
自身の信号無視が原因で交通事故を引き起こした場合、自身の過失が明確ですから「これからどうなるのだろう」との不安に苛まれるのも無理はありません。
信号無視は、交通事故を引き起こさなくとも違反点数や反則金などのペナルティの対象となります。交通事故を引き起こした場合は損害賠償責任も負いますし、刑事罰が課されることもあります。
信号無視による交通事故では、加害者・被害者双方の主張が複雑に入り組むことも少なくありません。特に、赤・黄・青などの信号の意味を正確に理解していない場合は、その後のトラブルがさらに大きくなるおそれもあります。
この記事では、自身の信号無視が原因で交通事故を引き起こしたらどうなるのかを解説します。
信号無視の定義や過失割合、罰則など、事故対応で押さえておきたいポイントを中心に詳しく解説しますので、ぜひ目を通していただき、今後の対応にお役立ていただければ幸いです。
目次
信号無視が関係する事故の現状と基礎知識
信号無視による交通事故は、交差点における衝突や人身事故など、重大な被害をもたらしがちです。特に、信号の見落としや黄信号を安全に止まれるにもかかわらず進んだことで引き起こされる交通事故は多く、こうした行為は事故原因として深刻に捉えられる傾向にあります。
信号無視による交通事故は当事者同士でそれぞれの主張が対立しやすいため、過失割合の算定や示談交渉の面でも複雑になりやすいです。証拠の確保が難しい場合は、適正な過失割合で示談できないことも珍しくありません。
この章では、信号無視という行為の法的な定義と、交通事故で問題となる過失割合について詳しく解説します。
信号無視による交通事故を防ぐためにも、信号の意味を正しく理解し、交差点を慎重に通行する意識を高めましょう。
信号無視はどんな行為?赤・黄・青の意味を再確認
道路交通法施行令第2条では、信号機の灯火の意味が厳格に規定されています。
一般的に青は進め、黄は注意、赤は止まれと認識されていますが、法的な定義はより厳密であり、この認識のズレが裁判や示談交渉での争点となり得ます。
特に、黄色信号は多くのドライバーが誤って解釈している傾向にありますので、正しく理解することが大切です。
信号における赤・黄・青の意味は、以下のとおりです。
青色の灯火
青色の灯火は、進むことができることを意味します。
進まなければならないとの義務ではありませんから、青信号でも交差点内で立ち往生するおそれがある場合や、前方の安全が確認できない場合に漫然と進入すれば、安全運転義務違反に問われる可能性があります。
黄色の灯火
黄色の灯火は、停止位置を超えて進行してはならないことを意味します。
もっとも、黄色になった瞬間に停止位置に近接しており安全に停止できない場合は、例外的に進行が許されます。
多くのドライバーはこの例外規定を拡大解釈し、黄色なら急いで通過すればよいと考えがちです。しかし、交通事故が発生すれば実務上は「安全に止まれたはずだ」と判断されることが多いため、信号無視(赤信号無視に準ずる過失)と認定される可能性が高いです。
いわゆるジレンマゾーンと呼ばれる問題ですが、裁判所はドライバーに対して厳しい判断を下す傾向にあることを心に留めておきましょう。
赤色の灯火
赤色の灯火は、停止位置を超えて進行してはならないことを意味します。
これは絶対的な禁止命令であり、交差点内にすでに進入している場合は速やかに交差点外に出なければなりませんが、停止線の手前であればいかなる理由があろうとも進入は許されません。
例えば、交差点の手前で信号が黄色に変わり、ドライバーが「急ブレーキを踏めば後続車に追突されるかもしれない」と判断し、加速して交差点を通過しようとしたものの対向車線からきた右折車と衝突したとします。
この場合、ドライブレコーダーなどの映像解析により、黄色に変わった時点で停止線まで十分な距離があり通常のブレーキ操作で停止できたと判断されれば、この直進車は信号無視として扱われます。そうなれば基本過失割合が不利になるだけでなく、違反点数の加算対象にもなります。
深夜帯に見られる点滅信号にも注意が必要です。
赤色点滅
赤色点滅は、一時停止義務があります。そのため、徐行で進入した場合は信号無視(一時停止不履行)となります。
黄色点滅
黄色点滅は、他の交通に注意して進行できます。もっとも、徐行や注意義務を怠れば過失を問われかねません。
