交通事故による損害の補償を受けるために、保険会社と交渉したものの、提示された示談内容に納得がいかない等、悩みを抱える人は多いです。
交通事故の損害賠償問題で悩みを抱えているなら、交通事故紛争処理センターに相談するのも方法のひとつです。
この記事では、交通事故紛争処理センターについて詳しく紹介します。
ご一読いただき、紛争解決にお役立ていただければ幸いです。
目次
交通事故紛争処理センターとは
交通事故紛争処理センター(以下、センターと言います。)とは、自動車事故の被害者と加害者側の保険会社等との示談をめぐる紛争を解決するために、中立・公正な立場で和解あっ旋等の業務を行う公益財団法人です。
センターが行う主な業務は、以下の3つです。
- 法律相談
- 和解あっ旋
- 審査手続き
申し込みは被害者本人(死亡事故の場合は法定相続人)がすることを前提にしていますが、センターが選任する弁護士が対応するため、法的知識がなくても心配ありません。
センターを利用すれば、ご自身で弁護士に依頼しなくても、交通事故の示談に関する法的な相談ができます。
交通事故紛争処理センターを利用するメリット4選
センターを利用する主なメリットとして、以下の4つが挙げられます。
- 費用をかけずに利用できる
- 相談担当弁護士が中立の立場で和解をあっ旋してくれる
- 訴訟に比べると早期に解決できる可能性がある
- あっ旋案に合意できない場合は審査の申立ができる
以下で、詳しく紹介します。
費用をかけずに利用できる
費用をかけずに利用できます。
センターが行う業務は、すべて無料で利用できます。
弁護士費用等も一切かかりませんので、金銭的な不安を抱えることなく解決を図れます。
ただし、以下の費用はご自身で負担する必要があります。
- 医療関係書類の取り付けにかかる費用
- センター利用のための交通費(駐車場代含む)
- コピー代等の資料作成にかかる費用
- 電話代等の通信費
相談担当弁護士が中立の立場で和解をあっ旋してくれる
相談担当弁護士が中立の立場で和解をあっ旋してくれます。
被害者本人(利用者)の主張や提出した資料等から、相談担当弁護士があっ旋の必要があると判断すれば、当事者双方の主張を聞き、和解あっ旋案が提示されます。
合意に至った場合は、相談担当弁護士の立ち会いのもと、示談書または免責証書を作成してもらえます。
相談担当弁護士が中立の立場で和解をあっ旋してくれるため、加害者側の保険会社等との直接交渉を避けられます。
なお、相談担当弁護士は、あくまでも中立・公正な第三者の立場で和解あっ旋を行います。そのため、利用者が最大限の利益を得られるな活動までは期待できません。
万が一、相談担当弁護士と合わないと感じた場合も、弁護士の変更はできません。
訴訟に比べると早期に解決できる可能性がある
訴訟に比べると早期に解決できる可能性があります。
センターでは、損害賠償の関係資料が整っている場合、以下のような短期間での解決を図っています。
- 人身事故:通常あっ旋手続き期日3回で70%、5回までで90%以上の和解が成立
- 物損事故:通常あっ旋手続き期日2回で取扱いが終了
訴訟をした場合の平均審理期間が約13か月(令和4年終局事件)であることから見ても、訴訟に比べると早期に解決できる可能性があります。
あっ旋案に合意できない場合は審査の申立ができる
あっ旋案に合意できない場合は審査の申立ができます。
相談担当弁護士が和解の見込みがないと判断し、和解あっ旋が不調となった場合、当事者双方に通知されます。通知を受けた後14日以内に個別事案を審査に付することの申立をすれば、3人の審査員から構成する審査会が開催されます。
審査・裁定を行う審査員には、以下のような人が選任されます。
- 法律学者
- 裁判官経験者
- 経験豊富な弁護士
審査会で出された裁定は、被害者側さえ同意すれば、加害者側はこれに拘束されます。
なお、和解あっ旋が不調となった旨の通知を受けた後14日以内に加害者側から訴訟移行の要請が出された場合は、和解あっ旋手続きを中断して、訴訟による解決が適当かどうかセンターで審議されます。訴訟で解決を図ることが適当だと判断されれば、センターの手続きは終了します。
交通事故紛争処理センターを利用するデメリット4選
センターを利用する主なデメリットとして、以下の4つが挙げられます。
