自動車やバイク等を運転していれば、交通事故で加害者になってしまう可能性は誰にでもあります。
交通事故の加害者になってしまった場合、事故現場でどのような対応をとるべきなのでしょうか。事故の加害者としてどのような責任を負うのでしょうか。
この記事では、交通事故の加害者が負う法的責任や事故直後・示談交渉時の注意点を解説します。
目次
交通事故の加害者が事故直後に行うべきこと
ここでは、交通事故の加害者が事故直後に行うべきことについて解説します。
緊急措置をとる
交通事故が発生した際、車両等の運転者その他乗務員が直ちに行わなければならないのは、以下の4つです。
- 車両等の運転停止
- 負傷者の救護活動
- 危険防止の措置
- 警察への届出
これらは、道路交通法第72条1項で義務付けられています。
車両等の運転停止
交通事故を起こしたとき、車両等の運転者は直ちに停車し、以下の状況を確認しなければなりません。
- 死傷者の有無
- 破損した車両や物の有無
- 道路上の危険の有無
自動車が何かに衝突したと感じたら、それが軽微であっても迷わず運転を停止し、事故現場の状況を確認しましょう。
負傷者の救護活動
負傷者がいる場合は、直ちに以下のような救護活動をしなければいけません。
- 救急車を呼ぶ
- 病院に運ぶ
- 事故現場において止血など可能な応急手当をする
これを怠った場合は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金が課されます。
被害者の死傷が加害者の運転に起因するとき(過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪に問われる場合)は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金がそれぞれ科せられます。
危険防止の措置
事故現場は混乱する場合が多いので、二次災害を防止するために以下のような危険防止措置を講じなければなりません。
- 発炎筒や停止表示器材を置いて事故の発生を知らせる
- 後続車を誘導する
- 道路に散らばった事故車両の破片等を取り除く
- 事故車両を安全な場所に移動
これを怠った場合は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金が科せられます。
警察への届出
負傷者の救護や危険防止の措置を終えたら、運転者等は直ちに最寄りの警察署の警察官(事故現場に警察官がいればその警察官)に、以下の5つの事項を報告しなければなりません。
- 事故が発生した日時および場所
- 死傷者の数および負傷者の負傷の程度
- 損壊したものおよび損壊した程度
- 事故車両の積載物
- その事故について講じた措置
これを怠った場合は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科せられます
被害者の連絡先の確認
交通事故の被害者とは、後日、損害賠償等について話し合います。
交通事故証明書を取り寄せれば被害者の連絡先を確認できますが、念のため事故現場で連絡先を交換しておきましょう。
保険会社への連絡
事故の初期対応が終わったら保険会社へ連絡し、事故発生の日時・場所および事故の概要を通知しましょう。
口頭での通知のほか、以下の事項を遅滞なく書面で保険会社に通知しなければなりません。
- 事故の状況
- 被害者の住所・氏名(または名称)
- 事故の状況について証人となる者があるときは、その証人の住所・氏名(または名称)
- 損害賠償の請求を受けたときはその内容
対人事故において、事故発生の日の翌日から60日以内にこの通知がなされないと、その事故による損害に対して保険金が支払われないことがあります。
交通事故加害者が負う3つの法的責任
ここでは、交通事故の加害者が負う3つの法的責任について解説します。
交通事故の加害者は、民事・刑事・行政上の責任を負います。
民事上の責任
民事上の責任とは、加害者が交通事故により被害者に与えた損害に対して賠償義務を負う責任です。
人身事故の場合、この責任は民法や自動車損害賠償保障法に基づいて発生します。
物損事故の場合は自動車損害賠償保障法が適用されないので、民法に基づいて責任が発生します。
被害者に賠償しなければならない損害は、治療費、通院交通費などの積極損害のほか、精神的苦痛に対する慰謝料、休業損害や逸失利益等の消極損害も含まれます。
刑事上の責任
交通事故の相手方に死亡・傷害などの結果を生じさせる事態が発生した場合には、刑事罰としての刑事処分が科せられることがあります。
交通事故に関連して問われ得るのは以下の犯罪です。
- 業務上過失致死傷罪
- 自動車運転過失致死傷罪
- 危険運転致死傷罪
- 保護責任者遺棄・致死傷罪
行政上の責任
行政上の責任とは、事故を起こした者が公安委員会より減点や免許停止・免許取り消しなどの処分を受けることです。
交通事故の加害者が事故直後及び示談交渉時に注意すべきこと
ここでは、交通事故の加害者が事故直後及び示談交渉時に注意すべきことを紹介します。
事故現場で被害者に全額賠償の約束をしない
事故現場において、加害者が被害者に対して、全面的に責任を認めて被害者の損害の一切を賠償する旨の約束をしてしまうことがあります。
