交通事故に遭ってしまった場合、一般的に、まずは示談による解決を目指します。
当事者間の示談交渉がなかなか進まない場合には、紛争を解決する手段のひとつである調停手続きを利用することもあります。
「調停手続きとは、どんな内容の手続きなの?」
「裁判所を利用するのに、裁判とは違うの?」
調停という言葉は、あまり聞きなれない方も多くいることと思います。
調停と裁判は、どちらも裁判所を利用する手続きですが、その内容は大きく異なります。
この記事では、交通事故の調停手続きの流れやメリット、裁判との違いについて解説しています。ぜひ参考にしてください。
目次
交通事故の調停手続きとは?
交通事故の調停手続きは、交通事故の紛争を解決する手段のひとつで、裁判所を利用する手続きです。
以下では、調停手続きの特徴と裁判との違いについて解説しています。
民事調停手続きとは
民事調停手続きとは、裁判官と調停委員2名以上で構成される調停委員会が当事者の間に入って話合いを進め、問題の解決を図る手続です。
調停委員会が、当事者双方の主張や気持ちを十分に聴き、当事者双方が合意できる解決案を探ります。
調停委員とは
調停委員とは、調停手続きに一般市民の良識を反映させるために、豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれた人です。
弁護士、医師、大学教授、公認会計士、不動産鑑定士、建築士などの専門家のほか、地域社会に密着して幅広く活動してきた人などが選ばれます。
裁判との違い
裁判との大きな違いは、調停の場合は、当事者双方の合意が必要な点です。
調停は、裁判のように勝ち負けを決めるものではありません。裁判は、当事者双方の合意がなくても、最終的には裁判所が判決という形で紛争に関する判断を下します。
しかし、調停の場合は、当事者双方の合意ができなければ、調停不成立として手続きが終了することもあります。
調停は、裁判所を利用する手続きですが、あくまで当事者間の話し合いと合意によって解決を目指す手続きです。
交通事故の調停手続きを利用する4つのメリット
調停手続きを利用するメリットは、次の4つです。
早期解決が期待できる
早期解決が期待できるでしょう。
示談交渉の場合は、当事者間の話し合いがなかなかスムーズに行かず、長期化するケースも多くあります。
調停の場合は、通常2~3回の調停期日が開かれ、おおむね3か月以内に調停が成立し、終了します。
したがって、比較的早期の解決が期待できるでしょう。
第三者が介入することで感情的になるのを避けられる
第三者が介入することで感情的になるのを避けられるでしょう。
示談交渉の場合は、当事者同士で話し合いをするため、お互い感情的になってしまうことが多くあるでしょう。
調停の場合は、調停委員が当事者双方の言い分を交互に聴取してくれます。
通常、それぞれ別室で聴取が行われるため、当事者同士が顔を合わせずに済み、必要以上に感情的になるのを避けられるでしょう。
手続きが非公開である
手続きが非公開であることから、プライバシーが守られるでしょう。
裁判の場合は、法廷で審理が行われるため、第三者が自由に傍聴できます。
調停の場合は、手続きが非公開の場で行われることから、第三者に紛争の詳細な内容を知られるのを避けられます。
調停が成立した場合は強制執行できる
調停が成立した場合は強制執行できます。
調停において当事者間に合意が成立し、その合意内容を調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載内容は判決と同一の効力を有します。
つまり、調停で合意した内容を相手方が守らなかった場合には、強制執行できます。
調停が成立すると、裁判所書記官が、調停調書正本という書類を作成します。
この調停調書正本によって、相手方が慰謝料の支払いをしない場合には、強制執行の手続きを取れるようになります。
交通事故の調停手続きを利用する2つのデメリット
交通事故の調停手続きを利用するデメリットは、次の2つです。
申立ての費用がかかる
申立ての費用がかかります。
示談交渉の場合は、弁護士を付ける費用を除き、特別な費用は生じません。
調停の場合は、申立てをするのに申立て手数料が必要になります。
したがって、示談交渉と比較すると費用がかかるでしょう(ただし、裁判と比較すると半分程度)。
不成立で終わる場合がある
不成立で終わる場合があります。
調停は、当事者双方が話し合うことで合意を目指す手続きですから、当事者双方が合意できなければ、原則、調停は成立しません。その場合、調停は不成立となり裁判を申し立てることになります。同様に、相手方が期日に出席しない場合も調停は不成立となります。
したがって、費用や時間をかけても解決しない場合があるという点が、デメリットになるでしょう。
交通事故の紛争解決手続きとして調停の申立てを検討するのはどんなとき?
