
交通事故の被害に遭ったあなたは、気持ちが落ち込む、事故のときの光景がよみがえる、些細なことで不安になるなどの精神的な症状に悩まされていませんか?
交通事故による強い恐怖はトラウマとなり、精神疾患を発症することもあります。
しかし、精神疾患は身体的な傷害と違って目には見えないため、「たとえ日常生活に支障が出ても損害賠償請求できないのではないか」と不安に思うことでしょう。
この記事では、交通事故後の精神不安定は損害賠償請求の対象となるか、詳しく解説します。
どのような補償を受けられるのかも紹介しますので、交通事故後にこころの不調を感じているなら、ぜひご一読ください。
目次
交通事故後の精神不安定は損害賠償請求の対象となる?
交通事故後の精神不安定は損害賠償請求の対象となり得ます。
非器質性精神障害と判断される可能性があるためです。
非器質性精神障害とは、脳の器質的損傷を伴わない精神障害のことで、具体的に以下のような疾患が該当します。
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- うつ病
- 不安障害
- パニック障害
- 外傷性神経症
交通事故後の精神不安定が非器質性精神障害に該当する疾患だと診断されれば、損害賠償請求の対象となり得ます。
交通事故後の精神不安定を損害として認めてもらうために大切なこと
交通事故後の精神不安定を損害として認めてもらうためには、精神不安定と交通事故の因果関係を立証しなければなりません。そのため、交通事故に遭わなかったら精神障害は発症しなかったことを証明できるかどうかが鍵を握ります。
この因果関係の証明が不十分だと、被害者の性格や既存の傾向(素因)が症状に寄与していると見なされ、損害賠償金が減額されるおそれがあります(素因減額)。
精神不安定と交通事故の因果関係を立証するためには、発症後速やかに精神科医や心療内科医の診察を受けることが大切です。
事故から受診までに期間があくと、精神不安定と交通事故の因果関係を疑われやすいです。
こころの不調を感じたらできるだけ早期に精神科や心療内科を受診し、適切な治療を受けましょう。
交通事故後の精神不安定で請求できる損害賠償金の項目
交通事故後の精神不安定が非器質性精神障害と診断されたら、被害内容に応じて以下の項目を請求できます。
- 治療費
- 入院雑費
- 付添看護費
- 付添人交通費
- 休業損害
- 傷害慰謝料
後遺障害等級が認定された場合は、以下の項目も請求できます。
- 後遺障害慰謝料
- 逸失利益
以下で、詳しく解説します。
治療費
治療費を請求できます。
事故による精神疾患の治療のためにかかった実費のうち、必要性かつ相当性があるものは、治療費として認められます。
なお、医師の指示がある場合は、以下のような費用も治療費として認められる可能性があります。
- 個室を利用した際の差額ベッド代
- 医薬品代
入院雑費
入院雑費も請求できます。
入院雑費とは、入院した場合に必要となる以下のような物品の購入費用です。
- 洗面用具・食器類・下着・ティッシュなど、入院時に必要な物品の購入費
- テレビカード代
付添看護費
付添看護費も請求できます。
付添看護費とは、治療のために被害者本人が通院・入院する際に、介助や看護をした付添人に支払われる金銭です。
もっとも、付添看護費が認められるのは、以下のような付き添いの必要性があるケースのみです。
- 医師の指示がある場合
- 精神疾患の程度が重篤で付添の必要がある場合
- 被害者が年少者の場合
付添人交通費
付添人交通費も請求できます。
付添人交通費とは、被害者本人の通院・入院の付添のためにかかった交通費です。
付添人交通費は、原則として、電車・バス等の公共交通機関の利用料金を基準に算出します。
もっとも、以下のような場合は、タクシー料金が認められるケースもあります。
- 医師の指示がある場合
- 歩行困難や公共交通空白地域など、公共交通機関の利用が困難な場合
休業損害
休業損害も請求できます。
休業損害とは、精神疾患の治療や療養のために休業したり、不十分な就労を余儀なくされたりしなければ得られたはずの収入です。
実際に得られなかった収入が補償されるため、以下のような理由による減収も対象です。
- 通院のための早退や遅刻
- 休業したことによる賞与の減額や不支給
- 休業したことによる降格や昇進の遅れ
休業損害については、以下の記事で詳しく解説しています。
傷害慰謝料(入通院慰謝料)
傷害慰謝料(入通院慰謝料)も請求できます。
入通院慰謝料とは、精神疾患の治療のために通院・入院を余儀なくされたことによる精神的苦痛を慰謝するための金銭です。
入通院慰謝料を算定する基準には以下の3つがあり、どの基準を用いるかによって慰謝料額に差が生じます。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
入通院慰謝料の計算方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
後遺障害慰謝料
後遺障害が残存すると認められた場合は、後遺障害慰謝料も請求できます。
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残存した精神的苦痛を慰謝するための金銭です。
後遺障害には1〜14級までの等級があり、傷害等級に応じた慰謝料額が基準ごとに設定されています。
後遺障害の等級が重いほど慰謝料額も高額になります。
自賠責基準・弁護士基準の後遺障害慰謝料の額は、以下の記事で紹介しています。
逸失利益
