交通事故により負った傷害が一目でわかる場合は、早急に医療機関を受診して保険会社と慰謝料について交渉することでしょう。
しかし、軽く打撲した程度であれば、「大した怪我ではないから受診する必要はないだろう」と安易に自己判断しがちです。そのため、時間が経ってから痛みに悩まされたり、日常生活に支障をきたして通院を余儀なくされたりするケースも見られます。
この記事では、交通事故による傷害が軽い打撲でも慰謝料を請求できるか、詳しく解説します。
交通事故による打撲の慰謝料の計算方法や、休業した場合に請求できる金銭についても解説しますので、ぜひご一読ください。
目次
交通事故による傷害が打撲だけでも慰謝料を請求できる?
交通事故による傷害が軽い打撲だけでも、治療のために通院した場合は、入通院慰謝料を請求できます。
入通院慰謝料とは、事故で負った傷害の治療のために入通院を余儀なくされた精神的苦痛に対して支払われる金銭です。
軽症でも、交通事故と打撲の因果関係が認められれば、慰謝料を請求できます。
そのため、交通事故に遭ったら、自覚症状がなくても速やかに受診することが大切です。
交通事故による打撲の慰謝料はどうやって算定する?
交通事故による打撲の慰謝料は、実際に治療のために通院した期間に応じて算定されます。
慰謝料を算定する際に使われる基準には以下の3つがあり、どの基準を使うかによって算定される金額に差が生じます。
- 自賠責基準:自動車損害賠償保障法に基づく最低限の補償を目的とした基準
- 任意保険基準:保険会社が独自に設ける基準(非公開)
- 弁護士基準:過去の裁判例に基づき定められた基準
打撲の慰謝料は実際に治療のために通院した期間に応じて算定されますが、使用する基準により慰謝料額が異なります。
次章で、打撲の慰謝料の計算方法を、基準別に詳しく解説します。
交通事故による打撲の慰謝料の計算方法と相場|基準別に解説
交通事故による打撲の慰謝料の計算方法と計算例を、以下の2つの基準別に詳しく解説します。
- 自賠責基準
- 弁護士基準
なお、任意保険基準は非公開のため、省略いたします。
自賠責基準
自賠責基準の入通院慰謝料の計算方法は、以下のとおりです。
認定日数×4,300円(2020年3月31日以前の事故は4,200円) |
認定日数は、以下の2つのいずれか少ない方が採用されます。
- 実治療日数×2(※)
- 総治療期間
※)あんま・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師の施術日数は2倍せず、実施術日数どおりとします。
実際に、以下の2つのケースで慰謝料を算定してみましょう。
弁護士基準
弁護士基準の入通院慰謝料は、赤い本と呼ばれる民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(日弁連交通事故センター東京支部編)を用いて算定します。
この書籍には、2種類の慰謝料算定表が掲載されています。軽い打撲・挫創やむちうち等で他覚初見がない場合は、以下の別表Ⅱから慰謝料額を算出します。
上欄は入院月数、左欄は通院月数です。通院のみの場合、左欄の通院月数の右隣に記載の金額(黄色マーカー部分)が慰謝料の基準額です。
入院・通院の〈期間〉は、原則として実際に入院・通院していた期間に基づきます。
たとえば、通院期間が1か月(30日)の場合の慰謝料の基準額は、19万円です。
入通院期間が1か月に満たない場合、日数を月数になおして端数が出るときは、1か月を30日として日割り計算をします。
実際に、以下の2つのケースで慰謝料を算定してみましょう。
交通事故による打撲で休業したら休業損害も請求できるケースも
交通事故による打撲で休業したら、休業損害を請求できるケースもあります。
休業損害とは、事故で負った傷害の治療や療養のために通常通り働けなかったことにより減少した収入です。
休業による減収のほか、以下のような理由による減収も、休業損害として認められる可能性があります。
- 通院による遅刻・早退
- 休業による賞与の減額
交通事故により被った傷害の通院のために減収が発生した場合は、休業損害も請求できるかもしれません。
もっとも、あまりに軽度で治療の必要がないと判断された場合は、休業による減収が発生しても、休業損害として認められない可能性はあります。