このような約束は、後の示談交渉時にトラブルを招きかねません。事実関係や損害額を把握しない状況下で、全額賠償の約束は控えましょう。
万一、事故現場で被害者に何らかの賠償を約束してしまった場合は、以下の情報をまとめて保険会社の担当者に伝えましょう。
- 賠償を約束した日時
- 賠償を約束した際の加害者の認識
- 賠償を約束した際の状況(強迫の有無)
- 約束した賠償内容
約束した内容が漠然としていたり、錯誤や強迫下でなされたりした場合は、全額賠償の合意が成立していないと評価できる場合があります。
示談交渉は保険会社に任せる
示談代行サービス付きの任意保険に加入している場合は、被害者側との示談交渉を保険会社に任せられます。
自身での交渉も可能ですが、被害者への負い目や法律知識の不足から、相場より高い金額で示談せざるを得ないことになりかねません。
被害者との示談交渉は一定の専門的知識と交渉力を保険会社に委ねて、適切な金額で示談してもらいましょう。
被害者への対応は保険会社に丸投げしない
示談交渉は保険会社に任せるべきですが、被害者への対応を丸投げしてはいけません。
事故後の対応を保険会社に任せきりにしていると、被害者から不誠実であると指摘され、以下のようなトラブルに発展するリスクがあります。
- 示談に応じてもらえなくなる
- 慰謝料の増額を求められる
- 刑事裁判で厳罰を求められる
誠意を示すためにも、被害者への謝罪やお見舞いに行きましょう。
ただし、被害者側が直接連絡を拒否している場合には逆効果になるため、謝罪・お見舞いに行く際は、あらかじめ意向を確認しましょう。
当事者同士が接触することで無用なトラブルを生じさせないために、被害者への直接連絡や謝罪を控えるよう指示されることもあります。そのような場合は、保険会社の担当者に同行を求めて謝罪・お見舞いに行く方法を検討しましょう。
被害者から直接交渉の要求があった場合の対応方法
保険会社に示談代行を依頼していても、被害者側から直接交渉を要求されることもあります。
加害者には、賠償義務者としての示談交渉をどのような方法で行うかを決定する自由があるため、被害者との直接交渉に応じる義務はありません。
保険会社の示談代行を依頼しているのに、被害者から直接連絡があった場合には、保険会社の担当者との交渉に応じてもらうよう説得しましょう。
交通事故加害者の保険会社と被害者との交渉が決裂した場合の解決方法
ここでは、交通事故加害者の保険会社と被害者との交渉が決裂した場合の解決方法を解説します。
裁判外紛争解決手続(ADR)
裁判所が関与しない裁判外の紛争解決手続(ADR)として、代表的なものに以下の2つがあります。
- 公益財団法人交通事故紛争処理センターの和解あっせん手続
- 公益財団法人日弁連交通事故センターの示談あっせん手続
いずれの手続きも、交通事故に詳しい弁護士が間に入って和解・示談のあっせんを行う手続です。被害者本人が損害賠償を請求する際に利用されることがあります。
民事調停
調停とは、裁判所の調停委員が当事者の間に入って当事者双方の意見を聴取し、解決案をあっせん・勧告する等して、話し合いによる解決を目指す手続です。
保険会社の担当者あるいは弁護士による被害者との交渉がまとまらず、かつ、被害者が主導的に請求を行ってこない場合に、加害者側の保険会社から解決を促す手続として有効な手段です。
調停は、被害者の住所地を管轄する簡易裁判所に申立てます。
訴訟
訴訟とは、当事者間の権利義務に関する紛争について、裁判所が法律を適用して、当事者間の権利義務の有無及び内容を判決という形式で判断する手続です。
判決には強制力があるため、当事者間で合意ができなくても、紛争を終局的に解決できます。
訴訟手続は、基本的には損害賠償の支払いを命じる判決を求めるものです。当事者間で損害賠償の内容の合意ができない場合に、被害者が訴訟を提起することが多いです。
被害者が何ら手続を行わない場合や不当な言い分に終始するような場合には、加害者側の保険会社から、「被害者に対し支払うべき損害賠償は、〇〇円を超えて存在しない。」という債務不存在確認訴訟を提起することがあります。
訴額が140万円以下の場合は簡易裁判所、訴額が140万円を超える場合は地方裁判所が第一審の管轄裁判所となり、以下のいずれかを管轄する裁判所に対して訴訟を提起します。
- 原告(裁判を起こす人)の住所地
- 被告(裁判を起こされる人)の住所地
- 交通事故が発生した場所
訴訟手続には、通常訴訟手続と少額訴訟手続があります。
少額訴訟手続は、訴額が60万円以下の事件について利用できる、原則1回の審理で解決する簡素な訴訟手続です。弁護士費用特約が付保されていない軽微な物損事故について、被害者本人が訴訟を提起する際に選択されることがあります。
まとめ
車両等を運転する以上、誰もが交通事故の加害者になってしまう可能性があります。
事故後の初期対応を誤ると、その後の示談交渉や刑事処分に影響を及ぼすおそれがあります。
万が一交通事故の加害者になってしまった場合に、冷静かつ適切に対応できるよう、この記事で紹介した加害者として必要な対応や注意点を是非覚えておいて下さい。
事故後の対応や示談交渉に不安がある方は、弁護士のアドバイスを受けると良いでしょう。