交通事故の治療に健康保険は使えない?メリット・デメリットは?

「交通事故のケガの治療には、健康保険は使えません。」
病院の窓口でこのように言われたというケースも少なくありません。

交通事故のケガの治療にも、原則として健康保険が使えます。

では、なぜ病院は、使えないと言うのでしょう?
健康保険を使うことで、何かデメリットがあるのでしょう?

この記事では、主に次のことについて解説しています。

  • 病院から交通事故の治療に健康保険は使えないと言われる理由
  • 健康保険を使うメリット・デメリット
  • 健康保険の利用を検討すべき4つのケース

ぜひ参考にしてください。

交通事故のケガの治療に健康保険は使えない?

交通事故のケガの治療にも、健康保険が使えます。

ただし、次の2つのケースでは、健康保険が使えません。

  • 業務中・通勤途中の交通事故
  • 酒酔い運転・無免許運転等の法令違反による交通事故

原則として健康保険は使える

交通事故のケガの治療にも、原則として健康保険が使えます。

病院で治療を受ける際、保険診療にするか自由診療にするかは、被害者本人が選択できます。

旧厚生労働省も、交通事故によるケガの治療が保険給付の対象となる旨通知しています(昭和43年10月12日保険発第106号)。

ただし、交通事故によるケガの治療費は、本来加害者が負担するものであり、健康保険を利用した場合は、後日保険者が加害者または加害者の加入する任意保険会社に対して求償します。

そのため、交通事故のケガの治療に健康保険を使う場合には、第三者行為による傷病届の手続きが必要です。

【例外】健康保険が使えない2つのケース

次の2つのケースでは、健康保険が使えません。

  • 業務中・通勤途中の交通事故
  • 酒酔い運転・無免許運転等の法令違反による交通事故

業務中・通勤途中の交通事故

業務中・通勤途中の交通事故の場合には、健康保険が使えません。

業務中・通勤途中の交通事故の場合には、労災保険が適用されます。

健康保険法では、労災保険による給付を受けられる場合には、健康保険の対象外とする旨が規定されています(健康保険法55条1項)。

労災保険の適用範囲にもかかわらず健康保険を使った場合には、速やかに労災保険への切り替え手続きを行いましょう。

酒酔い運転・無免許運転等の法令違反による交通事故

酒酔い運転・無免許運転等の法令違反による交通事故の場合には、健康保険は使えません。

病院から交通事故の治療に健康保険は使えないと言われる理由

交通事故のケガの治療にも健康保険が使えるのに、なぜ、病院から健康保険は使えないと言われることがあるのでしょう?

それは、交通事故の治療では病院の業務量が増えるため、保険診療の報酬では、病院の業務の負担のわりに報酬が少ないからです。

同じ診療行為をした場合でも、自由診療の方が2倍近くの報酬になります。

治療費は、診療報酬として点数を用いて示されます。

保険診療 1点あたり10円
自由診療 病院が自由に決定

保険診療の場合は、厚生労働大臣により1つ1つの診療行為ごとに点数が決められており、1点の単価は10円と定められています。そのため、どこの病院を受診しても同じ点数、同じ金額です。

自由診療の場合は、1点あたりの単価を病院が自由に設定できます。自由診療の単価を、保険診療の1.5倍~2倍に設定している病院が多いでしょう。

交通事故の治療では病院の業務量が増え、病院の負担が大きいことから、病院によっては、健康保険の使用に消極的なことがあるでしょう。

交通事故のケガの治療に健康保険を使うメリットは?