交通事故の紛争解決手続きとして調停の申立てを検討するのは、主に次の3つのような場合です。
- 加害者が任意保険に加入しておらず話し合いがうまくいかないとき
- 債務名義を得たいとき
- 治療が長引いている間に時効期間が経過しそうなとき
以下、詳しく見ていきましょう。
加害者が任意保険に加入しておらず話し合いがうまくいかないとき
加害者が任意保険に加入しておらず話し合いがうまくまとまらない場合には、調停の申立てを検討することがあります。
加害者が任意保険に加入している場合には、通常、交通事故の専門的知識を有する保険会社が話し合いに参加するため、ある程度の相場や見通しを持って話し合いを進められます。
しかし、加害者が任意保険に加入していない場合には、加害者本人と被害者本人とで直接話し合いを進める必要があります。そのため、なかなか話し合いが上手くいかないといった場合があります。
当事者双方に話し合いをする余地があるものの、専門的な知識がないことから示談交渉が難しい場合には、裁判所が介入して合意を目指す調停手続きの利用を検討することがあります。
債務名義を得たいとき
債務名義を得たい場合には、調停の申立てを検討することがあります。
債務名義とは、強制執行をする際に必要となる文書です。判決や和解調書、調停調書等が債務名義にあたります。
当事者同士での話し合いの場合、合意内容がまとまったら示談書(合意書)を作成します。
しかし、相手側が合意した慰謝料を支払ってくれない場合、示談書(合意書)では、強制執行ができません。
この場合には、改めて裁判を起こし、勝訴判決(債務名義)を得る必要があります。
あらかじめ、調停手続きを利用することで、調停で合意した内容を記載した調停調書(債務名義)を取得できます。万が一、相手方が支払いしてくれなくても、調停調書をもとに強制執行ができますから、債務名義を得たいときには調停手続きの利用を検討することがあります。
治療が長引いている間に時効期間が経過しそうなとき
治療が長引いている間に時効期間が経過しそうな場合には、調停の申立てを検討することがあります。
調停手続きの申立てをすると、手続きが終了するまでの間、時効の完成を阻止できます。
交通事故による損害賠償請求権には、時効があります。
物損の場合は3年、人損の場合は5年が経過すると、損害賠償請求権は時効により消滅します(民法724条、724条の2)。
自賠責保険の被害者請求権は、事故の時から3年が経過すると、時効により消滅します。
ケガの治療が長引いているのに治療費の支払いが打ち切られたりして、時効期間が経過しそうな場合や、将来治療の必要性・相当性が争点となりそうな場合、後遺障害が非該当になるおそれがある場合には、調停手続きの申立てをすることで、念のため時効の完成猶予の手続をとる場合があります。
この場合、調停が不成立により終了したときは、6か月を経過するまでの間に訴えを提起しなければなりません(民法147条1項3号)。
交通事故の調停手続きの流れ
調停手続きの流れは、次のとおりです。
①簡易裁判所に申立書を提出
調停の申立てをする場合には、管轄裁判所に申立て書類一式と手数料(収入印紙)、郵便切手を提出します。
管轄裁判所
管轄裁判所は、原則として相手方の住所などを管轄する簡易裁判所になります。
ただし、人身事故のケースでは、損害賠償を請求する人の住所を管轄する簡易裁判所への申立ても可能です。
当事者双方が合意した地方裁判所や簡易裁判所への申立ても可能です。
必要書類
主な必要書類は次のとおりです。
- 調停申立書正本1通、副本(相手方の人数分)
- 状況説明書
- 証拠書類写し(交通事故証明書、診断書等)
- 法人登記事項全部証明書(当事者が法人の場合、3か月以内に発行された原本)
- 戸籍謄本又は抄本(当事者が未成年の場合、3か月以内に発行された原本)
申立書の書式・記載例の参考は、裁判所ウェブサイトをご参照ください。
申立て手数料
申立て手数料の一部を、以下の表で示しています。
訴額 |
民事調停の申立て手数料 |
10万円まで |
500円 |
20万円まで |
1,000円 |
30万円まで |
1,500円 |
40万円まで |
2,000円 |
50万円まで |
2,500円 |
100万円まで |
5,000円 |
200万円まで |
7,500円 |
詳細は、裁判所ウェブサイトをご参照ください。
②裁判所と期日の調整
申立書や添付書類に不備がない場合は、裁判所と第1回調停期日を行う日程を調整します。
③当事者に呼出状の送付
日時が決定したら、当事者双方に呼出状が送付されます。
④調停期日で調停委員を含めた話し合い
調停期日では、裁判官1名、調停委員2名により構成される調停委員会が、当事者の間に入り、合意に向けた話し合いを行います。
⑤当事者間で合意ができた場合は調停成立
調停委員は、当事者双方の言い分をもとに、解決案を提示します。
調停委員から提示された解決案に合意ができれば調停は終了し、その内容が記載された調停調書が作成されます。
調停調書には、確定判決と同一の効力が有りますので、相手方が合意した慰謝料を支払わない場合には、強制執行の手続きが可能となります。
交通事故の調停が不成立になったら、裁判での解決を目指すことになる
当事者双方の話し合いがまとまらない場合や相手方が期日に出頭しない場合は、合意の見込みがないと判断され、調停不成立となります。
調停が不成立となった場合、それでも紛争解決を求める場合には、当事者は、裁判所に訴えを提起することになります。この場合、不成立の時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しません(民法147条1項3号)。
調停不成立の通知を受けた日から2週間以内に裁判を提起した場合は、訴え提起の手数料から既に調停手続きで納付した手数料分が控除されます。
交通事故の示談交渉が難航している場合は弁護士への相談をおすすめ
交通事故の示談交渉が難航している場合は、弁護士への相談をおすすめします。
現時点で、示談交渉が難航している場合であっても、弁護士が介入することで示談での解決ができる可能性が高くなります。
裁判での解決を目指す場合には、弁護士に手続きを任せることもできます。
したがって、交通事故の示談交渉が難航している場合には、一度弁護士に相談してみるのをおすすめします。
まとめ
交通事故の調停手続きについてお分かりいただけたでしょうか。
交通事故の示談がスムーズにいかない場合には、調停や裁判といった裁判所を利用した解決を選択するのも手段のひとつでしょう。
ですが、示談がまとまらない場合、まずは弁護士に相談してみるのをおすすめします。
弁護士が介入することで、示談での解決ができる可能性もあります。弁護士としてお手伝いできることがあるかもしれません。
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