軽い接触事故でその場で和解したら覆せない?リスクや対処法を解説

接触事故を起こしたら、誰しもパニックになるでしょう。

軽い接触事故の場合、ケガも大したことはないからと、その場で和解する人がいます。

しかし、軽い接触事故でも、その場で和解するべきではありません。

適切な補償を受け取れなくなる可能性があります。

この記事では、軽い接触事故に遭った直後の人・軽い接触事故で和解した人の2つの視点に分けて、その後の対処方法等を解説しています。ぜひ参考にしてください。

軽い接触事故でもその場で和解すべきでない理由

軽い接触事故でも、その場で和解すべきではありません。

その理由として、次の4つが挙げられます。

  • 軽い接触事故でも警察への報告義務がある
  • 一度和解すると後からの変更・撤回が難しい
  • 事故後しばらく経ってから症状が出る可能性がある
  • その場で合意した和解金が支払われる保証はない

以下、詳しく見ていきましょう。

軽い接触事故でも警察への報告義務がある

軽い接触事故でも、警察への報告義務があります。

事故に遭ったときに最初にすべき重要なことは、負傷者を救護すること、そして警察へ報告することです。道路交通法第72条にも、事故当事者の義務が明記されています。

警察への報告を怠ると、次のようなデメリットが生じます。

  • 被害者も報告義務違反に問われる可能性がある
  • 交通事故証明書が作成されない
  • 実況見分調書が作成されない

以下、詳しく説明します。

①被害者も報告義務違反に問われる可能性がある

警察への報告を怠ることは、法律違反です。

3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科される可能性があります。

②交通事故証明書が作成されない

警察への報告を怠ると、交通事故証明書が作成されません。

交通事故証明書とは、交通事故が起きたことを証明する公的な書類です。事故発生の日時、場所、当事者の氏名、乗っている車の車両番号などが記載されます。

保険金の請求をする場合、自賠責保険・任意保険どちらも交通事故証明書の提出が必要です。

しかし、警察への報告を怠ると交通事故証明書が作成されませんから、保険金の請求ができない場合があります。

交通事故証明書とは|必要になるシーンや取得方法を詳しく解説

③実況見分調書が作成されない

警察への報告を怠ると実況見分調書が作成されません。

実況見分調書とは、事故がどのように発生したかを明らかにする書類です。警察官が現場検証を行い、加害者・被害者双方の聞き取り調査を踏まえて作成します。

実況見分調書は、過失割合に影響を及ぼします。

示談交渉では、過失割合(どちらにどれだけの責任があるか)に応じで賠償金が変動します。

そこで、事故時の過失を示す証拠として重要なのが実況見分調書です。

しかし、警察への報告を怠ると実況見分調書が作成されませんから、適切な過失割合が認定されない場合があります。

交通事故の過失割合とは|決め方・納得できない場合の反論方法を紹介

一度和解すると後からの変更・撤回が難しい

一度和解すると後からの変更・撤回が難しいです。

その場で当事者双方が合意した以上、原則としてその内容の変更・撤回はできません。

口頭での和解も、法的には有効です。

しかし、事故直後は今後どのくらいの費用がかかるのか確定していません。

下表は、事故により請求できるおおまかな費用一覧です。

事故による損害が確定するのは、ケガの治療が終わり、後遺障害の有無が判明するまでです。

思ったよりケガの治療費がかかるかもしれません。しばらくの間仕事を休まなければいけなくなるかもしれません。

事故直後に和解が成立すると、本来請求できたであろう金額が請求できず、十分な補償を受けられないリスクがあります。

事故後しばらく経ってから症状が出る可能性がある

事故後しばらく経ってから症状が出る可能性があります。

事故直後は、アドレナリンが出ており痛みを感じないことも多いです。

しかし、しばらく経ってから体に痛みが出ることもあります。

交通事故のケガに伴う治療費等は、通常加害者に請求が可能ですが、和解が成立すると、治療費等の追加請求ができない可能性があります。

その場で合意した和解金が支払われる保証はない

その場で合意した和解金が支払われる保証はありません。

「加害者側がその場である程度の金額を支払う約束をしてくれたからいいだろう。」と思っていても、和解金が約束通りに支払われない可能性もあります。

加害者に事故そのものを否定されるかもしれません。

警察や保険会社に連絡せず、当事者間のみでその場で和解すると、後日事故を証明する手段がありません。

事故があったことを証明できないと、最悪の場合、一銭も支払いを受けられない可能性があります。

軽い接触事故に遭ったらその場であなたがすべき5つの行動

軽い接触事故に遭ったらその場であなたがすべき行動は、次の5つです。

  • ケガ人の有無を確認する
  • 警察に連絡する
  • 自分の加入する保険会社に連絡する
  • 相手と連絡先等を交換する
  • 事故現場の記録を取る

まずは落ち着いて、順番に行動しましょう。

①ケガ人の有無を確認する

ケガ人の有無を確認しましょう。

ケガ人がいる場合には、優先して救護活動を行いましょう。