信号無視とは、単に赤信号で進んだことだけを指すのではありません。道路交通法が定める信号の意味を正確に理解していなければ、知らないうちに信号無視の当事者となり、重大な過失責任を問われかねません。
あなたの行為が信号無視に該当するかどうかは、単に相手がそう言っているからではなく、客観的な証拠と法的定義に基づいて判断されるべきものです。しかし、黄色信号の進入判断などの判断が難しいケースでは、専門的な検証が不可欠です。
交通事故で問題となる過失割合とは
交通事故における過失割合とは、発生した損害に対して当事者双方がどれだけの責任(不注意の度合い)を負うかを数値化したものです。
信号無視による交通事故の場合、この割合が100:0になるケースもありますが、信頼の原則の適用限界により修正されるケースもあります。
日本の不法行為(民法第709条)および自動車損害賠償保障法に基づく損害賠償実務では、過失相殺(民法第722条2項)の考えが採用されています。過失相殺とは、被害者側にも不注意(過失)があった場合、公平の観点からその分を損害賠償額から差し引くシステムです。
例えば、損害総額が1,000万円の事故で、加害者(信号無視)の過失が90%、被害者(前方不注意)の過失が10%と認定された場合、加害者が支払うべき賠償金は900万円となります。
過失割合を決めるのは警察ではありません。警察はあくまで刑事処分のための捜査(実況見分調書の作成など)を行うのであり、民事上の責任割合には介入しません。
実際の過失割合は、過去の膨大な裁判例を体系化した民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(判例タイムズなど)を参考に、当事者間の交渉によって決定されます。
信号無視による事故は、追突事故やセンターラインオーバーの事故と並び、過失割合100:0(加害者の一方的責任)になりやすいといえます。しかし、被害者側も信号が変わる直前の黄色で進入していた場合や、相手が信号無視をしてくるのが見えていたのにブレーキを踏まずに漫然と進行したなどの事情がある場合は、被害者側にも10〜30%程度の過失が認められることがあります。
信号無視事故だからといって自動的に割合が決まるわけではなく、個別の事故状況(信号の変わり目、速度、視認状況など)を詳細に分析する必要があります。
過失割合は、最終的な損害賠償金の受け取り額を左右する重要な要素の一つです。加害者となった場合でも、被害者側の過失を適正に主張することは法的に認められた権利であり、不当に重い責任を負わないための重要なポイントです。
信号無視の事故が必ず100:0にならない理由
たとえあなたの信号無視により引き起こされた交通事故でも、「信号を無視したのだからすべて自分が悪い」と全面的に非を認めるのは早計です。
交通事故の実務において、信号無視による交通事故の過失割合が100対0にならないケースは多々存在します。交通社会における信頼の原則には限界があり、被害者側にも事故回避義務が存在するためです。
信頼の原則とは、交通ルールを守って運転している者は他者も同様に交通ルールを守るであろうことを信頼して行動すれば足り、他者の違法行為まで常に予測して徐行する義務はないというものです。この原則に基づけば、青信号で進入した車は、赤信号側の車が止まることを信頼してもよいため、たとえ交通事故が起きても、青信号で侵入した車の過失は問われません。しかし、この原則が適用されず、被害者にも過失が生じることがあります。
この章では、信頼の原則が適用されず、被害者にも過失が生じる可能性がある場面を3つ紹介します。
黄信号や点滅信号など錯誤が生じやすい場面
信号の色が赤と青ではなく、黄と赤や点滅信号同士の場合、双方に責任が分散される傾向にあります。
特に争いになりやすいのが、直進車が黄色で進入し、右折車が青または右折矢印で進入した場合や、双方が赤信号で進入した場合です。黄信号には原則として停止義務があるため、黄色で進入した直進車には信号無視の過失があります。しかし、対向右折車にも直進車の動静を注視する義務があり、直進車が停止しないことを予測して右折を控えるべき場面であれば、右折車側の過失も問われます。
具体的なケースごとに、基本過失割合を紹介します。
双方が赤のケース
直進車が赤信号を見落として交差点に入り、右折車も信号が変わって赤になった後に無理やり右折を開始して衝突した場合は、両者ともに信号を無視しています。そのため、基本過失割合は50:50となることが一般的です。