交通事故のケガの治療に健康保険を使うメリットとして、次の2つが挙げられます。

  • 治療費を低く抑えられる
  • 高額療養費制度を利用できる

以下、詳しく見ていきましょう。

治療費を低く抑えられる

1つめは、治療費を低く抑えられる点です。

保険診療の単価は、1点10円なのに対し、自由診療の単価は2倍以上に設定されていることが多いです。

さらに、窓口で一時的に自己負担をする場合、保険診療は自己負担が原則3割なのに対し、自由診療は全額自己負担です。

治療費を全額加害者に請求できる場合には、金額を気にする必要はないかもしれません。

しかし、加害者が任意保険に加入していない場合やご自身(被害者)の過失割合が大きい場合等、治療費を全額請求できない可能性もあります。

したがって、健康保険を使うことで、治療費を低く抑えられる点はメリットと言えるでしょう。

高額療養費制度を利用できる

2つめは、高額療養費制度を利用できる点です。

高額療養費制度とは、ひと月の医療費が一定の上限額を超えた場合に、その超えた部分の金額を払い戻す制度です。上限額は、年齢と年収により異なります。

高額療養費制度の対象となるのは、保険診療のみです。

したがって、健康保険を使うことで、高額療養費制度を利用できる点はメリットと言えるでしょう。

交通事故のケガの治療に健康保険を使うデメリットは?

交通事故のケガの治療に健康保険を使うデメリットとして、次の3つが挙げられます。

  • 第三者行為による傷病届の手続きが必要
  • 窓口負担が一時的に発生する
  • 保険適用の範囲内の治療しか選択できない

以下、詳しく見ていきましょう。

第三者行為による傷病届の手続きが必要

1つめは、第三者行為による傷病届の手続きが必要な点です。

5章で詳しく解説していますが、第三者行為による傷病届の手続きには、いくつかの書類の提出が必要です。

必要書類の作成・提出に手間がかかる点は、デメリットと言えるでしょう。

窓口負担が一時的に発生する

2つめは、窓口負担が一時的に発生する点です。

自由診療により発生した医療費は、通常、病院から任意保険会社に直接請求がいくため(一括対応)、窓口での自己負担が発生しません(加害者が任意保険に加入している場合)。

しかし、健康保険を利用する場合には、一時的に窓口で原則3割の自己負担が発生します。

窓口負担が一時的に発生する点は、デメリットと言えるでしょう。

保険適用の範囲内の治療しか選択できない

3つめは、保険適用の範囲内の治療しか選択できない点です。

健康保険を使って受けられる診療内容には限りがあるため、ケガの程度によっては十分な治療を受けられない可能性もあります。

治療内容については、担当医師に相談し、場合によっては自由診療を検討する必要があるでしょう。

交通事故のケガの治療に健康保険を使うべき?

交通事故のケガの治療に健康保険を使うべきかは、ケースバイケースです。

以下、健康保険の利用を検討すべき4つのケースと健康保険を使わなくても支障がないと考えられるケースについて見ていきましょう。

健康保険の利用を検討すべき4つのケース

健康保険の利用を検討すべきケースとしては、次の4つが考えられます。

  • 被害者の過失割合が大きい
  • 加害者が任意保険に加入していない
  • 加害者が自賠責保険に加入していない(無保険)
  • 加害者の任意保険会社から治療費の打ち切られた

被害者の過失割合が大きい

被害者の過失割合が大きいケースです。

交通事故の被害者にも過失があり、被害者の過失が事故の発生や損害の拡大に起因している場合は、公平の観点から損害賠償額を減額されることがあります。これを過失相殺といいます。

過失相殺は、原則として交通事故の損害賠償項目の全てに適用されます。

  • 積極損害(治療費、通院交通費、葬儀費用等)
  • 消極損害(逸失利益、休業損害)
  • 慰謝料

治療費も過失相殺されるため、被害者の過失部分は最終的に自己負担です。

したがって、健康保険を利用した方が治療費を抑えられることから、被害者の過失割合が大きいケースでは健康保険の利用を検討すべきでしょう。

加害者が任意保険に加入していない

加害者が任意保険に加入していないケースです。

加害者が任意保険に加入していない場合、基本的に被害者が窓口で治療費を立て替え、後日自賠責保険に対して請求をします。

そのため、健康保険を利用しない場合には、自由診療による高額な医療費を、一度被害者自身が自己負担する必要があります。

さらに、自賠責保険の補償額には下表のとおり上限があり、それを超えた部分については加害者本人に請求します。

被害者の損害 上限額
傷害 120万円
後遺障害 3,000万円
死亡 3,000万円

傷害による損害の上限は120万円ですから、自由診療の治療費だけで120万円に達する可能性が高いでしょう。それを超えた部分については加害者本人に請求しますが、加害者本人に資力がない場合には、最終的に被害者本人が負担します。

