自賠責保険の請求には時効がある!注意点について解説

自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)に保険金や損害賠償額を請求できる権利に時効があることをご存じですか?

自動車や原付バイク(原動機付自転車)を所有している人が加入を義務付けられている自賠責保険の補償対象は人的損害のみですが、交通事故の当事者にとって重要な保険です。

今回の記事では、自賠責保険への保険金や損害賠償額の請求権の時効について解説します。

自賠責保険請求の時効は何年か?

自賠責保険への保険金・損害賠償額の請求権の時効は3年です(ただし、平成22年3月31日以前に発生した事故については2年)。

保険金の請求は、加害者が被害者にいったん損害賠償金を支払った後、保険会社が契約者である加害者に損害補填として支払うのが本来の形です。しかし、自賠責保険では、その事故に対して、加害者・被害者のどちらからでも保険金(被害者請求の場合は損害賠償額)を請求できます。

以下、それぞれの請求権の時効について解説します。

被害者請求権の時効

被害者請求権の消滅時効期間は、3年です。

自賠責保険では、被害者の損害を傷害・後遺障害・死亡の3つに分けて、各々定められた損害項目ごとにその支払い基準を定めているため、時効の起算点が異なります。損害項目ごとの時効の起算点は、下表のとおりです。

損害項目

時効の起算点

傷害による損害

事故日の翌日

後遺障害による損害

症状固定日の翌日

死亡による損害

死亡日の翌日

被害者請求とは、交通事故の被害者が、加害者の自賠責保険会社に直接損害賠償額を請求する方法です。

上記それぞれの起算点から3年で時効となり、損害賠償額を請求する権利が消滅します。

仮渡金請求権の時効

仮渡金請求権の消滅時効期間は、事故日の翌日から3年です。

仮渡金請求とは、加害者の損害賠償責任の有無や損害賠償額の確定前に、当面の費用として一部の保険金を保険会社から被害者が受け取れる制度です。

被害者が死亡または怪我などによって11日以上の治療が必要で、加害者から損害賠償の支払いを受けていない場合に、当座の医療費・生活費・葬儀費などにあてるために、被害者が自賠責保険会社に直接請求できます。

被害者1名について、死亡の場合は290万円、それ以外は障害の程度に応じて40万円・20万円・5万円3段階に分けられています。

事故直後の生活費や治療費の支払いに困っている場合に役立つ制度ですが、治療期間が10日以内の場合は対象になりません。名前のとおり仮に渡すお金なので、後日確定した損害賠償額から、仮渡金が差し引かれます。支払われた仮渡金が損害賠償額を超える場合には、その超えた額を返還しなければなりません。

仮渡金制度は、被害者に対して簡易迅速に賠償金の一部が支払われるよう設けられた制度であるため、事故後、早期に請求を検討するのが通常ですが、事故日の翌日から3年が経過すると請求権が消滅することを覚えておきましょう。

加害者請求権の時効

加害者請求権の消滅時効期間は、賠償金支払日の翌日から3年です。

加害者請求とは、被害者に対して賠償金を支払った加害者が自賠責保険金を請求する方法です。請求にあたっては、支払いを証明する資料(領収証)が必要です。

被害者請求権との大きな違いは、加害者が被害者に(治療費については被害者が入院・通院した医療機関に)支払った金額についてのみ、請求かつ受領できる点です。

時効の起算点も、事故のときからではなく、加害者が被害者に対して損害賠償金を支払ったときから起算されます。賠償金の支払日の翌日から3年で請求権が消滅します。

自賠責保険への請求権の時効を更新する方法は?

治療や加害者との話合いが長引くなど、期限内に請求ができない場合には、時効更新の手続きを検討しましょう。

ここでは、自賠責保険請求の時効を更新する方法について解説します。

時効更新申請書を提出する

自賠責保険請求の時効を更新する確実な方法は、時効更新申請書の提出です。この手続きをとれば、更新が承認された日から3年間時効が延長します。

自賠責保険の請求にあたっては、支払い請求書、交通事故証明書、事故発生状況報告書、診断書など提出しなければいけない書類が多々あります。書類をそろえるのは時間がかかるため、時効に関しては注意を払わなければいけません。

時効更新の手続きは、自賠責保険会社に連絡すれば、定型の時効中断(更新)申請書を郵送してもらえるので、必要事項を記入して提出するだけです。その申請には理由や何かを立証するための書類も必要もありません。

自賠責保険会社は、申請書が提出された時点で消滅時効が完成している場合を除き、この申請を承認します。書類をそろえるのに時間がかかりそうな場合や時効までに治療が終了しない場合などには、時効更新の手続きを検討しましょう。

なお、自賠責保険に時効更新を申請する際には、以下の点に注意しましょう。

状況

注意点

加害者が複数いる場合(事故に複数の自動車が関係している場合)

加害自動車ごとの自賠責保険に、時効中断(更新)申請を行わなければなりません。

被害者が複数いる場合

それぞれの被害者ごとに時効中断(更新)申請を行わなければなりません。

医療機関が被害者からの委任を受けて直接自賠責保険に治療費等を請求している(医療費の受任請求をしている)場合

その医療機関も請求権者となるため、被害者と同様に時効中断(更新)申請を行わなければなりません。

自動的に時効が更新する事由

次の場合は、時効が自動的に中断され、下表に示す日が新たな起算日になります。

時効中断事由

新たな時効の起算日

保険会社が請求書を受け付けたが、書類に不備があり請求者に返却された場合

返却された日の翌日

無責・対象外・非該当などの理由により「支払いできない」と回答された場合

その解答日

仮渡金が支払われた場合

その支払日

通知された支払額に不満があり保険会社に異議の申し立てをした場合

その回答日

任意一括払いの場合、自賠責保険への請求権や加害者への請求権の時効はどうなる?