双方が点滅のケース
深夜の交差点などで、一方が黄色点滅、もう一方が赤色点滅の場合は、赤色点滅側の一時停止無視が主な事故原因となるものの、黄色点滅側にも減速や注意義務があります。そのため、基本過失割合は黄色点滅側20:赤色点滅側80となることが一般的です。
黄や点滅の場合は、赤に比べてドライバーが判断に迷うタイミングが多いです。停止すべきか進むべきかの見極めを誤った場合や、対向車線の信号状況を勘違いした場合などに事故が発生するケースが多いです。こうした錯誤が生じやすい状況では、双方の当事者に一定の注意義務が認められるため、過失割合の算定も複雑になりやすいです。
被害者側にも回避義務がある場合
たとえ信号が青でも、前方の状況を確認し危険を回避する義務(安全運転義務)からは免除されません。
裁判実務では、青信号だからといって漫然と交差点に入ってもよいわけではないと考えます。交差点の手前で横方向から猛スピードで接近してくる車両が見えており、「このままでは相手は止まれない(信号無視をする)」と容易に予見できた場合、青信号側のドライバーにはブレーキを踏んで事故を避ける義務が生じます。
そのため、「相手は赤だから止まるだろう」と安易に判断して交差点に入って衝突した場合、青信号のドライバーにも前方不注意として10~20%の過失が課される可能性があります。
事故後の実況見分や示談交渉において、相手が見えていたか否かが重要な争点となることは多いです。被害者側にも安全運転義務が課されているため、結果として過失割合が100:0にならないことはままあります。
信号無視以外の要因が過失を左右する場合
信号無視の事実だけでなく、その他の運転態様(スピード、飲酒、携帯電話の使用など)が過失割合を左右することもあります。
過失相殺の基準では、基本過失割合に対して修正要素を加減算します。たとえ相手方が信号無視をしたとしても、こちら側に著しい過失や重過失があれば、相手方の過失を減じ、こちらの過失を加算する調整が行われます。
過失割合を左右する要因として、以下のような運転態様が挙げられます。
速度超過
被害者が法定速度を15km/h以上30km/h未満オーバーしていた場合、著しい過失として10%程度の過失が加算されます。
30km/h以上のオーバーの場合は、重過失として20%程度加算されることもあります。
ながら運転
被害者がスマートフォンなどを操作しながら運転しており、そのために発見が遅れた場合も、過失加算の対象となります。
信号を守ることだけでなく、安全な速度や注意力を維持することが重要です。
ケース別に見る信号無視の過失割合
信号無視による交通事故の過失割合は、当事者の組み合わせ(車同士、対バイク、対歩行者など)によって基準が異なります。
この章では、判例タイムズなどの法的基準に基づき、代表的なケースごとの過失割合を紹介します。
もっとも、これらはあくまで基本過失割合であり、修正要素によって変動することに留意してください。
四輪車同士での事故と過失割合の一般的傾向
四輪車同士の場合は双方が対等な立場にあるため、信号の色が基軸となります。
| 当事者A(直進) | 当事者B(直進/右折) | 基本過失割合 (A : B) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 赤信号 | 青信号 | 100 : 0 | Aの完全な責任。 |
| 赤信号 | 黄信号 | 90 : 10 | 双方が信号違反だが、赤の責任が重い。 |
| 赤信号 | 赤信号 | 50 : 50 | 喧嘩両成敗の形。 |
| 赤信号 | 右折信号(青矢印) | 100 : 0 | 右折車は矢印に従い保護される。 |
赤と青では、原則として青信号側の信頼が強く保護されます。一方、赤と黄では、黄色側も停止義務違反を犯しているため、10%程度の責任を分担することになります。
四輪車同士の事故では、事故発生時の信号が何色であったかを客観的に証明できるかどうかが重要なポイントとなります。
二輪車と四輪車が衝突した場合の注意点
二輪車は四輪車よりも衝撃への耐性が低いため交通弱者としての側面を持ちますが、信号順守義務に関しては四輪車と同等に扱われます。