救急車を呼び、必要に応じて応急措置を行いましょう。

②警察に連絡する

警察に連絡しましょう。

事故を起こしたら、警察に報告する義務があります。

速やかに110番をしましょう。

③自分の加入する保険会社に連絡する

自分の加入する保険会社に連絡しましょう。

事故に遭った場合には、保険会社に速やかに連絡する必要があります。

保険会社への連絡を怠ると、適切な補償が受け取れなくなる可能性もありますから、必ず連絡しましょう。

④相手と連絡先等を交換する

相手と連絡先等を交換しましょう。

相手に聞くべき情報は、次のとおりです。

  • 氏名
  • 住所
  • 連絡先
  • 車両ナンバー
  • 相手方の加入する自賠責保険・任意保険とその証明書番号
  • 勤務先 など

単に相手の情報を聴くだけでなく、免許証などを提示してもらいましょう。

⑤事故現場の記録を取る

事故現場の記録を取りましょう。

スマートフォンなどで事故現場の状況を記録しておきましょう。

目撃者がいる場合には、その方に話を聞き、協力してもらえる場合には、氏名と連絡先を聞いておきましょう。

ドライブレコーダーがある場合には、映像を保存しておきましょう。

軽い接触事故でその場で和解に応じたら絶対に後から覆せない?

軽い接触事故でその場で和解に応じた場合でも、絶対に覆せないわけではありません。

既にその場で和解金を受け取ったり、加害者に警察への届出はしないで欲しいと言われ届け出なかったりした方もいるかもしれません。

既に当事者間で和解が成立していても、以下の場合には、合意が成立していないと評価できる可能性があります。

  • 保険金の支払いが確実でないにもかかわらず、それを前提とした約束をするなど、和解の内容が漠然としていて実現可能性も不明な場合
  • 受傷の程度や被害車両の損傷程度が明らかではない段階で、合意の前提となる事実についての認識を欠いている場合
  • 錯誤が存在する場合
  • 強迫下でなされた場合

したがって、絶対に覆せないわけではなく、和解内容や和解時の状況等によっては、その内容を取り消せる余地もあります。

過去の裁判例でも、当事者間の和解の成立を否定した事案があります。

東京地判昭和40年11月10日判決では、保険会社に問い合わせることなく当事者間で合意した事案について、その内容が著しく不明確であるとして、和解の成立を否定しました。

岡山地判昭和56年3月30日判決では、当事者間で次のような示談書が作成されていました。

物損については各自の負担とし、人身事故については保険範囲において補償請求を認め、被害者側で請求する。

今後本件に関しいかなる事情が生じても何らの異議要求をせず、告訴・告発等は一切しない。

裁判所は、この示談書について、受傷の程度が双方に末だ明らかには認識されず、今後の治療の推移についても十分な予測ができない状態で作成されたことが認められるとし、このような場合、示談における当事者の合理的な意思に合致せず、信義公平の観念にも反することして、和解の成立を否定しました。

千葉地裁松戸支部平成13年 3月27日判決では、被害者と加害者側保険会社との間で、次のような示談書が作成されていました。

後遺障害の損害額を自賠責保険金額の範囲において決定する。

裁判所は、この示談書の内容と作成経緯について、被害者は保険会社の担当者からの説明を受け、後遺障害の損害は自賠責保険の保険金額しか認容されないものと判断し、この前提のもとに本件示談契約を締結したものであるとしました。そのうえで、被害者の意思表示には要素の錯誤があるとして、和解の成立を否定しました。

このように、既に当事者間で和解した場合でも、和解の成立が否定された裁判例もあります。

したがって、その場で和解した場合でも、その内容を取り消せる余地はあるでしょう。

その場で応じた和解の有効性に疑問があるときは、一人で判断せず、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

軽い接触事故でその場で和解した場合の対処法

既にその場で和解した場合の対処法は、次の2つです。

  • 早急に警察に報告する
  • 弁護士に相談する

以下、詳しく見ていきましょう。

早急に警察に報告する

早急に警察に報告しましょう。

警察への報告をしていない場合には、後日でも必ず報告すべきです。

できる限り早急に報告しましょう。

弁護士に相談する

弁護士に相談しましょう。

既に和解をした場合には、その内容を覆すのは簡単ではありません。

ご自身で加害者や加害者の保険会社に直接交渉をしても、既に和解済みだとして、交渉に応じてもらえない可能性が高いでしょう。

事故からしばらく経っている場合には、事故の証明も簡単ではありませんから、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

軽い接触事故でもその場で和解することは避けましょう。

適切な補償を受けるためにも、事故に遭ったら、警察への報告と保険会社への連絡を速やかに行いましょう。

既に和解をした場合には、早めに弁護士にご相談ください。

ネクスパート法律事務所では、交通事故事案の解決実績を豊富にもつ弁護士が在籍しています。ぜひ一度ご相談ください。

お問い合わせ

 

 

ページの上部へ戻る