交通事故による打撲の慰謝料請求は弁護士にご依頼を
交通事故による打撲の慰謝料を請求するなら、弁護士への依頼も検討してみてください。
弁護士に依頼する主なメリットとして、以下の4つが挙げられます。
- 弁護士特約を使えば費用を気にせず弁護士に依頼できる
- 弁護士基準で慰謝料額の算定・請求ができる
- 慰謝料以外の困りごとも相談できる
- 保険会社との交渉・手続きを一任できる
以下で、詳しく紹介します。
弁護士特約を使えば費用をかけずに弁護士に依頼できる
弁護士特約を使えば、費用かけずに弁護士に依頼できる場合があります。
弁護士特約とは、交通事故による損害賠償請求にかかる弁護士費用を保険会社に負担してもらえる自動車保険の特約です。
弁護士特約がついている自動車保険に加入していれば、示談交渉や訴訟の対応を弁護士に依頼した際にかかる弁護士費用は、保険会社が支払います。
弁護士費用特約でカバーされる費用の上限は、1事故1被害者につき300万円(法律相談料は10万円まで)とされていることが多いです。
各保険会社が定める上限額の範囲内であれば、費用倒れを気にすることなく、弁護士に損害賠償請求を相談・依頼できます。
弁護士特約を使えば費用をかけずに弁護士に相談・依頼できるため、弁護士特約が使える場合は迷わず弁護士に相談しましょう。
ただし、あなたに故意・重大な過失がある事故等、弁護士特約が使えないケースもあります。
弁護士基準で慰謝料額の算定・請求ができる
弁護士基準で慰謝料額の算定・請求ができます。
交通事故の慰謝料請求はご自身でもできますが、自賠責基準や任意保険基準で算出される慰謝料の金額は、弁護士基準と比べると低いケースがほとんどです。
弁護士に依頼すれば、弁護士基準で慰謝料額を算定し、保険会社に請求してもらえます。そのため、納得できる慰謝料を受け取れる可能性が高まります。
弁護士基準で慰謝料を算定することで、あなたが被った損害に対する適正な慰謝料額を主張・請求できるでしょう。
弁護士基準で慰謝料額の算定・請求ができることは、弁護士に依頼するメリットです。
慰謝料以外の困りごとも相談できる
慰謝料以外の困りごとも相談できます。
交通事故により打撲した場合に保険会社との交渉が必要となる事項は、入通院慰謝料だけではありません。
交通事故の損害賠償請求では、以下のような悩みを抱える人が少なくありません。
- 保険会社から治療費の打ち切りを打診される
- 減収が休業損害として認められない
弁護士に依頼すれば、入通院慰謝料だけでなく治療費や休業損害等についても相談できます。保険会社との間でトラブルが起こっても都度弁護士に対応をお願いできるため、安心して治療を受けやすくなります。
慰謝料以外の困りごとも相談できることは、弁護士に依頼するメリットです。
保険会社との交渉・手続きを一任できる
保険会社との交渉・手続きを一任できます。
ご自身で弁護士基準の慰謝料額を算定し、保険会社との交渉を試みることもできますが、保険会社は示談交渉のプロです。専門知識がなければ、保険会社の言い分に対して適切に反論するのは難しいでしょう。
弁護士に依頼すれば、弁護士が窓口となってくれます。豊富な専門知識と経験のある弁護士が対応するため、あなたの言い分が保険会社に伝わりやすくなります。
ご自身で保険会社とやり取りする必要もないため、あなたの精神的・時間的な負担を最小限に抑えられるでしょう。早期解決も期待できます。
保険会社との交渉・手続きを一任できることは、弁護士に依頼するメリットです。
まとめ
交通事故による傷害が軽い打撲だけでも、治療のために通院した場合は、入通院慰謝料を請求できます。もっとも、交通事故と打撲の因果関係が認められないと慰謝料の支払いを受けられないため、交通事故に遭ったらなるべく早期に医療機関を受診しましょう。
交通事故による打撲が原因で休業し、減収が発生した場合は、休業損害も請求できる可能性があります。
慰謝料請求を弁護士に依頼すれば、入通院慰謝料だけでなく、他に請求できる金銭がないかも検討してもらえるため、後悔のない解決を図りやすくなるでしょう。
交通事故の慰謝料請求をしたいとお考えなら、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。