| 二輪車 | 四輪車 | 基本過失割合 (二輪車 : 四輪車) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 赤信号 | 青信号 | 100 : 0 | 二輪車側の全面過失。 |
| 青信号 | 赤信号 | 0 : 100 | 四輪車側の全面過失。 |
| 黄信号 | 赤信号 | 10 : 90 | 二輪車も過失を問われる。 |
単車(二輪車)修正として二輪車側に有利な調整がなされることもありますが、信号無視のような重大な違反では、二輪車であることを理由に過失が減算されることは原則としてありません。赤信号無視の事実は、二輪・四輪を問わず決定的な過失となります。
ただし、二輪車特有の事情であるヘルメット未着用などの事情がある場合は、損害の拡大に対する過失として、賠償額の算定において不利に扱われる可能性はあります。
自転車と四輪車の事故における過失割合の特徴
自転車は軽車両に該当しますが、対四輪車との関係では交通弱者として扱われるため、四輪車側に厳しい過失割合が設定されます。
| 自転車 | 四輪車 | 基本過失割合 (自転車 : 四輪車) | 解説 |
|---|---|---|---|
| 赤信号 | 青信号 | 80 : 20 | 自転車の信号無視でも四輪車にも過失がつく。 |
| 黄信号 | 青信号 | 45 : 55 | 双方が青に近い過失配分となる。 |
| 赤信号 | 赤信号 | 30 : 70 | 双方が赤でも四輪車の責任が重くなる。 |
自転車が赤信号を無視したことで引き起こした事故でも、四輪車側にも過失がつきます。これは優者危険負担の原則に基づき、四輪車のドライバーは自転車の挙動に対してより高度な注意を払うべきとされるためです。
しかし、近年の自転車側のルール違反の増加に伴い、社会的な目は厳しくなっています。裁判例でも、自転車が無灯火であったり、幹線道路で信号無視をしたりしたような悪質なケースでは、自転車側の過失を90~100%に近づける判断が見られます。
歩行者と四輪車の事故で発生しやすいトラブル
歩行者は絶対的な交通弱者であり、たとえ歩行者の信号無視でも四輪車の責任が免除されることはほぼありません。
| 歩行者 | 四輪車 | 基本過失割合 (歩行者 : 四輪車) | 解説 |
|---|---|---|---|
| 赤信号 | 青信号 | 70 : 30 | 歩行者が赤でも四輪車に3割の責任。 |
| 黄信号 | 青信号 | 30 : 70 | 四輪車の責任の方が重くなる。 |
| 赤信号 | 赤信号 | 20 : 80 | 双方が赤でも四輪車の責任が重くなる。 |
歩行者が信号を無視して横断したとしても、基本過失割合は歩行者70:四輪車30となるのが一般的です。これは、四輪車を操作するドライバーには、歩行者を保護する極めて高度な義務があるためです。
ただし、夜間、幹線道路、直前の飛び出しなど、物理的に回避が不可能な状況が立証されれば、歩行者の過失が加算される余地はあります。
歩行者優先の原則があるものの、赤信号を渡るなどの危険な横断により引き起こされた交通事故は少なくありません。歩行者の信号無視が明白な状況でも、ドライバー側の注意義務違反が重く見られると過失割合に影響することがあります。
特に、歩行者が年少者や高齢者の場合はさらに保護の観点が強く働くため、事故処理が複雑化しやすいです。
自転車と歩行者の事故が招くリスク
近年増えているのが、信号無視をした自転車が歩行者に衝突する事故です。
このケースでは、基本的に自転車側の過失が100%、あるいはそれに近い割合と判断される例が多く見られます。
自転車は四輪車とは異なり、自賠責保険(強制保険)がありません。任意保険(個人賠償責任保険など)に加入していない自転車利用者が加害者となり、歩行者に重篤な後遺障害を負わせたり死亡させたりした場合、高額な損害賠償金を自身で負担しなければなりません。
自転車と歩行者の事故の場合、四輪車と歩行者の事故と同様の構造が適用されるため、自転車側が加害者となる場合のリスク管理が重要です。
過失割合の修正要素と注意点
実際の示談交渉では、基本過失割合に事故現場の状況や双方の運転態度などの修正要素を積み上げ、5%~20%刻みで数値の修正が行われます。
