交通事故で後遺障害7級と認定された場合、どのような補償を受けられるのでしょうか。
この記事では、後遺障害7級について、主に以下の3点をご説明いたします。
- 後遺障害等級7級の認定基準
- 後遺障害等級7級の保証
- 後遺障害等級7級で弁護士に相談するメリット
交通事故で機能障害や運動障害が残ってしまった方は、ぜひご参考になさってください。
目次 [非表示]
- 1 後遺障害等級7級とは?
- 1.1 1号:一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
- 1.2 2号:両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
- 1.3 3号:一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
- 1.4 4号:神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
- 1.5 5号:胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
- 1.6 6号:一手のおや指を含み三の手指を失ったもの又はおや指以外の四の手指を失ったもの
- 1.7 7号:一手の五の手指またはおや指を含み四の手指の用を廃したもの
- 1.8 8号:一足をリスフラン関節以上で失ったもの
- 1.9 9号:一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
- 1.10 10号:一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
- 1.11 11号:両足の足指の全部の用を廃したもの
- 1.12 12号:外貌に著しい醜状を残すもの
- 1.13 13号:両側の睾丸を失ったもの
- 2 後遺障害等級7級の補償 ①慰謝料
- 3 後遺障害等級7級の補償 ②逸失利益
- 4 後遺障害等級7級を得るためにやるべきこと
- 5 後遺障害等級7級で弁護士に相談するメリット
- 6 まとめ
後遺障害等級7級とは?
後遺障害等級7級と認定されるには、以下の13項目のいずれかに該当しなければなりません。
1号 |
一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの |
2号 |
両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
3号 |
一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
4号 |
神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
5号 |
胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
6号 |
一手のおや指を含み三の手指を失ったもの又はおや指以外の四の手指を失ったもの |
7号 |
一手の五の手指またはおや指を含み四の手指の用を廃したもの |
8号 |
一足をリスフラン関節以上で失ったもの |
9号 |
一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
10号 |
一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
11号 |
両足の足指の全部の用を廃したもの |
12号 |
外貌に著しい醜状を残すもの |
13号 |
両側の睾丸を失ったもの |
1号:一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
事故が原因で、片方の目が失明し、もう片方の視力が0.6以下になった状態です。
失明とは、下記の状態をいいます。
- 眼球を亡失(摘出)したもの
- 明暗を区別できないもの及びようやく明暗を区別できる程度のもの
※光覚弁(明暗弁)または手動弁が含まれます。
光覚弁(明暗弁):暗室にて眼前で証明を点滅させ、明暗を識別できる視力
手動弁:確認者の手のひらを眼前で上下左右に動かした時に動いた方向を識別できる視力
視力の測定は、原則として万国式試視力表が用いられます。ここでの視力とは矯正視力(眼鏡やコンタクトレンズを付けた状態の視力)のことです。ただし、矯正が必要ない場合は裸眼視力になります。
2号:両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
事故が原因で、両耳で聞いても40センチメートル以上離れると普通の話声が聞こえない状態です。
聴力は、オージオメータ(JIS規格またはこれに準ずる標準オージオメータ)によって測定し、両耳について平均純音聴力レベル値が50デシベル以上で、かつ、最高明瞭度が50%以下の状態です。
後遺障害診断における聴力検査は、日を変えて3回行われ、検査と検査の間は7日間を空けます。等級は、2回目と3回目の平均で認定されますが、2回目と3回目の測定値で10デシベル以上の差があった場合は、さらに検査を行い、2回目以降の検査で、その差が最も小さいものの平均で認定されます。
3号:一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
事故が原因で、片方の耳の聴力を失い、もう片方の耳も1メートル以上離れると普通の話声が聞こえない状態です。
聴力は、オージオメータ(JIS規格またはこれに準ずる標準オージオメータ)によって測定し、片方の耳について平均純音聴力レベル値が90デシベル以上で、かつ、もう片方の耳の平均純音聴力レベル値が60デシベル以上の状態です。
