交通事故で代車を借りられる期間は? 法的根拠と注意点を弁護士が解説

交通事故に遭うと、お車が修理や買い替えで使用できなくなり、日常生活に不便を感じることも少なくありません。このような場合、代車を借りることを検討する方もいらっしゃるでしょう。

「いつまで借りられるのだろう?」、「費用は誰が負担するのだろう?」などと疑問をお持ちの方も多いと思われます。

そこで、今回は、交通事故と代車を借りられる期間の問題について、代車を借りる際の法的根拠、適切な期間、費用負担、そして注意すべき点などをわかりやすく解説します。

交通事故で代車が認められる法的根拠

交通事故により車が使用できなくなった場合、被害者は加害者に対して、その損害の賠償を請求できます。この損害賠償請求の根拠となるのは、民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求権です。

不法行為を根拠にすると、交通事故が原因で車が使えなくなった期間、被害者は代わりに代車を利用する必要が生じ、その費用は損害として加害者に請求できると考えられます。

ただし、無制限に代車費用が認められるわけではありません。合理的な範囲内での期間と車種であることが必要です。

代車が認められる合理的な期間

代車が認められる期間は、事故車両の修理期間又は買い替えに必要な期間が目安となります。

具体的には、以下の要素を考慮して判断されます。

修理の場合

事故車両が修理可能な場合、代車が認められる期間は、修理に通常要する合理的な期間となります。修理工場への入庫から、修理完了・引き渡しまでの期間が目安となります。

修理費用の相当性

修理費用が高額になり、買い替えの方が経済的な合理性がある場合などには、代車の利用が修理完了まで認められないことがあります。

修理期間の相当性

あまりにも長期間にわたる修理期間は、相当性を欠くと判断される可能性があります。修理工場と連携し、適切な期間で修理を完了してもらうように努める必要があります。

買い替えの場合

事故車両が修理不能な場合や、修理費用が買い替え費用を上回るような場合は、買い替えが必要となります。この場合、代車が認められる期間は、新たな車両を購入するために通常要する合理的な期間となります。

具体的には、以下の期間が考慮されます。

  • 車両の選定期間: 事故車両と同程度の車両を選定するために必要な期間
  • 契約・納車期間: 新しい車両の契約から納車までに通常要する期間

買い替えの必要性

単に新しい車が欲しいという理由での買い替えは認められません。事故による車両の損傷程度や、使用年数走行距離などを考慮して、買い替えの必要性が判断されます。

車種の相当性

代車として認められる車種は、原則として事故車両と同程度または同クラスの車種となります。高級車や特殊な車両を借りた場合の費用全額が認められるとは限りません。

その他の考慮要素

上記以外にも、代車の必要性を判断する上で以下の要素が考慮されることがあります。

  • 被害者の職業や生活状況: 車が日常生活や業務に不可欠であるか
  • 公共交通機関の利用可能性: 代替となる交通手段が十分に利用可能か

被害者に過失がある場合、代車費用の全額が認められないことがあります。

代車の車種とグレード

代車として認められる車種とグレードは、原則として事故車両と同程度または同クラスのものに限られます。

例えば、軽自動車に乗っていた方が、修理期間中に高級セダンを借りたとしても、その費用全額が損害として認められるとは限りません。

保険会社は、代車の手配を提案してくることがありますが、その車種やグレードが適切かどうかを確認することが重要です。もし、希望する車種やグレードがある場合は、事前に保険会社と交渉する必要があります。

代車費用の負担

代車の費用は、原則として交通事故の加害者が負担します。加害者が加入している自動車保険から支払われることが一般的です。

ただし、以下の点に注意しましょう。

保険会社の事前承認

代車を借りる前に、保険会社に連絡し、車種、期間、料金などを確認し、了承を得ておくことがスムーズな支払いのために重要です。

代車会社の選定

保険会社が指定するレンタカー会社がある場合や、料金の上限が設定されている場合があります。事前に確認しておきましょう。

被害者の過失

被害者に過失がある場合、過失割合に応じて代車費用の自己負担が生じる可能性があります。

車両保険の利用

ご自身の車両保険に代車費用特約が付帯している場合は、まずは自身の保険を利用することも検討できます。ただし、保険を使うと保険料が上がる可能性があるため、慎重に判断する必要があります。

代車期間に関する法的問題と注意点

代車の期間に関しては、以下のような法的問題や注意点があります。

保険会社からの早期終了の打診

保険会社は、代車費用を抑えるために、早期に代車の返却を打診してくることがあります。

「修理の見込みが立ったので」、「買い替えの手続きが進んでいるので」などの理由で、一方的に返却を求められることがありますが、合理的な理由がない限り、安易に応じてはいけません。

もし、保険会社から代車の返却を求められた場合は、まずは修理工場や自動車販売店に修理完了または納車の見込み時期を確認し、その期間が妥当かどうかを検討する必要があります。

納得がいかない場合は、保険会社と交渉することも重要です。

長すぎる代車期間

逆に、修理や買い替えに必要以上に時間がかかり、代車を借りる期間が長期にわたる場合、その相当性が問題となることがあります。

例えば、被害者側の都合で車両の選定に時間がかかったり、修理をなかなか開始しなかったりするようなケースでは、代車費用の一部または全部が認められない可能性があります。

合理的な期間内に修理や買い替えを完了させるように努めることが重要です。

代車費用の立替払い

保険会社の対応が遅い場合や、示談交渉が難航している場合など、代車費用を被害者自身が一時的に立て替える必要が生じることがあります。

この場合は、領収書を必ず保管しておきましょう。後日の加害者または保険会社への請求時に必要です。

弁護士への相談の重要性

代車を借りる期間や代車の費用負担に関して、保険会社との間で意見の対立が生じた場合や、法的な判断に迷う場合は、早期に弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は、過去の判例や法的知識に基づき、適切なアドバイスや交渉を行うことができます。

特に、以下のようなケースでは、弁護士に相談することを検討しましょう。

  • 保険会社が一方的に代車の返却を求めてきた場合
  • 代車の車種やグレードが不当に低い場合
  • 代車費用の支払いを拒否された場合
  • 過失割合が争われている場合

まとめ

交通事故で代車を借りられる期間は、事故車両の修理または買い替えに必要な合理的な期間が目安となります。

車種やグレードも、原則として事故車両と同程度または同クラスのものに限られます。代車費用は、原則として加害者が負担しますが、保険会社の了承の有無や被害者の過失割合などによって、注意すべき点があります。

保険会社から早期の返却を求められたり、代車費用に関して不当な扱いを受けたりした場合は、泣き寝入りせずに、弁護士に相談することをおすすめします。

ネクスパート法律事務所は交通事故の知識・経験が豊富で、代車の問題にも適切に対応できます。代車の問題でお困りの方は、是非一度ご相談ください。

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