- 事故直後や治療中は相談できない
- 後遺障害等級認定についての相談はできない
- 増額事由の主張や証拠の準備は自分で行う必要がある
- 都度センターに出向かなければならない
以下で、詳しく紹介します。
事故直後や治療中は相談できない
事故直後や治療中は相談できません。
症状固定もしくは後遺障害等級認定後でなければ損害賠償額を算定できないため、あっ旋案を提示できません。
センターの業務は、あくまでも自動車事故の示談をめぐる紛争解決です。
事故直後や治療中等、まだ示談に至らない段階での法律相談は受けてもらえません。
後遺障害等級認定についての相談はできない
後遺障害等級認定についての相談はできません。
後遺障害等級とは、事故によって生じた障害を、部位や症状に応じて1〜14級の等級に分類したものです。介護が必要になる後遺障害(別表第一第1〜2級)とそれ以外の後遺障害(別表第二第1〜14級)に別れています。1級の症状が最も重く、数字が大きくなるにつれて症状が軽くなります。
後遺障害等級に認定されると等級に応じた保険金の支払いを受けられますが、「後遺障害等級が認められなかった」「認定された等級に納得がいかない」等、認定に関する悩みや不満を抱える人は多いです。
センターでは後遺障害等級認定についての相談は受けていないため、後遺傷害等級について相談したい場合は、別途ご自身で弁護士を探して相談することも検討しましょう。
増額事由の主張や証拠の準備は自分で行う必要がある
増額事由の主張や証拠の準備はご自身で行う必要があります。
増額事由となり得る事実があっても、ご自身でその事実を主張し、証明できる証拠を準備できなければ、あっ旋案に考慮されません。
自動車事故による損害を適正に判断してもらうためには、増額事由の主張や証拠の準備をご自身で行わなければなりません。
なお、センターを利用する場合は、以下の資料等もご自身で準備する必要があります。
共通 |
・交通事故証明書 ・事故が発生した際の状況をまとめた報告書 ・加害者側の保険会社名と担当者名または代理人弁護士の氏名・連絡先などがわかるもの ・加害者側の保険会社等の賠償金提示明細書など |
けが・後遺障害の場合 |
・治療を受けた病院・接骨院等の診断書・診療報酬明細書・施術証明書等 ・後遺障害診断書・後遺障害等級の認定結果と理由が記載されている書面 ・休業損害証明書 |
死亡事故の場合 |
・死亡診断書または死体検案書・戸籍謄本(死亡事故の場合) ・医療費・葬儀関係費用がわかる領収書等(死亡事故の場合) |
物損事故の場合 |
・修理費の請求書または修理工場の見積書(物損事故の場合) ・車両仮修理、引揚げ、けん引、運搬費の請求書又は見積書 ・使用車の請求書など(代車を利用の場合) ・代替車両の購入代金及び登録費用などの請求書・領収書(事故車両が全損した場合) ・車両の評価額を裏付ける資料(物損事故の場合) ・所有権を確認する資料(自動車検査証等) |
都度センターに出向かなければならない
都度センターに出向かなければなりません。
法律相談・和解あっ旋・審査会手続きはセンターで対面にて行われるため、たとえセンターが遠方でも都度出向く必要があります。
期日は平日に設定されるため、仕事や家庭の予定を調整する必要もあるでしょう。
指定された期日にセンターに出向けるかどうかも含めて、利用前に検討しましょう。
交通事故紛争処理センターの利用申込〜終了までの流れ
センターの利用申込〜終了までの流れを紹介します。
電話による利用の予約申込み
センターを利用する際は、事前に電話にて利用の予約を申し込む必要があります。
センターは全国に11か所ありますが、原則として、利用者の住所地または事故地を管轄するセンターを利用します。
利用の予約申込みの受付は、月〜金曜日(祝祭日と年末年始を除く)の9〜17時(12〜13時は休憩時間)です。
法律相談
相談担当弁護士による、和解あっ旋を前提とした相談がセンターで行われます。
初回相談時に利用申込書や資料等を提出し、それらの資料をもとに、問題点の整理や助言が行われます。
相談の結果、利用者が相談担当弁護士に和解あっ旋を申し出て、相談担当弁護士も和解あっ旋が必要だと判断すれば、和解あっ旋に入ります。
和解あっ旋期日の日時を決め、センターから加害者側に出席を要請します。
