労災の休業補償とは?支給要件や休業手当や休業損害との違いを解説!

業務上や通勤中の事故で怪我の治療のために仕事を休んだ場合は、休業中の生活費を使用者に補償してもらえるのでしょうか?

労働基準法では、労働者が業務上の災害により傷病にかかったり、障害を有することとなったり、あるいは死亡した場合に、使用者がその被災労働者や遺族に対し、一定の災害補償を行わなければならないことを規定しています。

しかし、使用者の補償能力が低い場合には、被災労働者や遺族に対し、十分な補償を行えないことがあります。

労働者災害補償保険法(以下、労災保険法といいます。)は、労働基準法に規定されている事業主の災害補償義務を肩代わりするために作られた法律です。事業主が政府に保険料を納付することにより、政府が、本来事業主が行わなければならない災害補償に代えて、被災労働者や遺族に対して一定の保険給付を行います。

労災保険法では、複数の業務を要因とする災害に関する保険給付や、労働基準法に規定されていない通勤災害に対する保険給付も行われます。

この記事では、労災保険の保険給付の一つである休業(補償)給付について解説します。

労災保険の休業補償とは?

ここでは、労災保険の休業(補償)給付の概要について解説します。

労災保険には、業務災害に関する保険給付通勤災害に関する保険給付があります。

  • 業務災害:労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡
  • 通勤災害:労働者の通勤による負傷、疾病、障害または死亡

各保険給付は、それぞれ業務災害、通勤災害であることの認定を受けた災害について行われます。

業務災害に関する保険給付と通勤災害に関する保険給付は、保険給付名が異なります。業務災害に関する保険給付には補償という言葉がついており、通勤災害に関する保険給付には補償という言葉がついていません。

通勤中のことは事業主の責任ではないため、事業主が労働基準法上の災害補償を行う義務がないからです。

休業補償給付|業務災害による休業への補償

休業補償給付は、業務災害による傷病のために休業する労働者の生活を補填するための給付で、労働基準法の事業主の休業補償を代替する制度です。

休業給付|通勤災害による休業への補償

休業給付は、通勤災害による傷病の療養のために休業する労働者の生活を補填するための給付です。

業務上・通勤中に事故に遭ったら労災の休業(補償)給付がもらえる?

労災保険の休業補償と休業手当の違い

ここでは、休業(補償)給付と休業手当の違いについて解説します。

労災保険の休業(補償)給付と同様に、労働者の生活補償の観点から設けられた制度として、労働基準法26条の休業手当があります。

休業手当は、使用者側の都合で労働者が就業できなかった場合に、使用者が労働者の休業期間中の生活補償のために支払う手当です。

業務災害や通勤災害で、労働者が働けない状態にある場合に支給される休業(補償)給付と異なり、休業手当は、働ける状態にある労働者が、経営難や生産調整などの使用者都合により休業を余儀なくされる場合を想定しています。

使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合、使用者は、休業期間中、労働者に対し平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければなりません。

使用者の責めに帰すべき事由とは、以下のような場合です。

  • 親工場の経営難のため、下請け工場が資材や資金を獲得できず休業した場合
  • 新卒の採用内定者に対し、使用者の都合により自宅待機を命じた場合

労災保険の休業補償と休業損害の違い

ここでは、休業(補償)給付と休業損害の違いについて解説します。

休業損害とは

休業損害とは、交通事故の被害者が、受傷により治療又は療養のために休業あるいは不十分な就業を余儀なくされたことにより、本来得られるはずだった収入を得られなかったことによる損害です。

休業損害は、事故前の収入を基礎とする現実の収入源を保障するものであり、休業以外の遅刻・相対・労働能力低下などにより生じた減収も含まれます。

労災保険の休業(補償)給付は、減収に対する一定割合を補填するものであるため、補填を受けられなかった残額部分については、事故の加害者に対し休業損害として請求できます。

なお、休業損害は、加害者加入している自賠責保険に請求することもできます。ただし、自賠責保険に請求する場合は、損害の算定基準に自賠責基準(1日につき6,100円)が適用されます。

交通事故の休業損害とは|職業別の計算方法や請求時の注意点を解説

労災の休業補償と休業損害はどちらを先に請求すべき?

