交通事故でのむちうちは、すぐに症状が出なかったり、軽い症状であっても思った以上に長引いてしまったりと、症状の程度に個人差があります。
適切な治療費や慰謝料を得るためには、むちうちの適切な治療期間を理解しておく必要があります。
本記事では、主に以下の点をご説明します。
- むちうちの基礎知識
- むちうちにかかる治療期間
- むちうちの慰謝料の相場
納得の補償を得るために必要な知識をお伝えしますので、ぜひお役立てください。
目次
交通事故による「むちうち」とは
むちうちは交通事故でもっとも多いケガだといわれています。
むちうちの程度は事故の大小とイコールでない場合も多く、外部からはわかりにくいという特徴があります。
症状としては首周辺の痛みやしびれ、頸椎の可動領域の限定、頭痛、めまい、吐き気といったものが代表的です。
軽度であっても事故直後の受診が大切
「軽度だから…」とすぐに病院を受診しないと、後から症状が重くなった場合に事故との因果関係を証明することが難しくなります。結果、慰謝料を払ってもらえないなどのトラブルに発展する場合があります。
事故後数週間たってから症状が出ることも…
事故直後は痛みが出にくい点もむちうちの特徴の一つです。
時間が経ってからめまいや頭痛等の症状が現れる可能性もあります。少しでも首に違和感を感じたり体調がすぐれなかったりする場合は、すぐに病院を受診しましょう。
まずは整形外科へ
交通事故でむちうちにあった場合、まずは整形外科へ行き、「診断書」を書いてもらうことが大切です。
後遺症が残る場合は更なる慰謝料や逸失利益の請求ができます。その際も医師による後遺障害診断書が必要です。
まずは病院の整形外科へ行き、検査を受けるようにしましょう。
むちうちの一般的な治療期間
むちうちの平均的な治療期間の目安は2~3か月とされています。
以下ではむちうちの種類を見ながら症状と治療期間について説明していきます。
軽度から平均的なむちうちの治療期間は1~3か月
むちうちの症状の中でも最も多いのが頸椎捻挫型で、約8割の方がこの診断を受けます。
主な症状は首や肩回りの筋肉の損傷による痛みで、寝違いに似ているともいわれます。頭痛や腕の疲労脱力感、肩こりといった症状が出ることもありますが、レントゲンやMRIなどの検査を行っても異常が見つからないことが多く、この場合「他覚症状のないむちうち」に分類されます。
比較的軽度なむちうちは3週間程度で快方へ向かい、長くとも3か月で治癒するとされています。
頸椎捻挫型と診断されても治療が長引くケースもあります。また、病院で「全治2週間」と診断書に記載されても、この期間で完治し治療を終了しなければならない、というものではありません。最適な治療期間とは「症状がなくなるまで」ですので、症状があるうちは治療に専念しましょう。
むちうちには頸椎捻挫型以外に下記のような種類があります。
- バレ・リュー症候群:自律神経症状を主体とし、めまい、吐き気、精神不安定など
- 神経根症状型:身体の特定の部位のしびれや顔面痛、筋力低下など
- 脊髄症状型:しびれや麻痺による歩行障害など
- 脳脊髄液減少症型:聴力・視力・味覚障害や記憶力の低下、不眠など
頸椎捻挫型であれば事故後24時間で症状が出る場合がほとんどですが、上記の種類の中には事故後数週間から症状が出始めるものもあります。治療期間も長引く傾向にあり、3か月~6か月の通院が必要になる場合もあります。事故後は油断せずに身体の調子を見守りましょう。
6か月以上の通院は後遺障害認定の申請を視野に
むちうちの治療を6か月続けても症状が残る場合は後遺障害認定を申請することになります。その際、一旦保険会社からの治療費は打ち切られますが、ここで大事なことは申請結果が出るまでは自費で通院を続けることです。
入通院慰謝料は通院期間と通院頻度で変わる
交通事故でむちうちになった場合、治療費は相手方の任意保険会社が支払ってくれます。
その際の入通院慰謝料は通院期間と通院頻度によって変わってきます。
週3日以上の通院が目安
むちうちの最適な通院頻度は週2、3回以上です。どうしても通院できない週があった、というくらいなら問題ありませんが、月10回程度の通院が目安となります。
通院回数が少ないと治療費打ち切りの可能性も
通院頻度が低いと保険会社から治療の必要性を疑われ、治療費を打ち切られる可能性があります。症状を改善しようという積極的な姿勢が大切であり、適正な慰謝料を受け取るためにも通院回数は重要です。
任意保険会社の治療費打ち切りの目安は3か月
多くの保険会社は、「むちうちの治療期間は3か月」という認識で区切りをつけています。
しかし、すべてのむちうちが一概に3か月で治癒するわけではないので、もしも痛みや不調が残っている場合にはきちんと保険会社に伝える事が大切です。