修正要素が適用されるかどうかは、証拠資料や当事者の証言によって左右されます。そのため、警察の実況見分調書やドライブレコーダーの映像、さらには目撃者の証言など、正確な事故状況の把握が不可欠です。修正要素をめぐる主張や立証がうまく進めば、示談交渉の結果も有利に動く可能性があります。
この章では、修正要素となる具体的な項目を3つ紹介します。
ぜひ参考にしてください。
信号機の設置状況や見通しの悪さ
信号機の設置状況や見通しの悪さは修正要素として考慮される可能性があります。
例えば、建物や壁で左右が見えない見通しの悪い交差点の場合、信号が青でも「飛び出しがあるかもしれない」との予見義務が高まります。
状況によっては、見通しが悪いことを理由に青信号側の過失を加算修正することがあります。
信号機自体が見えにくい場所や、交差点の構造上、死角が多い場合には、通常以上に注意が求められます。特に、夜間や複雑な交差点での見落としは深刻な被害を招きやすいため、当事者双方の注意義務が厳しく問われる傾向にあります。
速度超過
速度超過も修正要素として考慮される可能性があります。
具体的な修正幅は、以下のとおりです。
| 修正要素 | 修正内容 |
|---|---|
| 著しい過失 (脇見、酒気帯び、15~30km/h超過など) | +10% |
| 重過失 (居眠り、酒酔い、無免許、30km/h以上超過など) | +20% |
被害者が猛スピードで交差点に進入していた事実をドライブレコーダーなどで立証できれば、自身の過失を100%から80%や90%に減じられる可能性があります。
天候・路面状況など外的要因
天候・路面状況など外的要因も修正要素として考慮される可能性があります。
悪条件下では、すべてのドライバーにより慎重な運転が求められるためです。
考慮され得る具体的な外的要因として、以下の3つを紹介します。
夜間
夜間は視界が悪いため、発見の遅れが許容される傾向にあるものの、見落としに対する責任は問われます。
もっとも、歩行者との事故では、歩行者側にも夜間の横断の危険性を認識すべきとして、歩行者の過失が5%程度加算されることもあります。
横断歩道付近
歩行者が横断歩道上ではなく、数メートル離れた場所(横断歩道外)を歩いていた場合、横断歩道による絶対的な保護が弱まるため、歩行者の過失が加算されることがあります。
児童・高齢者・身体障害者
被害者がこれらの交通弱者に該当する場合は、ドライバーにはさらなる保護義務が課されるため、ドライバーの過失が加算されることがあります。
雨や雪、夜間など視界が悪い状況下では、信号の見落としやブレーキ制動距離の増大が原因で事故リスクが高まります。天候や路面状況が悪いときこそ、より一層の減速と安全確認が欠かせません。
信号無視によるペナルティーと違反点数・反則金
信号無視により交通事故を引き起こした場合、民事上の賠償責任とは別に、行政処分と刑事処分という2つの公的なペナルティーが科されることがあります。
違反点数や反則金は、車両の種類や信号無視の形態によって異なります。違反点数が累積すると免許停止や取消しのリスクが高まり、事故や違反歴は保険料にも影響し得るため、経済的負担を軽視できません。
具体的な点数や金額を紹介しますので、参考にしてください。
赤信号無視・黄信号無視の違反点数と反則金
信号無視単体の違反点数と反則金は以下のとおりです。
なお、これは事故を起こしていない場合の基準であり、人身事故を起こした場合はここからさらに重くなります。
| 車種区分 | 信号無視(赤色等) | 信号無視(点滅) | 違反点数 |
|---|---|---|---|
| 大型車 | 12,000円 | 9,000円 | 2点 |
| 普通車 | 9,000円 | 7,000円 | 2点 |
| 二輪車 | 7,000円 | 6,000円 | 2点 |
| 原付車 | 6,000円 | 5,000円 | 2点 |
| 自転車 | 6,000円(※) | – | – |
※自転車の反則金制度の導入が進んでいますが、悪質な場合は罰金刑の対象となることがあります。
上記の違反点数は基礎点数です。人身事故を起こすとさらに以下の付加点数が加算されます。
- 死亡事故:20〜13点
- 重傷事故(治療期間30日以上):9〜3点
- 軽傷事故(治療期間15日以上30日未満):6点
- 軽微事故(治療期間15日未満):3点
免許停止などの行政処分の可能性
信号無視を含む交通違反を繰り返すと、累積点数の増加によって免許停止や免許取消しの行政処分が科されるおそれがあります。