したがって、加害者が任意保険に加入していないケースでは、健康保険を利用して、できるだけ治療費を抑えた方がよいでしょう。

加害者が自賠責保険に加入していない(無保険)

加害者が自賠責保険に加入していない(無保険)ケースです。

加害者が自賠責保険に加入していない(無保険)場合、原則として治療費は加害者本人に請求します。

自賠責保険に入っていないわけですから、十分な資力は期待できないでしょう。

その場合、最終的にはご自身で治療費を負担することになりますから、加害者が自賠責保険に加入していない(無保険)ケースでは、健康保険を利用して、できるだけ治療費を抑えた方がよいでしょう。

加害者の任意保険会社から治療費の打ち切られた

加害者の任意保険会社から治療費の打ち切られたケースです。

治療費は、原則として症状固定までの分を請求できます。

症状固定の時期は、医師の判断が尊重されますが、治療が長引いている場合には、保険会社から治療費を打ち切られることがあります。この場合、任意保険会社の一括対応がされなくなります。

しかし、症状によっては、治療の継続が必要な場合もあるでしょう。

この場合には、健康保険を使用して治療を継続しましょう。

健康保険を使わなくても支障がないと考えられるケース

次の3つの要件を全て満たす場合には、健康保険を使わなくても支障がないと考えられるでしょう。

  • 加害者が任意保険に加入している
  • 被害者の過失がゼロ
  • 軽症で治療期間が長引く可能性や治療費が高額になる可能性が低い

加害者が任意保険に加入している場合には、基本的に任意保険会社が一括対応をしてくれるので、窓口で治療費を自己負担する必要がありません。被害者の過失がゼロの場合には、治療費は全額加害者の負担です。

軽症で治療期間が長引く可能性や治療費が高額になる可能性が低ければ、自賠責保険の上限額である120万円までかかることは少なく、途中で治療費を打ち切られる心配もないでしょう。

したがって、これら3つをすべて満たす場合には、健康保険を使わなくても支障がないと考えられるでしょう。

交通事故のケガの治療に健康保険を利用する場合の流れ

交通事故のケガの治療に健康保険を利用する場合の流れについて見ていきましょう。

加入している保険組合に連絡する

加入している保険組合に連絡しましょう。

事前に、加入している保険組合に、健康保険を使いたい旨を連絡しましょう。

病院の窓口で健康保険を使いたい旨を伝える

病院の窓口で健康保険を使いたい旨を伝えましょう。

ただ健康保険証を提出するのではなく、明確に健康保険を使いたい旨の意思表示をしましょう。

加入している保険組合に第三者行為による傷病届等を提出する

加入している保険組合に第三者行為による傷病届等を提出しましょう。

必要書類については、おおむね次のとおりです。

  • 交通事故証明書
  • 負傷原因報告書
  • 事故発生状況報告書
  • 損害賠償金納付確約書・念書
  • 同意書

できるだけ速やかに、作成・提出しましょう。

まとめ

交通事故によるケガの治療にも、健康保険を使えます。健康保険を利用した方が、被害者にメリットのあるケースもあります。

健康保険を使う場合には、必ず第三者行為による傷病届を提出しましょう。

治療費を含めた賠償金の獲得に不安がある場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士に依頼することで、示談交渉から適正な賠償金での解決まで全て任せられます。

ネクスパート法律事務所では、交通事故事案の解決実績を豊富にもつ弁護士が在籍しています。ぜひ一度ご相談ください。

お問い合わせ

 

 

ページの上部へ戻る