なお、相談内容によっては、司法手続きや別の相談機関を紹介されて、相談のみで終了するケースもあります。
和解あっ旋
和解あっ旋手続きは、被害者・加害者側の当事者双方の出席のもと、1回1時間以内を目処に行われます。
相談担当弁護士は、中立・公正な立場で当事者双方から話を聞き、和解のためのあっ旋案をまとめます。
加害者側保険会社等は、和解あっ旋の話し合いに応じることになっています。加害者側が保険会社等以外の場合で、センターが和解あっ旋を行うことを相手方が了承しない場合は、和解あっ旋ができないことがあります。
あっ旋案を双方へ提示
当事者双方の主張をもとに、相談担当弁護士が裁判所の判例等を参考に中立公正な立場で和解のためのあっ旋案をまとめ、当事者双方へ提示します。
あっ旋案には争点や賠償額等がまとめられ、書面または口頭で提示されます。
当事者双方があっ旋案に合意した場合は、相談担当弁護士立ち会いのもと、示談書または免責証書が作成されます。示談書または免責証書に基づいて、保険会社等から保険金が支払われます。
当事者双方の合意が得られない場合は、和解あっ旋が不調となったことが当事者双方に通知されます。通知を受けた後14日以内に限り、個別事案を審査に付することの申立ができます。
なお、加害者側保険会社等が審査を申し立てる場合は、利用者の同意が必要です。
審査会による審査
審査に付することの申立がなされた事案は、相談担当弁護士が、審査会に対して争点や当事者双方の主張を説明し、審査期日を決めます。
審査期日には、当事者双方が審査員に対して争点や事故の内容について説明し、それぞれの主張を述べます。
審査会は、聴取した内容を審査し、結論を示す裁定を行います。申立人は、裁定の告知を受けた日から14日以内に、裁定に同意するかどうかセンターに回答する必要があります。14日以内に回答しない場合は、不同意とみなされます。
申立人が同意した場合は、裁定の内容に基づき、示談書または免責証書が作成されます。示談書または免責証書に基づいて、保険会社等から保険金が支払われます。
不同意の場合は、センターでの手続きは終了します。
交通事故紛争処理センターを利用できないケース
以下のケースに該当する場合、センターの手続きは利用できません。
- 加害者が自動車(原動機付自転車を含む)でない事故の場合
- 自分が契約している保険会社または共済組合との保険金、共済金の支払いに関する紛争
- 自賠責保険(共済)後遺障害の等級認定・有無責等に関する紛争
- 求償に係る紛争
- 加害者の保険会社等が不明な場合
次のケースもセンターは原則として手続きを受け付けてくれませんが、相手方が同意した場合は、例外的に手続きの対象となることがあります。 ✖ 加害者が任意自動車保険(共済)契約をしていない場合
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センターの手続きを利用できない場合には、法律事務所等への相談を検討しましょう。
交通事故紛争処理センター以外の公的相談窓口
センター以外の主な公的相談窓口として、以下の3つが挙げられます。
- 日弁連交通事故相談センター
- 自賠責保険・共済紛争処理機構
- 交通事故相談所
以下で、詳しく紹介します。
日弁連交通事故相談センター
日弁連交通事故相談センターとは、弁護士が公正・中立の立場で相談を受ける公益財団法人です。
自動車による交通事故の民事上の法律問題に関して、以下の事業を無料で行なっています。
- 電話相談
- 面接相談
- 示談あっ旋
- 審査
面談相談は、全国154か所の相談所で行われていて、原則5回まで利用できます。過失割合に納得がいかない、事故の相手が任意保険に加入していない等の相談もできます。
高次脳機能障害に関する相談も可能で、本部と7か所の相談所で利用できます。
示談あっ旋を希望する場合は、面談相談後に申し込みます。示談あっ旋は、本部と41支部で利用できます。
自賠責保険・共済紛争処理機構
自賠責保険・共済紛争処理機構とは、自賠責保険・共済からの支払いに関する相談や調停(紛争処理)事業を無料で行う一般財団法人です。
自賠責保険・共済に関する以下のことを、無料電話を利用して相談できます。
- 自賠責保険金・共済金の治療費・休業損害・慰謝料等の支払基準に関すること
- 賠償責任の有無や重過失による減額に関すること