4号:神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
事故が原因で、神経系統や精神に障害が残り、簡単な作業しかできない状態です。
神経系統や精神の障害とは、脳の外傷による高次脳機能障害や上肢・下肢の麻痺、てんかんなどが挙げられます。労働できるものの、脳や神経系統に障害が残っているために、手際が悪くなったり、一人では十分な作業ができなかったりと、簡単な作業しかできない状態です。
5号:胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
事故が原因で、胸腹部臓器に障害が残り、簡単な作業しかできない状態です。
胸腹部の障害とは、呼吸器・循環器・消化器・泌尿器などの障害が挙げられます。労働できるものの、呼吸困難や重い不整脈、排せつ障害などにより、簡単な作業しかできない状態です。
6号:一手のおや指を含み三の手指を失ったもの又はおや指以外の四の手指を失ったもの
事故が原因で、片方の手の親指を含んだ3本の手指を失った、または、親指以外の4本の手指を失った状態です。
手指を失ったとは、親指ならば指節間関節(しせつかんかんせつ)(IP)より先、その他の指ならば近位指節間関節(きんいしせつかんかんせつ)(PIP)より先を失った状態です。
利き手かどうかは関係なく、症状固定も切断の場合は非可逆的損傷なので6か月を待つ必要はありません。
7号:一手の五の手指またはおや指を含み四の手指の用を廃したもの
事故が原因で、片方の5本の手指、または、片方の親指を含んだ4本の手指について、用を廃した状態です。
手指の用を廃した状態とは以下のような状態です。
- 手指の末節骨(まっせつこつ)の半分以上を失った
- 中手指節関節(ちゅうしゅしせつかんせつ)か近位指節間関節(親指は指節間関節)に著しい運動障害を残す
8号:一足をリスフラン関節以上で失ったもの
事故が原因で、片方の足についてリスフラン関節以上を失った状態です。
リスフラン関節とは、5本の中足骨(ちゅうそくこつ)それぞれと足の甲の骨の間にある関節で、土踏まずのところにあります。リスフラン関節以上を失うとは、リスフラン関節から足首までの間で切断された状態です。
9号:一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
事故が原因で、片方の上肢に偽関節が残り、著しい運動障害が残った状態です。
偽関節とは、骨折した状態で治癒しないままグラグラして、関節のような動きをしている状態です。
著しい運動障害とは、可動域が2分の1以下になっている状態です。
10号:一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
事故が原因で、片方の下肢に偽関節が残り、著しい運動障害が残った状態です。
偽関節とは、骨折した状態で治癒しないままグラグラして、関節のような動きをしている状態です。
著しい運動障害とは、可動域が2分の1以下になっている状態です。
11号:両足の足指の全部の用を廃したもの
事故が原因で、両方の足指について用を廃した状態です。
足指の全部の用を廃した状態とは以下のような状態です。
- 親指の指先の骨を2分の1以上失った
- 親指を除く4本の指全てについて、末節骨から中節骨の間で切断した
- 指が切断されていなくても、指を動かせる可動域が2分の1以下になっている
12号:外貌に著しい醜状を残すもの
事故が原因で、頭部、顔面部、頸部など上肢や下肢以外に日常露出する部分に、人目につく以上の傷等が残った状態です。
主に以下のような状態です。
- 頭部の場合は、手のひら大以上の瘢痕(はんこん)が残ったときや、頭蓋骨に手のひら大以上の欠損が残った状態
- 顔面部の場合は、鶏卵大以上の瘢痕や5センチメートル以上の線状痕、10円硬貨大以上のくぼみが残った状態
- 耳殻軟骨部が2分の1以上欠損した状態
- 鼻軟骨部の大部分を欠損した状態
注意点としては、“著しい醜状”には主観が入るため担当者によって違いがでる可能性があること、眉毛や頭髪に隠れる部分は対象とはならない可能性があることがあげられます。
13号:両側の睾丸を失ったもの
事故が原因で、両側の睾丸を失い、生殖機能を失った状態です。
引用:眼(眼球及びまぶた)の障害に関する障害等級認定基準|厚生労働省
参考図書:交通事故外傷と後遺障害全322大辞典Ⅱ|かもがわ出版
後遺障害等級7級の補償 ①慰謝料
後遺障害7級慰謝料の算出基準には、以下の3つがあります。
【基準別|後遺障害7級の慰謝料】
- 自賠責基準:419万円
- 任意保険基準:500万円(損害保険ジャパン株式会社の例)
- 弁護士基準:1,000万円
自賠責基準の慰謝料額
自賠責基準とは、交通事故の被害者に対して最低限の補償をするための基準です。3つの基準の中で最も低額です。
令和2年4月1日以降に発生した事故については、自賠責基準における後遺障害7級の慰謝料は419万円です。
参考:自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準|国土交通省
任意保険基準の慰謝料額
任意保険基準とは、保険会社が独自に定めている基準のことです。
例えば、損害保険ジャパン株式会社が定めている後遺障害の慰謝料基準は、以下の通りです。
後遺障害者等級 |
父母・配偶者・子のいずれかがいる場合 |
左記以外 |
第1級 |
1,850万円 |
1,650万円 |
第2級 |
1,500万円 |
1,250万円 |
第3級 |
1,300万円 |
1,000万円 |
第4級 |
900万円 |
|
第5級 |
700万円 |
|
第6級 |
600万円 |
|
第7級 |
500万円 |
|
第8級 |
400万円 |
|
第9級 |
300万円 |
|
