害者が加入する自賠責保険に連絡する
- 仮渡金請求に必要な書類を収集し加害者が加入する自賠責保険会社に提出する
仮渡金請求では、以下のような書類が必要です。
- 仮渡金支払請求書
- 交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 医師の診断書または死亡検案書(死亡診断書)
- 印鑑証明書
- 委任状および委任者の印鑑証明書(第三者に委任する場合)
加害者が加入する自賠責保険会社に連絡すれば、書類一式を送付してもらえます。
提出書類に不備がなければ、通常、書類提出から1週間ほどで入金されます。
自賠責保険の被害者請求を利用する
自賠責保険の被害者請求を利用する方法でも、示談に先行して損害賠償金の一部の支払いを受けられる可能性があります。
被害者請求とは、交通事故の被害者が、加害者が加入する自賠責保険に対して保険金を直接請求する方法です。
被害者請求では、傷害部分について上限120万円を限度に、治療費や休業損害、入通院慰謝料などの人身損害に関する費目を直接請求できます。
示談成立前に保険金を受け取れるため、立て替えた治療費や生活費の不足を補えるでしょう。
被害者請求の流れは、以下のとおりです。
- 加害者が加入する自賠責保険会社に必要書類を送付する
- 自賠責保険会社から審査機関に書類を送付し、審査機関が審査する
- 審査が完了したら審査期間から自賠責保険会社に審査結果が報告される
- 自賠責保険会社から被害者に対して結果が通知される
- 自賠責保険会社から保険金が支払われる
被害者請求には、以下のような書類が必要です。
- 自動車損害賠償責任保険 保険金支払請求書兼支払指図書
- 診断書または死亡検案書(死亡診断書)
- 戸籍謄本(死亡の場合)
- 交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 診療報酬明細書
- 通院交通費明細書
- 付添看護自認書または看護料領収書
- 自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書
- 休業損害証明書または確定申告書(控)等
- 請求者の印鑑証明書
- 委任状および委任者の印鑑証明書(第三者に委任する場合)
請求先である加害者側の自賠責保険会社に連絡すれば、書類一式を送付してもらえます。
提出書類に不備がなければ、通常、書類提出から1~2か月ほどで入金されます。
なお、傷害部分については適宜請求できますが、後遺障害部分については症状固定の診断を受けてからでないと請求できません。
自身が加入する人身傷害補償保険を利用する
自身が加入する人身傷害補償保険を利用する方法でも、示談に先行して損害賠償金の一部の支払いを受けられる可能性があります。
人身傷害補償保険とは、交通事故における過失割合に関係なく、損害に対して約款に定める基準に基づいて保険金が支払われる保険で、示談成立前に保険金を受け取れます。
人身傷害補償保険金は、以下の流れで請求します。
- 自身が加入する任意保険会社に連絡する
- 請求に必要な書類を収集し自身が加入する任意保険会社に提出する
人身傷害補償保険の請求では、以下のような書類の提出が求められるのが一般的です。
- 保険金請求書
- 交通事故証明書
- 治療要した費用がわかるもの
- 通院交通費の領収証または明細書
- 休業損害証明書
- 医師の診断書
人身傷害補償保険金の請求で必要となる書類は、請求する費目や保険会社によって異なるため、詳細は保険会社に確認してください。
慰謝料を含む損害賠償金などの前払いを請求する際の注意点
示談成立前に損害賠償金の一部を先行して受け取る制度は、被害者にとって助けとなり得ますが、その利用方法や手続きには、以下のような注意点も存在します。
- 先行して受け取った金額は示談後に受け取る損害賠償金から控除される
- 自己判断で通院をやめると適正な慰謝料を受け取れないおそれがある
- 自身で手続きを行うと手間と時間がかかる
以下で、詳しく紹介します。
先行して受け取った金額は示談後に受け取る損害賠償金から控除される
先行して受け取った金額は示談後に受け取る損害賠償金から控除されます。
示談成立前に受け取る金銭はあくまでも損害賠償金の一部であり、被害者が受け取るべき損害額に上乗せされるものではありません。
前払いの制度はあくまで当座の資金確保のための解決策であり、最終的な補償額に変化はないことを理解しておきましょう。
自己判断で通院をやめると適正な慰謝料を受け取れないおそれがある
自己判断で通院をやめると適正な慰謝料を受け取れないおそれがあります。