- 後遺障害の等級認定に関すること
- 紛争処理申請の手続に関すること
紛争処理申請をすると、公正・中立で専門的な知識を持つ弁護士・医師・学識経験者で構成される紛争処理委員により、支払い内容について審査してもらえます。なお、保険会社・共済組合は、審査結果を遵守しなければなりません。
交通事故相談所
交通事故相談所とは、交通事故に関する以下のようなあらゆる問題に対し、専門の相談員が相談を受け、公正・中立な立場から助言を行う公的機関です。
- 示談に関すること
- 損害賠償請求に関すること
- 過失割合に関すること
各都道府県・政令指定都市等に設置されていますので、お住まいの都道府県・市区町村の交通事故担当部署に確認してください。
弁護士に相談するなら法律事務所をお勧めする理由
交通事故紛争処理センターの利用を検討している方の多くは、示談交渉が思うように進まず悩んでいるのではないでしょうか。
あなたの味方となってサポートをしてくれる存在が必要だと感じたら、弁護士への依頼も積極的に検討してみてください。弁護士であれば、事故発生直後からあなたをサポートできます。
治療中でも相談できる
治療中でも相談できます。
治療中に相談すれば、示談前に保険会社から一部の費用について、前払いを受けられる可能性があります。
また、弁護士に依頼すれば、治療中のトラブルにも適切に対応し、あなたが治療に専念できるようサポートしてもらえます。
後遺障害等級の認定を受けるための適切なアドバイスがもらえる
後遺障害等級の認定を受けるための適切なアドバイスがもらえます。
後遺障害等級は、申請するだけで簡単に認定されるものではありません。原則として提出書類の内容が重視されるため、同じ症状でも、診断書の記載内容や提出書類の充実度によって認定結果が変わることがあります。
弁護士に依頼すれば、適切な後遺障害が認定されるよう、専門的な視点から有効な書類を準備できるため、認定率が上がる可能性が高まります。
後遺障害等級の認定には、医師の診断書の内容が判断に影響します。同じ怪我でも、診断書の書き方によって等級が異なったり、認定されなかったりするケースも見られます。
法律事務所の弁護士に依頼すれば、診断書の内容も確認してもらえるため、後遺障害等級認定の申請を有利に進められるでしょう。
弁護士基準で請求できるため損害賠償金の増額が期待できる
弁護士基準で請求できるため損害賠償金の増額が期待できます。
弁護士基準とは、損害賠償金の算定基準の一つで、過去の裁判例に基づいて算定された基準です。
保険会社等から提示されている賠償金額は、それぞれの保険会社の内部基準で計算されています。弁護士基準に比べて低額な傾向があり、あなたが被った損害が適切に反映された金額とは限りません。
弁護士に依頼すれば、弁護士基準で賠償額を算定し、保険会社等と交渉してもらえるため、適切な損害賠償金を受け取れる可能性が高まります。
解決までのすべての手続きを弁護士に一任できる
解決までのすべての手続きを弁護士に一任できます。
弁護士に依頼すれば、保険会社等との交渉や手続き等はすべて弁護士が行うため、精神的・時間的な負担を最小限に抑えて解決できます。
事故により被った怪我の影響で体調が優れないなか、保険会社等とやり取りするのは、心身ともに疲弊することが予想されます。
弁護士に依頼すれば、あなたの利益のために動いてもらえるため、納得のいく解決を図れるでしょう。
保険会社等とのやり取りによるストレスから解放されるため、治療やメンタルケアに専念できるでしょう。
まとめ
交通事故紛争処理センターを利用すれば、相談担当弁護士が無料で和解あっ旋をしてもらえます。しかし、センターの担当弁護士はあくまでも公正・中立な立場であり、あなたの利益を考えて行動してくれるわけではありません。
治療中や後遺障害認定についての相談もできないため、相談の内容によってはセンター以外の利用を検討すべきケースもあります。
何を相談したいのか、どのように解決したいのかを検討し、どこに相談すべきか判断しましょう。
「後遺障害等級の認定についても相談したい」「適正な損害賠償金を受け取りたい」等とお考えなら、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。
あなたが抱える疑問や不安をお伺いし、納得のいく解決に向けて全力でサポートいたします。