休業補償と休業損害のどちらを先に請求するかは、被災労働者(事故の被害者)が自由に選べます。

ただし、休業(補償)給付は、療養のために労働できず賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年が経過すると時効により請求できなくなります。

そのため、事故の加害者が無保険で十分な賠償を受けられない可能性があるケースなどでは、休業(補償)給付を先行した方がよい場合もあります。

自賠責保険への請求も含め、優先すべき請求先はケースごとに異なりますので、弁護士に相談することをおすすめします。

労災保険の休業補償はいつからいつまでもらえる?

ここでは、労災保険の休業(補償)給付の支給期間について解説します。

休業(補償)給付の支給期間

休業(補償)給付は、労働ができなくなり賃金を受けていない日の休業4日目から支給されます。支給期間に上限はなく、支給要件を満たす限り給付を受けられます。

ただし、療養開始後1年6か月を経過した日または同日後において、以下のいずれにも該当する場合は、休業(補償)給付に代えて、傷病(補償)年金が支給されます。

  • 負傷または疾病が治っていない
  • 負傷または疾病による障害の程度が厚生労働省令で定める傷病等級に該当する

療養開始後1年6か月を経過した日において、負傷または疾病が治っておらず、傷病等級にも該当しないケースでは、休業(補償)給付の支給が継続されます。

業務中・通勤中の事故|労災の休業(補償)給付はいつまでもらえる?

休業3日までの補償はどうなる?

業務災害の場合

休業補償給付にかかる待期期間については、事業主が自ら労働基準法76条の休業補償を行わなければなりません。使用者には、休業の初日から3日まで、平均賃金の100分の60の休業補償を行う義務があります。

通勤災害の場合

休業給付にかかる待期期間については、事業主は休業補償を行う義務がありません。通勤災害は事業主の責任が問われないからです。

労災保険の休業補償はどんなとき・どのくらいもらえる?

ここでは、労働保険の休業(補償)給付の支給要件および支給金額について解説します。

休業(補償)給付の支給要件

休業(補償)給付は、以下の要件をすべて満たした場合に、労働者の請求に基づき支給されます。

  • 労働者が業務上または通勤中の負傷や傷病により療養していること
  • 療養のため労働できない日であること
  • 労働できないために賃金を受けない日であること

賃金を受けない日とは、賃金の全部を受けない日一部を受けない日が含まれています。

一部を受けない日は、以下のいずれかに該当する日をいいます。

  • 所定労働時間の全部が労働不能で、平均賃金の100分の60未満しか賃金を受けない日
  • 所定労働時間の一部が労働不能で、その労働不能時間について全く賃金を受けない日
  • 所定労働時間の一部が労働不能で、平均賃金と実労働時間に対して支払われる賃金との差額の100分の60未満の金額しか受けない日

休業(補償)給付の支給金額

休業(補償)給付の額は、給付基礎日額(原則、労働基準法12条の平均賃金に相当する額)を用いて算定します。

平均賃金とは、原則として、労災事故発生以前3か月間に支払われた賃金の総額を、その3か月間の総日数(歴日数)で除したものです。

なお、給付基礎日額は、賃金スライド制や年齢階層別の最低・最高限度額等の規定によって変わるため、平均賃金と同額になるとは限りません。

全部労働不能の日

1日の全部を働けず賃金を全く受けない日は、休業1日につき給付基礎日額の100分の60に相当する額が支給されます。

例えば、給付基礎日額が1万円の場合は、その100分の60である6,000円が支給されます。

一部労働不能の日

所定労働時間のうち一部分のみ労働できず、労働できなかった部分について全く賃金を受けない場合は、休業1日につき給付基礎日額から支払われる賃金の額を差し引いた額の100分の60に相当する額が支給されます。

例えば、給付基礎日額が1万円で、一部分の労働に対して3,000円の賃金が支払われた場合は、以下のとおり、4,200円が支給されます。

(1万円-3,000円)×100分の60=4,200円

労災保険の休業補償とは別に休業特別支給金がもらえる?