免許停止や免許取消の基準は、累積点数によって決まります。
6点で免許停止(30日)の対象となります。信号無視(2点)に人身事故の付加点数が加算されると、怪我の程度によっては免許停止の基準に達する可能性が高まります。
被害者が重傷を負った場合は、60日以上の免許停止(11点〜15点)や免許取消(15点〜)の対象となることもあります。
拘禁刑などの刑事処分の可能性
信号無視による人身事故は、過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法第5条)に問われます。
過失運転致死傷罪が適用されれば、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます。
脇見運転などによる軽い事故であれば、不起訴(起訴猶予)や略式命令(罰金)で済むこともありますが、信号無視は悪質性が高いと判断されやすいです。特に、被害者が死亡した場合や重篤な後遺障害を負った場合、正式裁判(公判請求)となって拘禁刑を課されるリスクが高まります。
保険料や保険適用への影響
自身が加入する自動車保険を利用することで以下の保険金は支払われるものの、翌年以降の保険料に影響が出る可能性が高いです。
被害者への賠償(対人・対物)
被害者救済が目的であるため、加害者が信号無視という重大な過失を犯していても、保険会社は被害者に対して保険金を支払います。
加害者自身の怪我(人身傷害保険)
原則として支払われますが、故意や極めて重大な過失の場合は支払われないことがあります。一般的な信号の見落とし程度であれば支払われるケースが多いですが、飲酒運転などの場合は支払われません。
加害者の車両(車両保険)
過失100%の自損扱いでも、一般条件の車両保険であれば修理費は出ます。ただし、エコノミー型などの契約内容によっては出ないこともあります。
対人賠償保険や対物賠償保険を使用すると翌年の等級が3等級ダウンするのが一般的です。さらに事故あり係数が適用されるため、保険料は数万円単位で値上がりすることも少なくありません。
信号無視の交通事故で注意すべき示談交渉の流れ
信号無視による交通事故は、過失割合の算定や損害賠償の範囲をめぐって当事者間で意見の相違が発生しやすいです。
示談交渉を円滑に進めるためには、できるだけ早期に客観的な証拠を集めて事故の状況を明確にしておく必要があります。相手保険会社との交渉では、過失や損害額に関する根拠をしっかり示すことが重要です。
話し合いが長引くと精神的な負担も増し、正確な判断が難しくなりがちです。
弁護士などの専門家に相談することで、過失割合や損害賠償額の主張に説得力を持たせやすくなります。スムーズな解決を望むなら、なるべく早期に弁護士への相談を検討してみてください。
この章では、事故後のやり取りや示談交渉をスムーズに進めるためのポイントをお伝えしますので、今後の対応の参考にしてください。
事故直後の対応と証拠の確保
事故直後の行動が後の示談交渉の明暗を分けます。
事故が発生したら、以下の行動を取るよう心がけましょう。
警察への通報
事故を起こしたら、必ず警察へ通報しましょう。その際、人身事故として届け出ることが重要です。
ドライブレコーダーの保存
事故を起こしたら、ドライブレコーダーの記録を保存しましょう。データが上書きされないよう、ドライブレコーダーのSDカードをすぐに抜き取ることをお勧めします。
目撃者の確保
目撃者を確保することも重要です。通行人や後続車のドライバーがいれば、その場で連絡先を聞いておくとよいでしょう。
信号サイクル表の入手
信号の色に当事者間で争いがある場合は、警察の交通規制課が管理する信号サイクル表(周期表)を入手することも検討しましょう。信号サイクル表とは、どのタイミングでどの信号が何秒間青・黄・赤になるかが記録されたものです。なお、信号サイクル表のデータの保存期間は短く、1ヶ月~3ヶ月程度で消去されるのが一般的です。事故後なるべく早期に動くことをお勧めします。
過失割合の主張と相手側の反論
相手方の保険会社は、契約者(相手方)の主張に沿って交渉してきます。そのため、相手方が「自分は青だった」と主張すれば、保険会社もそれを前提に「あなたは赤信号無視だから過失100%です」と主張する可能性が高いです。これに対し、ご自身で「自分も青だった」などと口頭で反論しても、証拠がなければ水掛け論となり、押し切られるのが実情でしょう。