第10級 |
200万円 |
|
第11級 |
150万円 |
|
第12級 |
100万円 |
|
第13級 |
70万円 |
|
第14級 |
40万円 |
参考サイト:損害保険ジャパン株式会社 Web約款|損保ジャパン公式サイト
弁護士基準の慰謝料額
弁護士基準(裁判基準)とは、裁判例をもとに算出された慰謝料のことです。
弁護士基準による後遺障害7級の慰謝料は1,000万円となっており、他の基準と比較すると高額です。
後遺障害等級7級の補償 ②逸失利益
こでは、逸失利益の詳しい内容について解説します。
逸失利益とは
交通事故で障害が残ってしまうと、健常な時よりも労働能力が低下します。それに伴い生涯収入の減少が予想されます。
減少が予想される部分の収入のことを逸失利益といいます。
また現在就業中のサラリーマンや自営業の人だけではなく、収入がない専業主婦(主夫)やアルバイトをしていない学生にも逸失利益は認められます。
後遺障害が残ったものの収入の減少がない場合は、逸失利益を請求できないケースがあります。
逸失利益の計算方法
逸失利益の計算方法は以下の通りです。
1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
1年あたりの基礎収入には、事故が起きる前の年収を用います。
労働能力喪失率とは、交通事故の後遺障害によって低下した労働能力の割合のことです。後遺障害7級の労働能力喪失率は56%となっています。仕事への影響程度によって、56%よりも上下する可能性があります。
最後に労働能力喪失期間とは、症状固定の日から原則67歳になるまでの期間のことです。
労働能力喪失期間に対して、一般的にライプニッツ係数が用いられます。ライプニッツ係数とは、将来の収入を現在の価値に換算する際に使われる係数です。
※事故日によってライプニッツ係数は変わります
※地域によっては新ホフマン係数を使用するケースもあります
例えば、令和2年4月1日以降の事故で、30歳の時に症状固定をし、労働能力喪失期間が37年と認められた場合のライプニッツ係数は22.167です。
計算例)令和2年4月1日以降の事故 30歳/会社員/年収350万円の場合
3,500,000×0.56×22.167=43,447,320円
※事例や労働損失の程度なども考慮されるため、必ずこの金額を受け取れるとは限りません。
参考サイト:就労可能年数とライプニッツ係数表|国土交通省
後遺障害等級7級を得るためにやるべきこと
後遺障害7級を得るには、医師による適切な検査と正しい内容の診断書が必要です。
後遺障害等級7級を得るために必要な検査を受ける
後遺障害7級となる障害が残ると認められるには、それぞれに該当する専門医によって診察・検査を受けなければなりません。
障害の程度が具体的に診断書に記載されていなければ、認定されない可能性が高いです。
加えて、後遺障害の症状に応じてどの検査を受けるべきなのか適切に判断する必要もあります。
後遺障害診断書に必要な内容を記載してもらう
後遺障害7級と認定されるには、後遺障害診断書に必要な内容を記載してもらわなければいけません。
後遺障害7級の申請をする際には、以下の2点を必ず確認しましょう。
- 交通事故によって生じた障害が認定基準を満たしている
- 診断書に後遺障害を得られるような記載がなされているか
後遺障害等級7級で弁護士に相談するメリット
ここでは後遺障害7級で弁護士に相談するメリットを4つ解説します。
相手方との交渉を全て任せられる
後遺障害の認定手続きには様々な手続きが必要になります。弁護士に依頼することで、これらの手続き全般を代理人として任せられます。
交通事故の分野に精通した弁護士であれば、後遺障害認定についての手続きにも詳しいので、適切な認定結果が得られやすくなります。保険会社とのやりとりもすべて任せられるので、精神的な負担も軽減されます。
後遺障害に認定される確率が高まる
後遺障害診断書は、医師によって作成されます。ただ、医師は後遺障害の認定手続きに精通しているわけではないため、記載が不十分なこともあります。
後遺障害7級は、目や耳の障害、上肢・下肢・手指の障害など、医学的な評価によって判断されるため、医師の記載内容によって差が生じる可能性があります。
また、異なる部位について複数の障害を負ってしまった場合は、等級認定は併合して行われます。併合されると、最も重い等級が繰り上がる場合がありますので、医師の記載内容が重要です。
最悪の事態を防ぐためにも、申請前に弁護士に診断書の確認をしてもらいましょう。
弁護士であれば、診断書の記載が十分かどうか判断できます。
慰謝料を増額できる可能性がある
示談交渉の際には、保険会社の担当者と交渉します。
保険会社の担当者は交渉の経験が豊富です。そのため法律や保険に詳しくない一般の方が交渉をすると、不利な条件で示談を終えてしまう可能性があります。
弁護士に依頼すれば、有利な条件での和解を引き出せるので、慰謝料の増額が期待できます。
専門知識が必要な手続きを任せられる
損害賠償請求をするには、以下の書類を作成しなければいけません。
- 内容証明郵便
- 示談書
- 訴状
弁護士に依頼すれば、専門知識が必要な書類の作成を任せられます。
まとめ
後遺障害7級に認定されれば、後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取れます。しかし後遺障害はただ申請すれば必ず認められるものではありません。
後遺障害慰謝料の計算方法は、後遺障害の内容だけでなく、事故の年月日によっても変わります。
後遺障害についてお悩みのことがあれば、ネクスパート法律事務所にお問い合わせください。ネクスパート法律事務所ではご相談を24時間受け付けておりますので、まずはお電話、メール、お問い合わせフォームよりご連絡ください。