治療費の打ち切り基準
保険会社による治療費の打ち切り基準は以下、2つあります。
- 完治:症状が回復し、通院の必要性がなくなった状態
- 症状固定:治療を継続しても症状の改善が見込めない状態
完治まで治療費を支払ってもらうことが望ましいですが、たとえ完治に至っていなくても「むちうちの治療期間は3か月までと決まっています」などと言い、保険会社は3か月を目安として治療費の打ち切りを打診することがあります。
治療費を打ち切られた場合の対処方法
もしも治療費を一方的に打ち切られてしまった場合、まずは主治医に症状固定がいつになるか確認しましょう。3か月の相場があるといっても、診断を下すのは医師なので保険会社のいうままに治療を終了する必要はありません。
ここで安易に同意してしまうと、治療が不十分で後遺症が残ってしまったり、後遺障害認定を受けるうえで不利になったりしかねませんので注意が必要です。
治療の必要性があると医師に診断された場合には保険会社と打ち切りの延長交渉をするか、自費で治療を続け、あとから保険会社に治療費を請求することも可能です。
交通事故でむちうちになった場合の慰謝料の相場
むちうちの慰謝料相場について解説します。
入通院慰謝料の算定基準
むちうちの慰謝料の計算には3つの算定基準があります。
自賠責基準
自賠責基準は限度額が120万円と定められており、3つの基準の中では最も低い金額になります。
「通院日数×2」か「治療期間」のどちらか少ない方×4300円=入通院慰謝料
もし3か月(90日)の治療期間だったとして、通院日数が25日だった場合は
25日×2×4300円=215,000円の入通院慰謝料となります。
任意保険基準
任意保険基準は個々の保険会社独自の算定基準を設けており、その基準は一般には公開されていません。しかし自賠責保険のカバーが目的であることから、自賠責保険基準より少し高い基準が目安となります。
弁護士基準
弁護士基準は、通称「赤い本」といわれる「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」という日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している算定表を基準にしています。
むちうちの場合は、通院3か月で53万円、4か月で67万円、5か月で79万円、と示されています。
慰謝料が最も高額になるのは弁護士基準
自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準で受け取れる慰謝料が増額していきます。
もしも後遺症が残ってしまった場合にはさらに後遺障害の慰謝料が加算され、自賠責基準と弁護士基準の差額の開きは3倍以上にもなります。
むちうちで弁護士に相談するメリット
最後に、交通事故でむちうちになった場合に弁護士に相談するメリットをご説明します。
- 適切な治療期間や通院頻度がわかる
- 保険会社との交渉を全て任せられる
- 慰謝料の増額が期待できる
- 後遺障害等級の認定申請も任せられる
適切な治療期間や通院頻度がわかる
適正な慰謝料を得るために、法律の側面から見て重要な治療期間や通院頻度等のアドバイスを受けられます。
保険会社との交渉を全て任せられる
保険会社は経験の少ない被害者に対し早々に示談に持ち込もうとする場合がありますが、弁護士に相談することで、保険会社との交渉を有利に進められるようになります。治療の延長などの交渉もすべて弁護士に一任できます。
慰謝料の増額が期待できる
保険会社に対し弁護士基準による請求ができるため、慰謝料を増額することが可能です。後遺症が残ってしまったときにも、弁護士基準による後遺障害慰謝料が請求できるので大幅な慰謝料の増額が見込めます。
後遺障害等級の認定申請も任せられる
後遺障害等級の認定には様々なハードルがあります。弁護士に依頼することで、等級認定を受けるうえで必要な資料や、後遺障害診断書の作成における重要なアドバイスを受けることができます。
まとめ
むちうちにかかる平均的な治療期間は3か月ですが、ご自身の症状にあわせた治療を行っていくことが大切です。納得の補償を受けるためにも、早期に弁護士に相談することで得られるメリットは多いといえるでしょう。
むちうちの治療期間や慰謝料でお悩みの方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
むちうちは骨折などと違い目に見えにくい症状です。しかし筋肉や神経に残る損傷・炎症から痛みや体の不調に繋がりますので、これらの症状がなくなるまでしっかりと通院することが大事です。