交通事故の損害賠償において、治療費が請求できるのは症状固定までの期間に限られますし、入通院慰謝料の算定は治療期間や実通院日数に基づいて行われます。
治療期間が短く実通院日数が少なくなればなるほど、入通院慰謝料や休業損害の金額も下がるため、自己判断により途中で通院をやめるのは賢明ではありません。
保険会社から治療費の打ち切りを打診されるケースも少なくありませんが、症状が残っている場合は、医師が症状固定と判断するまでは健康保険などを利用して自費で治療を継続することをお勧めします。
医師の指示どおりに通院することが、適正な損害賠償金を確保する鍵となります。
入通院慰謝料については、以下関連記事で詳しく解説しています。
自身で手続きを行うと手間と時間がかかる
自身で手続きを行う場合は、相応の手間と時間がかかることをあらかじめ理解しておきましょう。
示談成立前に損害賠償金の一部の支払いを受ける手続きを被害者自身で行う場合、多岐にわたる必要書類の収集や作成、煩雑な保険会社とのやり取りが必要となるため、精神的・時間的な負担がかかることが予想されます。
提出する書類に不備があったり、証明が曖昧だったりすると、前払いの必要性を低く見積もられ、請求に応じてもらいにくくなるおそれもあります。
治療に専念するためにも、弁護士への相談・依頼も積極的に検討してみてください。
慰謝料を含む損害賠償金の前払いを受けたいなら弁護士に相談を
示談に先行して損害賠償金の一部の支払いを受けたいなら、弁護士への相談・依頼を積極的に検討することをお勧めします。
弁護士に依頼を勧める主な理由は、以下の3つです。
- 前払いの請求の交渉・手続きを迅速かつ有利に進められる
- 弁護士基準で損害賠償金を算定・請求してもらえる
- 弁護士費用特約を活用すれば費用負担なく弁護士に依頼できる
以下で、詳しく紹介します。
前払いの請求の交渉・手続きを迅速かつ有利に進められる
前払いの請求の交渉・手続きを迅速かつ有利に進められます。
弁護士に依頼すれば、保険会社との煩雑なやり取りや、多岐にわたる必要書類の収集・作成を弁護士に一任できます。
治療に専念できる環境を確保しつつ、早期に資金確保できる可能性が高まります。
弁護士基準で損害賠償金を算定・請求してもらえる
弁護士基準で損害賠償金を算定・請求してもらえます。
損害賠償額を算定する基準には以下の3つがあり、どの基準を用いるかによって算定結果に差が生じます。
- 自賠責基準:自動車損害賠償保障法に規定された最低限の補償を目的とする基準
- 任意保険基準:保険会社が独自に定める内部基準(非公開)
- 弁護士基準(裁判基準):過去の判例をもとに定められた法的正当性の高い基準
弁護士に依頼すれば、最も高額となる基準である弁護士基準で損害賠償額を算定・請求してもらえます。
あなたが被った損害に見合う適正な損害賠償金を獲得できる可能性が高まります。
弁護士費用特約を活用すれば費用負担なく弁護士に依頼できる
弁護士費用特約を活用すれば費用負担なく弁護士に依頼できます。
弁護士費用特約とは、交通事故の損害賠償請求を弁護士に依頼した際にかかる費用を保険会社が負担してくれる自動車保険の特約です。
弁護士費用特約付きの自動車保険に加入していれば、特約の限度額内(一般的に法律相談料10万円、弁護士費用300万円)であれば弁護士費用は全額負担してもらえるため、実質無料で弁護士に依頼できます。
弁護士特約が使える場合は迷わず弁護士に相談することをお勧めします。
ただし、あなたに故意または重大な過失がある場合など、弁護士特約が使えないケースもあります。
弁護士特約の使い方については、以下関連記事で詳しく解説しています。
まとめ
交通事故で怪我をした場合、その治療のために休業せざるを得ないこともあるでしょう。休業期間が長くなれば、経済的な不安も重くのしかかります。
示談交渉が長引きそうな場合や加害者が加入する任意保険会社から内払いを受けられそうにない場合は、自賠責保険への被害者請求・仮渡金制度やご自身が加入している任意保険の活用も検討してみましょう。
弁護士に依頼すれば、請求に必要な書類の収集・作成や保険会社との交渉を任せられるため、時間的・精神的負担を軽減できます。示談成立までの期間の短縮や慰謝料を含む損害額の増額も期待できます。
交通事故の慰謝料や治療中の経済負担にお悩みの方は、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。
初回相談は30分無料です。対面のほか、リモートでの相談にも対応しておりますので、事務所に足を運ぶのが難しい方もお気軽にお問い合わせください。