人身事故の場合は一般的に任意保険会社が自賠責保険の分もあわせて賠償金を支払います。これを自動車保険・自賠責保険の任意一括払いといいます。

自賠責保険への請求権

任意一括払いで手続きが進められている場合、自賠責保険の被害者請求権の消滅時効は進行しません。一括払いが解除(中止)されてから消滅時効が進行します。

任意一括払いで手続きが進められている場合に、加害者本人もしくは被害者が自賠責保険に直接請求をすると、一括払いを解除される可能性があります。

被害者請求をする場合には、実務上、加害者側の任意保険会社に一括払いの解除を申し入れるのが一般的です。

加害者への損害賠償請求権

一般に、任意保険会社は、任意一括払い事案において交渉が継続している限り、消滅時効の主張をしないことが多いようです。

なぜなら、被害者側に時効中断の処置を執らせることになれば、被害者保護の観点から適切とは言い難いと考えられているからです。

ただし、治療の継続について被害者と保険会社との間で見解が異なる場合には、症状固定の時期についても争いが生じる可能性があるため、一般的な取扱いどおりにならないこともあり得ます。

もっとも、加害者が任意保険に加入していない場合は、民法どおりの時効期間を主張されるでしょう。

自賠責保険への請求と加害者への損害賠償請求の時効の関係

交通事故で生じた被害は、加害者にも請求できます。加害者への損害賠償請求権と自賠責保険への被害者請求権は、それぞれ時効に関して異なる定めを有しています。

ここでは、自賠責保険への請求と加害者への請求については、それぞれ時効に関して独立した管理が必要なことを説明します。

仮渡金の支払いを受けても加害者への請求権の時効は更新されない

自賠責保険から仮渡金の支払いを受けても、加害者への損害賠償請求権の時効は更新しません。

自賠責保険への被害者請求権と加害者への損害賠償請求権は、別個の権利であるため、時効も別個に進行するからです。

したがって、自賠責保険から仮渡金が支払いを受けた場合、自賠責保険への被害者請求権は自動的更新され仮渡金の支払日が新たな時効の起算日になりますが、加害者に対する損害賠償請求権の時効は更新しません。

自賠責保険への時効更新申請が承認されても加害者への請求権は更新されない

自賠責保険金に対し、時効中断(更新)申請を行っても、加害者への損害賠償請求権の時効は更新されません。

自賠責保険への被害者請求権と、加害者への損害賠償請求権は別の権利ですので、それぞれに対する時効中断の要件を満たさなければならないからです。

自賠責保険への時効中断(更新)は、あくまで被害者請求(仮渡金請求を含む)の時効が延長されるだけであるため、加害者への損害賠償請求権に関しては、別途、時効更新の措置が必要です。

交通事故による損害賠償請求の時効は何年?請求の種類別に解説

被害者請求の消滅時効が完成しても自賠責保険に請求できることがある

被害者請求権の消滅時効が完成して行使できない場合でも、自賠責保険に対して保険金を請求できることがあります。

具体的には、交通事故の加害者に対する損害賠償請求権の債務名義を取得して、加害者の自賠責保険に対する自賠責保険金請求権に対して民事執行法159条に基づき差押転付命令を得るという手段です(最高裁昭和56年3月24日)。

ただし、この手段を検討するのは、加害者が任意保険に加入しておらず、かつ加害者の資力や資産が不明な場合などに限られるため、滅多に利用する手段ではありません。

自賠責保険への請求権の時効について不安があれば、弁護士に相談を!

自賠責保険への請求権の時効について、心配なことがあれば交通事故の案件を多数手がけている弁護士にご相談ください。

特に被害者請求をしたい場合は、損害ごとに時効の起算点が違うなど複雑な側面があります。任意一括払いで手続きを進めている場合などで、被害者請求への切り替え等をご検討の場合も、ミスなく確実に進めるために弁護士のアドバイスを受けましょう。

まとめ

自賠責保険の請求は、自賠責保険会社ごとに指定されている様式にのっとって、指示通りに作成すれば自身でできます。しかし、見慣れない書類を作成するのは負担がかかりますし、添付書類の中には医師が作成する診断書があります。適切に診断書を提出しなければ、受けられるはずの補償が受けられない可能性があります。

早い段階で弁護士に相談・依頼すれば、時効期間を正確に把握してくれるので、自賠責保険への請求に際して時効の心配をしなくても済みます。

時効が近づいてきた場合も、時効期間を延長する必要があるかどうか判断してもらえて、時効の更新の手続き等も適切に対応してもらえます

交通事故の被害に遭われた方、事故から相当期間が経過して消滅時効にご不安がある方は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。

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