後遺障害が残存すると認められた場合は、逸失利益も請求できます。
逸失利益とは、交通事故に遭わなければ得られたはずの将来の利益です。
事故により負った精神疾患の程度により、これまでの労働ができなくなった度合いに応じて、将来得られるはずだった収入金額が認められます。
逸失利益については、以下の記事で詳しく解説しています。
交通事故後の精神不安定が後遺障害認定される基準と認定され得る等級
損害賠償額を最大化するためには、適切な後遺障害等級の認定を受けることが不可欠です。
本章では、交通事故後の精神不安定が後遺障害認定される基準と認定され得る等級を詳しく解説します。
交通事故後の精神不安定が後遺障害認定される基準
非器質性精神障害の後遺障害の残存が認められるためには、以下の(1)のうち1つ以上の精神症状を残し、かつ(2)のうち1つ以上の能力について障害が認められる必要があります。
| (1)精神状態 |
|---|
| ①抑うつ状態 |
| ②不安の状態 |
| ③意欲低下の状態 |
| ④慢性化した幻覚・妄想性の状態 |
| ⑤記憶または知能能力の傷害 |
| ⑥その他の傷害(運動性の傷害、不定愁訴など) |
| (2)能力に関する判断項目 |
| ①身辺日常生活 |
| ②仕事・生活に積極性・関心を持つこと |
| ③通勤・勤務時間の遵守 |
| ④普通に作業を維持すること |
| ⑤他人との意思伝達 |
| ⑥対人関係・協調性 |
| ⑦身辺の安全保持、危機の回避 |
| ⑧困難・失敗への対応 |
交通事故後の精神不安定が後遺障害と認定され得る等級
非器質性精神障害で認定され得る等級は、以下の3つです。
- 9級10号|就労可能なものの就労可能な職種が相当程度に制限されるもの
- 12級13号|就労可能なものの多少の障害を残すもの
- 14級9号|就労可能なものの軽微な障害を残すもの
精神障害に関する等級認定は、症状の主観性が高いため、その症状が仕事や日常生活にどの程度影響を与えているかが総合的に評価される傾向にあります。そのため、医師が作成する後遺障害診断書には、以下のような表現は避けた方が無難です。
- 回復(治癒・軽減)する可能性がある
- 予後不明
- 今後軽快していくと思われる
交通事故後に精神不安定になったら弁護士への依頼を勧める3つの理由
交通事故後に精神的に不安定になったら、弁護士への依頼を積極的に検討することをお勧めします。
弁護士への依頼を勧める主な理由は、以下の3つです。
- 保険会社との煩雑なやり取りから解放され治療に専念できる
- 複雑な因果関係や後遺障害等級認定の立証を任せられる
- 弁護士基準で算定した損害賠償金を請求できる
以下で、詳しく紹介します。
保険会社との煩雑なやり取りから解放され治療に専念できる
保険会社との煩雑なやり取りから解放され治療に専念できます。
保険会社との交渉は、専門的な知識と時間が必要であり、このストレスがあなたの非器質性精神障害の回復を妨げる要因となりかねません。
弁護士に依頼すれば、すべての連絡窓口が弁護士に一本化されるため、ご自身で保険会社とやり取りする必要はありません。
保険会社との交渉ストレスから解放されるため、治療に専念しやすくなるでしょう。
複雑な因果関係や後遺障害等級認定の立証を任せられる
複雑な因果関係や後遺障害等級認定の立証を任せられます。
精神疾患と交通事故の因果関係の証明は簡単ではありません。後遺障害等級も、申請すれば認定されるものではありません。
後遺障害等級認定の申請には、事前認定と被害者請求があります。事前認定は保険会社に任せられるものの、最低限の資料しか提出されない可能性があるため、適切な後遺障害等級が認定されないリスクがあります。
弁護士に依頼すれば、法律的・医学的な専門知識を駆使し、症状の重篤さを裏付ける詳細な資料を精査・準備できる被害者請求で申請できます。
適正な後遺障害等級が認定される可能性が高まるでしょう。
弁護士基準で算定した損害賠償金を請求できる
弁護士基準で算定した損害賠償金を請求できます。
交通事故の損害賠償金額を算定する基準には以下の3つがあり、どの基準を用いるかによって算定結果に差が生じます。
- 自賠責基準|自動車損害賠償保障法に規定された最低限の補償を目的とする基準
- 任意保険基準|それぞれの保険会社が独自に定める基準(非公開)
- 弁護士基準|過去の裁判例に基づいて定められた基準
ほとんどのケースで、弁護士基準が最も高額となり、次いで任意保険基準、自賠責基準が最も低額になります。
弁護士に依頼すれば、弁護士基準で慰謝料を算定・請求してもらえます。
あなたが被った精神的苦痛を慰謝料額に反映しやすくなるでしょう。
まとめ
交通事故後にこころの不調を感じたら、放置せず、速やかに精神科や心療内科を受診して適切な治療を受けましょう。
非器質性精神障害と診断されれば損害賠償請求の対象となり得ますが、因果関係の立証や後遺障害等級認定など、専門的な知識が必要です。
交通事故により非器質性精神障害を負ったら、初期段階から法律と医学的知見に精通した弁護士のサポートを受けることをお勧めします。
事故対応を弁護士に依頼したいとお考えなら、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。
ネクスパート法律事務所には、豊富な経験と解決ノウハウを有する弁護士が数多く在籍しています。不安なあなたに親身に寄り添い、納得のいく解決が図れるよう全力でサポートいたします。
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