ここでは、労災保険の休業特別支給金について解説します。

休業特別支給金とは?

労災保険では、必要な給付のほか、社会復帰促進事業の被災労働者やその遺族を援護する事業のうち、特別支給金制度が設けられています。

休業特別支給金は、保険給付に付加して支給されるものです。

休業(補償)給付の請求と同時に休業特別支給金の申請を行うことで、休業1日につき給付基礎日額の100分の20に相当する額が支給されます。

休業(補償)給付は、1日につき休業基礎日額の100分の60に相当する額が支給されるため、休業特別金の支給と合わせると、事実上、給付基礎日額の100分の80に相当する給付が行われます。

特別支給金は損益相殺や支給調整の対象にならない!

特別支給金は、保険給付と異なり、他の保険制度(社会保険等)との調整第三者行為災害における損益相殺対象となりません

加害者に休業損害を請求する場合、休業(補償)給付金の支給額は控除すべきですが、休業特別支給金の額を差し引く必要はありません。

したがって、休業(補償)給付(100分の60)と休業特別支給金(100分の20)の支給を受け、休業(補償)給付で補てんされなかった休業損害部分(100分の40)を加害者に請求すると、合計で100分の120を受け取れる可能性があります。

労災保険の休業補償を受ける権利の消滅時効は2年!

ここでは、労災保険の休業(補償)給付の消滅時効について解説します。

休業(補償)給付の消滅時効

休業(補償)給付の支給を受ける権利は、休業の日ごとにその翌日から2年経過したときに、時効により消滅します。

休業特別支給金の消滅時効

休業特別支給金の支給を受ける権利は、休業特別支給金の支給の対象となる日の翌日から2年経過したときに、時効により消滅します。

労災保険の休業補償を受けられないケース

ここでは、労災保険の休業(補償)給付を受けられないケースについて解説します。

以下のいずれかに該当する場合は、休業(補償)給付を受けられません。

  • 事業主から労働不能分について平均賃金の100分の60以上の金額を受けている場合
  • 労働者が刑事施設、労役場その他これに準ずる施設に拘禁されている場合
  • 労働者が少年院その他これに準ずる施設に収容されている場合
  • 労災保険の特別加入者(個人タクシー業者等)が通勤災害により休業している場合

労災保険の休業補償が減額されるケース

ここでは、労災保険の休業(補償)給付が減額されるケースについて解説します。

故意の犯罪行為で負傷した場合

労働者が故意の犯罪行為もしくは重大な過失により、負傷、疾病、障害もしくは死亡またはこれらの原因となった事故を生じさせた場合は、休業(補償)給付の支給が制限されます。

具体的には、支給期間中、休業(補償)給付のつど所定給付額の30%相当額が減額されます。

正当な理由なく医師の指示に従わず怪我が悪化した場合

労働者が正当な理由なく療養の指示に従わないことで、負傷、疾病もしくは障害の程度を増進させたり、回復を妨げたりした場合は、休業(補償)給付の支給が制限されます。

具体的には、事案1件につき、休業(補償)給付の10日分が減額されます。

まとめ

休業(補償)給付は、労災保険から受けられる補償であり、業務上・通勤中の交通事故が対象となります。

休業損害は、事故前の収入を基礎とする現実の収入源を保障するもので、交通事故の加害者や加害者加入の保険会社に請求できます。

休業(補償)給付と休業損害を二重に請求することはできませんが、うまく併用することで、受け取れる金額が大きくなることがあります。

休業(補償)給付や休業特別支給金、休業損害を取り損ねることを防ぐためには、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士であれば、休業損害の算定に裁判基準を用いるため、獲得できる休業損害の額を増額できる可能性があります。

労災事故による休業補償にお悩みの方は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。

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