示談交渉では、自身の主張を整理して過失割合や損害の範囲を具体的に示すことが大切です。証拠をもとに冷静に対処し、必要に応じて専門家への相談も検討しましょう。
信号無視を否定された場合の対処策
当事者双方が「信号無視はしていない」と主張するケースでは、客観的な証拠の存在が鍵を握ります。
ドライブレコーダーの映像や実況見分書、目撃者の証言などを具体的に提示して立証を行うことが重要です。
交渉が難航する場合は、早期に弁護士や専門家に相談し、法的なサポートを受けるのが望ましいです。
示談交渉が難航したときの対応策
示談交渉が平行線をたどり示談に至らない場合は、交通事故紛争処理センターの利用も検討してみてください。
交通事故紛争処理センターとは、当事者間で示談交渉がまとまらない場合に利用できる、裁判外紛争解決手続(ADR)機関です。
交通事故問題に詳しい弁護士が公正・中立な立場で、法律相談、和解あっ旋、審査を行います。
裁判のように勝敗を決めるのではなく、双方が納得できる解決策を見つけることを目指しています。
費用はかかりませんので、示談交渉が進まない場合は、裁判への移行前の選択肢として検討してみてください。
交通事故紛争処理センターについては、以下関連記事で詳しく解説しています。
信号無視による交通事故トラブルは弁護士に相談すべき理由
信号無視による交通事故は、事実認定の難易度が高く、賠償額も高額になりがちです。
行政・刑事処分への対応も必要となるため、自身で解決しようとするのはリスクが高いでしょう。
弁護士に依頼することは、単なる代行以上の経済的・精神的メリットをもたらします。
信号無視による交通事故トラブルを抱えたら弁護士への相談・依頼を進める主な理由は、以下の3つです。
- 過失割合や示談金の増額交渉をサポートしてもらえる
- 相手保険会社との交渉ストレスを軽減できる
- 弁護士費用特約を活用すれば経済的負担を抑えて依頼できる
以下で、詳しく紹介します。
過失割合や示談金の増額交渉をサポートしてもらえる
過失割合や示談金の増額交渉をサポートしてもらえます。
保険会社は営利企業ですから、支払額を少しでも抑えようと動きます。そのため相手保険会社が提示する過失割合や示談金は、加害者側にとって不利な内容であるケースは少なくありません。
弁護士に依頼すれば、適正な過失割合で示談できるようサポートしてもらえます。
判例知識と証拠収集能力を駆使し正当性のある主張を組み立てられるため、受け取る賠償金を最大化し、支払う賠償金を最小化しやすくなるでしょう。
相手保険会社との交渉ストレスを軽減できる
相手保険会社との交渉ストレスを軽減できます。
交通事故対応はご自身でもできますが、相手保険会社から高圧的な態度を取られたり、電話対応や専門用語だらけの書類に目を通したりすることは、大きなストレスとなり得ます。
弁護士に依頼すれば、相手保険会社からの連絡はすべて弁護士が受けます。
あなたが直接対応する必要がなくなるため、治療や日常生活の再建に専念しやすくなるでしょう。
弁護士費用特約を活用すれば経済的負担を抑えて依頼できる
弁護士費用特約を活用すれば経済的負担を抑えて依頼できます。
弁護士費用特約とは、相手方との示談交渉を弁護士に依頼するときにかかる費用を保険会社が負担するサービスです。
上限額内(一般的に法律相談料10万円、弁護士費用300万円)であれば、弁護士費用は保険会社が負担してくれるため、実質的な自己負担なく弁護士に依頼できます。
弁護士費用特約付きの自動車保険に加入しているなら、迷わず相談しましょう。
ただし、あなたに故意・重大な過失がある事故等、弁護士特約が使えないケースもあります。
弁護士費用特約については、以下関連記事で詳しく解説しています。
まとめ
信号無視による交通事故は過失割合や示談交渉で複雑化しやすく、適切な対処が必要です。
事故に至る経緯や当事者の運転態度、道路状況など多くの要素を総合的に判断しなければならないため、示談交渉が難航するケースも少なくありません。
交通事故対応を弁護士に依頼したいとお考えなら、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。
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